誰かのために死にたいTSおじさんのデスゲーム満足死道中   作:覚絵テネ

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このデスゲームにも普通の女の子はいます。『天然の女の子が今回は出ますよー!』みたいな鳴り物付きで。
この世界ではTS少女は普通の女の子の代替品なんですよね。アカマンボウの代替品であるマグロと同じで。


初日-昼(議論)実は普通の女の子も参加している。ただし思想は強い

 よくデスゲームに参加していると言うと、狂人のように思われる。……らむねの同業者は世間的には似たようなものの気がするが。

 

 前提として、毎日8時間も働くなら死んだほうがマシだと思う。立ち振る舞い、個性、感情、あらゆるものを縛られ、精神を組織のためにすり潰される。それを60や70になるまで。それならデスゲームの中で悲惨きわまりない死も変わりないと思って、らむねは此処に降り立った。

 

 

 GWが指を鳴らすと、円卓の中央にある巨大な砂時計がひっくり返る。砂の落ちる速度は早く、20分ほどと推測される。羅刹は探り合いの視線を飛ばした。みんなゲームに慣れてそうだ。どう動くべきかしばし躊躇っていると、カン!と甲高い音が響いた。

 

 一人の少女が『のこり発言時間』を表す砂時計を傾けた。これから発言時間を使うという合図だ。

 

 しまった、と誰かが思った。

 これで議論の主導権は否応なしに彼女に渡されることになる。

 

 議論の火蓋を切った少女は……ぷにぷにだった。厳しい鎧から、ぷにぷにしてそうなほっぺのある顔や手足が生えている。

 その場にいる全員が、萌え萌えな声で話すだろうと無意識のうちにアタリを付けていた。

 

「――――――ひとまず俺が話をさせて貰うぞ?」

 

 その偏見は、幼いナリに似合わぬしゃがれ声でかき消された。豊かなバリトン。身長2mの騎士のような、大人びすぎた声がTSする際に、確かにそういうオプションもあると聞くが。

 

「どうも、最初に思ったことは後でゆっくり。俺はエドウィン・ドラグスピア。職業は見た目通り『騎士』……ではない。皆の盾となれずすまないが。」

 

 話し方も歴戦の騎士じみていた。

 ほとんどはあっけに取られていたが、白髪が怯まずに問いかける。

 

「先陣切ったからには相応の中身があること話してくれるんでしょうねぇ?」

 

「ああ!俺は『占い師』!初日の占い結果は……タンザくん、緑のキミ!キミが『人狼ではない』と出た!」

 

「え...?」

 

 いきなり白(人狼ではない)出しされた緑...タンザがぽかんと口を開けている。

 

(マジかあ。やることがなくなった。)

 

 最低限、タンザをフォローしようと思ってた羅刹は一息つく。

 白出しをされるとまず初日には吊られない。

 

(白を出した相手が怪しければ、占い師自身も怪しくなる。結果を偽れない真占いか、人狼同士で囲ってるか。おじさん、後者な気がするなあ。)

 

 エドウィンは左の黒髪に手を差し出す。

 

「精査に集中したい。次、キミに譲ろう。」

 

 無駄な探り合いの時間を切り上げ、議論の時間を確保しつつ占いCO。印象は◎だ。彼女がもしかしなくても今後の議論を左右する。

 

「つ、次は私ですかぁ?」

 

 横の黒髪も砂時計をひっくり返し、震えた、しかし甘く媚びた声を絞り出す。

 

 「そうとも。」と言い、エドウィンは砂時計をひっくり返して沈黙する。

 

 黒髪は立ったまま暫く震えていた。萌え袖で口を隠し、涙袋の大きい瞳で周囲を探る。ミニスカ、頭には大きなリボン。艶のいい黒髪をツインテールに纏めている。中世のお嬢様というよりは、本人の要素が強すぎて現代の地雷系だった。

 

 何度か瞬きしてからようやく、舌っ足らずで甘えるような声を紡ぎ始める。

 

「ええっと、わたし『らむね』って言いますぅ。頭脳系のゲームは苦手で………………………」

 

らむねが口をパクパクさせている間に、貴重な時間が過ぎていく。

 

「………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………好きなものはラムネでぇ………………」

 

「無理に話すならさっさと黙ったほうが安泰でしてー?」

 

 隣のバステトにピシャリと言われると、らむねは大人しく座る。

(いやまあ、及第点かな?らむねはバカだけど、それを踏まえれば嫌われないことはできる。)などと考えながら。

 

 次の発言バステト。彼女もこういう頭脳系ゲームではあまり暴れられない。しかし、ゆったりとしたローブをまとって泰然自若と構える。

 

「わたくしはバステト、COはなし。提案は…発言に被せるは禁止しましょう。 賛成の者は手を上げなされー…ほう、感謝でしてー。罰則はなくとも、清い心で守れるでしょー。では…」

 

「おっ、ボク様の出番か!?」

 

 以外と大人しいバステトが、言い切らないうちだった。

 

 ゴン。金色の少女が席から飛び上がって、透明な仕切りに頭をぶつけた。けっこう重い音に聞こえたが堪えた様子はない。伸びっぱなしにしたひよこのような、柔らかそうな金髪がクッションになったのかな?

