俺は雄英に入学できなかった。
入学願書を提出してから二週間ほど経って、雄英の教師を名乗る不審者とネズミがやってきた。
半年前に屋上から飛び降り自サツしたデクのことを誰かが覚えていたらしい。
同じ学校に通っていた俺のことが偶然目に留まり、念のためにと調査された結果、「数々のイジメの証拠が見つかった」とかぬかしやがった。
それからは地獄だった。
奴らが持ってきたディスクみてーな機械から、俺がこれまでデクに言ったことややったことが映像で流されていった。記憶を再生する『個性』の協力があったとかほざいてたが、そん時の俺の耳にそんなことは入らなかった。
『クソ』
『死ねや!』
『くたばれ』
『殺すぞ』
『なぁデク?』
『クソナードが……』
そして。
『来世は『個性』が宿ると信じて……屋上からのワンチャンダイブ!!』
全てを聞いたババアが、まず俺を殴ってきた。
座っていた椅子から俺を引きずり倒し、そっから泣きながら殴ったり蹴ったりしてきやがった。
父親が雑魚個性のくせに俺を憐れんだ目で見下しやがりながら、不審者と一緒になって無理矢理ババアを拘束した。
何もしなかったネズミが言った。
「最後のセリフ、あれは緑谷君が自サツしたその日の発言だろ? 映像に映っていた教室の黒板の日付がそうだったからね」
「うっせぇ!」
「勝己!!」
ババアがうるせェが、そんなことはどうだってよかった。
「だからなんだ!
無個性のデクが死んだからなんだってんだ!
俺が変なことを言ったか?
分不相応な夢を追いかけてる奴なんて目障りなだけだろうが!
邪魔な奴が勝手に人生リタイヤしてっただけだ、しかも無個性!
なにが悪い!?
そんなクソナードより勝ち組個性の俺の人生の方が優先されて当然だろうが!」
「……ここまで肥大化した自尊心を見せつけられると、逆に呆れて物が言えないな。爆豪」
不審者が俺を見た。
ぞっとするほど暗い目だった。
「気に入らないから暴言吐いて暴力振るって、挙句の果てに自サツ教唆か。お前、そんなつもりでヒーローになるつもりだったのか? 甘いんだよ」
「んだと!」
その何もかも
だが不審者の言葉は止まらず俺を刺してきた。
「そうして上の人間の前で良い子ぶろうが、見てる奴は見てるんだよ。それすら分からない奴はヒーローに相応しくない……お母さん」
不審者が一通の封筒を差し出した。
それは、俺が提出したはずの雄英の入学願書だった。
「これは返します。申し訳ありませんが、私たちではお子さんのお力になることは出来ません」
「なっ……ふざけモゴッ」
「分かりました。……この度はお手数をおかけして申し訳ありませんでした」
俺の口を不審者の布が塞いだ。両手と両脚が縛られた。
ふざけんな、だったら『個性』で爆破してやれば……しかし、汗がでなかった。
俺の目の前で、ババアが願書を引き取った。
俺はそれを見届けることしか出来なかった……。
……それが、俺の終わりの始まりだった。
雄英の教師が帰った後に俺はまた怒られ、緑谷のおばさんに頭を下げに行かされた。
デクの葬式以来に会ったおばさんはげっそりと痩せていた。
「申し訳ないけど、絶対に許せない」と言われた。
……んだよ、意味が分からねぇ。
なんで俺がデクなんかのせいで、こんなことになっちまった?
翌日、俺とその他数人に出席停止の処分が下されたと学校から電話があった。
全校集会が開かれただとか、調査委員会が立ち上げられただとか。
センコーがイジメの見逃しでクビになったとか、ヤニを吸ってる連中がいたのがバレたとか。
ンな色々なことが、ババア経由で伝えられた。
それだけじゃねぇ。
いつのまにか、俺のやったことがネットに流されていた。
実名、写真、どっかの誰かが盗撮してた音声記録……拡散は止まらなかった。
父親は会社をクビになった。
俺は転校を余儀なくされ、家族ぐるみで引っ越すハメになった。
母親は一時期パートに出ていたが、顔立ちが似てて苗字も同じってのですぐにバレて辞めさせられた。
どこへ行っても一月も経たないうちに表札に落書きがされ、窓に石が投げつけられた。
それからしばらく経って。
ろくでもない息子を作ったと言われ続けた父親は、最後に個性を使ったカツアゲにあって打ち所が悪く死んでいたのが見つかった。
パートが見つからず夜の仕事に出るようになった母親は、同僚をストーカーしていた
俺は。
俺は……。
俺は……――。
ちくしょう。