この素晴らしいヒロインズと恋愛を!   作:おふざけちゃん

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ダクネスさんじゅういっさい

 

 

 

『キツい世界』

 

 

 

 ちゅんちゅんと鳴く小鳥がどうかも怪しい生き物の鳴き声に目を覚まし、俺は身体を起こす。

 高級でフカフカなベットで休められた身体からは、普段運動しないせいなのかポキポキと不衛生な音を鳴らしてしまう。

 

 伸ばされた腕を脱力し、床に放り出されているスリッパへと足を入れ欠伸を一つ。

 どれだけ寝ても眠たい頭を動かしながら扉へと手を掛け、力を少し込め押し込む。

 

「___おはようございます、カズマ様。」

 

「...ん、今日の予定は?」

 

「本日もご予定は特に有りません。」

 

 知ってた。

 しかし一応領主の夫として、最低限の体裁は保たなければいけない。

 

 それは外の者に対しても、中の者に対しても。

 こうして一見意味の無さそうな会話に関しても、上下関係とかそう言うなんかこう...難しい事柄が絡んでくるのだ。

 

 ...と、ダクネスが言っていた。

 ハッキリ言って御飾りな身なのだ、俺は。

 

 本当に権力を持って仕事をこなしているのは殆どダクネスなのだ。

 それに、今更俺が体裁を保って何になると言うのだろうか。

 

 そんな事を十年以上前から考えながら毎日を過ごす、実にぐーたらで楽で幸せな生活。

 国民から貪った税金で美味い朝昼晩を食べる為、今頃ダクネスが待っているであろうだだっ広いリビングへと足を運ぶ。

 

 元居た屋敷ですら相当な広さを誇っていたと言うのに、やはり貴族と言う者はその名の通り格が違うのだろう。

 当初こそ慣れない生活に戸惑っては居たが、今からあの生活に戻るとなると...それはとても窮屈に感じてしまう。

 

 まぁ、それも又良いのだが。

 何て思い出に浸り終えた俺は相も変わらずデカい扉を押し開け、デカいテーブルの上席に腰を掛けるサラサラとした金髪を靡かした、"ツインテール"のダクネスと目が合う。

 

「___おはようカズマ。昨日は良く眠れたか?」

 

「ん、まぁボチボチかな...ん?...んー、おん。」

 

「フッ、どうした歯切れの悪そうに。さぁ朝ご飯を食べようじゃないか。」

 

 促されるままに俺は対面する様に席に座る。

 慣れた光景慣れた仕草、特段これといった変わった事など何も無い筈なのに...何だこの違和感。

 

 何時もは仕事疲れからか折角の面を顰めているダクネスが、今日はやけに機嫌の良さそうにニコニコとしてるからだろうか?

 それとも何時もは俺が起きた頃に着替え終わっていると言うのに、今日はやけに早起きして...何か楽しみな予定が入っているのだろうか?

 

 まぁ良いか。

 ピチピチと動く活きの良いサラダにとどめを刺すと、ベジファースト理論に基づいて野菜から勢い良く頬張る。

 

 実際には効果は無いらしいが、プラシーボ効果と言うやつだ。

 此方をニコニコと見つめながらやけに機嫌の良いダクネスとの食事、もう何年も一緒に居れば特に話す話題も無くなり無言のこの場。

 

 しかしそれが窮屈かと言われればそうではなく、寧ろそれが当たり前でかと言って寂しさを持つ訳でも無い、そんな日常。

 何の変哲もなく何の事件も起きない、実に平和で、心地良く、ダクネスと結婚して良かったとそう思わせる様な___

 

「___んぁ?」

 

「どうかしたのかカズマ?」

 

 ..."ツインテール"だ。

 何時ものセットするのが大変だとぼやいていた髪型では無く、ツインテール。

 

 可愛いか美しいかで言えば、美しいに分類されるダクネスが、ツインテール。

 横に垂らし長いポニーテールでは無く、左右に大きく分かれるツインテール。

 

「お前...今年で31だよな...?」

 

「...何だ藪から棒に。カズマ、お前だって後二年もすれば三十路の仲間入りではないか。」

 

「いやまぁ、うん。それはそうなんだけど...。」

 

 ...何だろう、気付いてからの違和感がとても凄い。

 本当にもう凄いとしか言い様が無いのだ、違和感しか仕事をしていない。

 

 いやだってアイツ今年で三十一...だしな。

 うん、別に可愛く無いとか似合ってないとかそう言う訳では無い。

 

 寧ろ三十代にしては少し少し若々し過ぎるって感じだしな、うん。

 当時はお姉さん的立ち位置で...いやまぁ中身はお姉さんでは無かったが。

 

 身長も高くカッコいい顔付きの印象が残っていたが、今は若妻って感じだ。

 ...うん、でも三十代なんだよなぁ...。

 

「フッ、どうしたそんなに私の顔を見つめて。惚れ直したか?」

 

「...いや?何でもねぇよ。」

 

「嘘でも惚れ直したと言っておけば良い物を...相変わらず変わらないな?お前は。」

 

 何とも愉快そうなダクネス、嫁の笑顔が絶えないのは良い事ではあるのだが...いかんせんそれ所では無い。

 

「なぁダクネス、お前ひょっとして何だが...俺が彼処に行った事に気付いた...とか?」

 

「ほう?貴様の言う彼処、とやらがどんな所か想像付かないが...まさかもう行かないと豪語していた彼処、に行ったとでも言うのか?」

 

 成る程、俺が久々に行ったサキュバス店でロリ系の夢を見せてもらった事に勘付いた、と言う訳では無いらしい。

 無駄に墓穴を掘ってはしまったが仕方が無い、別に悪い事はしてないのだ...うん。

 

「じゃ、じゃあ最近大人になってきたアイリスの昔の写真を見つけた...とか?」

 

「成る程最近ニヤニヤと何を眺めているのかと思えば...おい!私達の部屋のタンスを隅々まで調べろあげろ!!見つけたら即燃やせ!!」

 

「ハッ!!」

 

 部屋の外で待機している執事やメイドにそう指示を出すダクネス。

 ふむ、これも違ったらしい。

 

 クレアとのアイリス写真交換会の成果がこの一瞬でパァになってしまったのは置いといて、こうなると更に分からなくなってきてしまう。

 コイツは一体何に影響されてんだ...?

