異世界に憑いてるモノまでついてきた 異郷で開くマヨイガの宿   作:星野純三

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第28話 成長するスキル

 異世界に飛ばされたぼくたち三十一人の生徒には、スキルがある。

 経験上、スキルは成長する。

 

 これは西田くんが実験で確かめたことだ。

 彼のスキルである気は、最初、全身にまとうことで身体能力を大幅に強化することしかできなかった。

 

 でも使っているうちにコツを身に着けた西田くんは、拳だけを強化したり、脚だけを強化することに成功した。

 拳だけに気を集中させることで、身の丈が十メートルくらいある巨大な魔物を一撃で倒したりできるようになった。

 

 他にも気の弾を打ち出したり、宙に浮くことができるようになったり……。

 なんか漫画で見たのを参考にした、と言っていたけどぼくは漫画とか読まないからなあ。

 

 あとは最初の領主に預けた三人娘とかも、スキルを使い続けることでそれが成長していった、と言っていた。

 クッキーを出せるというスキルの持ち主は、最初、一日に百個しかクッキーを出せなかったのだけど、ぼくたちと別れる日には百二十個くらい出せるようになっていたのだ。

 

 頑張って使い続ければ、そのうち二百個とか三百個、あるいは一万個とか出せるようになるかもしれない。

 そもそも最初は普通のクッキーだけだったけど、いつの間にかチョコクッキーも出せるようになっていた、とかも言っていたし。

 

 この世界、チョコクッキーの需要はすごく高いんだよね。

 甘味が少ないから。

 

 領主の奥さんと娘さんがとてもとても喜んでいたりするのだ。

 三人娘の将来は安泰だと思う。

 

 そもそも、ぼくたちが助けを呼んで来るまで彼女たちだけでバスの中で生き延びられたのも、クッキーのおかげで飢えは凌げたから、というのが大きい。

 ある意味で、とても有用なスキルだったわけである。

 

 それは、さておき。

 ぼくのスキル……によって意志が芽生えた三つのテイム・モンスターであるマヨイガ、座敷童、狛犬の話である。

 

 最初から明確に自我があったキタマは置いておいて。

 座敷童は、活動を続けるうちにだんだん感情が表に出てきているような気がして、それがスキルによる成長なのかはよくわからないけど、とにかく変化してきている。

 

 狛犬については、いまのところ詳細不明で、なにかが変化しているという実感はいっさいない。

 マヨイガは、明確に変化している。

 

 なにせ、最初は二階までしか拡張できなかった宿が、いつの間にか四階もつくれるようになっていたからね。

 加えて今回は、謎動力のエレベーターまでできてしまった。

 

 エレベーターの位置は裏庭へ続く渡り廊下のそばで、二階に上がる階段から少し離れた位置である。

 主に宿の従業員側が使うって想定、なのかな。

 

 座敷童は宿の中ならどこにでも出現できるから、あまり意味がないんだけど。

 でもまあ、荷物を運ぶには便利か。

 

 あとぼくも、いちいち足で階段を上がる必要がなくなるのが便利かもしれない。

 そんなことを考えていると、末姫の従者さんたちが苦言を呈してきた。

 

「複数の侵入ルートが想定される構造は、姫さまの安全をお守りするのが難しいため、あまり好ましくありません」

 

「この宿でそんなことを言われても……」

 

 普通、攻められる前提で建物は建てないんだよ。

 そういう建物は、お城って言うんだよ。

 

 王宮は違うんだろうか。

 違うんだろうなあ。

 

 たぶん利便性よりも安全を重視した構造になっているんだろうなあ。

 殿下が以前、この宿なら安心して眠れる、とか言ってた通り、たぶんあっちはそれだけ普段から暗殺の危険とかがあるんだろうから。

 

「この宿の中では暗殺とか気にしなくて大丈夫ですから」

 

 と言ってはみたのだが、向こうは全然納得してくれなかった。

 困ったねえ、と西田くんに相談したところ……。

 

「あいつら、おまえがその気になったらいつでも宿の住人を殺せるってことわかってないんだろ」

 

 そんなことを言われてしまった。

 

「なんの罪もない人を殺したりしないよ」

 

「もちろんおれは、それをよく知っている。ここの常連はみんな理解している。そのうえで、おまえがこの宿の中にいる限り最大限に守ってくれることも、だ」

 

「ぼくは宿屋の主人だからね」

 

「そうだ、おまえは主人だ。ここの王様なんだ。この宿に来る奴は、まずそこを納得しなきゃいけない」

 

 ああ、なるほど、そういうことか。

 四階を貸し切った末姫さんの部下たちは、そこを納得していないのか。

 

 彼女たちの主人である末姫さんを守るため、というのもあるんだろうけど。

 うーん、そのあたりは第二王女殿下がちゃんと言い含めておいて欲しかったなあ。

 

「まあ、向こうに悪意があるわけじゃない。ひとまず三階から四階に上がる階段を封鎖して、様子を見るっていうのはどうだ」

 

「エレベーターだけにするの? あ、いちおう従業員専用の階段もあるけど」

 

「そっちは非常用の避難路、って言っておけば納得するだろ」

 

 なるほど、さすが西田くんは頼りになる。

 そういうわけで、セキュリティ上の問題により、三階から四階へ続く階段は消えることになった。

 

 いきなり階段が消滅したことで、末姫さんの従者たちは目が飛び出さんばかりに驚いていたけど……。

 階段があった場所の床もきちんと閉じておいたから、足を滑らせて落ちることもないし安心して欲しい。

 

「ご主人は、おそろしいちからの持ち主なのですね……」

 

 従者さんたちに、ひどく怯えられてしまった。

 あれえ、おかしいなあ。

 




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