MTG版TCGホビーアニメ(システムに欠陥あり) 作:名無しのプレインズウォーカー
OCGストラ◯チャーズを漫画として面白いと思っている人間だけが石を投げなさい。
死んで生まれたらMTG塗れの世界だった。これMTGの販促アニメ系世界?
そう思って『パワー9*1』を中心に目当てのカード類を探したが、前世のヴィンテージでの制限カードの多くは、この世界では(でも?)伝説のカード扱いのようで、入手は出来なかった。幸い前世で集めていたカードは気が付いたら手元にそろっていたので、近場では負け知らずになっていた。
ただ、ここはホビーアニメの世界、噂ではMTGで世界征服しようとする輩がいるらしい。確かにボーラス様やエルドラージの3柱等、例えカードの精霊だろうが、いたら世界征服位余裕で行けそうなカードは結構ある。
結論からいれば、自分はそういったことに関わらないようカードと距離を置くことにした。理由はMTGがホビーアニメ向けのゲーム構造をしていないのである。
どういう意味? と疑問に思う人もいるだろう。そもそも何故、世界最古のTCGを題材としたホビーアニメがほとんどないのか。最大の原因はアメリカにカズキング*2が生まれなかったことだろうが、元々MTGがプロレス向けじゃないのだ。
何故か。それはマリガンの有無と遊○王やデュエ○マスターズに『力線*3』シリーズが存在しないのが答えである。
マリガン*4があるということは、そもそもマリガンをしないとゲームにならないことが多いということ。そしてゲーム開始前に発動できるカードがあるということは、そうでもしないと妨害できないカードがあるということである。ぶっちゃけクソクソ言われる他のゲームの環境より、MTGの暗黒期の方が不快度指数が高かったりする。変にバランスが取れている分余計に。
メインに『虚空の力線*5』と『外科的摘出*6』が各四枚積みだった環境があったり、『オーコ*7』使う勢と『オーコ』使いたくなかった勢の世界大会があったり、0マナで手札が増えたり*8と酷い時代があったのである。
荒れていない環境でも、いわゆる真っ当なデッキを握っている状態で『ドレッジ*9』相手に墓地対策抜きは九割がた敗北を覚悟する。
それでも墓地対策は比較的メインから積めるが、『原始のタイタン*10』に代表される土地系コンボは妨害手段が少なすぎて絶対に間に合わないし、『親和』や『感染』*11もメイン戦は絶望的だ。マッチ戦前提でバランスを取っているのだ。
こんなんでメイン戦のみの販促アニメなんてやってみろ、毎度新コンボで相手をひき殺す塩試合がほとんどになる。嫌でしょそんな主人公? ギャグや一発ネタならともかく、真っ当な販促アニメで。でもフェアデッキ握るには、対策が必要なデッキが多すぎて、全部つぎ込んだら『バベル*12』を組むレベルになる。
『スタンダード』に焦点を当てればいいって? 子供が「君の好きなカードは2、3年で使えなくなるよ」と言われて買うだろうか? いくら面白くても私なら買わない。ローテーションのあるポ○カも遊○王と同じだ。結局偉大な原作ありきだ。
一応『フォーマット*13』の概念はあるようだが、基本的対戦環境はカジュアルレガシーみたいな感じだ。『スタンダード』、あとぎりぎり『パイオニア』は表の大会基準で、裏のアレな感じのゴニョゴニョは大体『モダン』以下である。
「オレは四天王の中でも最弱!」が割りとストレートな意味なのがヤバい。『パイオニア』レベルのカードプールで『モダン』のフェアデッキに奇跡的に勝てたところで、次出てくるのが『レガシー』の『ANT*14』辺りだったら目もあてられない。
そんな無茶苦茶な世界で、前世で縁のあったカード達を大事にしつつも、流石に関わったらロクなことがないので、小学校に入ってからは平凡な人間として慎ましやかに生きてきた。別に弱いものイジメの趣味はないし。
それなのに。
「いい加減覚悟決めろよ! アンタ多分オレより年上だろ?」
「イヤだー! シニタクナーイ! シニタクナーイ!」
明らかに主人公な中学生と、明らかに悪の組織の幹部的な人との戦いに巻き込まれてしまった。こちとら転生したらTSしてたから、必死こいて女らしい所作とか服装とか覚えて、カーストは下の方だけど普通の女子高生生活を送ってたのに!
