『ツン…?デレデレな世界』
「___あ、あの!!すいません!!」
時刻は昼が回る頃。
何時もの様にダストと共に酒を飲み自堕落な生活を送っていると、若い冒険者だろうか?短剣を腰に携えた少女が俺の居るテーブルの隣に立っていた。
「あの、えっと……か、カズマさん…ですよね?」
「あぁん?お前まさかコイツがあのサトウカズマか疑ってるのか?」
「ひっ!?…そ、そう言う訳じゃなくて…!!」
少し老けて尚威圧感は全盛期のまま、初心者冒険者であろう少女に絡むダストに手を制すと俺も立ち上がる。
「ただ確認しただけだろ……んで、俺がカズマだが何か?」
ビクビクと何処ぞのゆんゆんを思い出すその少女、周りをチラチラと確認すると意を決したのか喉を鳴らし俺を見上げる。
「その……恋愛相談、を受けて欲しいんです!!」
そう真剣に伝える少女、成る程恋愛相談ね……うんうん成る程……。
チラリとダストに目を向けるともう笑いを堪えられないと計りに声になら無い笑い、椅子から転げ落ち肩を震わすのを横目に少女に向き直る。
「……何で俺?」
てっきり冒険のアドバイスでも受けに来たのだと思っていたが、あまりに見当違いな事柄に拍子抜け。
「……カズマさんは、パーティーメンバーの一人と結婚したと聞いています……それで、当時から仲の良かった御二人が今も尚上手くいっている秘訣、が何かを教えて欲しくて…。」
……読めてきた。
つまりコイツは幼馴染、もしくは昔から絡みのある男と恋仲になった、なりたいのだが……昔から居る人間はlikeから抜け出せないとか何とかそんな感じを心配しているのだろう。
実際日本に居た時もそんな事が巷に噂程度に流れていたのを思い出す……多分、もう随分と過去の事だからあまり鮮明には思い出せないが。
まぁ確かにアイツとはそれなりに古い仲ではあったが……正直この子と状況は似てるとは言い難い。
ましてや俺も何故あんな奴を好きになってしまったのか未だ疑問に思う事もあるのだ、そんな状態の俺が冗談でも若い子に上から講釈垂れる事等出来る筈もなく。
「まぁ、一応経緯を聞かせてくれ。話しそれからだ。」
アラサー、程遠いと思っていたその言葉の通りになると他人の恋愛の方が興味が出るとは本当だったのだ、一応出来る限りの事はしよう……と言うのは建前で今の子の恋愛事情が気になって仕方が無い。
「……最近昔から良く遊んでいた男性とお付き合いを初めたのですが、どうもお互いにぎこちなくて……お互いに手を繋ぐのが精一杯、私としてはもう少し進んだスキンシップをしたいのですが……。」
「男の方が恥ずかしがってしてくれない、と。」
「はい…。」
何だ、今も恋愛と言うのは変わらないのだな。
ただ女性経験の少ない俺でも分かる、これは初々しい等と思っていたら直ぐに破局してしまう状態だ。
何よりもこの子の方がスキンシップを求めている、だと言うのにそれに応えてくれない彼……そんな不平不満の溜まった少女の元に現れる甘えさせてくれる大人な男性……的な感じになりかねない、てかなる。
そう言うシュチュエーションを日本に居た頃から無限に見てきた、その度反吐も出たのを覚えている。
つまり俺がするべくアドバイス、それは……。
「………俺もアイツと付き合い初めた当時、キミ達見たいな状態になったな……これは殆どのカップルが通る道……だと思う。」
身の上話、体験談を交えつつ解決の糸口へと導いてやるのだ。
当時の自分の気持ちを思い出しながら酒を一口……飲まないと恥ずかしくて喋れたもんじゃない。
「アイツがキミ見たいにスキンシップを求めていた……のかは分からないが、互いにチラチラ様子を伺ってたのを覚えてるな。俺とアイツは悪友の時はそんな感じじゃなかったからな、隠そうと言っていたのに直ぐバレた恥ずかしかったさ。」
「ダハハッ…今でも俺は覚えてるぜ、何時もは澄ました顔してたあの魔剣野郎が死の淵に立たされたかの様な表情でお前を見てたのをなッ!!」
そう豪快に笑い酒を浴びる様に飲むダスト、そんなダストを引き気味に見る少女を尻目に何故コイツはコイツでリーンに選ばれたのか不思議で仕方が無い。
「まぁ話を戻すと、その後ソイツとちょっとした言い合いになってな……そこでふと、普段のソイツと普段の俺として久々に話した感覚になったんだよ。」
あー…自分で話してて顔が熱くなる。
「結局彼女だから、彼氏だから、そんなの関係無く前と同じ感じで接したんだよ……俺達にはそれが性に合ってたんだろうな。」
「……でも、それだと態々恋人になる必要はないんじゃないんですか?」
