この素晴らしいヒロインズと恋愛を!   作:おふざけちゃん

24 / 29
この経験浅き女神に現実を!

 

 

 

『遊ばれている筈な世界』

 

 

 

『___やっぱり俺のヒロインはエリス様だけですッ!!』

 

 私と会う度毎回の様にそう告げる彼は今、数多居る女の子からの好意に鼻の下を伸ばしている。

 私は知っている、彼は、サトウカズマは良く嘘を付く。

 

 自分の保身の為、反射的に、理由は様々にしろ冗談が好きな人物だと言う事は重々承知しているのだ。

 だからこそ彼の生き様は面白い。

 

 こうして仕事の合間に地上を覗けば、彼がまた何か事件を起こし、起こされ、困り顔で仲間に怒っている。

 状況は悪くなるばかりだと言うのに、自分の怒りを優先して問題の解決を先送り......ほら、また一つ問題が増えた。

 

 思わず笑みが溢れてしまうのも仕方がないだろう、長く生きてきてこれ程までに見ているだけでも楽しい人間は初めてだと思っている、それ程までに彼の人生は見ていて飽きないものなのだ。

 今回はどうやって事件を解決するのだろうか、予想しながら私は手元にある仕事に手を付ける。

 

「___すいませんエリス様、この前の事何ですけど...。」

 

「...どうされました?」

 

 直属の後輩である天使が私の仕事場へと足を踏み入れた途端、何やら愉快そうな表情でその場に立ち止まる。

 

「いえ、最近のエリス様は随分と楽しそうなので...其方の少年のお陰かと。」

 

 ニマニマと地上を映し出している水晶に目を向け、彼女はそう告げる。

 ...やはり、態度に出ているのだろう。

 

「えぇそうですね...自分でも自覚している程ですから。」

 

「フフッ、それは良かったです...では、改めて......」

 

 そう言って手元の資料を私に見せながら問題点の説明を行う、その間にも彼の声は聞こえ真剣な場だと言うのに思わず笑みが抑えきれない。

 それもこれも、全ては彼のせいだ。

 

 自分で言っていて理不尽だと分かってはいるが、見ずにはいられないと言うのに、見ると下手をすれば仕事に支障が出てしまう。

 私は彼にハマってしまっているのだ。

 

「......とまぁ、こんな感じですね。...にしても、本当にエリス様は彼の事を気に入っているのですね。」

 

「すみません仕事中だと言うのに...。」

 

「いえいえ!寧ろ楽しそうなエリス様を見られて、此方としてもホッとしていますから...毎日の様に仕事に明け暮れるエリス様より...。」

 

 どうやら、後輩達に随分と心配を掛けてしまっていたみたいだ。

 と言うのも後輩が言う様に、以前の私は本当に仕事しかしていなかったと自覚している。

 

 時々の休みは基本的に義賊、偶にダクネスと遊びに行ってはいたが...あまり、心身的な休みは取っていなかった。

 ひとえに女神であるが故だろうとも思っている。

 

 食事も、睡眠も、取らずとも生きているが故必要としていなかったのだ。

 ...だがどうだろう、最近の私は。

 

 欲を、渇きを、覚えてしまったのだ。

 今まで経験していなかった、興味が無かったものを...彼が教えてくれたのだ。

 

 そこで初めて私は...女神から、エリスへと変われたのだろう。

 

「...正直な所、彼に特別な思いを寄せている事は自覚しています。」

 

「えっ!!そ、そそそれって...そう言う事ですか...!!」

 

 何やら興奮した様な様子で私に顔を近付ける天使。

 そう言う事...なのだろう。

 

 口には出さず、ゆっくりと頷く。

 天使は思わずと言ったばかりに口を両手で覆い後退り...どれだけ意外だったのだろうか。

 

「...一先ず、おめでとう御座いますエリス様。やっと、やっと仕事から解放されてのですね...ッ!!」

 

「......まぁ確かに酷かったとは思っていますが、何やらオーバーリアクション気味ではありませんか?」

 

