『おかしい世界』
「___あら?おはようカズマさん。」
「ん、おぉ...。」
「今日は随分起きるのが早いわね...何か悪い事でも起きるのかしら。」
などと馬鹿真面目に適当な事を言うアクアを無視しつつ、台所へと向かう。
乾ききったイガイガとする喉を潤そうと『クリエイト•ウォーター』で水を生成。
コップに注いでいるとゼル帝を撫でていたアクアが立ち上がり、此方へと近寄ってくる。
まるで何時もの様に、慣れた様に、俺の腰回りに手を回すと顎を肩に乗せる。
「...カズマさんカズマさん、やっぱりちょっと太ったわよね?」
「何処触ってんだ。」
人の腹を触る不届な手を払いのける。
自分で言うのも何だが良くもまぁセクハラ紛いな事をしてくるものだ、俺がやれば一発で務所にぶち込まれるだろう。
払いのけてもなを離れず今度は肩に両手を置くと、洗っているコップを覗き込み一言。
「雑ね。」
「うっせぇ。」
「フフッ。」
何が可笑しいのかクスクスと笑うと手を離しゼル帝の方へと戻って行く。
何やら此方をチラチラ見ながらゼル帝に喋りかけている様だが、知れた事だろう。
何時もよりほんの少し丁寧に洗い終えると、アクアの髪に付いていたゴミを取り座る。
...相変わらずサラサラとした髪だ、手入れの手の字もしてないだろうに。
「あ、ちょっとそこら辺に投げないでちょうだい。」
「良いんだよ細かい事は...それより、ゼル帝は何て言ってたんだ?」
「腰回りに手を回すカズマさんはいやらしい、って言ってるわよ。」
どの口が言っているのやら。
今度は俺がアクアの肩に顎を乗せると、そのまま此方をアホ面で見上げるゼル帝をと目が合う。
相変わらず美味そうなその風貌、名前と魔力迫力だけは立派なチキンもすくすくと育ったものだ。
俺はそのまま目を閉じ二度寝をしようと顔をうずくめると...
「...です。」
何も変わらない日々の一幕、今日もアクアと、皆とこの屋敷でのんびり過ごす日。
「......るいです...!」
...コイツやっぱ良い匂いだな。
「気持ち悪いですぅぅぅぅぅぅッ!?!!?!??」
「お、おおお落ち着けめぐみん杖を!杖をおろせぇぇぇぇぇッ!!!」
「___なーにが『雑ね』『うっせぇ』『フフッ』ですか!!同棲初めて数日のカップルですかッ!!えぇッ!?」
「しかも何食わぬ顔でアクアはカズマに抱きついて...何も不思議に思わないのか...?」
心底理解不能と言った感じでひたすら困惑するダクネスと、激昂するめぐみん。
この状況の何が可笑しいのか、俺も理解不能だ。
「そもそも!二人とも落ち着き過ぎです!!何時もの二人なら最初の会話でそれはもう大喧嘩が始まる筈ですッ!!」
「...二人とも落ち着いて、私もカズマさんも、いつも通りで何もおかしくないっ!?...ちょっとカズマさん。もう少し丁寧にしてくれないかしら?」
「ん、わりぃ。」
アクアが弁解している間に、暇を持て余した俺はアクアの髪に指を通して遊んでいた。
何やら引っかかった様でジト目で此方に振り返られてしまったが。
「〜〜〜〜...ッ!!!あああああもう!!頭がおかしくなりそうですッ!!ヤりましたかッ!?昨日!!夜遅く!!私が寝るこの屋敷で!!セックスしたんですかセックスッ!!!」
「お、おいめぐみん本当に落ち着け...!!こんな真っ昼間からその...せ、性交渉など等...!!!」
「ですがダクネス見ましたか今の!?あの男何の脈略も無く女性の髪を触りましたよ!!それも構ってちゃんの如くッ!!あんなのセックスしたカップル以外やりませんよッ!?」
...コイツは真っ昼間から何を盛っているのだろうか。
ただでさえ頭の可笑しいパーティーだと揶揄されていると言うのに、このままだと本当にただの頭の可笑しい集団に見られかねない。
そんな信じたくない現実に目を背けるため、本来の目的であった二度目の就寝へと...
