誰かのために死にたいTSおじさんのデスゲーム満足死道中 作:覚絵テネ
「ナイス、あに」「ナイス、おとーと」
下手人の双子はパチン、と両の手のひらでハイタッチ。慢心しているように見えて全く隙がない。羅刹は無理やり襲いかかるより、彼女らの足元で痙攣している赤燐に言及した。
「さっさとトドメ刺してあげてくれない?友達……知り合いなんだ。」
「えー?」「弱いやつは死に場所も選べないんですよー?」
「耳引き抜けば即死っぽいから、それだけお願い。」
「しょーがないねー、おとーと?」「しょうがない。私たちも痛いの嫌い。」
二人組が赤燐にとどめを刺している間に、羅刹は感電したルーシーの様子を伺う。立ち上がる気配もない。
そうこうしている間に、ぬぽっという間抜けな音と共にウサ耳が引き抜かれた。脳の神経ごと引き抜かれたことにより、赤燐はぴくりとも動かなくなる。
刺された首筋と腰のあたりからの出血が止まる。まるで蝶の羽のような血痕、乱れて広がった赤髪、無力に投げ出された手足。羅刹は蝶の標本を思い出した。
アナウンスが流れる。
〈生存人数 46〉
『赤燐 が死亡しました。』
「わ、ホントに死んだ。」「はかない。」
二人組は赤燐の耳を捨て、赤燐が後生大事にかかえていた質の低い銃を足蹴にする。
「これは戦士の武器じゃない。」「うん。精々自決にしか使えないゴミ。」
鏡写しのように、動きが一致している。おそらく双子。返り血を気にせず微笑む二人に、羅刹は後ずさりする。
(うーん、正直逃げたい。)
ナイフで武装したプロ殺人者が二人。対してこっちは羅刹一人。白野と赤燐は死に、ルーシーは行動不能。怯えきったラットの援護は期待しないほうが良いだろう。
だが、ここで逃げたら二人が確実に死ぬ。羅刹は覚悟を決め、白野から頂いたナイフを構える。
「
双子が飛びかかる。
2対1の戦いでは、挟まれないことが肝心。羅刹は常に敵二人と自分が一直線になるよう動く。だが、双子の力は予想以上だ。ナイフを交わすたび、腕が痺れるほどの膂力。
ピンチに対して、羅刹は。
(うわ、力強っ。辞世のハイクを考えたほうが良いかも…………ところで、『辞世』って言葉、奥ゆかしいよな。死への不満だけじゃなく、感謝して受け止めている。うーんやっぱ武士の哲学には共感するところが)
羅刹の思考が脱線する。余裕ではない。楽しくなければ集中できないだけだ。
「ぼーっとしてると!」「殺しますよ!」
「あ、ごめん。」
おかげで羅刹はどんどん追い詰められている。相手には先ほど狙撃をした仲間がいるから、むしろ速攻で片付けなければならないというのに。
双子の片方が側面から、横薙ぎのナイフを一閃……と見せかけて足払い。羅刹は派手に転倒。片方が追撃にナイフを振り下ろし、受けた羅刹のナイフが弾き飛ばされる。
(やっば、死んだ。まあいや、この子たちになら殺されても....なんて言えるほどこの子たちのこと知らないな?うん。やっぱ死ねない。)
トドメのナイフが振り下ろされる瞬間、羅刹の視界に動く影が映る。
(というわけで、やっちゃえラットちゃん。)
「うおおおおおおおおあああああああ!!!」
ラットが気合いというより、悲鳴じみた叫びとともに電撃銃スパーク・バニーを放つ。羅刹と二人がやりあっている隙にこっそり装填していたのだ。
緑色の閃光はしかし、双子に当たらない。外れたのではない。かわした。
「はい、避けた...?」
銃弾回避、デスゲームで連勝を狙うなら必須のテクニックだ。
弾道速度。
射出角度。
照準精度。
引き金のタイミング。
この四つを意識すれば意外とできる。だが、ラットがそんな技術を知るはずもない。「へっ…?」と呆然とする彼女。
「
激昂する双子、その意識の外からナイフを投擲。
回転しながら飛んだ刃が双子のナイフを弾き飛ばす。双子がラットをノールックで蹴り飛ばす隙に、羅刹はもう一本のナイフも蹴り飛ばす。
これで素手の争いになった。
(構うもんか、CQCで首を折ってやる...!)(まっておとーと!耳を守るの!)
互いに殴り合うような真似はしない。狙うは耳だ。これを引き抜いて仕舞えば勝ちだ。
羅刹は素早い一撃を見舞ったが、双子の両手に払い落とされる。反撃に双子も羅刹の耳へ手を伸ばす。四つの手を、二つの手で無理やりブロックする羅刹。足りないものは経験値で補った。
(あはは、可愛い構えだなあ。)
三人とも両腕を頭上に上げ、耳を狙いつつ相手の手をブロックする。まるで野球部のフライ練習のようなシュールな光景だが、目は血走り、息を忘れて互いの耳を奪い合う。
その中の神経を破壊するために。
(この方……なんか早くなってない?!)(聞きしに勝りますねー!)
「ガチ殺しあいならともかく、デスゲームなら負けないよ?」
人数差にも関わらず、羅刹が押していた。
(ナイフでの殺し合いなんて退屈すぎる。うん、これなら...集中できる!)
人数差をものともせず、羅刹が押していく。死角を作らず、攻守の鋭い動きで双子を牽制。誰もが不慣れな「耳抜き合戦」で、羅刹はAIのような精密さで最適解を選び続ける。
羅刹は軟体動物じみた動きで、双子の指をブロック。さらに、カウンターに白い毛を引き抜いた。これまで感じたことのない痛みとストレスに、双子の行動が歪む。
(おとーと、このままじゃ。)(うん、畳み掛ける!)
双子が焦りを堪えきれなかった。兄が先ほどの焼き直しのように足払いを仕掛ける……が。羅刹はそれを見て大きく笑った。
(かかった!読み勝ち!)
「ギャッ!?」
兄の指を、羅刹は踵で強く踏みつける。地面には尖った枝葉があり、兄の柔らかい脚肉に食い込む。
動揺した隙に両耳を掴む。動物特有の、冷たく薄い耳の感触。
「
ぶちぶち!
感触は言葉にし難い嫌悪感があった。引きちぎると、双子は膝から崩れ落ちる。致命傷ではないが、動きは明らかに鈍る。
この勝負...羅刹の勝ちだった。
(速やかにトドメを...ん?)
羅刹はふと足を止めた。何か、ぞっとする気配が近づいてくるのを感じたのだ。
戦闘描写もやります。
いつか上手くなると信じて......