「オーバーリアクションにも何ますよッ!!そ、それで彼とは何処まで...?」

 

 何処まで、難しい質問だ。

 ただでさえ接点の少ない彼と私を唯一繋ぎ止めてくれるもの、それは所謂死。

 

 その様な場面からどうやって恋愛的感情に繋げれば良いと言うのか...と、ぼやきたいのは私だけじゃないと願いたい。

 

「進展と言う進展はありませんよ。彼が冗談で、私が彼の中でのメインヒロインだー!!...とか、俺と結婚してくれー!!...だとか、どれも冗談の域を出ない対話しかありませんね。」

 

「冗談で言いますかねそんな事ッ!?」

 

「言いますよ彼なら...はぁ。」

 

 別に分かりきってはいた事なのだ。

 それを今更、人の言葉によって改めて考え整理された結果導き出される答えに私が満足しないだけに過ぎないだけであって...どうしようも無いと言うのが本音だ。

 

 頬を付き地上を眺めながら溜め息を付くと、何やら仲間の一人と良い雰囲気になっていた。

 これも日常茶飯事、と言うより最近は良くある事なのだ。

 

 皆彼の良さに気付き始めた、もしくは知っていた者、私の様な者達が彼がモテる事に焦り始め行動を始めた結果なのだろう。

 思わず頭を抱えてしまいたくなる思いに駆られながらも、慣れた様に地上を映している水晶を操作する。

 

「今、何をされたんですか?」

 

「え?あぁ、彼の居る部屋にアクア先輩を押し掛ける為に思念を送りました。」

 

「.........???」

 

 彼の居る部屋では良い雰囲気であった女の子との間に割って入る様に、タイミング良くアクア先輩が扉をノックし始める。

 この後アクア先輩が入ろうが入らまいが、同じ様な雰囲気になる事は決して無い...ほら、気まずそうに女の子が部屋を去って行く。

 

 一人部屋に残された彼は今、布団にうつ伏せになり...思いっきり息を吸う。

 

『___んでだよぉぉぉぉッ!!エリス様ぁぁぁぁ!!』

 

 こうして何か間の悪い事がある度に、彼は私の名を呼んでくれる...それが非常に愛おしくで仕方が無い。

 

「フフッ、見てますよー...何て、柄じゃないですかね?」

 

「......。」

 

「あの、大丈夫ですか?」

 

 私を驚愕した目で立ち止まり見つめていた天使に声を掛けると、ハッと意識を取り戻す。

 

「あ、えっと...エ、エリス様は彼の言動が冗談だと思ってるんですよね?」

 

「?えぇ、まぁ。」

 

 何を当たり前の事を聞いてくるのだろう、もしかして疲れているのだろうか。

 

「...では、何故今彼の邪魔を?」

 

「何故...彼が先程の様に私を名前を呼んでくれるのが、嬉しいからですかね。」

 

「...そっか、うん...そうだよな.....エリス様って、そういやそうか...うん。」

 

 何やら歯切れの悪そうにブツブツと俯きながら何かを考えていると、吹っ切った様に顔を上げる天使。

 

「まぁ、頑張ってください!!エリス様に言う事になるとは思いませんでしたが、我が儘も程々にして下さいね!!では!!」

 

 元気良くそう言って私の仕事場を去る天使の背中を見つめながら、私は考える...我が儘とは何だろうか。

 アクア先輩に言った事でも無いのだろう、やはり彼女は前の私の様に仕事しすぎで疲れていたのだろう...休暇申請を上に送って置かなければ。

 

 と、私は水晶から彼以外の声が聞こえてきている事に気付く。

 どうやら共通の友人の友人らしい、初対面ではあるが話は聞いている為是非握手させてくれ...と。

 

 彼が人気者である事は非常に嬉しいのだ、死んだ人々も最近ではポツリポツリと彼の事を話す人間も増えてきている。

 そんな事を思い出し思わず笑みを思い出しながら...私はその子の声のボリュームを消し去った。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。