 

 騒音に認定されるデシベルで話し出す。

 

「よう、ボクさまはひよたろ〜!COなし!提案がある……!ボク様は村人!この瞳を見れば分かって貰えると思うぜ!!!そこで、ボクを白置きして進行させないか!?」

 

「その言の葉、命を任すに足る笹舟でして?いえ、わたくしたちではなく、ひよたろう殿の命をです。」訳:適当な事行ってるとぶち殺すぞ。傲慢にすぎる提案にバステトがぐさりと刺した。

 

「初日に天使さんになるのはひよ太郎さんでいいですかねぇー?」訳:こいつ殺そうぜ。白髪も追い打ちをかける。

 

「あっ……じょ、じょーだん!次どーぞ!」ひよ太郎は慌てて次に話題を振る。

 

 横のタンザは空気を読んで立ち上がったはいいが、口をパクパクしたりしきりに胸を当てて呼吸したり。どうやら話すこと自体が苦手なようだ。

 

「ええ……っと……た、た、タンザです…………。」

 

 骨と皮だけのような異様に細い体と、長く伸びた緑の癖っ毛。確かにタンザクを飾る笹の葉のようだ。顔のあちこちに手を当て、指で汗を拭いながら言葉を探っている。

 

「誰が怪しいとかさ、ない?適当でいいよー?」羅刹が助け舟を出した。

 

「へっ、いまなんて……?」

 

「ああ、いや、もう座るんだ。後で話をしよう。」

 

 エドウィンが焦って座らせる。まあ自分の白にこんなムーブされたら堪らんだろうな。……って羅刹の番だ。砂時計をひっくり返す。

 

「ええと、プレイヤーネーム羅刹です。COなし。おじさんはタンザちゃんとエドウィンさんのラインを見てます。まー何があっても初日初心者には投票しないけど。以上。」

 

「………っ!?」

 

 簡潔に述べる。疑われたタンザが大げさに肩を跳ねさせてビビっていた。

 

 その表情に欺こうとする意図などは一切見えない。

 

(ひどいですよ〜〜っ!?)タンザからの避難を無視した。

 

(しかし、発言時間を表す砂時計の落ちるスピードが思った以上に早いね。)

 

 一人が話せるのは1裁判1分そこらだろうか。

 

 

「では話させてもらおう。ボクの名前は『花き理(かきり)地の塩(すなにばら)世の光(ほしにあい)』。」

 

「えっなんて?」羅刹は思わず聞き返した。識別名は自分で考えるシステムだ。なんだっけ、かき……?この長い名前とフリガナは彼女自身が考えたのだろうか。

 

「2度言うほどボクの言の葉は安くない。『かきり』でいいよ。それで投票も通るらしいし......それより、マスターなんて呼ばれてるくせに「おじさんはそれやめてほしいんだけど」雑殴りしかできない羅刹が気になるね。脳が萎縮してるのか狼なのかは分からないが論外レベルだな。初心者吊りたくないってことは、そこの二人にお仲間がいるのかな?初日吊りほぼ決まり、異論は受け付けない。」

 

 ああ、かきりちゃんはこういうスタイルなのか。〈プレッシャー型〉と言うべきか。高圧的な言動を繰り返して、恐怖で村を縛るタイプ。

 

「構ってほしいなら、後で相手してあげる。もう有意義なことが出ないのなら、次のあなたが話すといいよ。」

 

 羅刹は軽く反撃して口を閉じる。殴られっぱなしは印象悪いが、全体の流れを止めるのも視野が狭いと思われそうだから。

 

「お気遣い、センキュー!オラ、前のゲームでも世話になったな!」青髪が羅刹に親しげに話しかける。

 

「?」羅刹は特に見覚えがなかった。

 

 幼児体型の丸っこい顔や手足。かなり訛りが強い。しかし、鋭い眼光。

 

「オラは凪羽だぞ。う〜ん、占いは確かに露骨な囲いにも見えちまうってのはそうだな〜。まあ、初日釣りは様子見させてくれぇ!」

 

 次だ。

 

 育ちの良さそう、という言葉が一番に思い浮かんだ。しかしよく見てみれば、暴力的なまでにお胸の方が大きい。バスケットボールくらい在るんじゃなかろうか?しかしその暴力的肉弾も、青と白のドレスで上品に纏めている。

 

 肩どころか指先すら露出しない低露出だが、それはそれとして裸よりずっとエロいのではないだろうか………そっと長い髪をかきあげる仕草もお嬢様のよう。

 

「ええと……最後になっちゃいましたあ……グラサージュ・ショコラ グラサージュと呼んで頂ければあ。。」

 

 しかし話し方は慇懃無礼というか、コールタールのようなねっとりとした悪意が現れているようだった。

 

「占いについてはラインが露骨ですし今日は触れなくていいかとぉ。誰かが触れる必要があるという意味で羅刹さんの発言は評価しますが、凪羽さんの追随は発言稼ぎに見えますねぇ。『おめぇこそ一番思考時間あってその密度の発言しかできねぇんかあ?』……こんなところでしょうかぁねえ?」

 

 花のように視線を吸い寄せる少女だが、凪羽のガン飛ばしも意に介していない様子だ。さて、これで9人全員の自己紹介が終わった。砂時計は既に半分以上が落ちている。もう10分?体感時間よりずっと早い。

 

「あ、あの……。」最初に声を上げたのは、意外にもタンザだった。

 

「確認ですけど、この中から一人、死ぬんですよね?」

 

「うん。」

 

「え、あと半分の時間で……?そんなの無理じゃ……「タンザちゃーん」…っはい…?」

 

 グラサージュが獲物を見つけたハイエナのように口角を上げるのを見て、その前に羅刹が弱気な発言を断ち切った。

 

「感情の話はオススメしないかも。誰を落とすか、もうみんなとっくに心に決めてる。厳しいけど――これ以上、周回遅れにならないでね。」

 

「………っ!」

 

 顔を真っ青にして肩を跳ねさせ、タンザクは黙り込み、代わりに凪羽が舌鋒を開く。そこからは乱戦のように……しかし、どこか形式じみた論戦が始まった。

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