「そうだな……アイツがやらかして、俺が悪態ついて、アイツが泣いて、俺に掴みかかって、俺がやり返して、そんなのは全部恋人じゃなくても出来る……が。」
そこで一区切り、酒を喉に流す。
「ふと、何の気なしにアイツが手を繋ぎたいって言ってきてな。」
未だに覚えている、帰って来るなり不機嫌全開のアクアが俺にナンパされたと言ったと思えばソイツの悪口全開、肩を触ってきただの髪を触っただの胸を見る目がいやらしいだの、何故か俺も悪口を言われている気分になった。
そんな時に本当にふと、アクアが空いていた俺の右手に自分左手を絡ませる……所謂恋人繋ぎってやつだ。
「そしたらアイツ何て言ったと思う?」
「………。」
「『何か、汗で湿って童貞臭いわね』って……ぶん殴りそうになったなその時。」
実際、その後の言葉が無ければそのまま左ストレートが炸裂していたと思う。
「その後、『手付きがいやらしいし、爪のお手入れも下手くそだけど……不思議と、カズマさんと手を繋ぐのは楽しいわ。』……ってよ。」
「それは……何と言うか…。」
「何を思ってだったのかは知らないけど、そう言って笑ったアイツの顔を見てて俺も嬉しい気持ちになった……だから結婚した、かな。」
それが全てでは無いけど、あの瞬間が俺とアイツの関係を友達以上恋人未満からちゃんと進展した瞬間だったんだろうな。
もっと楽しい事を探そうって事で手を繋いで歩いみたり、水に濡れた髪を乾かしてみたり、互いの顔を触ってみたり……明らかに友達を超えたスキンシップが増えていった。
「つまり何が言いたいかって言えばだな、昔からの仲なんだったら急に恋人らしい振る舞いとかするんじゃなくふと、友達を超えたスキンシップをしたい時は二人きりの時、相手に正直に伝えて、自分から半分強引に行け……そしたら少なくとも悪い方向には行かないんじゃないか?」
「そうですか……でも、私しか触れ合いを求めてなかったらどうすれば……。」
「大丈夫だろ、女から求められて嫌な男何ていねーよ…なぁ?」
そう言ってニヤニヤと俺を見るダスト……チッ!コイツ奢ってもらってる分際で…!!
「……取り敢えず実践して、駄目だったらまた来いよ。今度はもっと恋愛に詳しい奴探してくるからよ。」
「態々有り難う御座います…!!あの、それでもう一つ良いですか?」
と、少し顔を赤くして口のボリュームを少し落とす。
「その、やっぱり何年経ってもその……お嫁さんは可愛いって思えるんですか…?」
………。
可愛い、なぁ……。
もう何十年と一緒に居て、良い所どころか悪い所を沢山見てきた。
何かやらかし涙を流し、何処が女神だと言いくなるあの女……どんな状況でも結局俺の方に助けを求めに来る……。
笑った数と同じくらいに泣いた顔も見て、怒った顔も色々な表情を沢山コロコロと見せ……付き合い始めるまで服もずっとあの女神のやつしか着なかったアクア。
本格的に付き合い初めてから毎朝髪型を気にして、服も新しく大量に買いほんの少しだけ優しくなったアクア。
そんな良い所悪い所諸々全て引っ括めて……。
「……可愛い…し、綺麗じゃねぇのッ!?てかアレはギャップが悪いわ、うんッ!!」
不良が猫を拾う理論と同じだ。
恥ずかしくて大声で誤魔化せなかった俺をクスクスと周りの奴が笑い、少女も先程までの不安そうな表情は何処へやら笑顔を取り戻していた。
「フフッ……では、直接お嫁さんに伝えて上げて下さい。」
そう言って後ろに目を向ける少女に釣られて俺も目を向けようと、何時の間に隣に座っていたのかアクアと目が合う。
「あれ?続きを待ってるんですけど、ほら、早く。」
「……別に可愛いとは言っても好きだとは言ってないぞ?お前自身も分かってるだろ、やらかしてばっかのお前は今はもう一時の好きって気持ちから前のペットを見るかの様な気持ちになってる、好きで居続けるってのは難しいんだ、分かるか?」
「随分とペラペラと喋るわね。」
余裕マシマシの顔で頬を付きニヤニヤと俺を見つめる、コイツ…!!今この場から逃げ出そうと席を立とうと思った瞬間、俺の後頭部を掴み顔を近付けるアクア。
周りから黄色い悲鳴が聞こえてくる、コイツは何でこんなに男らしいんだろうか。
「……んっ。まぁ、私を好きで居るのは簡単でしょ?カズマさん。」
そう言って見下ろすアクアの顔はニヤニヤとしてうざい半面、何故好きになったのか理解してしまう。
互いに酒臭い口と赤い頬……お互い様だったって訳だ。
「……あの、エリス様。現世を見るのは良いですが仕事に手を付けて下さい…。」
「もう少し、もう少しだけ待って下さい…!!今先輩の良い所何です…!!」
「………。」