誰かのために死にたいTSおじさんのデスゲーム満足死道中   作:覚絵テネ

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二日目-昼(議論) カメラ:タンザ

「占い結果が落ちないのは残念だが……割と議論の種には困らなさそうだね。」

 

 円卓の間に、プレイヤーたちは抵抗も恐れもなく集まった。

 ガス室のように密閉可能な自席へ、それぞれ腰掛けていく。

 

『タンザ様、迅速にお座りくださいませ。』

 

 ……タンザは除いて。

 

 だってそうだろう、座った瞬間カウントダウンが始まる。確実に誰かは死ぬ。無感動でいることができるわけもない。でも覚悟はある。 

 

 座るなり、ひよ太郎が口を開いた。

 

「まずは凶器かなー!?」

 

「お、ですねえ。ルールを見るに、人狼は一人の部屋の鍵を解除できるだけ。あとは手ずから人間を殺さないといけませぇん……。なので、凶器から紐解いていくべきでしょう。」

 

 エドウィンは全身をすり潰されて死んでいた。明らかに必要以上の傷。その理由を明らかにすることは、人狼の意図に近づくことになるはずだ。さて、議論を先導するべきか?

 タンザの選択は……

 

 ▶︎ちんもく

 

 率先して議論を整理しようと口を開いたのはグラサージュ・ショコラだった。

 発言可能時間を表す砂時計をひっくり返す。

 

「一人一つ持っていた凶器、あの中に人を擦り潰せるようなものは……ありましたっけぇ?」

 

「マスケット銃、ハンドキャノン、ナイフ、大鉈、死神みてーな鎌、ハンマー、火かき棒、弓矢。強いて言うなら……ショコラが携帯していたハンマーかな?」

 

「じゃあショコラが犯人だー!この中で一番体格がいいのもショコラだなー!」

 

「そう言われるかと思って、こちらに持ってきていますよぉ。」

 

 グラサージュが足元から机の上に取り出したるは、鍛冶に使うような大ぶりのハンマー。新品同様にピカピカだ。

 

「これでエドウィンさんをたんねんに潰した、となるとフレームが歪んだり傷がついたり、脂や血がこびりついてないとおかしくないですか?それらが無いことは皆さんに確認してもらってます。」

 

「すごく頑丈なハンマーかもしれんぞ!チタンとか!汚れは遠目だからわからんし!」

 

「……その主張に命かけられますかぁ?」

 

嫌疑をかけたひよ太郎に、ショコラは氷のような侮蔑で応じた。

 

「うむ、事件性無しであるなー!」

 

 ショコラは容疑を晴らしたようだ。タンザとしては、そもそも凶器に関して議論を進めることにメリットを感じない。

 

 ▶︎ていあん

 

「....っすぅ...みなさん......凶器以外の話を...」

「オラ思うんだけどよ、エド()()は爆死させられたんじゃねーかー?」

「……っ」

 

 絞り出した声は凪羽にかき消される。なんだその訛りは。

 昔から声は遮られ安い方だが、この場においてソレは致命的だ。沈黙も場合によっては一つの手段だろうが……発言力を失ったまま、自分の命を他人に委ねたくはない。

 

▶︎おおごえでさえぎる

 

 いや、ダメだ。強引なやり方は反感を買うし、何より主張を嫌ってきた今までの生き方を今更変えることもできない。

 

 らむねさんのようになりたくはない。何か、発言力を補強するための一手を...

 

 ▶︎COする

 

「いいですか……COしたくて……」

「とっとと言ったらどうかな。」

「私、霊能者です……らむねさんは人狼じゃなかった…………だから...私の話を聞いて……!」

 

 誰も返事をしない。しばしの沈黙が心臓に痛かった。もし、狂人なりが対抗COをしてきたらどうなる?人外を一人潰すためにローラー(両方釣り)だ、という話になるかもしれない。

 

「フゥン。」

 

 認めたように、かきりが呟く。タンザは肩が降りた。

 

 「では一旦、タンザが真ということで話を進めていいんじゃないかな。エドウィンが最大狂人だとすると、タンザが人狼ではほぼあり得ない。」

 

「あっありがとうございます.....そうだ。みなさん、凶器以外の話を進めませんか?たぶん、そもそも証拠が足りていない気がするんです。無駄に時間を食うだけ……」

 

「何だ、僕様たちの話には意味がないとー?!」

 

「まあまあひよ太郎。いいじゃないか、タンザが進行をしたいんだろう?任せてみてもいいんじゃないかな。」

 

「へ、進行...?」

 

「うん。誰も信じられない状況下じゃマトモに話を進められないかもしれない。なら限りなく白に近い君が議題や結論を定めるといい。」

 

「……っ」

 

 不適な笑みと共に提案する、かきりは何が目的だろう?

