MTG版TCGホビーアニメ(システムに欠陥あり) 作:名無しのプレインズウォーカー
いつも丁寧に誤字報告してくださる方ありがとうございます。こんなのに時間割いてくださり恐縮です。
パイセン、いや。先輩と初めて出会ったのは兄貴の学校の文化祭を見に行った時だった。一旦は家に帰ったけど、片付けが終わる頃に迎えに行ったら、黒フード……アスカのヤツに勝負を挑まれてたから、加勢したのがきっかけだった。最初はちっこいし頼りないしで、とても年上には見えなかったけど、実際にゲームが始まると途端に冷静なプレイングと大量の知識で格上に粘っていった。
その後はなぁなぁの付き合いが続いた。自分を巻き込むなと言いながら、いつも自分達のことを気にかけてくれる。MTGの下環境の知識に関して教えてもらう時もあれば、無茶をすればフォローに入ってくれる時もある。初対面の印象はどこへやら、自分の中ではいつの間にか先輩の区分に入っていた。なんとなく気恥ずかしくてパイセン呼びになってしまうが。今ではたまに家を行き来する仲である。
……一度事故って裸の先輩と出くわした時は酷かった。ぶん殴られたとか、しばらく口を聞いてもらえないとかならまだいい。「ごめんね」の一言で終わりだよ? 出てきた後、何事もなかったように話し始めた時は軽くホラーだった。こっちはうつむき加減の正座で待ってたのに。
「ごめんはオレの方だよ」と流石にいたたまれなくなって、切り出すと「手足が生えたドラム缶見ても何も面白くないでしょう? そんなに自意識過剰じゃありませんよぅ。こんなのに興奮するのはただの異常性愛者です」と言われた。
自分はこう見えて、女にはそれなりに耐性はある方だ。札姫と長い付き合いだし、アイツも結構可愛い方だから。あと胸。以前、着替え途中に入っちまった時は普通にキレられた。
他の同性のクラスメイトが女子の水着に盛り上がる中、「札姫のが可愛いな。あと胸」と内心気にも留めなかったオレが、オレの下半身が、反応していた。うつむき加減の正座で待っていたのはそれが理由だった。
オレはロリコンだったのか? だから札姫の下着姿を見ても冷静でいられたのか? そう自問自答したが、先輩は確かに背こそ小さく、服も体のラインが出ないものばかり着ている。だがよくよく思い返してみると、間違いなくドラム缶ではなかったよなと。あれがドラム缶に手足なら、ウチの女子だって大半はこけしな気がするぞ。その上で生えてないのが衝撃だった。『不毛の大地』*1なのか『磨かれたやせ地』*2なのかの判断はオレには出来ないけど。
総じてロリコン判定については疑問が残る(独自研究)。
だから鬼山さんに、変装と称して丈の短いTシャツとラフな上着にローライズのホットパンツを着せられた先輩を見て
「先輩。鼠経部に指ツッコんでいいですか? ツッコみますね」
「警察呼びますね」
呟いた札姫の指先を追ってしまったからと言って、自分は断じて変態ではない。アスカはガン見してたな。あの視線は間違いなく特殊性癖の持ち主だろ。以前言ったら長い長い逡巡のあと、「……そうだな」と遠い目をしながら答えてくれた。あれは過去の自分への追悼もあったのだろう。もう二度と一般女性と付き合えないねぇ。合掌。
そんな性癖の玉突き事故みたいな先輩にちょいちょい教わっている自分だが、今は国内の選手権、そこのユース部門に出場するために特訓中だ。知識的なものは憶えるとして、どんなデッキを使うにしろ数をこなしたいと相談したら、アスカにMTGアリーナ*3を勧められた。『パイオニア』の範疇までなら、ほぼ紙と同じ環境でやれるらしい。
「あー、聞こえます? 歩夢くん」
「パイセン。インストールは終わってる。起動したらプレイヤーアカウントとの紐付けだっけ?」
「そうですね。そうすれば実際に組んで使ったことがあるデッキのカードは、アプリケーション内で手に入れなくても使用可能*4になります。ここだけは前世より良い仕組みですねぇ……」
先輩の指示がヘッドホンを通して聞こえてくる。一般的な通話アプリとは言え、誰の声か分かる程度のクオリティと、人の声を拾いやすい骨伝導ヘッドホンのおかげで、マスクを付けて肩越しに指導を受けている位の臨場感がある。脳内の札姫がビンタをかましてきたのでギリギリ耐えられた。幼馴染がいなければ即死だった。
「操作感を覚えるためにもカラーチャレンジ位は2、3戦やっても良いと思います。個人のデッキデータの読み込みと連携は、ちょっと時間がかかるので、操作感に慣れたら、配付デッキでちょっと遊んでみますか」
「OK。やってみる」
カラーチャレンジはほとんど接待ゲームだったが、改めて各色を振り返ると結構新鮮だった。そう言えば緑ってこういうデッキだったなと。最近はゲームテンポが速いのと3~4マナ域のカードが強いので、マナを伸ばす動きより1ターンでも早く中マナ域のカードを叩きつける方が大体強いからな。継続的にアドを稼ぐ、或いはゲームを決めるカードが多い。
