誰かのために死にたいTSおじさんのデスゲーム満足死道中   作:覚絵テネ

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クラゲにはなれないから

 片割れと羅刹が組み立てていく戦略を、ラットは耳を澄まして聞いている。それを横目に見る羅刹は微笑ましいものと、頼もしさを感じていた。上級者たちが消耗しきったこの時間帯で、これから情熱を燃やし始めるラットは勝利へのカギになる。

 

「残ったエリアは――名づけるなら、三つある。山岳、ホテル、遊園地。このうち、ホテルにバステトは居る――ってことでいいんだよね?」

 

「私が知る限り、はい。」片割れがたどたどしく答える。「レーダー範囲外から偵察。20時間、動かず。」

 

「そっか、それならもう動かないだろうね。奪った装備で探索(ファーム)は十二分に済ませたか。」

 

「ホテルは、マップの中心。最終的、毒雪はあそこ覆わない、思う。」

 

「だよね。どっちにしろあそこに突入するなら早い方がいい。拙速はダメだけど。」

 

 ラットは会話の意味を追うだけで精一杯。口出しする余地はない。黙って従うのが最適解かもしれない。自覚してはいけないけれど、それできっといいのだ。若いものは大いに悩めばいい。羅刹もそうだった。

 

「――――って感じでどう?」

 

「賛成。」

 

「ラットちゃん、おじさんの説明にわかりにくいところなかったー?」

 

「いえ、大丈夫です!」

 

「そっか。」

 

 方針が決まると、動き出す前にトイレ休憩を取ることになった。ラットは茂みに向けて歩いていく。片割れが無言でついてくる。抵抗はあるが、雰囲気を壊したくない。いい場所を探していると、ヨーロッパ系の顔立ちに似合わぬ粗野な口調が漏れる。

「どこへ、いくんだあ?」……この独特なイントネーション。ラットはしっかり3秒沈黙して、迷いながら口を開いた。

 

「……お、お前とおしっこする準備だ!」

 

「一人用の、草むらでかぁ?」

 

「――好きなの?アニメとか。」

 

 言っておくと、ラットはこういう馴れ合いがあまり好きではない人間だ。ここにくる前は中々入れずにいたから。

 デスゲームの中で、少しでも好きな話ができたのは嬉しかった。

 

「うん。『ドラボー』、好きで、日本語練習したの。」

 

「お、おお。すごく頑張ったね。」

 

「ははは。ラットは何が好き?」

 

「え、ええと......有名なところだとガンダムとか。」

 

「じゃあ進路調査票にはクラゲって書いたんだ。」

 

「? ああ、主人公がやってたやつね。その前に学校辞めちゃったなあ。片割れの国でも進路調査票とかあるの?」

 

「いや。学校にいったことないぜ。なぜなら生命、宇宙、そして万物についての究極の疑問の答えも知っているから。」

「? 何それ?」

「42?」

 

 むふー、と何故かどや顔の片割れ。

 ラットは42の意味がわからないまま、とりあえず曖昧に笑った。

 

「ふふ、あに....兄上が唯一話し相手だったんだけど......アニメ見ると怒った。いつかのために勉強しなさいって言ってた。ラットでもこういう話ができると嬉しい。」

「ラットでも...?」

 

 ラットは失礼な発言を雪で耳が狂ったことにした。

 

(片割れはたぶん兵士とかだって羅刹さんが言ってたね。そういう人がアニメ見てるのって、意外かも。)

 

 少しの会話だが、ラットは片割れが後ろに立っても、あまり気にならなくなった。

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