誰かのために死にたいTSおじさんのデスゲーム満足死道中 作:覚絵テネ
ゲームから3ヶ月前。らむね――
「お、大丈夫だったかっ〜〜〜〜〜?店員さん!この子にタン刺しを注文してやっても構いませんねッ!?」気さくというか、熱で変なことになっている日のテンションだった。
「愛音はね、今日食欲ない。」
「そんなこと言わずにワイの顔立ててください………!友達といい飯を食う時間が唯一の安息なんだぜ…………ッ!!」
3000円する肉を奢られる。好かれてるわけではなく、単に彼女の財布の紐がぶっ壊れてるだけ。中学生の頃から兄とその友達の玩具で、母親もそれを撮って売っていて、もう人生なんてどうでもいいんだとか。そして愛音も同類。二人で金持ちの相手をすることもあった。今日はこれから取るお客の紹介料を払いに来たのだ。
「して愛音氏。前の客どうだった?」
「最悪。3のくせにゴム無でやろうとするし。貧乏人死ねよって感じ。」
「あちゃ〜〜〜痴れ者か……でも、これからも客取るんでしょ?偉いダス〜〜〜〜〜!」
「生でしょ?気が重いなあ。」
「病気になる覚悟をして客を取るその姿勢……尊敬するでっ!にかーっ!」
「頑張らないと〜ってなっちゃう額だったからね。」
「おけ。JKブランド今だけだもんな?こんなに偉業積み上げてるのらむねちん以外にしらんダス………頑張ってくれ〜〜〜〜!」
これから遭う客は普通の男ではなく、TS体だった。彼ら?彼女ら?も可愛いと思うのだが、世の中のおじさんはらむねたち天然物をご所望のようだ。気持ち悪いけれど、それには金銭的には助けられているのだった。
「うん。顔の良いメスに産んでくれたんだから、そこだけは感謝して生かさなきゃ。」
「うむうむ!クソみたいな世界に負けるな!頑張れぃ〜〜〜!!!」
財布から現金を渡すと、愛音は15分離れたホテルの、指定された部屋に入る。
中にいたのは、同じ年くらいの女の子――見た目は。そいつはセックスを要求しなかった。
「うん?気分じゃなくなったんだよ。ほら、こってりしたステーキが食べたくて注文したけど、来てからなんか違うなあってなることないかな?」
「……金払わないなんて言わないでくださいね。」
「あはは、安心して。もう今払うよ。確認して。」
愛音は受け取った封筒から札束を引き出し、明かりに透かす。センパイの見様見真似………たぶん本物だった。
「ああ、何時でも帰っていいからね。でも、良ければおじちゃんの話を聞いていってほしいな。」
愛音はドアの方を見たが、こんなにいい話があるものだろうか、と思った。客に向き直る。
「……いいですよ。クレーム付けられたくもないので。」
「いいね。お酒は飲むのかな?」
☆時間経過
その客は高そうなワインを振る舞いながら、肉体関係を要求することは一切なかった。それどころか不思議と引き込まれる声で、いつしかその話しに夢中になっていた。気がつけば乗ろうと思っていた電車を逃していた。
「愛音ちゃんだっけ。なんでさ、そんなに稼いでるの?」
「――」一気に冷めた。 けど、もう脱力してベッドに転がってしまっていた。けど、直後の言葉でまた興味を惹かれてしまう。
「君はさ、紹介してくれたあの女の子とは
「えっいゃ……」
「教えてよ、君のこと。――僕、力になれるかもなあ。」
らむねは自身の考えを普段、誰にも話さない。だからこそ、中身を褒められたのが嬉しくて、ちょっとくらい語っていいかと思った。
「――面白いこともないですよ。単に人生設計の結果というか。私みたいな才能もない頭もないガキが一晩でこんなに稼げるのなんて今だけでしょ。一日中、知らない誰かのために人生をすり潰すなんて真っ平。それよりは今稼いでFIREってやつをします。」
客の言う通りだ。
愛音はあの女の子とは違う。稼いだ金は全部、家の畳の下に隠している。
「ああ、ね。悪くないけど、社会経験を積んでも損はしないよ? キミが馬鹿にしているものは、非効率的かもしれないが、真っ当で――」
説経された?途端にらむねの顔が赤くなる。1日『真っ当な』バイトした時を思い出す。あんなところに向かうのを是とする社会が憎い。枕を握りしめ、上から目線のジジイに吠える。
「真っ当って何だよ。社会を維持していく上で?私はそんなことに何の意義も尊さも感じない!勝手に自分を産み落としやがってこんな世界に命を燃やしたくない!!!自分が生きていくだけの金を稼げればそれでいい!!!!!」
一息に叫ぶと、らむねの気持ちが萎んでいった。ずっと抱えていた、誰にぶつけるつもりもない言葉。呆れた目で見られるだろうと思った。
「――――いやはや、しっかりした考えの子だね。」
自分の考えが受け入れられるのが嬉しかった。だから、客が差し出した赤いリボンを受け取った。
「……これ、知ってます。デスゲームの参加証?」
「うん。デスゲーム界でも、養殖物より天然物の方が需要があるからね。それを電話線、なければスマホに結びつけて寝れば出場できる。らむねちゃん可愛いから、ボーナス出るよ。」
「嫌ですけど?」愛音は部屋の隅まで後ずさった。
「いや、出ろってわけじゃないよ。ただ、選択肢をあげたい、それだけ。生きて帰れれば、そうだね。」
「――は保証できるよ。」ちょっと、目のくらむ金額だった。
リボンを持って帰ってしまった。結局ゲームに参加することにしたのは、パパ活すら馬鹿らしくなるくらいの金が稼げそうだから。
高2で一生分稼いで、高3になったら。あれだ、青春ってやつをやろう。
らむねは昔から気難しいところがあったから、同い年の子たちと中々打ち解けられなかった。恋愛とかくだらないことに本気になるのも、人生に一度くらいだったらいいだろう。
ゲームで人を殺したりするのは多少苦痛だったけれど、自分が自分でいられたからそのぶん息が詰まる感じはしなかった。予定の分は稼いだが、それでも参加を辞めなかった。思えば、ゲーム自体が楽しかったのかもしれない。承認されている。自分は此処に必要とされている、そんな感覚。
分かってる。自分なんかが生き残るには荷が勝ちすぎている。
でも、らむねという少女は来た。