「どうやら慣れてきたみたいですね。ではフレンド対戦してみましょうか。こちらから招待送りますね」
「今はまともなデッキがないから程々にしてくれよ、パイセン?」
「こっちも配布デッキでやりますから、正直スタンダードのゲームスピードが分からないので、デッキパワーより自分の実力の方が不安要素なんですよねぇ……」
とりあえずアリーナ特有のエラッタを受けてない無制限のゲーム設定を選ぶ。自分も最近の『スタンダード』はちゃんとやっていなかったので、余計なことをしなさそうなビートダウンデッキを選んでいる。
「対戦よろしくお願いします」
「よろしくパイセン」
先攻をもらった初手はまぁ、動けそうかなというハンド。パイセンは「あー、『スタンダード』だからビートダウンでも2ターン目からの動きで間に合うよね?」と呟いていた。お互いキープでゲームを進めていって5ターン目、先輩のプレイにおかしなところは見当たらないが、何となく鋭さがぼんやりしている気がする。先手のアドバンテージを活かして、自分が若干押し気味だ。フォーマットの違いも大きいのだろうが、先輩の言う何となくキープして何となく負ける流れというのはこういうことだろうか。
間違ってはいないのだが、手なりで進めていって微有利、微不利が長く続いている感じだ。
「んじゃ続いて……あれ? いつの間にか赤マナが足りなくなってる?」
「あー、アリーナ特有のオート支払が原因ですね。手札の色の割合で参照する関係で、たまに、それも決定的な時に限って変な土地をタップするんですよぅ。あと土地の起動効果も参照するので使う気のないミシュラランド残されて、多色土地がタップされてということもあります。大事な局面は手動でマナ出すことをオススメします。ワタシもトップデッキを勢いでプレイして勝ち確の場面で何度爆散したことか……。たまにク○AIと罵りたくなります」
「うぉわ……一番使いたいのが使えねぇ……」
「プレイミスというより操作ミス*5ですね。紙ではあまり起きませんが、絶対ではないのでこれを機に意識しましょう」
結局それで手が遅れて巻き返されて負けた。これ自分視点でも自キャラ爆発するのか。紙では自分でタップするから起きにくいミスだけど、便利なのは良いようで悪いな……。
「対戦ありがとうございました。操作ミスで勝たせてもらいましたが、慣れてる人でもたまに誤操作でひっくり返るので、割り切った方が良いですよ。特に同一の『伝説』カードを置くとき*6や自身のパーマネントを生け贄に捧げる系のカード*7」
「ありがとうございました。でもガッカリするなー。パイセン、もう一回やろうぜ」
「その前に実装されているゲームモードについて軽く見てみましょう。先ほども押しましたが、初期画面のプレイを押すと、色々出てきますよ」
操作してみると『最近プレイ』という表示、そして『ランク戦』*8、『プレイ』、『ブロール』*9という表示が出てきた。色々あるが、そこから『プレイ』を開くと『スタンダード』、『アルケミー』、『パイオニア』、『ヒストリック』、『タイムレス』と出てきた。更によく見てみると右上あたりで『BO1』と『BO3』が切り替えられるらしい。
「BO3も出来るのか」
「BO1でとっとと回りたい人がほとんどですけどね。『スタンダード』と『パイオニア』は見たまんまですが、『アルケミー』*10、『ヒストリック』*11、『タイムレス』*12はアリーナ独自のフォーマットです。こちらはアリーナのみで実装されているカードも使えます。DCGであることを利用した特殊なカードも多いので、また違った面白さがありますね。メタゲームも情報が出回りにくさもあって、たまに変なデッキが出てきます」
「へー。例えばどんなカードがるんだ?」
「例えば紙だと視認しにくい、強度を参照するカードですね。あと『創出』。手札かデッキに特定のカードをそのゲーム中のみ生成します。中にはパワー9を生み出すクリーチャーもいます」
「それちょっと興味あるな。やってみようかな」
「どうぞやってみてください。ワタシも『アルケミー』や『ヒストリック』はほとんどやってないので、アドバイスは難しいですが」
「ほーん」
じゃあ消去法で『タイムレス』でもやってみるかと、クリックしてみた。
「……あれ? なに選びました?」
「ん? 『タイムレス」』」
「あっ……(察し)。まぁ一回体験するのもありかな……」
早速マッチングが成功。プレイヤーネームは『Come buck Tombed』という人だった。ゲームは自分が先攻。手札も悪くない。山を置いてターンを渡す。相手の置いた土地は『汚染された三角州』*13だった。『フェッチランド』!?