「ふええぇぇぇ……」
「……別にやる気がないのなら、そこで自らの運命を眺めているが良い。此奴が負ければ連れて行くだけだ」
「クソッ! ならオレ一人でやってやる!」
「それはもっとイヤ」
「えっ?」
「何?」
だって1対1より2体1の方が生き残れる率高そうじゃん。ルールにもよるけど。
「理由を聞かせて貰って良いか? 娘よ」
黒フードさんがなんか聞いてきた。困った。2対1の方が勝算が高そうなんて言ったら、変なハンデを付けるかもしれない。こうなったら適当な事を言うしかない。
「賽の目は変えられないけど、サイコロくらいは振らせて」
「……成程。ならば存分に賽を振れ。私が覚えていられる様に、な」
よく分からないが、声色に哀れみが含まれている気がする。もしや正解を引けた?
「先攻はくれてやろう。精々足搔け」
「ハッ! あとで後悔したって知らねえからな!」
「うぅ……。でも手札14枚スタートとかライフ2倍でもないし、何とかなるかなぁ……」
最悪は手札14枚スタートのコンボデッキによるマスカン連打だったから、まだワンチャンありそうだ。先攻ももらえたし何も出来ずに負けることは無い。
「ではマリガンチェックだ」
「オレは大丈夫だ」
「私は……」
初手は完全な受けハンド。先攻を取ったにしては少々物足りない。ただこの子が動ける手札ならサポートに徹するという立ち回りもありだろう。下環境用デッキは長く1人回ししかしていなかったから、ゲーム勘は不安だが。
(すいません。1ターン目に動くカードはありますか?)
(……まぁ、ある。土地が詰まるとちょい不安だが)
(マナクリーチャー*15採用してますか? 仮に守れたら2ターン目から攻め込めます?)
(アンタコントロール使いなのか? 1ターン目の除去を弾いてくれるなら大分動きやすいけど)
(分かりました)
「マリガンチェック問題ありません」
「こちらもマリガンなし*16だ」
「はい。じゃあよろしくお願いします」
「はぁ?」
「……」
マズい。癖であいさつしてしまった。隣の子には変な人間を見る目で見られているし、黒フードは明らかに困惑している。
「あいさつは大事だから……」
「いや、そういう問題じゃ……まぁいっか」
「なんか、ごめん。あれ?」
何となく首筋に視線を感じた。振り返っても誰もいない。
「どうした?」
「何でもないです。とりあえず先に動いてくださるとありがたいのですが……」
緊張で神経が過敏になっているのかもしれない。よくよく考えれば今世で初めての本気の対人戦だ。大きなプレッシャーとほんの僅かな期待が混ざり合って、胸が高鳴って、足がふわふわしている。
「じゃあ俺からだ。『踏み鳴らされる地*17』をショックインして緑1マナから『ラノワールのエルフ*18』を唱える」
グルールカラーのビートダウンデッキかな。『スタンダード』で『ラノエル』が基本セットに収録される日がくるとは思ってなかった。
そして初動は悪くないと思われる。最近の『スタンダード』の中高マナ域のクリーチャーは軒並み優秀だ。一度定着してしまえば、下環境のデッキ程対処に困ることが多い。
何より今の手札とのかみ合わせがいい。
「私は『島*19』をおいてターンエンド」
「では私の番だ。『溢れかえる岸辺*20』をおいてターン終了」
「『フェッチランド』……、結構メンドそうだな……」
あー『フェッチランド』高いよね。ショーケースに飾られてるのを見たことあるけど、0の数が2つくらい違うもん。君の『ショックランド』も買おうとすると万いくけど。
「じゃあこっちのターンだな。ド……」
「待て。そちらのアップキープステップに『岸辺』を起動。1点ライフを支払い、『Tundra*21』 を持ってくる。白1マナから『剣を鍬に*22』。其方の『ラノワールのエルフ』を追放」
「『デュアルランド』……ッ!」
「スタック。青1マナ『呪文貫き*23』、対応ありますか?」
「対応は無い。2マナは払えず『剣を鍬に』は打ち消される」
「サンキュー。青使いが味方なのは頼もしいな」
「攻め手はお願いします……。使わされたかな。これ」
独り言は隣に聞こえていないようだ。このままターンを終えると青ダブル要求の『対抗呪文』がほぼ唱えられないので、次ターン防御が若干脆くなる。が、余計なことを考えて変に日和られても困るから黙っておこう。ドローは土地、コントロールデッキなので、土地はある程度伸びてほしいから悪くない。
万が一彼のデッキが『グルールムーン』だと話が変わってくる。土地だけでも先に置こう。
「ごめんなさい。土地だけ先に置いてもいいでしょうか?」
「いいけど。なんでだ?」
フードの男に聞こえないように囁く。
(私のマナベースに影響するカードは入ってますか?)