「それそれそれそれそれですッ!!!なんっっっっでアクアも何も言わないのですかッ!?今カズマが、アクアに後ろから抱きついて、あまつさえ二度寝しようとしているのですよッ!?それも肩に頭を乗せて!!」
「ちょっとめぐみんあまり大きな声で喋るとカズマさんが可哀想じゃない。それに、ゼル帝も驚いてどっか行っちゃったじゃない。」
「...な、何故アクアはその状況を受け入れているのだ...?」
借りている右腕が少し動くと、俺の頭に手を置きゆっくりと撫で始める。
空いた左手は腰に回していた俺の左手に重ねる様に覆い被さると、指の間にアクアの指を絡めてくる。
「何でそんなにカズマに優しいんですかッ!?行動と良い言動と良い、あ!何ちょっと嬉しそうな顔してるんですか!!何時もは当たり強いのに急に優しくなるのはそれはもう百パーセントセックスしている証拠ですよッ!!!」
「アクア、カズマ、良い加減認めてくれ...私達は二人がそう言う関係なのであれば心から祝福してやろう...だから、もうこれ以上めぐみんの口からこんな言葉を聞かせないでくれ...。」
「そうは言われても...私とカズマさんはそんな関係じゃないわよ、それに本当にめぐみんの言う通りだとすれば...私はもう水の女神じゃなくなるじゃない。」
ポンポンと頭を撫でながら、そう優しい声で、悲しい声で告げるアクア。
随分としんみりと静かな雰囲気...これは寝れる。
やがて二人とも落ち着いたのか、先程までの怒号とは打って変わって静かな朝方の落ち着いた屋敷へと元通り。
これで近隣住民からのクレームも止むだろう。
「...しかし、だとすれば何故二人はこうも仲が良い...と、言えば良いのか。」
「私からすれば二人はもう同棲しているカップルにしか見えませんよ。」
「まぁ、色々あるのよ...ね?カズマさん。」
うとうとともう完全に寝る一歩手前と言った意識の中、俺は振り絞る様に右手を上げるとアクアの顎に触れる。
そのまま俺もアクアの顔へと近付くと......
「やっっっっっっぱりヤってるではありませんかぁぁぁぁぁぁッ!!!」
「やめろぉッ!!めぐみぃぃぃぃんッ!!!」
『___エクスッッッッッッップロォォォォォォォォォォジョンッ!!!!!』
...爆発落ち何てサイテー、何とも酷い夢を見たものだ。
寝起きは最悪も最悪、俺とアクアが?ないない何だあの甘酸っぱさ。
ホワイトチョコに佐藤を500g入れた位の甘さで吐き気がする。
夢の中のめぐみんとダクネスに同意見だ。
あんな雰囲気は同棲二日目の事後の朝だとしか説明がつかないだろう、良くもまぁ否定出来たものだ。
そんな夢見心地の悪いままもっと良い夢を見ようと寝返りをうつと、コツンと何かと当たる。
閉じていた目を開けると呆れた目でグシャグシャの青髪をベッドに横たわらせたアクアと目が合う。
と、その束の間腹部に強烈な痛みが走ると俺はベッドから蹴り落とされてしまう。
「ッッッッ!?!!??!」
「起きたんなら早く降りなさいよ、全く。」
「てめこのやろ...ッ!!!」
布団から追い出され急激な体温の変化と痛みでもがく俺を見下ろしながら、俺をクスクスと笑うアクア。
こんな奴とどうやって、真っ昼間からあんな雰囲気を醸し出せると言うのか。
夢は所詮夢、だと言う事だろう。