異世界に憑いてるモノまでついてきた 異郷で開くマヨイガの宿   作:星野純三

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第27話 第七王女殿下

 ぼくの宿屋は、四階建てに増築されることになった。

 王族が四階をまるまる貸し切ることになったからだ。

 

 西田くんによれば、富豪がホテルの最上階を年単位で借りるなんていうのも、もとの世界ではよくあることだったとか。

 それと似たようなものだろう、ということで納得することにした。

 

 いや別に貸し切られるのが嫌というわけじゃなくて、毎日、殿下みたいな人の相手をするのは疲れるなあ、というのが本音なのだけど。

 なお実際にその通りのことをつい殿下に言ってしまったところ、右子さんと左子さんにひどく睨まれた。

 

「王族の相手が疲れる、というのは事実ですのでわたくしはあまり気にしませんが……今後、常駐することになる妹には、あまりそういったことは言わないでくださると嬉しいですね。あの子は繊細なのです」

 

 殿下にそう言われてしまっては、こちらとしてもこれ以上、なにも言えない。

 あとはその妹さんがまともな人物であることを祈るばかりであった。

 

 で、実際に顔を合わせたその妹さんは、別の意味で疲れる人物だった。

 なにせ、顔合わせの段階で、第二王女殿下の後ろに隠れてしまって顔が見られないくらいである。

 

 金髪の第二王女殿下とは違って銀色の髪が、背後で揺れている。

 第二王女の腹違いの妹で、第七王女、数えで十三歳とのことである。

 

「は、はじめ、まし、て……」

 

 おどおどした様子で第二王女の背中から半分だけ顔を出す第七王女さま。

 背丈は第二王女に比べて頭半分くらい低いくらいで、銀髪は肩くらいまである。

 

 第二王女は碧眼なのに対して、この第七王女はルビーのように紅い目をしていた。

 うーん、遺伝子とかどうなっているんだろう。

 

 と思ったら、第二王女殿下が、「この子は強い魔力の影響が髪と目に出ておりまして。そのことをひどく気にして、このような性格に」とフォローを入れてきた。

 ああ、異世界だとそういうこともあるのか……。

 

 なお右子さんと左子さんは、第七王女の方を、ちょっとかわいそうな目で見ている。

 で、ぼくがどうしていいかわからず戸惑っていると、今度はふたりしてぼくの方を睨んできた。

 

 えーと、ぼく本当にこういうのわからないんだよね。

 客商売として致命的な気がするけど、まあ、うん。

 

 と思っていたら、座敷童がてこてこ歩いてきて、第二王女の後ろにまわり、第七王女の手を握る。

 

「わっ」

 

「大丈夫」

 

 珍しく初対面の相手に言葉をかけたかと思うと、座敷童は第七王女の手を引っ張り、彼女を連れてぼくの前までやってきた。

 

「ご、ご主、人」

 

「あ、はい、ぼくがこの宿の主人です。これからよろしくお願いします。なにかあったら、そこの座敷童になんでも言ってくださいね」

 

「任せて」

 

 なぜかえっへんと胸を張る座敷童。

 いつもより、だいぶ積極的である。

 

「座敷、童……さん?」

 

「呼び捨てでいい」

 

「座敷童……ちゃん?」

 

「それでもいい」

 

 ちなみに、座敷童の方がひとまわり小柄である。

 第七王女は背を丸めておどおどした態度だから、同じくらいの背丈に見えるけど。

 

「よろ、しく、ね?」

 

「んっ」

 

 第七王女が、はにかんだ笑みを浮かべた。

 その後、ぼくに向き直り、「これから、その、お願い、します」とおっかなびっくした態度で一瞬だけ目を合わせ、それから顔を下に向けて頬を朱に染める。

 

 うーん、ぼくにはなついてくれないみたいだなあ。

 まあ座敷童と仲良くなってくれるなら、それでいいか。

 

 どっちにしても、まあ。

 こんな感じで疲れる人物なのであった。

 

 なお、この後、彼女の身のまわりの世話をする従者を四人、紹介された。

 いずれも中年から老年の女性で、やわらかい態度の者たちだ。

 

 以下は、この従者たちから、後に聞いた話である。

 

「末姫さまのお母上は、あまり身分の高くない家の方で……しかも、末姫さまを産んだ際に亡くなられてしまったのです。その後も、宮廷であまり顧みられることがなく、第二王女殿下以外には部屋を訪ねて来る者もほとんどおらず、寂しい思いをさせてばかりでした」

 

 なるほど、いろいろとわけありで、だからこそこの宿に常駐することになった感じか。

 厄介払いかな?

 

 境遇的には、少しぼくに似ている気がする。

 もし西田くんと出会わなかったら、いまごろぼくはどうなっていたんだろう……とつい、思わざるを得ない。

 

 とりあえず、いちいち四階から一階まで上り下りするのもたいへんだ。

 エレベーターとかつけられないかなあ。

 

 とマヨイガにダメモトで言ってみたところ、なんかその日の夜にはエレベーターが完成していた。

 

「トイレのウォッシュレットは駄目だけどエレベーターはOKなんだ……」

 

 南野さんが首をかしげていたけど、ぼくだってそんなのわからない。

 あるいは、マヨイガが成長しているのかもしれない。

 

「電気とかどうなっているのかな?」

 

 ちなみに照明とかも駄目で、この宿の明かりはランタンや蝋燭頼りである。

 ずっと輝いている魔法の照明、みたいなのもあるらしいんだけどね。

 

 この国ではだいぶ高価とのことで、そういうのの設置は、しばらく難しいかなあ。

 

 




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