ボイスロイドが実在する世界に来たらヤンデレハーレムだった件について 作:美月海月
「もう、お姉ちゃんずるいよ! マスターを起こしてくるって言って、絶対変なことしたでしょ!」
「今日の朝食当番が葵やったから、代わりにウチが起こしにいっただけやん。それに変なことって人聞きが悪いこと言うなぁ」
俺に飛びついてきて抱き締めてきた上に匂いを嗅いできて、茜ちゃんと言い合いをしているこの女の子は間違いなく琴葉葵だった。
姉である琴葉茜と同じ髪型で色は水色。服も同じく腋部分が露出しているのが特徴的な白色のミニワンピース。胸元には青いリボンが装飾されていて、髪には青色を基調とした髪飾りを身につけている。
茜ちゃんと同じ衣類を身に纏っており、色使いが対称的になっているのが特徴で、ここまで情報があるともう間違えようがない。この子は琴葉姉妹の妹である葵ちゃんである。
「別になーんも変なことしとらんよな? マスター」
「あ、あぁ……まぁ」
変なことの基準が分からないが、いきなり抱きついてくるのは葵ちゃんもやってるから大丈夫だろう。なんなら妹の方は抱きつきに加えて匂いも嗅いでたしな。
あとは……キスか。これはちょっと引っかかりそうな気もするが、まあ黙っていれば問題ないだろう。茜ちゃんもわざわざ葵ちゃんに言わないだろうし。
「マスターがこれは夢だって言い張るから、分からせるためにちょーっとちゅーしただけやもんな?」
ズコーッ!
それ言っちゃうんかい!
茜ちゃんが爆弾発言をした瞬間だった。
「マスター……それ本当?」
俺に抱きついたまま顔をこちらに向けてくる葵ちゃん。
だが、その表情は冷たく瞳からは光が失われている気がした。
「えーっと、そう、だね……。仕方なかったというか、茜ちゃんからしてきたというか……」
「……ふーん、そっか」
言い訳がましく茜ちゃんとキスをしたことを認める。でも事実ではある。嫌だったかどうかはさておき、俺はいきなり唇を奪われた側の人間だからね?
葵ちゃんはじっと俺を見つめたままなにかを呟く。
「……ずるいずるいずるいずるいずるい。私もマスターとちゅーする。いいよね?♡」
「えっ」
なんか今とんでもないこと言わなかったこの子? そう思ったのと、葵ちゃんが俺の顔へ両手と顔を近づけてきたのは同時だった。
「んっ……んんっ」
唇同士が触れ合い、葵ちゃんとキスをする。
茜ちゃんとキスをした時はまだ夢かどうか判断ができていなかったのと、いきなりだったからそこまで接吻を堪能できなかったが、今回はこれが現実であることを理解していてなんとなく葵ちゃんからキスをしてくるだろうなっていう察知できていたため、今この状況を飲み込む余裕はあった。
葵ちゃんの顔近い……てかクッソ美少女すぎん? あとめっちゃ良い匂い……。
「ちゅっ……ん、れろっ……」
「!!?」
調子に乗って葵ちゃんとのキスを堪能している時だった。
蠢くナニかに唇を舐められ、俺は思わず口をほんの少しだけ開けてしまった。その小さな隙を
「れろ、ぺろっ……ちゅるっ……んーっ、ちゅっ」
中へと入ってきたそれ――葵ちゃんの舌は俺の舌と絡め、歯茎を舐め、口内を蹂躙されていく。
一通り駆け回った後、再度舌同士を絡めていく。……そろそろ息が苦しい。
「ん、ぷはぁっ……」
そう思った瞬間、葵ちゃんが離れる。まるで俺の限界が近づいていたのを分かっていたかのようにタイミングが絶妙だった。
俺の口と葵ちゃんの口の間に銀色の橋が架かっていた。それを見て、いきなり舌を入れられてビックリしたし最後の方は息苦しかったけど、悪くなかったな……気持ちよかったなと思うのは男の性なのだろうか。
「ちょお!? 葵、たしかにちゅーはしたって言うたけど、べろちゅーまではしてへんで!?」
「そんなの知らなーい。お姉ちゃんはマスターの初めてを奪ったんだから、これくらいはしていいでしょ?」
「んなこと言うたら、葵はマスターの初べろちゅー奪っとるやんか! ずるいで!」
「せっかくの初キスだったのに、ディープキスできなかったビビりなお姉ちゃんが悪いんだよ~。マスターも私とのキスの方が気持ちよかったでしょ?」
「えっ」
またしても茜ちゃんと葵ちゃんが言い争っているかと思えば、いきなり俺に流れ弾が飛んでくる。
正直なところ、気持ちよかったのは葵ちゃんとのキスである。だって、茜ちゃんとのキスは状況をまだ飲み込めていない時でいきなりだったから堪能する余裕なんてなかったんだから。
「えーっと」
だからといってバカ正直に、葵ちゃんの方が良かったとは言えない。なんで言えないのか、具体的には分からないが俺の第六感がそう判断を下していた。