(マナベース? 土地に影響があるカードは入ってねえけど?)
(分かりました。ただ何か動かれても多少裁けるよう置きますね)
(『呪文貫き』2枚目か? 随分変なデッキしてんな)
……似たようなものか。
「『溢れかえる岸辺』を置きます」
「! アンタも持ってんのかよ」
「ほう……。選ばれる理由は十分か」
たかが『フェッチランド』なんだけどなぁ。この世界だと幻のレアカードというものが存在する。が、それは絶対数の少なさもあるが、ほぼ流出が起きないことが主な原因だろう。割りと稀によくある光景じゃないかな。
万が一『もみ消し*24』受けると最悪だから、今起動しておこう。
「フェッチをアクティベート。1点ペイして『Tundra』」
「これは驚いた。まさか同型か?」
「どうでしょう……。『アゾリウス*25』カラーはコントロールが多いですが、まだ2色とはかぎりませんし、青が絡むループコンボは多いですから」
気軽に無限マナとかストーム9からの『差し戻し*26』ストーム10の『ぶどう弾*27』とか言ってくるから、だからこっちも変なカウンターや、ぶっこ抜き系の対策カードをメインに数枚差しておかないと気が気でない。
「アンタ何者だ?」
主人公っぽい子が訝し気に質問してきた。そうだよね。怪しいよね。でもホントに前世でレガシーに興味があっただけの中身おじさんの一般JKなんですぅ。
「信じて貰えないかもしれませんがただの女子高生です……。少なくとも今はあっちに協力する気はないので、どうか見捨てないで欲しいのですが」
「こっちとしちゃ頼るしかないから、信じるけどさ」
「ありがとう……」
「ちなみに相手のデッキに心当たりあるか?」
「青白デュアルランドと『剣を鍬に』だけじゃまだ……。質、コスト共に対クリーチャー最高峰の除去だから、ボードコントロールしないといけないゲームレンジのデッキにはよく採用されるので」
プロテクション(白)や(インスタント)に呪禁、被覆あたりは無理だけどそれでも強い。ただマナを払ってると、ただのビートダウン相手にも厳しいということで『孤独*28』なんていうカードも刷られちゃったけど。
「例え何が相手でも、こっちはこっちで手を進めるしかないです。『High Tide』や『Moma』*29だとしても」
軽量アーティファクトが出てこなかったから、その線はあまり警戒しなくていいかもしれない。黒や緑が初手に絡んでないから『ANT』の線も多分消していいはず。
「なぜ、それを知っている……」
「そうだな。『山*30』をおいて『ラノワールのエルフ』からマナを出す。3マナで『無謀な嵐探し*31』、そのままバトル! 『嵐探し』の効果で自身に速攻を付ける!」
2ターン目に3点クロック。速攻付与を考えれば破格のクリーチャーだ。『パイオニア』のグルールカラーではかなり理想に近い動きのはず。これならあと3ターン程度で殴り勝てる。
「対応は無い。そのまま受けよう」
「ターンエンドだ」
「ワタシも何もありません」
「私の手番か。メインフェイズまでに何かあるか?」
「何もありません」
「其方の小僧はどうだ?」
「いや、マナないし何もねえ」
「そうか。ならばカードを引きメインフェイズ。まずは『Tropical Island*32』をセット、そこから青を出し『思案*33』を唱える。……通るようだな。若干鈍いか。しかし、あの手合いには寧ろ面白い。入れ替えて1枚引く。エンドフェイズに入るが?」
「……そのままもらいます」
自分に聞いているのだろう。『渦まく知識』はハンドにある。ただここで打つと、フェッチランドを起動しても結局入れ替えられるのは1枚だけになる。ここは我慢しよう。
「んじゃ。オレのターン」
「もう一度『剣を鍬に』だ。対象は『嵐探し』。どうする?」
「……何とかなんないか?」
「……通すしかないです。解決どうぞ」
「では追放して『嵐探し』のパワー分。2点ゲインしてもらおう」
『