 

「...最近良く甘えてくるシルフィーナちゃんに嫉妬した、とか?」

 

「さっきから貴様は何なのだッ!?サキュバス店の事だったりアイリス様の事だったり...!!貴様は私を何だと思っている!!」

 

「三十路になってもツインテールする痛い女。」

 

 あ。

 言っちゃった。

 

 色々と俺に探られる様な感覚で良い加減我慢の限界が来ていたのであろう。

 激昂し立ち上がったダクネスが俺の言葉に動きを止めると、ワナワナと震える様に腰を下ろす。

 

 太く結ばれた二本の内片方をギュッと握ると、涙目で赤い顔を震わせながら口をモゴモゴと動かし始めた。

 

「こ、コレは...!そ、その...!!ち、違うのだ!!私は似合ってないと思っていたしそう言われると分かっていたんだ!!た、たた、ただメイドが似合うからと!!そうメイドがッ!!た、偶には別の髪型もどうかと提案してくるから!!し、仕方なくだ!仕方なく!!...そ、その...ッ!!」

 

「...。」

 

「...クッ!こ、殺せ!!殺してくれぇッ!!!」

 

 随分と早口でワタワタ喋り終えると、本当にその歳にそぐわない大の字で地べたへと転がり泣き叫ぶ。

 ...その動きの方が痛い気がするが、言わぬが吉か。

 

 と、いつの間に居たのかその原因と見られるメイドがニコニコと俺の後ろに立ち耳打ちしてくる。

 

「...奥様、カズマ様に最近可愛いと言われない、と落ち込んで入れらたんですよ?」

 

「...でもよ、今更言うのって恥ずかしくねぇか...?」

 

「では奥様は可愛らしく無いと?」

 

 そう真剣に告げるメイドから顔を逸らすと、恥ずかしそうに大の字のまま顔を隠すダクネスへと目を移る。

 ...はぁ。

 

 まぁ、これは俺も悪いのだろう。

 初心な中学生じゃ無いのだ、今更恥ずかしがってどうするって話ではある。

 

 何て自責の念に駆られる気持ちを抑え、寝転んだままのダクネスの背中を支え持ち上げる。

 何の抵抗もせずそのまま体育座りへと身体を動かすと、ブスッと泣き腫らした目を伏せる。

 

「悪かった、悪かったなダクネス。確かに小っ恥ずかしいからって言わない理由にはならねぇよな。」

 

「...フンっ、他者に唆されて言わされるその言葉に貴様の気持ち等籠っているか...。」

 

「はいはいそうですねララティーナお嬢様。今日も可愛らしいですよ、赤く膨らました頬に腫れた目、痛いツインテ___ブッ!?」

 

 ゴンッ!!ととても良い音と共に後ろ頭を打ち付けてくる。

 俺じゃなきゃ気絶していただろう。

 

 腫れた鼻を気にせず俺は結ばれたゴムを二つシュルシュルと解くと、そのまま一本のポニーテールの制作に取り掛かる。

 

「確かにツインテールも可愛いとは思うぜ?俺だけじゃなくあのメイドだってそう思ってるだろうしな...でもな。」

 

 十数年、毎日の様に目に入れていたあの髪型を再現する為手を動かす。

 初めてやると言うのに、それはまるで慣れているかの様な手付きで、時間の美しさを考えられるそんな___

 

「___お前は、何時ものこっちの髪型の方嫌まて何だコレ。あれぇ?何でグチャグチャなんだ?」

 

 綺麗に手入れされている髪をドブに捨てる様な出来栄え、何が時間だ技術が足りない。

 困った様に首を傾げながらその出来栄えに不満を漏らしていると、クックックと笑いを込み上げるダクネス。

 

「そうか!お前はそっちの方が好みか!!そうか、それはどうにも私の腕では再現が難しそうだ。」

 

「ケッ!さっきまで良い歳して泣いてた癖して!!そうだよこっちの方が好みだよ!悪いか!!」

 

「いや?そんな事は無い、随分と嬉しい事を言ってくれるなと思っただけだ!」

 

 完全復活と言った所か、顔を上げ先程の様に嬉しそうにニコニコと俺を見つめる...いつもとは少し違ったダクネス。

 

「カズマ、明日からお前が私の髪のセットを行え。良いな?」

 

「はぁ?お前こんな頭で仕事すんのかよ。」

 

「あぁ、お前が好みだと言うのなら...私は常に、お前に好かれていたいからな!!」

 

 ...随分と減らず口なお嬢様だ。

 ちょっと褒めただけでここまで上機嫌になる、チョロいダクネスにほんの少しだけ不安を覚える様な覚えない様な。

 

「...なら、そのまま好きで居させてくれよな。」

 

「言われずとも、そうするつもりだ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ひっさしぶりー!!って、えぇっ!?ダ、ダクネス...今日は寝坊でもしたの...?」

 

「ん?あぁこれか...フッ、いや...コレでも大分上達はしているのだぞ?」

 

「?」

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