誰かのために死にたいTSおじさんのデスゲーム満足死道中   作:覚絵テネ

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↑ラットちゃんが識別名を決めたきっかけです


たまたま卑屈そうな顔つきのネズミの絵を見て、私みたいだと思ったんだ

 ラットは結局お魚を食べてくれなかった。羅刹も『うぜーよくせーよジジイ』とか思われるのがいやであまり無理強いはできなかった。

 

 擦りむいて、ピンク色の血が滲んでいる足首に無理やり包帯を巻く。〈添加物〉に満たされたプレイヤーの体は基本病気にかかったりしないが、自然治癒力は落ちると言う噂がある。

 

 羅刹は若干気まずい気持ちながら魚を食べる。タイをオリーブオイルでつけたものだが、脂がよく乗っていて分厚い生ハムのようだ。うまい。

 

 羅刹は、三〇分も横になっていれば必要な部位を休め食物を消化し、差し当たりのエネルギーを用意できる。

 

〈生存人数 23〉

〈残り時間 63:30〉

 

 ラットと羅刹は死体から借りた防寒着をまとい、外へ出る。死体は靴からロシア棒まで一通りそろえていて、ここにきてようやくマトモな服装になった。

 ただし、装備はナイフ一本だけだ。

 

 マップを確認。島中央にホテル、遊園地跡。目立つし、どちらも物資は豊富そうだ。ナイフ一本の装備では蜂の巣になる。吹雪は止んでいたが、空気が冷え切って鼻先が痛い。

 

「ラットちゃん、包帯ズレたりしてない?」

 

「正直.....大丈夫じゃないかもです....」

 

「おじさんたちはアレだから、通常より菌の繁殖は抑えられるはずだよ。」

 

「......農薬をぶっかけた野菜が......食われないのと、似てますね。」

 

 確かに、と思ったがそれ以上口には出さなかった。ネガティブな話題を続けてしまうと士気が落ちるところまで落ちる。誰かに殺されるくらいならいっそ二人で死にましょう、なんて話も嫌いじゃないが、もうちょっといい死に方がしたい。

 

 フラフラのラットに肩を貸し、というかホールドして、引きずるように歩き出す。

 

 毒雪による生存可能エリアの収縮がいつ始まるか分からない。 どうにか勝つ方向へ脳を持っていこうとして――なけなしのやる気を電子音が遮る。

 また死亡通知だ。

 

〈生存者 22〉

〈生存者 21〉

〈生存者 19〉

 

 明らかに減るペースが異常だった。人間って意外に頑丈だ。頭を貫かれても死なないことさえある。こんなペースで殺戮を行える人間はいない。だからこれを行なっているのは、人間じゃない。

 

「何...でしょう...この減り方。」ラットの声が震える。

 

「心当たりがあるのが一番だるいなあ。」

 

「...知ってるんですか?」

 

「落ち着いたら話すよ。ほら、あそこで一旦漁ろう。」

 

 たどり着いたのは小さな診療所跡だった。

 

「離島で診療所って言うとDr.コトー診療所だよね。」

 

「?そうですね。」ラットは明らかにわかっていない感じだった。

 

「小さい頃に読んだからさ、恋愛展開がなんか、生生しくかんじたんだよね...」

 

 言いながら、内部の様子を伺う。

 

 窓ガラスが割れ、インテリアがところどころ壊れている。

 それに血の匂い。戦闘の跡。

 

 運が良ければ銃が手に入るかもしれないと思っていたが、診療所の中は異常だった。

 

「おいおいおいおい......嘘だろ。」

 

 添加物塗れの血の海。いっそ病院のように清潔な匂いがした。

 その源は死体、死体、死体。九人分。羅刹とラットは無言でソファーの陰に身を潜め、その殺戮者がまだ病院の中にいないかと耳を澄ませていた。ピピ、と左手のスマートウォッチが周囲のプレイヤーがいないことを示してくれて、ようやく探索を始められる。

 

「相打ち...ですかね?みんな....死んだ?」

 

 とラットが希望的観測を口に出した。そうじゃないと、大体気がついているくせに。

 

 死体の傷は全て刀によるもの。迷いのない綺麗な切り口だ。一人で9人を斬ったのか? 羅刹は嫌な予感を覚える。

 

「これは...?」

 

 ラットが拾ったのは、きれいに両断された銃弾。こんなことができる存在は一人しか思い浮かばない。

 

「...ラットちゃんにも『バステト』のことを話しておかなくちゃね。気が重い。」

 

 バステト、そいつはデスゲームでも恐れられる殺人狂。彼女が参加するゲームでは、ほぼ全員が死ぬ。古代の気まぐれな神の名に恥じない、異常な存在だ。

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