『正太郎コンプレックスな世界』
『___ちょっとアレは私の好みじゃないわね。向こうの、サイズの合わない大きめの、ブカブカな鎧着たクルセイダーの少年が___』
何時だったか、アクアがそんな事を言っていたのを思い出した。
アレは確かこの世界に来てまだ間もない頃、何の話でその発言が出たのかを確かな記憶として覚えている訳では無いが...多分、相当碌でも無い事を話していた時に出た言葉だろう。
当時アクアと言う存在をまだ良く知らない身としては、ヘッタクソなお色気で、ビッチ擬きで、未経験だと言い当てればその場で処女処女喚き散らす...うん、本当に碌でも無いな。
そんな時に放ったそんな話、何故今になって思い出したのか、何故覚えているのか、こんな言葉ばかりを覚えマトモに勉強をしなかった自分を恨んでしまう。
何時もよりもかなり低い目線をどうにかしようと稼働範囲内で首を上げ、目の前に立つ碌でも無い奴へと見上げる。
アワアワと手で口を多い俺よりもパニックになっている青い髪を靡かす女は、ゴクリと生唾を飲み込み喉を鳴らすと此方へと指を指し___
「___カ、カカ...カズマさん...!?」
「...何だよ。」
聞き慣れた俺の声とは正反対、かつて幼少期を共にした甲高い声を再び聞く事になろうとは夢にも思っていなかった。
それもこれも、目の前で狼狽える駄女神が手に持つ瓶に目をやり...思わず頭を抱えてしまう。
ウィズが譲ってくれたからと、何が起こるか分からないパーティーグッズだと、バニルさんが危険性は無いと、そう説明され帰ってすぐ試したくなってしまったらしい。
ゆんゆんと爆裂散歩に行きこの場に居ないめぐみんと、領収代行で又この場に居ないダクネス、そして相も変わらず暇を持て余した俺。
コイツは迷いなく俺の部屋へと駆け上りやがった。
パーティーグッズとやらを服の上から掛けられた俺は、ダボダボでビショビショになった服を見下ろしながら溜め息を吐く。
あぁ、洗濯が面倒くさい。
何故掛けるタイプなのか、飲むタイプでは駄目だったのだろうか。
そう怨みがましくウィズにどう仕返ししてやろうか考えていると...ふと、アクアがその場でモジモジと佇んでいる事に気付く。
何処か照れ臭そうに俺をチラチラと見てはソッポを向く...コイツ、まさかショタであれば誰でも良いのか...?
「お前...正気か?」
「...カズマさん、何を勘違いしてるのかしら?」
...。
「もしかしてカズマさんったら、私がカズマさんの霰もない姿を見て欲情してるとでも思ったのかしら?プークスクスっ!!すっごく今更何ですけどー!!大体、アンタは人の事言える程正気じゃないじゃない、だから童貞なのよアンタは!!」
「...おいアクア、其方に俺は居ないぞ。俺に何か言いたいならこっちに向いて喋ってみろ。」
「...。」
饒舌に、捲し立てる様に、ギリギリ聞き取れる程度の早口でアクアは背を向ける。
まぁ俺は正気だし小さな女の子は生物として、キュート的な愛らしい的な意味で好きであって正気ではあるのだがそれは置いといて、目の前の正気じゃない奴がまずは先決だ。
と、観念したのかクルリと此方に振り返り...何処か顔を赤く染めたアクアと目が合う。
チラチラと目線を避けつつクルクルと髪を弄るその姿、コイツ本気でどうしようも無いな。
だが...どうしようも無いからこそ、俺は一つ良い事を思い付く。
何時も迷惑かけられてばかりで、今回も又相変わらず俺が被害を被った訳なのだが...仕返しの一つや二つ、しても罰は当たらないだろう。
何時もより小さな歩幅に若干の違和感を覚えつつも、目線が外れたタイミングで俺は前へと歩み出す。
ズルズルと汚れた服とズボンを引き摺りながら、出来るだけ布面積が当たる様にそっと...アクアの脚へと抱き付いてやる。
「ッ!?!!??!?カカカカカカズマさんッ!?あ、あのよ、汚れるから離して欲しいんですけど...!!」
何時もなら直様蹴り飛ばしているであろうアクアがゆんゆん並の動揺...見ていて非常に愉快である。
俺としてもペットと同格の女の脚を態々触りに行くも言うのも若干不愉快ではあるが、それ以上にアクアの普段とは全く違った動揺の姿に面白みを出してしまう。
...まぁ、動揺している姿に種類を見出してしまう時点で日々のコイツの態度に涙を流さざるを得ないのだが。
今はただ、この姿を利用させて貰うとしよう。
何とか俺を引き剥がそうと必死に肩を揺さぶるアクア、普段なら髪でも掴んで殴っているだろうが...やはり、コイツはショタには甘っちょろいのだ。
「まぁそう硬い事言うなって...俺達の仲じゃないか、な?」
「いやー!!辞めて!!その姿でカズマさん見たいな事言わないで頂戴ッ!!!」
正真正銘カズマさんなのだが...まぁ、かなり効いているに違いない。
「ほら、正直になれって...お前は自分よりも一回りも二回りも違う小さな男の子に欲情する、どうしようも無い駄女神だろ?」
「ッ!!そ、そんな事...っ!」