「『銅線の地溝*36』出して『名もなき都市の歩哨*37』を唱える。出た時の効果で『地図トークン*38』を生成。『歩哨』を対象に早速起動。トップは『叫ぶ宿敵*39』、そのままで『歩哨』に+1/+1カウンターを置く」
「わたしは『溢れかえる岸辺」を置いてターンエンド』
ただのコントロール相手だとさっき打ち消さなかったのが悪手になるかもしれないけど、果たして。
「ドローからメインフェイズに入るまでに何かあるか?」
「メインフェイズどうぞ」
「さっきからアイツは何を警戒してるんだ? このタイミングで打つカードなんてあんまりないだろ? 火力系でリーサルって訳でもないのに」
「パッと思いつくのは『ヴェンデリオン三人衆*40』かな。ピーピングに変則ハンデスが出来るからドロー後や特定の呪文に対して使うと厄介な妨害になるけど」
ドローステップにえい! ってやられると結構効く、今だとカード全体の質が高いから、ピーピングの価値が落ちてるのと、これも『オーク』に弱すぎてあんまり見かけなくなっていったけど。
「そんなカードがあんのか。今聞く気はねえけど、なんでこんなところにいるんだ? アンタ」
「だからホントにただの女子高生ですぅ! この学校にいるのは自分の頭でも入れる普通科高校だっただけだから……」
ロクにデータベースも整備されてないからね、この世界。昭和のカード*41は使ったことも使われたこともあるから結構覚えてるんだけど、逆に最新の『スタンダード』のカードを使われると困るんだよ。変な勘繰りを受けてる気がするけど、命の危機だからなりふり構っていられない。
「ならばメインフェイズ、『霧深い雨林*42』を置いて即起動、ライフ15。『島』を持ってくる。良い判断だ。誰に教わったか知らないが、良き師がいたのだな」
「……はい。色々教わりました」
教わったというより正しくは負けて体で覚えたに近いけど。
「……惜しいな」
「でしたら見逃してもらえると大変ありがたいのですが……」
「それを判断するのは私ではない。答え合わせの時間だ。恐らく君の考えているとおりのカードだ。青含む3マナ」
アカデミーの教室で「見せて教える」と、たいてい「逃げて隠れる」大騒ぎになってしまう。
『実物提示教育/Show and Tell*43』
「なんだそのカード」
「これはお互いの手札から『土地』、『クリーチャー』、『アーティファクト』、『エンチャント』の内1枚を場に出すソーサリーだ。もちろんマナコストは無視していい」
「お互いに、か。じゃあオレも何を出していいってことだな?」
「そのとおりだ」
「デカブツが出てくるだけなら何とかなるし、へたすりゃ……、なぁ意外と通しても良いんじゃ……」
「レスポンス! 『
「えっ?」
「通る」
流石にここに打ち消しは当てないか。とにかく防御札を手に入れないと!
「もしかして相当ヤバいのか? アレ。てか『渦まく知識』なんて採用してんのか。引くカード変わんないし、『選択』『考慮』*45あたりのが強くないか?」
「ヤバいも何も『全知*46』から『エムラ』とか『アトラクサ』を出されたら負け確定だから! 3枚見て……何とかなるかなぁ……? 2枚戻します」
「全ちエム……なに……? あ、そっか。フェッチランドがあればトップをリフレッシュ出来るのか。……実質3枚ドローじゃ?」
「『溢れかえる岸辺」アクティベート、『Tropical Island』。青ダブルで『対抗呪文』!』
「スタックだ。オルタナティブコストで手札の『思案』を追放しライフを1点支払いキャスト」
『Force of Will/意志の力*47』
やっぱり持ってるよねー! 『エターナル』環境の象徴にして華だもん!
「ピッチコストで唱えられる打ち消しだ。対応はあるか?」
「は? 0マナの打ち消し? んなのアリかよ……」
「ならこっちも『島』を戻して『
「……ふふっ。生憎『指導霊*49』は持っていない。『実物提示教育』は打ち消される。君たちのターンだ」
とりあえずこのターンは凌げた。とは言ってもワタシは攻め手を抱えてないから、彼が次のターンにどれくらいクロックを用意出来るかなんだけど。