「葵がいじわるなこと聞くから、マスターが困っとるやん」
この場をどう切り抜けようか困っていると、意外なところから助け舟が来た。
「ふふ、大丈夫やでマスター。葵とのちゅーの方が良かったんやろ? 分かっとるで」
どうやらさすがに気持ちよさを比較した際に、自身の時の方が見劣りすることを自覚しているようだ。
「せやから、今からウチが上書きしたるな?♡」
だが、その先の彼女の行動までを読むことはできなかった。
またしても俺の顔へ両手を添えて、顔を近づけて、やがて唇同士が触れ合う。
「んーっ、んっ……ぺろっ、んちゅっ……ちゅるっ、ちゅっ……」
最初は、さっき茜ちゃんとしたような軽いキス。だが、それはすぐに豹変し、彼女の舌が俺の唇をなぞり、やがて上唇と下唇の間に挿し込んでこじ開けられる。
あっという間に彼女の舌が口内に入ってきて、俺の舌と挨拶代わりかのように絡めていく。そのまま周りを散歩されて、再び俺の舌のところまで戻ってくる。そして今度は濃密に舌同士を絡め合わせていく。
「れろっ、ちゅっ……ん、ぺろっ……ちゅむっ……」
水音がどんどん大きくなっていき、もう俺の唾液と茜ちゃんの唾液が混ざりすぎて、どうなっているのか分からなくなってきた。
そしてすぐ目の前にある茜ちゃんの顔を今一度見てみると、彼女もまた美少女すぎた。まあ、葵ちゃんとほぼ同じ顔をしているんだから当然っちゃ当然だが。
あと言わずもがな良い匂いである。葵ちゃんは清涼感のあるクールな感じの匂いに対して、茜ちゃんはザ・女の子っていう感じの匂いで、嗅いでいると安心するというか、別のところが元気になりそうなそんな感じの匂いである。
「んっ……ぷはっ……」
茜ちゃんとの濃厚なキスを味わいながら、彼女の顔の良さや匂いを愉しんでいたら、顔が離れてキスが終わった。
「マスターとべろちゅー……最高やったで……♡ これでウチの方が気持ちよかったやろ?」
「お姉ちゃんずるいよ! それ2回目のキスでしょ!? 私まだ1回しかしてないんだよ!?」
「ずるくありませーん。葵は1回目のちゅーが濃厚やったんやから、これでようやく対等なんやで?」
「でも回数でいったらお姉ちゃんの方が有利だよね? 対等じゃないよね?」
またしても姉妹喧嘩が始まる。なんか琴葉姉妹ってめちゃくちゃ仲良いイメージがあったけど、意外とこういう風に言い争ったりするんだな。まあ、ボイロ劇場とかでは姉妹愛を超えて姉妹百合レベルのものもたくさんあったしな。そういう印象がついただけで、現実はこんなリアルな感じの仲なのだろう。まあ喧嘩するほど仲が良いともいったりするし関係が悪いわけではないんだろうけど。
……ていうか、そもそもだ。この言い合いの発端って、俺とのキスがどうこうっていうところから来てるよな?
冷静に考えてみるとこの姉妹、俺への好感度が高すぎないか? 最初に茜ちゃんにキスされた時は軽く唇同士が触れ合う程度のものだったから、親愛なるマスターに対して起こす行動としてはそこまで違和感を覚えなかった。
だが、葵ちゃんがここに来てから明らかになにかがおかしい。
姉が先に俺とキスをしたことに嫉妬して、妹の方もキスをしてくるのはまだ分からなくもない。だが、当然のように舌を入れるディープキスをしてきたのだ。いくら親愛なるマスターに対してだとしても、そこまでするだろうか。もはや恋人のそれである。
そして姉もそれに対抗をして、1回目のキスとは比べものにならない程、濃厚なキスをしてきた。これも並程度の好感度では考えられないだろう。
言葉を選ばずに言うとしたら、この姉妹、普通じゃない。まだなにか……この世界での重要なことが隠されているような気がする。
「ということでマスター、もう一回私とキスしよっか♡」
「えっ……んーっ!?」
そう考えごとをしていると、葵ちゃんに再び唇を奪われる。
ほら、これもよく考えたらおかしいだろう? 普通、マスターに対してこんな朝からバカップルみたいにキス連発してこないからね?
それからというものの、葵ちゃんとのキスが終われば次は茜ちゃんと。そして言い合いの後、また葵ちゃんとキス、次に茜ちゃんと。それが何度か繰り返された。
明らかにおかしい状況ではあるが、それとは裏腹に美少女姉妹と何度も濃厚なキスをするもんだから、あそこが完全に元気になってしまったのだ。
これは仕事に行く前に1発抜いておかないとまずいかもしれない。……ていうか、この世界では俺ってなんの仕事してんだ? あと、茜ちゃんと葵ちゃんがこんなにもくっついている状況で、自家発電なんてできるのだろうか。
……この世界の謎は、まだまだ多い。