「何時ものお前は何処行ったよ、なぁ!!早く蹴り飛ばせよ!殴り飛ばせよ!!『ゴットブロー』してみろよぉッ!?」
ついでに脚の感触を楽しみつつどんどん壁へと押しやって行くと、ヘタリのその場で腰を抜かす。
はぁはぁと息を切らし震えるアクアが顔を上げると、俺と目が合う。
「やっと目が合ったな、変態。」
「っ...!!」
何か反論しようと口をパクパクとアホ面...しかし、言葉が出てくる事は無かった。
「...ぐすっ...。」
「あ?」
「っ...えぐ...。」
コイツ...マジ泣きしやがった。
何時もの馬鹿見たいな喚き声では無く、ただただ静かに静かに涙を流す。
嫌な汗を流しながら落ち着くのを待つと、やがて涙を啜る音が減っていく。
「...ま、まぁほら落ち着けよアクア、何で急に泣き出したのか分かんねぇけど...ほら、な?」
「...。」
俯きガチなアクアの顔をハンカチーフで拭いてやる。
俺としてはショタコンであろうアクアをに少し嫌がらせ出来たら良いなぁ...程度に思っていたのだが、どうやらアクアのナニかに触れたらしい。
正直検討も付かなくて困った所では無いのだが...落ち着いた本人の言葉を待つしか無いだろう。
「...認めるわ、私は正真正銘のショタコンよ...。」
「...お、おう、そうか。」
「カズマさんの姿も...正直、認めたく無いし癪に触るけれど私好みでもあるわ...。」
ポツポツの自分の性癖を開示していくこの状況、どんな特殊プレイだとダクネスが喜んで飛び付いて来るだろう。
自分から仕掛けておいて何だが、あまりにもアクアの尊厳が無さすぎてこのまま話を聞きたくないのが本音である。
今すぐにでも耳を塞いでこの場を去りたいが...もしそんな事をすれば本気でアクアが立ち直れなくなりかねない。
「そんなカズマさんに罵倒された時に、私気付いたの...心の中ではちょっと喜んでる自分が居るって。」
「...つまり?」
「私は変態よ。」
そう覚悟が決まった顔で告げるアクアが、其処に居た。
「お、おいアクア...。」
「やめてカズマさん!!私はカズマさんに慰められる程弱く無いわ...そして、弱い自分を認められない程弱くも無い!」
こ、こいつ...!!自分が何を言っているのか分かっているのだろうか...!?
俺の目の前で変態宣言を終え、凛々しい顔で天井を見上げる。
...不味い、変な方向にスイッチが入った様だ。
このままではこのアクアの思考が唯でさえまともじゃ無いアクシズ教徒に渡った挙げ句、開き直った正真正銘の変態共が世に放たれる事になってしまう。
いや、それは今更ではあるが。
だがしかしコイツは腐っても女神、このまま世に放てばエリス様に苦情の一つでも言われてしまうかも知れない。
コイツが一人で苦しむ分にはどうでも良いが、コイツが好きにする事によって少しでもエリス様に迷惑葬るのであれば...俺は、此処でコイツを止めなければいけない。
深く息を吐くと、俺は覚悟を決めアクアへと見上げる。
「アクア...聞いてくれ。」
「?何よ改まって、慰めならいらないわよ。」
「俺も...俺も、変態何だ。」
落雷が落ちたかの様に、アクアはその場で動きを止める。
まるで信じられないと計りに、信じたく無いと計りに...目を見開き俺をその青い目で見つめる。
「俺も、小さい女の子が好き何だ...特に、アイリスの様な年頃の娘が。」
「...そ、それは私だってそうよ!?私だってアイリスちゃんの事は可愛らしいと思うわ、それに、めぐみんだって...!!」
「Love何だよッ!!!」
その声の大きさは、まるでダクネスの結婚式当日にめぐみんに問い詰められた時の如く。
唾を飲み込み言葉を続けれないアクアの目を、しっかりと見つめながら俺は口を開く。
「お前が...あの時、あの少年に欲情した様に、俺のこの姿に欲情した様に...俺も、アイリスに、めぐみんに...欲情してるんだ...っ!!」
「っ...!!!」
「俺は、お前を笑えない...お前の気持ちを分かってやれる、だから自分を変態だなんてよせ、俺達の...仲、だろ...?」
折角吹っ切れて、拭いて取り戻していた綺麗な顔を涙で汚し、その場で俺の言葉を聞き立ち尽くす。
「俺達は、普通何だアクア...だから、自分の事を変態だ何て言うのはやめろ...お前は、痛みで喜ぶのか...?」
「...っ!カズマさんッ!!」
「アクアッ!!」
俺達はその場で抱き付き、崩れ落ちる。
一方を大きな声で涙を流し、もう一方を唇を噛み締め頭を撫でる。
サラサラの青い髪を撫でながら、俺は俺達を変態と呼ぶこの世界を変えようと...魔王討伐を終え暇を持て余した俺は、又動く理由を得た。
今度はお互い邪険な雰囲気のままでは無く、心の底から、真の仲間として...アクアと共に、俺は___
「___早めに終わり帰ってきてみれば、あの二人は遂に頭が可笑しくなってしまったのでしょうか...?」
「フッ...仲間、か...。」
「ダクネス?待って下さい、お願いします!其方に行かないでください!!ダクネス落ち着いて下さいッ!!ダクネス!?ダクネスゥゥゥゥゥゥゥッ!!!」