……なんで笑ったんだ? 次の手がまだ残っているのだろうか。でも今はこっちも、まともな打ち消しは握ってない。
「んじゃ、オレのターン……いや。アンタも持ってんのかよ! なんであんな怯えてたんだ」
「だってカードゲームに命なんて賭けられませんよ! それに『Will』も『目くらまし』も別に積極的に打ちたいカードじゃないんです。わたしはこのターン、『島』を置きなおしても3マナしか動けませんし、あっちも手札が2枚しかありません。少なくとも1枚は『
「そりゃそうだけど、ここはそっちが動いた方が良いんじゃないか? パワーは上だろ」
「初動が遅いデッキなので、アナタのビートプランの方が速そうです。こっちはこっちで準備するのでご心配なく。『島』を置きなおして2マナで『運命の操作*50』をキャスト。通りますか?」
「ほう……珍しいものを使う。このターンはどちらも通しだ」
「ならデッキから『霧虚ろのグリフィン*51』を3枚追放して1ドロー。後は何もありません」
「また妙なカード使ってんな。こっちは『森』置いて、赤3マナ『叫ぶ宿敵』を唱えて殴る。『歩哨』と『宿敵』で攻撃」
「受けよう。残りライフ7」
「メイン2。…赤2マナで『逸失への恐怖』」出た時の効果で1枚捨てて1枚引く」
墓地に送られたのは『鏡割りの寓話*52』。相当なパワーカードだが、昂揚の達成と次のターン唱えても遅いとの判断か。
「オレもターンエンドだ」
「では私のターンだな。ドローしてメインフェイズ。『溢れかえる岸辺』を置いてすぐ起動。残りライフ6。サーチ先は『神秘の聖域*53』」
「うっ。1枚入っててもおかしくないカードですね。どうぞ」
「あれはオレも知ってるカードだな。たしか他の『島』が3枚以上でアンタップイン出来る土地で、その時墓地のソーサリーやインスタントをデッキトップに置く効果を持ってたよな。つーことは」
「理解しているのなら話は早い。対象は墓地の『実物提示教育』。対応はあるか?」
「オレはないが……?」
こっちに「なんかない?」と言いたげにこっちを見てくるが、『もみ消し』も『外科的摘出』も握ってない。さっきもそうだがここで『渦まく知識』を打つとフルタップになるためあまり使いたくない。
「レスポンスありません」
「ではそのままデッキトップに積もう。そして4マナで『一つの指輪*54』だ」
「なんで次から次へとマスカンに近いのが……、レスポンス、『渦まく知識』3枚見て……、今じゃないんだよね……。2枚戻します。対応ないです」
「多分ロクでもないカードなんだろうが……こっちもない」
「『一つの指輪』が着地する。唱えられて場に出たため指輪の187能力が誘発。私は次の私のターンまで『プロテクション全て』を得る」
これで次ターン殴り落とすという勝筋がほぼ消えた。構えるのが正解だった? でもあの段階で打ち消しは無かったから、どっちにしろ打つしかなかったか。
「私の手番は終わりだ」
「あの『指輪』はどんな効果を持ってるんだ?」
「まず唱えて場に出た時、唱えたプレイヤーに次の自分のターンまでプロテクションオールを付与する。これで相手にダメージを与えることはほぼ不可能。ついでにプレイヤー対象を取るハンデスや布告除去も効かなくなる。そしてタップすることで指輪の上にカウンターを1つ置いて、カウンターの数だけドロー。そして自分のアップキープにそのカウンターの数だけライフロス」
「……とりあえずこのターンオレはとどめを刺せないってことか。わりぃ。役立たずだ」
「そんなことない。クロックが速いおかげであっちも余裕が無いはずです。次のターン『実物提示教育』をキャスト出来ないとほぼ敗北が決定します」
ビートダウン使ってコンボに負けると、すごい無力感を感じるが、実際はコンボ側もギリギリなことが多い。『オムニテル』なんてキーカードに3マナソーサリーが絡むから、分かっていれば意外とつけ込む隙はある。『リアニメイト*55』が黒1マナからエンジンカードをインスタントで唱えてくると考えれば、良心的に見えてくるから不思議!
