『ぶりっ子な世界』
「カーズマッ!!」
何処か照れた様子もなく、甘えたがりな女の子を演じるめぐみんが部屋へと部屋へと入ってくる。
何時もの強気なめぐみんは何処へやら、目を潤ませ見上げるその姿には見覚えがある……。
「……もっと猫撫で声で、それとお兄ちゃんを付けろ。」
「………かずまおにぃちゃん?」
「合格。」
かなり昔、アクセルハーツのエーリカとの一件で可愛さを求めていためぐみんを思い出す。
何故今になってその様な事をしているのかは分からないが、どうせやるならもっと本気でやって欲しいものだ。
「かぁずまっ!!」
「ぐえっ!?」
持っていた日本の漫画に目を落とすと、急に近付きこれまた猫撫で声で俺に抱き着いてくる。
本を持ち上げ座っていた俺に抱き着いてきためぐみんに顔を向けると、ムフーと言わんばかりに顔を綻ばせていた。
……これは、甘えたいのだろう。
ここ最近爆裂散歩に行く時間が取れていなかったり、そもそも俺が外に出ない事もありめぐみんと言葉を交わす時間を取れていなかった。
その事についての不満を甘える事と同時に消化しに来たのだろう。
「悪かった悪かった、ほら今から行くか?爆裂散歩。」
「……いえ、今はこのままで良いです……このままで……。」
ギュッと俺に抱き着く力が強くなったのを肌で感じる。
それに答える様に俺も本をベッドに投げ抱き返すと、ビクッと反応を示す。
更にニヤけた面をマジマジと見ていると、照れ臭いのか胸に頭をグリグリと押し付ける……まるでちょむすけみたいだな。
乱れた髪を整えつつ撫でる、そんな事を数分続けていると、顔をバッと上げ俺と視線を合わせる。
「………。」
「………何だよ。」
「分からないのですか?」
ジーと俺を見つめる……いや、分からん。
何の為に口があると思っているのか、悪態を心の中で突きつつ俺はめぐみんの願いを考える。
こう言うのは男側からしてやるものだと昔本で見た事がある、実践する機会は無いと思っていたが……今この瞬間訪れた。
「……目、閉じろよ。」
「……ッ!!」
めぐみんと恋仲になって早半年が経とうとする時期、未だ深くまで踏み込めないへたれな俺はめぐみんにリードされる事により徐々にnewカズマさんへと進化していっていた。
だがそれでも尚、俺からめぐみんへとキス……と言うのは躊躇する俺が居た。
嫌だって今まで彼女とか居なかったし?もし拒否られでもしたら、何て考えるし?……何より、行動を起こしてくれるめぐみんに文字通り甘えていたのもあるだろう。
少し前に『もっと積極的になっても良いんですよ?』と俺の部屋に夜侵入して来た時言っていたのを思い出す、あの時は結局互いに抱き合って眠るだけだった為朝方めぐみんにタコ殴りにされたのを覚えているが、めぐみん的には殴るだけでは気は済まなかったのだろう。
……何がやる時はやる男だ、過去俺が発した発言に恨みながら俺はめぐみんへと顔を近付け___
「___んっ……ほら、これで満足か?」
フッと笑い掛けると、少し照れた様子のめぐみんが口元を隠しながら顔を逸らす。
何だかんだ言ってめぐみんも俺と同じ位恥ずかしがり屋だ、カッコいいものを除いて。
「………違います。」
違った。
「え…?」
「何ですか……カズマの癖に、こう言う時は初心じゃなくなる癖に何で夜の時は……。」
ブツブツと文句を垂れながら赤い顔を必死に隠しているが、俺もたった今自信満々にした行動が間違いだと知らされて赤い顔を隠したい位だ。
「私はただ、前よりも成長した身長を見て欲しかっただけです。」
「いや分かるか。」
微々たる差だろうがそんなもの。
「なにおぅっ!?前よりも二センチも伸びたと言うのに……!!」
「いや案外分からないからな二センチって!!」
「ふんっ!!普段から私の事を見てないからです!!どーせ私の事何て、唯の爆裂魔法を使うだけの友達、バフレですよバフレ!!」
