誰かのために死にたいTSおじさんのデスゲーム満足死道中   作:覚絵テネ

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同村禁止でお願いできますか?

 羅節は正面戦闘にそれなり以上の自信がある。けどソイツだけは戦いたくなかった。勝ち目が薄い、というだけではない。

 ソイツに殺されるのだけは、絶対に嫌だ。

 

 双子にあと止めを刺すだけだというのに体が動かない。

 

 ちょうど、左手のレーダーが起動した。

 4人。近づいてきている。

 

 一人は死体。一人はダッシュで接近、一人は挑発の動き。そして最後の一人――怖気を放つ ()()()の存在を確認した刹那、羅刹は戦闘継続を断念した。

 

 今退くのは動けないルーシーの死を意味する。せっかく双子と戦って守り抜いたのに。

 

「....ごめん、ルーシー。君になら殺されてもよかったんだけど。」

「……ぅ………お姉ちゃん………?ちょっと......」

 

 倒れて動けない彼女に駆け寄り、手榴弾をいただく。最後まで何かを期待する顔だった。

 

 手榴弾、識別名『アトラス・スラッガー』。通称Mk2"パイナップル"、致命傷範囲約一〇m。そのピンを抜き、上空一五mほどの、枝が密集しているところに投げ込んだ。

 

 どぉん、と地震のような衝撃が走った。一瞬遅れて黄と翠の混じった閃光が迸り、間抜けにも目を開いていたものの目を焼く。爆発音が鼓膜を叩き、破片が満遍なく飛び散ると同時に、大量の木の枝が落下する。

 

 これで追跡は止められるはずだ。

 

 縋るようにこちらを見つめるルーシーより、ラットだ。

 双子に蹴り飛ばされた後、物陰に隠れていた彼女の手を掴む。

 

「行きますよ。」

「えっ、えっ」

 

 ラットは現実に頭が追いついていないようだった。赤燐の死体や、自分が倒したルーシーを気まずそうに見つめる。

 

「死にてえのかよ!お前まで!」

 

 怒鳴りつけて、ようやくラットの足が動き出した。倒れてゆく木々を後ろ目に、私たちは葉を掻き分けて一目散に逃げ出した。

 

 ズズン、と樹木の倒れる音が連続する。

 背後から銃弾や投げナイフが飛んできた気がするが、気にしている余裕もなかった。

 

 ただまっすぐ、森の鬱蒼としたところへ走る。若木を踏み潰し、木の根に足を取られて転びかけ、木の枝で腕を切り、血だらけになって走り続ける。ラットが途中で折れてしまうのではないかと懸念したが、無用だった。

 

「そうだ、死ねない。こんな所でぇ……!」

 

 ラットはショックと貧血で死人のように青い顔で息を切らしつつも、その瞳にはギラつきが宿っている。

 

 うん、この子にも見込みがある...と羅刹は自分の判断を

 

 ☆

 

〈生存人数 46〉

〈残り時間 69:22〉

 

 二人が止まったのは本当の本当に体力が切れた時だった。森のエリアが終わりかけ、岩が地面から突き出て天然の塹壕のようになっている。ラットが分厚い根っこに足を取られ、手を繋いだままだった羅刹も引っ張られて転び、強かに鼻を打った。

 

 二人は岩陰まで這いずり、過呼吸のように必死で息を取り込む。いつの間にか食料も武器も、ナイフ以外は全部落として、泥だらけになった無様な姿だった。

 

 走ったのは一瞬だった気もするし、一時間走り通した気もする。心臓と肺が痛い。例え双子たちのチームを振り切れていなくとも、これ以上走り続けたら死ぬという確信があった。熱くなった額に、雪が落ちて熱を覚ましてくれる。

 

 それでも数分息を整え続けると、やっと考える余裕が生まれたようだった。手元のレーダーを見ると、人工音声の通知が来ていた。今トドメを刺されたということだろうか。

 

『Lucyが死亡しました。』

〈生存者 45〉

 

(ごめんねルーシーちゃん……昔のおじさんならキャリーできたのに。)

 

 羅刹が悔やんでいると、ラットが重い声で尋ねてきた。

 

「なんで私を助けたの?」

 

 てっきり『私悪くないよね!?』ぐらいのことを言ってくると思っていたのに。

 

 予想していた自己弁護ではなく、彼女の瞳には走り出す前のギラつきに混じって、強い自己嫌悪と後悔が滲んでいる。

 

「いつも、感情が抑えられなくて。ルーシーとも仲良くできたかもしれないのに怖くて怖くてたまらなくて、でも言葉にできないまま撃っちゃった。デスゲームにまで来て衝動的なところが直せなくて、撃っちゃった時、今度こそ終わりだって思った。......なのに、何で私を助けたの?ルーシーを助ければよかったのに。」

 

 これまでのヒステリックな調子と打って変わって、消え入りそうな声。彼女がデスゲームに来た理由が、そこにあるのかもしれない。羅刹は気の利いた答えを持たない。

 

「それは...選択の余地がなかったし。あとおじさんは」

 

 ラットの頭を掴み、木陰に隠す。バン! と派手な発砲音が響き、オレンジ色の光が着弾点から溢れる。

 

「ラットちゃんが魅力的だったから助けたんだよ?話の続きは後で、ね?」

 

ラットは小さく頷いた。

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