サイドの無しの一発勝負で3マナのエンドカードを警戒できるかという点を除けば。
「ドロー。オレはこのターン動けない。一応『歩哨』で殴るつもりだけど、なんかあるか?」
「『島』から1マナ出して『思案』。3枚見て……、全然ダメ。シャッフルして1ドロー」
あれ? 完ぺきではない、けど。
「『平地』を置いて、ワタシは何もありません」
「『歩哨』でアタックして効果が誘発。メイン2に1マナ払って『宿敵』を対象にトークンを起動。デッキトップは……、「銅線の地溝」か。手札に加える。また1マナ払ってトークン起動、『砕骨の巨人*56』。……デッキトップに置いておく。『地溝』をタップインしてターンエンド」
あー。これ早めに引けてたらちょっと話変わってたかも。『叫ぶ宿敵』の効果が入れば『アトラクサ』の『絆魂*57』を無視できるし。
「其方の終了ステップに『指輪』を起動して1ドロー。一手遅かったようだな。ターンを貰おう。アップキープに『指輪』のライフロスが誘発する。1点失って残りライフは5。ドローしてメインフェイズに入るが?」
こちらを伺ってくるが、ここで動いても裏目が悲惨だ。通れば返しに勝てる可能性があるが……。
「メインフェイズどうぞ」
「ではドロー、メインフェイズ。青3マナ『実物提示教育』。通るか?」
「オレはないが……?」
「レスポンス。青ダブルから『対抗呪文』」
「スタックして緑1マナ『夏の帳*58』。通るのなら、このターン私の呪文は打ち消されなくなる。立っているのは白1マナのみ、『マナ税収*59』があるなら話は別だが」
緑採用の時点でそれが飛んでくるのは覚悟してたけど、やられるとやっぱり厳しい。
「いえ。『マナ税収』は採用してませんし、手札にピッチスペルもなければ、『青パクト*60』もありません」
「ならばスタックの解決か?」
「……調子に乗って先に『指輪』の起動から入ってもらえれば、いっそ打ってしまったのですが、レスポンス」
平地をタップしてマナを出す。
「白1マナでキャスト。対象はアナタ」
『オアリムの詠唱/Orim’s Chant*61』
「なっ!」
「……なにが起きるんだ? それ」
「効果はシンプル。このターン、対象になったプレイヤーは呪文を唱えられない」
「それ白1マナでやっていいのか!?」
「1マナじゃないと誰も使いませんよ。『刹那』つくなら分かりませんが」
「待て、『指輪』を起動する……!」
カードが2枚引かれた。動揺してる動揺してる。
でもここが最初の運ゲーなんだよねぇ。『Will』はもちろん『目くらまし』も、それこそ『青パクト』もダメ。
「……解決していい」
通った。まずこのターンでは負けないことがほぼ確定。
「『夏の帳』のキャントリップ、そして『実物提示教育』の解決処理に入る。場に出すカードを決めたあと、AP、NAPの順で公開する。私は決まったが?」
「オレは……、これしかないか」
「私も決まりました」
「ならば公開だ。私は」
『偉大なる統一者、アトラクサ/Atraxa,Grand Unifier*62』
そっちも握ってたか。手札次第では『全知』の方が都合が良かったんだけど。クロックも場にあるし。
「……ヤバいのが来たな。これはオレでも知ってる」
「ごめんなさい。『指輪』を打ち消せれば、違う展開になったかもしれませんが」
「仕方ないだろ。……オレは何も出せない。アンタは?」
「私は……」
『実物提示教育』で出すには、ちょっと力不足なんだけどね。でもワンチャンスは作れるかな。
『食物連鎖/Food chain*63』
「?」
「それは……、そういうことか」
あっちは気が付いたか。とは言っても、『オアリムの詠唱』を通さざるをえなかった以上、次のターンだけは妨害が難しいだろうけど。
「……まずは『アトラクサ』の処理から入る。入場時187能力によりデッキトップ10枚を公開、その中から『アーティファクト』、『インスタント』、『エンチャント』、『クリーチャー』、『ソーサリー』、『土地』、『バトル』、『プレインズウォーカー』のカードタイプを持つカードを1枚ずつ選んで手札にくわえる。私が選ぶのは……」
『Will』と青のカードが捲れた。これが私しかいなかったら、『Will』を取るんだろうけどね。
「『一つの指輪』、『剣を鍬に』、『全知』、『引き裂かれし永劫、エムラクール*64』、『実物提示教育』、『平地』、『時を解すもの、テフェリー*65』を手札に、『平地』を置き、エンドフェイズまで。クリンナップステップに手札が7枚になるようカードを捨てターンエンド」
捨てたカードは『睡蓮の花びら』に『渦まく知識』、そして『ロリアンの発見』。このタイミングでは使いにくいものばかりだ。
「なんとか首の皮一枚繋がりました。これもアナタのおかげです。『Will』構えられたら、流石にどうしようもなかったので。まぁ『剣を鍬に』が捲れないのが一番だったのですが」
「やれることやっただけだよ。『
