誰かのために死にたいTSおじさんのデスゲーム満足死道中   作:覚絵テネ

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窮鼠になれ

「もう、双子ではなく、片割れ(セストリチキ)になってしまいました。兄が、バステトに、殺されてしまいましたので。」

 

 片割れは二人を威圧するでもなく、凛として立っている。殺されるならそれでいい、という感じだ。

 

(……羅刹さん。戦わないの?)ラットが目を細める。

 

「ん、まあ盤面的にね。」

 

「盤面?」

 

「残り人数が九人だろう?で、生存可能な枠は五。五人で生存しているチームが居るなら、残りの四人は結束すべき。これはもうバトルロワイヤルというより、チーム戦というべきなんだ。」 

 

 もちろん、チーム内での裏切りなどは考慮する必要があるが......

 

「肯定。信用できない、私を殺そう。そういう話になるのであれば、仕方ない。私諦めるね。」

 

「うん。私も生き残った二人とどうにか手を組めないかと企んでたんだ。よく勇気を出してこっちに来てくれた。ありがとう。」

 

 ラットは眉間に皺を寄せた……同理は通っている。けれど。

 

「……あなたは、赤燐さんや白野さん……それに、ルーシーを殺したじゃないですか………!」

 

 それでも、一度殺しあう関係になったのだ。ルーシーに関しては『どの面』なのはわかっているが、それでも、割り切れるものではない。

 

「……やっぱ、組みたくないです?心情的には。」

 

「………いえ、羅刹さんが信用できるって言うなら………私も、信じます。」

 

 この場で誰が一番弱いか、それはラットだ。羅刹にさんざん助けられてきたのは誰か、それもラットだ。片割れたちに抱く感情は……憎しみか、恐れか、よくわからない。……けど、それを噛み潰す。自分の気持ちは殺して、周囲に従う。無能のくせに我と邪智ばかり強いことは自覚している。感情を抜きにすれば、ラットにとってはそれが常に最適解なのだ。

 

 そういう覚悟を決めていたのに。

 

「いや、今大事なのはラットちゃんの気持ちだ。」羅刹はラットをじっと見つめていた。

 

「おじさんはいいよ、ゲームに慣れてるから。でも、ラットちゃんはそんなに感情の整理が付かないと思う。変に割り切ったらその不信感は大事なところで仇になる。」

 

「………マスター羅刹。私、ラットより強い。私、優先しろ。」

 

「まあね。……でも、これってゲームだからさ。合理性だけじゃないんだよ。おじさんはラットちゃんと勝ちてぇ。」

 

「………。合理性だけではない。確かに、そう。」

 

「うん。だからラットが拒否するなら、ホントに悪いけど帰ってほしい。そして次会ったら殺し合おう。」

 

 目を伏せる片割れを見て、ラットは嬉しさよりも驚きが強かった。合理性より自分の意思を尊重されるのは人生で初めてだった。その上で決める。

 

「いえ、片割れ……さん。私、あなたと組みたいです。」

 

「……後ろから、刺すつもり?」

 

「まさか。勝ちたいからです。私も勝ちたい。勝って勝ち続けて、いつかあなた(羅刹)のようになりたい。」

 

 生と死を超越したかのような世界で暴れまわる羅刹の背中に、いつの間にか惹かれていた。その憧れを追うためなら一度自分に刃を向けた相手とも組める。恐怖は捨てて、このゲームを楽しめる。

 

「それより、これからどうすべきかを考えるべきだと思います。私には経験値が足りないから、意見をお聞きしたいです。片割れさんも、私にとっては学ぶべきことの多い先輩です。」

 

 純粋な勝利への衝動を瞳に燃やし、何からも逃げるばかりだったラットは言う。

 

〈生存人数 9〉

〈残り時間 46:20〉

 

 そんなラットの姿を見て、羅刹は頬を緩ませた。

 

(やっぱ、ラットちゃん。助けたのがキミでよかったよ。)

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