「エリちゃん!」
「本当に保護してた!」
カムイの腕の中でグスグス泣いていたエリが落ち着いてきたので入っていいと連絡すると真っ先に飛び込んできたのは緑谷とミリオ。
突然人が増えたことに震えたエリだが見覚えがある二人にカムイの背中からそっと顔をのぞかせる。
「ヒーローさん達?」
「ああ、知り合いなんだ」
カムイの言葉に背中から出てきたエリは2人に近付く。
「あ、あの後………大丈夫、でした?」
「「────」」
見捨てたと見られてもおかしくない行動をした2人にまず向けるのは、心配。
本当にとてもいい子だ。
「ごめん!」
と、ミリオが頭を下げる。大きな声に驚いたエリがカムイの背に再び隠れた。
「君を確実に助けるために、なんて言い訳して俺はあの時君を見捨てた! 辛い思いをさせて本当に済まない!」
「僕も………君が震えているのに気づいてたのに、手を放してごめん!」
「あ、う……え? えっと、でも………あのままじゃ、二人とも、あの人に…………」
「それでもなんだよね! 痛くて怖がってる女の子を笑顔にできなかったら、ルミリオンなんて名乗れなくなっちゃうよね!」
と、今度はカムイに向き直るミリオ。
「カムイくんも、この子を助けてくれてありがとう!」
そして場所を移動しナイトアイ事務所。
「……本当に保護しているとは………」
「君がエリちゃんか。イメルカムイもよーやったの。飴ちゃんやるさかい」
ファットが飴くれた。
ナイトアイはふー、とため息を吐く。
「それでイメルカムイ、何故彼女を事前に保護していたんだ?」
「本気で人を殺せる危ねえやつの横に怯えてるガキがいたら助けるだろ、ヒーロー以前に人として」
その言葉にミリオと緑谷が胸を押さえた。
「つまり意図せず敵の計画をくじいたと」
「あん? ああ、そうなんのか?」
ナイトアイはメガネの縁についているスイッチを押す。ピシッとメガネに罅が入った。
「失礼、少々予想外の事態に混乱した」
メガネを取り替えるナイトアイ。
「そうか」(なんだ今の)
「で、ガキの保護がかなったわけだがこれからの方針は?」(なんだ今の)
「まあ別に、ナイトアイさんだってヒーローに調査させるためだけに集めたわけじゃないでしょう」(なんだ今の)
「この戦力でそのまま八斎會を逮捕するということね」(何、今の)
「おう! 女の子泣かせまくったやっちゃ、ぶっ飛ばしてやるで!」(何や今の)
「問題は本拠に残っているかだよね」(なんだろ、今の)
「わー、漫画で見る眼鏡かけた人が驚いた時のアレだ。本当にあるんだね、どうして表情は変わらないのに眼鏡が割れるんだろう? 不思議〜!?」
どうやらナイトアイなりのジョークだったらしい。つまりあの眼鏡はジョークグッズ。生真面目なヒーローという話だが、ユーモアは欠かさないようだ。滑ってるけど。
「ええ、エリちゃんの証言、押収した銃弾、令状はすぐに出るでしょう」
「れーじょう?」
カムイの膝の上のエリが首を傾げる。
「エリちゃんに痛いことした人達を逮捕しちゃうんよ!」
「もう二度とエリちゃんに近付けないようにするのよ」
お茶子と梅雨ちゃんの言葉に不安そうな顔になるエリ。チラリとカムイを見る。
「安心しろ。ここにいる皆はヒーローつってな、悪い奴らと戦う強い奴等だ」
「お兄さんより?」
「俺が一番強い」
即答だった。とは言え誰も否定出来ない。
「だから任せときな。お前を苦しめる全部、俺がなんとかしてやんよ」
「……………うん、お兄さん」
カムイに頭を撫でられ目を細めるエリ。妹の居る梅雨ちゃんはほっこりした。
「じゃ、これから怖い話するから少し外で待っててくれ。梅雨ちゃん、頼めるか?」
「ええ、構わないわ。妹を思い出すの」
「カエルさん?」
「ケロケロ」
梅雨ちゃんがエリを連れ部屋から出ていった。
「で、どう殺す?」
「殺すな」
カムイの言葉を相澤が諌める。
「そうだな。両腕を千切るだけにしとくか」
カムイは結構キレていた。エリと自分が似ているからだろう。
「現状発覚しているヤクザの個性について話しましょう。抵抗された場合戦うことになるでしょうから」
「俺に襲撃してきたトゥワイスの作った分身共はバリアとパンチ………いや、肩だなアレは。回転肩? そんな感じ」
「特徴、名前からしておそらく地下格闘技場でよく目撃される男と思われます。個性は強肩。強力な拳を連続して放てる」
「此奴等を含めて登録されてねえ個性は居るだろ。トゥワイスもな………問題は七海っつー喋る脳無だ」
と、カムイが己の傷を撫でる。
「で、でもラグドールが自分のせいだって」
「俺が弱ってたからやられたとしても、それで相手まで弱いわけじゃねえだろ。特に疾さは間違いなく俺より上だ」
「怖いなら引っ込んでろよガキ」
と、褐色のヒーローが言ってくる。
「そしたら全員死ぬだろ………実力は未知数。万全の俺より強い可能性だってまあある。判明している個性は雷速以上の超高速移動、停電、雷………後、敵意を持てなくする個性」
「敵意を?」
「俺自身、ムカつく目を向けられねえなら引き摺るつもりがねえってのはあるが、林間合宿中ですらぶっ殺してやりてえとはついぞ思えなかったんでな………殴る事は出来るが本気でぶっ殺しに行けるか…………」
それはまた面倒な個性を。気の持ちようは、存外勝敗を大きく分ける事もある。
「連合で警戒する必要があるのはそいつぐらいだな」
「お前の場合はな。俺達からすりゃ全員警戒対象だ」
「そうか………」
例えば荼毘だって、プロヒーローの中でも彼に匹敵する火力を持つ者は少ない。
「一先ず我々は最大限警戒………その七海という
「あるいは俺ですかね。まあ、脳無ってんなら素の身体能力もやばい可能性があるんで誰かと組みたいところですが………」
個性を『抹消』すれば大抵の
「その方針でいいでしょう。リューキュー、或いはファットが適任かと」
「ですね……それとカムイ、今日はあの子連れてっていいから寮に戻れ。皆心配してたぞ」
雄英のセキリュティは高いし問題はないだろう。
「今日だけなんですか?」
と、緑谷。
「部外者だからな。流石に余程の事情がない限りずっと泊めるのは出来んよ。あの子を保護してくれるヒーローはここにはたくさんいるしね」
「ええ、言ってくれれば預かるわ」
「たくさん飴ちゃん用意せなあかんな!」
と、ヒーロー達。まあエリがカムイと離れるかというと微妙なところだが。それでもずっと面倒を見るわけにもいかない。とっとと八斎會をぶちのめして安心させなくては。
「あ、お兄さん!」
エリはカムイの姿を見ると駆け寄ってくる。
「ありがとな梅雨ちゃん」
「ケロケロ。エリちゃんはいい子で、手間なんてかからなかったわ………」
と、笑顔の梅雨ちゃん。
「カムイちゃんは今日もエリちゃんと泊まるの?」
「相澤が寮に顔を出せとよ。エリも連れて行っていいって」
「りょー?」
「私達のお家よ。エリちゃんを招待するの」
「カエルのお姉さん達の?」
「ええ、来てくれるかしら」
「うん!」