 

 進行させてボロを出させようというのか、あるいは単純に信頼されているのか?タンザは初心者だ。例えその気が無くても、村人に不利な提案をしてしまう可能性もある。

 

 ▷進行する

 ▶︎ごまかす

 

 ひとまずうまく行ったはずなのに、相変わらず息の詰まるような感覚がある。他の人の目線が気になる。

 

 ▶︎ごまかす

 

「と、とにかく、私が言いたいのは...皆さんですら見つけられなかったのであれば、『犯人はどうしてエドウィンさんをミンチにせざるを得なかったのか』を考えるべきだと思うんです。」

 

「理由ね――」

 

「あ、申し訳ありませぬ。COよろしいでしょうか。」

 

 血相を変えてバステトが割り込む。

 

「おあ?霊能対抗?遅すぎ罪で釣りませえん?」

 

「いいえ、占い師COをばー。」

 

 困惑の空気をタンザも察した。責めるようにグラサージュたちが口をひらく。

 

「なんで初日対抗出なかったんですかあー?潜伏はデメリットが多すぎますぅ、あなたが潜伏したまま死んだらエドウィン吊れなくないですか?」

 

「エドウィン様が狂人の場合、人狼が噛んでくれれば美味しいことこの上ありませぬからー。それに、わたくしの死ぬケースなど想定する意味がございませぬー。」

 

「どうせ死ぬなら、ですか?」

 

「い、いえ。人狼が物理的に襲撃してくれば返り討ちにできまするー。」

 

 バステトが今朝の火事を消し止めたことを思い出す。確かに彼女なら、武装した人狼に襲撃されても強引に返り討ちにできそうだ。

 

「まあ、確かに火事の時は助けられましたねえ。」

 

「それにしたって、今となっちゃ自作自演説まで見えてきてるけどね。火事をとめられるバステトが、好印象稼ぎに放火したってロジックもあるわけだろう?」

 

「そこまで疑われては何も言えませぬー。しかし、真でなければ、タンザ様真=エドウィン真、でまとまる空気に異を唱えないのではー?」

 

「へっ」

 

 顔を赤く染めながらバステトが反論するが、非難轟々だ。流れはバステトに対し懐疑的な、正直タンザにとっても魅力的な方向に会議はし纏まろうとしていた。

 

「ちょっと待って。」

 

 その流れが固定する前に、羅刹が口を挟んだ。青白く、俯いていた顔を持ち上げて、苦しそうにしながら発言する。

 

「おじさんが人外ならここは出ない。これで偽が真を取れる訳ないんだから。」

 

「羅刹ぅー?おめえその主張するってことは、そういうことか?」

 

「うん、タンザ偽まで私は見てる。」

 

 しかし、形勢を変える力はない。羅刹がバステト側と『同じ側』に見做されただけだ。獲物に狙いをつけた村人たちが一斉に羅刹を疑う。

 

「おいおい、今日タンザを疑うことに何の意味があるんだい!?君が狼じゃないなら、ボク様さっぱり意味がわかんないぜ!」

 

「実際暴論ですねぇ。その場合、最大狂人のエドウィンが初心者タンザを初日から狼だと見抜いて保護したってことになりますぅ。……無理がありません?寡黙タンザさんの色を見ようって話になったらどうするのやら。」

 

「それならそれでいい。適当な白出しで釣り数稼げるなら万々歳。霊能に破綻させられても、タンザが吊られるならどっちみちきつい。……黒位置はわからないが、タンザはわからない。自分でもめちゃくちゃ言ってると思うが...」

 

「フン、別の視点を提供するならともかく、意地でもタンザくん偽を主張したいらしい。なら、今日の釣りは決まったようなものかな。自称占い師さんは結果も言わないしね。」

 

「あ、素で言い忘れにございますー。」

 

 かきり、ショコラ、ひよ太郎の三人が一斉に疑いの目を向ける。グレー人の中で凪羽は唯一矛先を向けないまでも、(何で今なんだ、そりゃ失策だぞぉ!)と沈黙を選択。羅刹は疑いの目を跳ね除けるには至らない。

 

 ▶︎ちんもく

 

「そう言えば、羅刹さぁん。さっきは言えなかったんですけど。...これ、なんです?あなたの部屋で見つかったんですけどぉ。」

 

 グラサージュが銀色のナイフを取り出した。それにはしつこいジャムのように、薄く血液がこびりついている。あたかも殺人に使った後洗ったんですけど取れませんでした、と言うように。

 

「......あっ。」

 

「驚き顔頂きましたぁ。」

 

「羅刹さん!?なんですかそれは...。」

 

「火事で一人だけ無事だった件といい、このナイフの件といい。バステトさんは消化の件があるにせよ、羅刹さんは今日吊っても良さそうですけどねぇ_」 

 

「あー……。」

 

 もはや羅刹唯一の味方のバステトが焦る。

 

 「えっと弁明するとね。信じてもらえないだろうけど……それは私の血。おじさん昨日自害しようとしたんだよね。」

 

「……えっ?」「はっ」「今なんて?」

 

 一同、驚きの声を漏らした。

 

「や、アルコール切れて死にたくなって……」

「は〜?」

 

 羅刹の弁明は当然論外だ。

 

 人狼ゲームの議論は、チームメンバーそれぞれが最適解を選ぶことを前提にしている。亜種のゲームでも同様。その中にあって、『自害しようとしてたから』は最悪の答えだ。説得力の低さはもちろん、ゲームモラル的にも最悪。AFKに近い。

 

「部屋で燃えてた草は麻酔作用のあるやつでさぁ〜。」

 

「......っざっけんな!」

 

 叫んだのはバステトだった。普段のおっとりした言葉遣いをかなぐり捨てて羅刹を睨みつける。円卓を区切るアクリル板がぶるぶると震えた。

 

「お前、お前!なんで死に様だ!そんなんでよく100回もクリアしたな!そんな、遅刻の言い訳をする新人みたいな!情けない顔で吊られるのか!」 

 

「……いや、バステトちゃんに初めて悪いって思ってるよ。」

 

 羅刹が乾いた息を漏らす。

 

 明言しないまでも、今日の民意は羅刹釣りでしかあり得なかったし、事実そのようになった。羅刹:七票でタンザ:一票だった。

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