俺は将来死ぬ。原作開始の4年前に。すごく残虐な感じで。生首で済めばいいなあ(遠い目)。いや何も良くないので俺は剣を鍛えています。問題は原作開始が何年だったか覚えてないってこと。どこか基準さえあれば計算できるんだけど。基準、基準……。あ、ひとつあった。
「千年祭って何年?」
俺は死んだ目で父上に尋ねた。結論から言うと、ガルグ=マク大修道院ができたのが185年。その千年後ってことは1185年だからその-5で1180年、さらに-4すると。
「1176年……」
それが俺の死を迎える運命の日。
「千年祭は1185年だ」
「そうだった……。俺何言ってるんだろう。助かった」
***
フェリクスはその日、すこぶる調子が良かった。剣の冴えがここまで鋭いとは。
「兄上、俺と手合わせしろ」
「丁度よかった。俺もフェリクスと戦いたかったんだ」
剣を振る。弾かれる。いつも通りだ。兄はいつだって自分の遥か前を走っている。いつか必ず兄に勝ってやる。そう誓いながら、フェリクスは渾身の一撃を繰り出した。
「あっ……」
予想外にグレンが足を踏み外した。ここが勝機。素早く連撃を食らわせると、フェリクスはすかさず兄の首に剣を突き付ける。
勝った。え? 本当に勝ったのか?
フェリクスが真っ先に得たのは戸惑いだった。いつか勝つとは誓った。今日だとは思っていなかった。
『強くなったな、フェリクス』
そう言ってくれると思った。兄は優しいから。
『次は負けない』
と続くのだ。次回の約束を添えてくれる。
だが、兄の反応はフェリクスの予想していたどれとも違っていた。
「……っ、くうっ……」
泣き始めた。あの兄上が。人前で弱さを見せたことのほとんどない(例外は一度吐いたあの日くらいだ)グレンが。
「兄上?」
この人は、負けて泣くのか。自分相手に。それがある種の優越感となってフェリクスを支配する。
「……嫌だ。嫌だ嫌だ嫌だ!!!」
兄は相変わらず、狂ったように泣く。いくら悔しいからといって、これは異常ではないか?
***
フェリクスに負けた。
「……嫌だ。嫌だ嫌だ嫌だ!!!」
だってそんなの。そんなことって。フェリクスのやつ原作では『兄に一度も勝てなかった』って言ってたよね。つまり原作より弱いってことじゃん俺。グロ映像確定じゃん。痛いの嫌だよ俺。死亡フラグを回避するには原作より強くならなきゃいけないのに、それができてないってことじゃん。
「俺に何が足りなかったっていうんだよ……!」
どうあがいても惨劇。
「女神様、たすけて。死にたくない」
ディミトリが言ってたよ。俺、壮絶な死に方するんだって。どんな顔してたんだろうなあ。絵にも描けないR18Gだったんだろうな、嫌だなあ。いっそ先に自害するか? どっかから飛び降りるとかしてさ。やめとこう。失敗したらもっと地獄になりそうだし。
「ただの手合わせで何を喚いている」
フェリクスが呆れたように声をかける。
「……あ」
「ごめん、フェリクス。ちょっと取り乱しただけ。大丈夫だから」
「その顔が『大丈夫』なら俺の目は節穴という事になるが」
睨まれてるけど、多分心配してくれてるんだよな。フェリクスはそういうやつだからさ。
「嫌な夢見ちゃってさ。……殺される夢を。でも、本当に、ただの夢で」
「そうか。なら精々鍛えるんだな。兄上が腑抜けていると俺は、いや、何でもない」