一体何処でそんな言葉を覚えて来たのか、そもそもセフレと言う言葉この世界にあるのか……疑問が浮かび上がるがそれよりもだ。
「あのなぁ…俺だってちゃんとめぐみんの事を見てるからな?」
「どーだか、どうせ其処ら辺の胸のデカい女に誑かされて……ひゃっ!?」
と、五月蝿い口を黙らせる為に再びめぐみんを抱き寄せ片手で腰を支え、片手で髪に指を通す。
本来ならこんな事酒が入らないと出来ないが、唯言われっぱなしと言うのも忍びない。
やる時はやる男カズマさん、と言うのはこう言う時に発揮するのだ。
「例えば……この髪、前と比べて随分と伸びたなぁ?手入れも毎日欠かさないらしいじゃないか、何より節約家のめぐみんが態々高いシャンプーを買っていたりするのは何でだろうな?」
「……そ、そんなの髪は女の命だからです!!べ、別にカズマの為にだとかそう言う訳では……!!」
どっちにしろ、所謂髪フェチの俺からすればどうでも良い事だが、
「そうか……なら、これはなーんだ?」
「!?な、何故それをっ!!」
俺が懐から出した物……それは、写真に収められた俺の緑のジャージを着て匂いを嗅いでいる照れ臭そうなめぐみんの写真。
まさか見られていたとは思ってもいなかったのだろう、更に高価な魔道具を使ってでも納められていたとは……まぁ、これで俺がめぐみんをちゃんと見ている事の証明になる。
「う、うぅ…!!」
更に真っ赤になった顔を隠す様にを俺の胸に埋めこれまたグリグリと………いた、痛い、さっきよりも威力が上がっている!!
甘えでは無く攻撃になったグリグリに何とか耐えつつ、落ち着くのを待つ。
と、落ち着いたのか見上げてくるめぐみん。
どうやらもう不満はないらしく、お互いに見つめ合う時間が流れる。
「……あの魔道具は何処に置いてあるのですか?」
「ん?あぁ、あれは彼処の棚の中に……。」
と、指を指した棚へと向かい魔道具を取り出すと俺とめぐみんが映る様にベッドの上へと設置。
色々とボタンを弄くると、少し急いだ様子で俺の前に立つ。
何だ、写真でも撮りたいのだろうか。
もしかしたらあの写真の仕返しだ何かする瞬間を収めるのかの知れない、一応身構えておこうと考えていると……その時は来る。
「今です!!」
「いっ!!ちょっ!?」
俺の脛を蹴り上げあまりの痛さに膝を付くと、めぐみんよりも顔が低い位置へと落ちると頬を支えまた俺に顔を近付け___カシャ。
「……フフッ。これで、カズマの情けない写真が撮れました!」
其処に映るは少し涙目な俺を上から口付けするめぐみんの図……いや、これコイツも恥ずかしくないか?
そもそも口付けの写真が恥ずかしいのではと思う反面、ニコニコと写真を持ってクルクル回るめぐみんを見れたので良いかと言う感情にもなる。
「これでカズマが何かお願いする時に写真で脅されなくて済みます、どーせ恥ずかしいお願いをする時に使うつもりだったのでしょう。」
「うっ…!!そ、それは……。」
図星であった。
確かに此処ぞと言う場面で日和らない様に少し切り札的な感じで残していたが……ここで見したのは間違いだったな。
「もし、私に何かお願いしたいのでしたら……。」
グイッと近付き、頬を両手で掴み目を合わせるめぐみん。
「その口で、直接、カズマの想いを込めて伝えて下さい。」
……こりゃ勝てないな。
ニヤリと笑いながら爆裂散歩へ行く為の準備をしに行くめぐみんを眺めつつ、もう少し男として勝てる様に鍛えようと心に決めたのだった。
「……?どうした親友に先越され彼氏自慢をうっとおしく感じつつも、憧れを捨てきれないボッチ娘よ。」
「べ、別に憧れてないからっ!?ただ、唯めぐみんが取られちゃそうでちょっと……ってだけだから……。」
「そうかそうか!!そもそも貴様には彼氏になる様な親しい男の友など要らぬからな!!フハハハハハハッ!!」