『ネメシス*66』って聞くとこっちは別なカードを連想する。今の子はそっちかー。
「見事だ。この焦燥感、懐かしさすら覚える」
「ドローステップまでソッチは何もない?」
「バトルフェイズまでは特にない」
「だよなー。慌てて打ってはくれないよなぁ。オレの勝ち筋は火力系呪文を2枚唱えることだけど、アンタもなんかあるのか?」
期待してなさそうにこちらに問いかけてきた。
実はあと1枚で即死コンボが揃うんだよね。
「追放領域の『霧虚ろのグリフィン』と『Food Chain』で、もうクリーチャー用の無限マナは出ます」
「はっ?」
「『霧虚ろのグリフィン』は追放領域から唱えられるカード。『Food Chain』は自分の場のクリーチャー追放し、そのカードのマナコスト+1の一色のマナを生成するカード。つまり『Food Chain』に追放された『霧虚ろのグリフィン』が往復するたび、マナプールに1マナ増えていく。そのマナで唱えられるのは、クリーチャーのみだがな」
説明しようかと思ったらあっちが解説してくれた。ギミックはそのとおりだ。同じ色なら『ナドゥ*67』の方が強いから、あまり知られていないと思ったんだけど。
で、そこからどうやって勝つかなんだけど。
「無限マナで出すのは『歩行バリスタ*68』あたりか? 手札に引き込む手段は……自信はないがシミックカラーでドローできるクリーチャーがいたはずだ」
「そのとおりです。フィニッシャーは『バリスタ』ですが、無限マナから引き込む役は『ハイドロイド混成体*69』で行います。そこまで理解されていて、『Will』を手札に加えなかったんですね」
「不確定情報をケアしてもしょうがないだろう。見えている脅威を確実に処理するしかあるまい」
「焦ってる割りには、腹が立つほど冷静ですね……」
そしてその判断は正しい。手札にはどちらも無いため、このドローで引くしかない。
「オレのドローは分かってるんでな」
「そう、ですね」
これで自分の運命が決まるのかと思うと、手が震えてきた。間違いなく怖い、怖いが。
「楽しかったな……」
打ち消しによる空中戦なんて20年近くやっていなかった。『ブレストフェッチ』も小学生になるかならないかの時にやったくらいだから、ほぼ10年振りだ。手札を探りながらのヒリついた差し合いは苦しいが、『コントロール』の醍醐味だ。面白くないわけがない。
思えばこの16年は元々夢みたいなものだったのだ。その終わりがコレなら、上等な結末じゃないか。
「よし……。じゃあど」
「待て。娘よ」
覚悟が決まった所に、黒フードの男が待ったをかけてきた。えっ? 今更なに?
「いや、アンタがビビッてどうすんだよ?」
「そうではない。驚いた。あり得るのか、こんなことが……」
手札をまとめはじめた。
「どうやら神は君たちを大層気に入ったようだ。好きにすると良い」
そして背を向けた。いつの間にか結界っぽいものもなくなっている。
ちょっ。折角覚悟決めたのに!?
「いや。えっ? ワタシの決意は? せめてドローだけでも」
「神は言っている。ここで死ぬ定めではないと。どうやら私自身も、ぬるま湯に浸かって腑抜けていたようだ。次は互いに万全を期して、1対1でやろう。こう言っては何だが、楽しみにしている。それがどんな形であれな」
闇の中に消えていく黒フード。それ、どういう仕組み? やっぱりカードと関係あるの? 『暗黒』とか『真に暗き時間』あたりでも使ってる? あるいは『シャドウ』持ち?
「おいおい、オレのことは無視かぁ?」
「無論、君ともだ。その時は公平なルールでやろう。力ですり潰しても面白くないのでな」
では、また会おう。
それっきり気配が完全に消えた。 別に武道の達人とか、変な能力を持っているわけでもないが、そうとしか言いようがない去り方だった。
「よく分かんねえけど、助かった……のか」
「そうみたいですね」
どっと疲れが出てきた。余程緊張していたようだ。前世の5‐0を賭けたマッチ戦でもこんなに疲れたことはなかった。
熱が少しずつ引いてきた頭で振り返ると、随分アホな考えをしてたなと思う。いくらロスタイムみたいな二度目の人生とは言え、たかがカードゲームに命を賭けちゃいかんだろう。
「あ~、もう二度とMTGなんてやりたくない……」
「そりゃ無理な話だ。間違いなくもう一回アイツとはやらなきゃいけない。何よりこっちには、アンタに聞かなきゃいけないことがそれなりにある。もちろん
自身のデッキを指さす彼に、軽く眩暈を覚えた。
「人の話聞いてました? もうMTGはこりごりですよぅ」
「今更なーに言ってんだ。少なくとも、この事件が片付くまでは付き合ってもらうぜ」
そう言って首根っこをむんずと掴まれた。 なんで自分の方が年上なのにこんな目に遭わなきゃならんのか。女子故の非力さと、一向に二次性徴を迎える気配のない身体が恨めしい。
「はーなーしーてくださーい! HA・NA・SE! 結局連れてかれるじゃないですかぁ!」
