誰かのために死にたいTSおじさんのデスゲーム満足死道中 作:覚絵テネ
気の弱い人が十分も聞けば失神してしまいそうな、敵意に満ちた論戦。しかし、それはどこか不自然なくらい聞き取りやすい。
「おめぇらー?なんか釣りやすい奴にヘイト寄せてない?声が震えてんだけど?」と凪羽。
「それは今必要かな?無駄な感情論で議論時間を潰したいの?月を叢雲で隠さんとする愚者、人狼の意見と取って良いのかな。」とかきり。
「そこはかきりさんに同意ですね。凪羽さんの発言は盤面をはっきりさせたくない狼に見えます。」とグラサージュ。
「グラサージュ!キミも大概だぜ?初心者に圧かけてるだけじゃ村利取れないよ!?!?!?!?」とひよ太郎。
「ひよ太郎……キミもなぁ、強いものへの擦り寄りが多いんだよな。さっきの占い擁護に関しても。御主人様に手を上げたくないのかな?」とかきり。
「確かに初日に占いとその白を殴る意味はあまり感じませぬねー。黒探す気あります?時間の使い方バグってませんか?」とバステト。
それにさらにひよ太郎が食ってかかる。
やいのやいのやいの、と7人の少女たちは乱れ打ちのように互いを攻撃し合う。人格否定誹謗中傷なんでもあり。
彼女らは睨みつけ、がなり、テーブルに足を乗せるなど、自分を大きく見せる手段は絶えず用いるが、互いの声に被せることはしない。なので話を聞いているだけのタンザやらむねにも、段々と勢力図はわかってきた。
初日で浮いているのは凪羽とひよ太郎だった。この二人の発言が槍玉に挙げられやすく、全体の流れは積極的な発言を繰り返すかきりが握り、バステトやグラサージュがそれを控えめに援護する。
何より気になったのは、羅刹の奇妙な存在感だった。他の少女たちは自覚がどうにせよ、羅刹の言葉に必要以上の注意を払っていた。彼女がぼそりと呟くたび、話がズレるか進む。噂の100回プレイヤーであることが関係しているのか。
投票されるとしたら、凪羽かひよ太郎かかきりか。はたまた、目立っているかきりか。
何にせよ、息さえ潜めているタンザク、らむねには矢が飛びそうにない………何も安心の息をついた、その時。
砂時計の最後の一粒が落ちた。
「みなさま、お考えは決まりましたか?投票の時でございます。60秒以内にお手元の紙に人狼と思しき方の名前をお書きください。なお、この間の発言は自由です。」
GMがよく通る声で言うと、少女たちの座る円卓の下部からガチャリ、と音が響いた。小物入れが出てきて、中身には金飾りの万年筆と、羊皮紙が入っている。これで『投票』しろということだろう。
(『投票』すれば誰かが死ぬことになる。それは可哀想なことですけれど。)
……だからって、見ず知らずの他人に命を捧げてやれるほど善人ではない、とらむねはひとりごちた。
人狼ゲームはよくわからないので黙っていたが、運がいいのか自分よりも悪目立ちしている人が多数いる。意を決して、ペンを取り口を開く。凪羽か、ひよ太郎か。誰でもいい。悪目立ちしている哀れな生贄の羊にトドメを刺すために。
「それで、誰に投票するべきだと思いますかぁ?」
甘ったるい、媚びた声だった。万に1つも8人の機嫌を逆撫ですることがないように。あるいは、ここで死んでしまう哀れな人への手向けのつもりで。あくまで決定権は他人に委ねて、らむねは首を傾げる。渦中にある7人の少女は一斉に静まり返る。
彼らの目は指示を待つように、エドウィンの方を向いていた。
唯一役職をCOしているエドウィンの発言力が何より高い。
「俺が言わねばならないよな……今日は、ラムネくんでいいんじゃないか?」
「あ、いいんじゃないか?」
「いいですねえ!らむねちゃんがソラを飛ぶところみてみたーい☆」
エドウィンは重苦しそうに口を開き、それに凪羽とグラサージュが賛同する。
白羽の矢は、思いがけない方向に放たれた。議論が再び動く前に、少女たちは素早くペンを動かす。その矢が再び放たれないように。
初日釣りって嫌ですよね 確定情報がほぼない中、えーいで吊るされる訳なので
だから皆必死で避ける訳ですね