「ロナート様はどうしてあんな無謀な挙兵をしたんでしょう」
アッシュが落ち込んでる中で、ふと俺は思ってしまったんだ。
「ひょっとして、中身が別物だったりする?」
「何を言ってるんですかグレン!?」
「ある日突然、魔法で中身が別人にすり替えられてたら……」
「だとしたら本物のロナート様は何処に」
「もういないかもな、どこにも」
まさか『俺と同じ』だとは思っちゃいないけど。あいにく俺は知っちゃったから。姿を奪う敵がいるってこと。
「変なこと言ったな。悪い、忘れてくれ」
***
こんにちは。ロナート卿って人が反乱を起こしたので鎮圧しろという件でやってきました。俺は正直よくわかってない。そして今回一緒に来てくれるのがこのカトリーヌさん。雷霆っていう凄い武器使う人。
「あ、貴方はカトリーヌさん」
「話は聞いてるよ、フラルダリウスのグレン。白魔法が得意なんだろ?」
「……そう、です」
「アンタは敬虔な信者だと聞いているが……あくまでアタシはレア様のために戦う。味方なら守るし、敵になるなら斬る」
「分かりやすくて助かります」
敬虔な信者。そうかなあ。敬虔な信者っていうのはメルセデスやマリアンヌみたいな人の事を言うと思うんだけど。俺は、なんか、ちょっと違くない? 誰にも納得してもらえたことはないんだけど。
カトリーヌさんについてはフェリクスが「正体を隠す気がない」って言ってたんだけどどういうこと? って聞いたら「雷霆の出所を考えろ」だそうで。あれって英雄の遺産だよね? 確かカロン家の……。そういえば昔はカサンドラって人が持ってたんだっけ? 「そういうことだ」なるほど。
で、いろいろたどり着いた結果のカトリーヌさんですけど。ダスカーの悲劇の容疑者扱いされてるらしいです。可哀そうに。なんだよあの事件全方面に波及しやがって。国王を殺したんだから当然? それもそうか。
あの事件の話を聞くたびに、俺は何一つ守れなかったことを否応なく思い知らされてしまう。
俺は死なない為に必死で、真実を皆の前で解き明かす余裕はなかった。今もない。中途半端に真相を暴露すれば敵に消されかねないし、かといって全部を説明できるほどの知識は持ってない。
もっと強かったらディミトリの父親だって、ドゥドゥーの故郷だって、もっと別のものだって守れたはずで。俺が動けなかった4年の間に何かを成し遂げていたはずで。
いや、違うな。俺が生きてること自体が間違いなのか。イングリットの初恋も、フェリクスの夢も、全部ずたずたに切り裂いて、俺は現世にしがみついている。