「さっきのコントロール使いと本当に同一人物か? これ。……そういや自己紹介もしてなかったな。オレの名前は歩夢。せめて名前だけでも教えてくれよ。MTGどうこうより、礼だけはしたいんだ」
「……私の名前は――」
ちなみに全て揃えようとすると、最低でも乗用車を買うくらいの覚悟がほしい。
2022年7月4日、永眠。海での人命救助活動の際、亡くなったそうです。ご冥福をお祈り申し上げます。
色の役割の概念を崩壊させた事がΦマナ最大の問題点。エターナルでも禁止カードを輩出した史上最悪のメカニズムの一つであり、再登場した際かなり慎重な調整が行われた。
オーコの秋と言ったが、そのオーコですらデッキに入らなくなる、寒い寒い春が待っているとは当時のMTGプレイヤー達は露ほども思っていなかっただろう。
どちらも瞬殺タイプのコンボデッキ『親和』は特定の条件下でマナコストを軽減する効果。『感染』は独自の『毒カウンター』を相手プレイヤーに10個与えることで勝利を目指す。遊戯王に例えるなら『親和』がBF、『感染』は表サイバー。『親和』はもちろん『感染』もバランス調整が困難なメカニズムであり、後に『毒性』というリメイクに近いものが生み出された。
もし実行するなら『80枚ヨ―リオン』の方が現実的か。それでも初動が鈍くなりがちだが。
因みに『スタンダード』は発売から大体3年以内のカードを使う『ローテーション』が存在するフォーマット。常に新カードの影響を受け、古くなると使えなくなる『スタン落ち』がある。『パイオニア』は2013年発売の『ラヴニカへの回帰』以降のエキスパンション、『モダン』は2003年発売『ミラディン』以降のものが使用可能。『レガシー』、『ヴィンテージ』は基本的に全てのエキスパンションが使用可能で、『エターナル』という区分で纏められることもある。
下に行けば行くほどコンボデッキはえぐくなるが、同時に防御手段も多いため、やり方はともかく、勝ち手段は数ターンかけてのビートダウンというデッキも多い。
逆に上環境はメタカードが貧弱なため、結果的に突出したデッキが生まれやすかったりする。それも新規でガラッと変わることも多いため健全と言えば健全。
なお通常パックに収録されにくいメカニズムを指標化するために、公式で『ストーム値』という単位(1~10まで存在し大きくなるほどスタンダードで出しにくい)で各メカニズムが発表されているが、『ストーム』は貫禄の10である。
基本的には手札は7枚スタート。初期ライフ20。ドローは後攻から。
そういった札束を『血染めの月』で『山』にしてあげるととても気持ちがいい。『金属モックス』や『裏切りの都』、『古の墳墓』がそもそも高いというツッコミは受け付けません。
ちなみ赤のインカーネーションは『モダン』禁止、黒のインカーネーションは『モダン』だけでなく『レガシー』でも禁止だったりする。『モダン』のためのセットという名目は一体。
変わった所で自身に使って手札を整えにかかるという使い方もしたりする。
因みに最近の『レガシー』における『オムニテル』は青緑のみで組まれ、足されても『だまし討ち』を加える赤か、ハンデスで妨害を捌ける黒をタッチすることが主流で、本作のように白が足されることはあまりない。サイドなしのシングル戦ならカモフラージュとして機能する。
一時期100円で投げ売りされていたが、いつの間にか1000円近くに。サイド用に2枚しか確保してなかったが、変にケチらず4枚揃えとけばよかった。
ただし追加ターンは『もみ消し』で打ち消せ、プロテクション(1色以上の呪文)も『剣を鍬に』は防げても『孤独』には無意味という穴がある。あくまで呪文そのものへの耐性であって、パーマネントから発生する効果は適応外なため。他にもプレインズウォーカーの起動能力の前では無力であり、呪文なら全体除去や黒が得意とする布告除去は効く。それを差し引いても凶悪なのは間違いないが。
MTGのハゲは強いヤツばっか。
ちなみにフードの男は主人公格に敵組織と思われてますが、ほぼ無関係です。彼の言う神は確かに創造主ですが、敵組織の語る神とはまったくの別物です。
ちょっとTCG主体の世界見たいなーって思ったら、違う。そうじゃない世界が出来てしまったので、現世を覗いて現地人のヒアリングしつつ軌道修正の道を探ってるだけです。
ちょっといい肉食べたくてステーキハウスに入ったつもりが、鉄板焼のレストランだったくらいの困惑。
思考ベクトルとしては『「追加のマナを支払う」テキストが、少し邪魔くさい』とか『「カラデシュ」本当にスゴイんだ!』みたいなことを言う程度の神様で、別に邪神ではありません。
ここまでクッソマイナーなテーマにお付き合いいただきありがとうございます。読んだ皆さんの暇つぶし程度になってくれれば。
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