なんだか猛烈に嫌な予感がする。早速起動されて『湿った墓』*14がショックイン。
「は? 『暗黒の儀式』*15?」
「うん。調整か慣らしにきたガチ勢と当たったね。多分『バーン』か『赤単プリズン』と判断されたかな」
「『プリズン』ってなんすかそれ……、『納墓』*16ってなんか墓地に『アトラクサ』が落ちたんだけど」
「落ちたな(確信)」
「1マナで『再活性』*17? 墓地のクリーチャーをライフを払って戦場に戻す? えっ?」
次の瞬間『アトラクサ』が出てきて相手の手札が8枚になった。そして余った1マナで『思考囲い』を打たれた。火力呪文が落とされる。
「後攻1ターン目に7/7飛行警戒接死絆魂のクリーチャーがいて、相手の手札が7枚あるんですけど、先輩? ここから入れる保険知ってる?」
「『タイムレス』の『ディミーアリアニメイト』は『レガシー』と違ってショックランドを使いますから、残りライフが10しか残らないんですよね。それだけなら次ターン『山』置いて『稲妻』*18『稲妻』、『山』二つサクッて『火炎破』*19で勝てますよ。『スパイ』*20と違ってフェアデッキでもワンチャンあるから、まだ有情ですね。12点ドレインされた後に3点クロックが8体並ぶよりマシです」
「えっ、何、それは……」
「『リアニメイト』は除去ってライフを攻めれれば、結構なんとかなりますけどね。『否定の力』*21は実装されても『Will』も『目くらまし』*22もないので意外と脆いんですよ。その後フェッチ使うと最低でもライフ9。仮に『剣を鍬に』*23うたれてライフゲインしても、その後の『魂の導き手』と『オセロットの群れ』*24、『猛竜』*25からクロック捲れると結構負けるんですよ。クリーチャーに当たる打ち消しが無いので。言葉にするとヤバいですね『エネルギー』」
「これ降参ってどうやるんですか?」
その後、無事爆散出来た。
「なんですかあれ?」
「『タイムレス』の『ディミーアリアニメイト』ですね」
「それは分かってないけど分かった。『スタンダード』と『パイオニア』と来たら、次はどんなに頑張っても『モダン』じゃん? こっちとしては『タイムレス』って言うくらいだから、無制限『パイオニア』レベルだと思ったんだよ。いきなり『レガシー』禁止カードが飛んで来たんだけど。入ったらジンバブエドル並みにエグイインフレしてるじゃん?」
「それ『レガシー』禁止になったんですけど、『タイムレス』だと無制限なんですよ」
「バ○かな?」
「失礼な。メインで遊んでる身から擁護させてもらいますが、運営だって理性はありますよぅ。キチンと制限カードがあるんですから。現状『チャネル』と『悪魔の教示者』と『ティボルトの計略』*26だけですけど。ゴミとウ○コの区別は付きます」
「ひよこ鑑定士みたいなことしてますね」
「ぶっちゃけ『レガシー』でも『ヴィンテージ』でも規制かかってるカードが無制限なので、運営も新しいゴミ捨て場*27みたく考えているかもしれませんね?」
「いつかまとめて捨てられない? シベリアで木を数える仕事もエンジョイ出来そうっスね。パイセン」
「じゃあ一緒に数えましょう。賽の河原だって鬼が飽きれば勝ちですから」
「それは地獄からも見捨てられたんじゃ……?」
なんとか軌道修正して、後日『パイオニア』の練習をした。何時もの『ミッドレンジ』でBO1のランク戦に潜ると『イゼットフェニックス』と『パルへリオンシュート』*28ばかりにあたった。キレてレアワイルドカードを使って『虚空の力線』*29を4枚作製、さらに『魂標ランタン』*30を4積みした。そしたら『ラクドスミッドレンジ』と『赤単』に当たった。キレてワイルドカードを絞り出すようにして『イゼットフェニックス』を半端に組んだら、やたら墓地対策を踏んだ。キレて『赤単』を組もうとしたらワイルドカードが全然足りなかったので、魔法のカードに手を出そうとしたら札姫に止められた。
先輩とアスカと知り合いの店長の三人は淡々と『タイムレス』を回していた。
ミシッククラスではパーセンテージで表示され数字が大きい程上位。一定のラインを越えるとランクが表示され1200位以上から翌月の予選ウィークエンドへの出場権を獲得できる。
奇しくも全て2マナのカードで色被りなし。もし残りの白、青で制限前提で実装するなら『天秤』、『Time Walk』あたりか?
自分で書いてて実装したらダメだろと思ってしまった。
あんまりな内容に怒ってません?
一応、昔ミシック二桁順位まで行ったことあるんですが、その時は無心でランク戦を回してました。ある時自分は何でこんなことしてるんだろうと思って以降、一旦アリーナから離れました。上に行けば行くほど同じデッキに当たるので、シンプルにパターン化されちゃうんですよね。
今では正気に戻る頻度が増えたので、少なくともミシック行ったら適当なデッキ使って養分になってます。