ボイスロイドが実在する世界に来たらヤンデレハーレムだった件について 作:美月海月
「はぁ……はぁ……」
琴葉姉妹からの連続キスがようやく収まった頃、俺は疲れ切っていた。
異世界転移してきたばかりで慣れない環境の中で、いきなり美少女2人からキスされまくったら脳がパンクするのも無理ないだろう。
脳と口(あと舌も)は疲れているというのに、下半身のアソコは元気になっているという矛盾した身体の状態を尻目に、新たに浮かび上がってきた疑問を解消すべく、2人に質問をする。
「そろそろ出勤しないといけない時間な気がするんだけど、俺ってこの世界ではなんの仕事してるの?」
悲しいことに生粋の社畜なので、体内時計がそれなりに正確な自信があるのだ。
んで、その体内時計によれば現時刻は、普段ならもうそろそろ家を出ないとまずい時間だと読んでいる。
だが、それはこの世界でも元いた世界と同じ仕事をしていればの話である。だからそれも含めて、聞いてみることにしたのだ。
「ん? なに言うとるんや、マスター?」
「マスターはお仕事してないでしょ?」
「はい?」
しかし、返ってきた答えは想像を超えるものだった。
仕事してない? 無職……ってコト!? あ、ちょっと待てよ。彼女らは俺のことをマスターと呼び、その彼女たちはボイスロイド。つまり彼女たちをこう、上手いことなんかやって活動してる的なそんな感じじゃないのか?
「マスター、ずっと会社辞めたいとか、一生働きたくない~って言っとったやん?」
「だからこの世界ではマスターはお仕事せずに私たちとずっと一緒にいるんだよ?」
「えーっと、それはつまり茜ちゃんや葵ちゃんと一緒になんかの活動をして生計を立ててるって感じなのかな?」
「いや、特にそういったことはしとらんで」
「まあ強いて言うなら、私たちと一緒にいて満足させるっていうのがマスターのお仕事かな?」
「えぇ……」
全然そんなことはなく、本当にこの世界での俺はなんにもやっていないらしい。ガチの無職らしい。
たしかに仕事したくねーと散々、口癖のように言ってきたが、いざ本当に職がないとなるとそれはそれで困惑するというか……っていうか、それよりも仕事してなかったら生活費とかどうすんだ!? 俺、貯金そんなにないぞ!?
「ちょっと待ってくれ。働いてないとなると、お金とかどうすんだ!?」
そう慌てふためきながら2人に聞く。聞きながら、改めてこの部屋の全体像が視界に映る。この部屋広すぎるし、明らかに複数ある部屋のうちの1部屋っていう感じがするから、この家恐らく相当でかいぞ? 賃貸なのか持ち家なのか分からないが、家賃やらローンやらを払える気がしないんだが。
「お金? あぁ、そんなもんマスターは気にせんでええよ」
「お金なんて、私たちがちょっと本気出せばいくらでも稼げるからね」
「え……どういう意味だ?」
彼女らがいくらでも稼ぐってどういうことだ?
……ま、まさか!?
美少女が簡単にお金を稼ぐ方法……嫌な予感しかしない。
「ま、待ってくれ! いくら簡単に稼げるからってそんなことはしないでくれ!」
「「え?」」
それは身体を売ることだろう。こんな美少女姉妹が売春なんてすれば一瞬で稼げるだろう。
「そんなことしてお金を稼ぐくらいだったら、俺が仕事するから! やめてくれ!」
「えーっと……マスター、ウチらがなにしとると思っとるん?」
「え? だから、その……あれだろ、身体を……」
「……マスター、私たちがそんなことすると思う?」
「いや……しないと信じたいけど、でもいくらでも稼げるとか言うから……」
そりゃあ俺だって、茜ちゃんと葵ちゃんがそんなことしてお金を稼いでいるなんて信じたくもない。
「はぁ~……マスター、勘違いしとるみたいやから言っとくけど、断じてそんなことはしとらん」
「そうだよ。大体、私たちがマスター以外の人に身体を許すわけないじゃん」
「せやで。ウチらの身体はマスター専用なんやからな♡」
「なんなら今からマスターのためにちゃんととっておいてあること、確認してみる?♡」
「そ、そうなんだ。分かった、信じるから、ステイ」
どうやら本当に
葵ちゃんが証明しようかと言わんばかりに自身の服を脱ぎかけるが、俺はそれを慌てて止める。
「じゃあ一体、なにをして稼いでるんだ?」
「おっと、それはいくらマスターの質問といえど、ちょーっと答えられんなぁ」
「まあ、私たちボイスロイドは、この世界では超高性能アンドロイドっていわれてるからね。だから私たちからしたら、株とか仮想通貨とか余裕なんだよね」
「葵、それもうほぼ答え言っちゃってるやん……」
「な、なるほど……」
株とかそういうのはよく分からんが、どうやらすごい方法で稼いでいるんだな。そんな世界で稼いでるんだったら、俺にお金の心配をしなくていいと言うのも分かるし、この家のでかさも納得がいくな。
ていうか、超高性能アンドロイドって言ったか? 人間ではないのか? でも、彼女らの体温や匂い、それにキスをした時の唇や舌の感触は、人間だと思えるようなモノだったんだが……。
「えっと、アンドロイドっていうことは、君たちは人間じゃないってことなのか?」
「せやなぁ……まー厳密に言うと人間ではないな。でも、身体は人間と全くおんなじなんやで!」
「そうそう、そこが私たちが超高性能って言われている所以の1つだね」
「そうなんだ……なんかすごいな……」
なんというかこの世界の技術力というか、科学というか、色々とすごすぎて小学生並みの感想しか出てこない。
まあ要するに、株とか仮想通貨が余裕ってことから内側の深部とかそういう部分はアンドロイドだけど、肉体的には普通の人間と変わらないモノを持っているっていうことだろう。
「ほら……見て、マスター。ちゃんと女の子の身体、してるでしょ?♡」
「えっ……ちょっ!?」
自分の中で茜ちゃんたちの正体を整理していると、突如葵ちゃんが自身の服をたくし上げてこちらへ見せつけてきた。
そこには白く透き通った綺麗な肌に、それと対を成すように身につけられた黒色の下着。……ドエッッッッッッ!!
「な、なななっ!?」
「あ、ずるいで葵! ほらマスター、ウチのもちゃんと見てや♡」
「ちょちょちょ!?」
いきなり葵ちゃんにエチチな部分を見せられてフリーズしていると、それに呼応するかのように茜ちゃんも自身の服をたくし上げて、俺へと見せつけてくる。
悲しいことに俺は男だ。いきなりのことで脳内CPU使用率が100%に達しているというのに、茜ちゃんの方に視線が持っていかれる。
こちらも妹と同じく硝子のように透明感のある肌に、サーモンピンクカラーの下着。……えっっっっっっっど!!
「触ってもいいんだよ? マスター♡」
「好きにしてええんやで? マスター♡」
たくし上げ&下着姿を見せつけながら誘惑してくる琴葉姉妹。や、やめてくれ……! ただでさえさっきのキス責めで股間が元気になっているんだ! これ以上やられたら本当にまずい!
……あれでも、俺この世界では仕事してないんだったら、別にこのまま2人の誘惑に乗ってこのままコッショリしちゃっても時間的には問題ないのでは?
いやでもダメだ! 初めてはもっとムードのある状況でヤりたい! ここで姉妹の誘いに乗るのは時期尚早だ!
この場を切り抜けるためになにか……。そうだ、そういえば――。
「あ、お腹が空いてきたな~!? 朝ご飯が食べたいな~!?」
葵ちゃんがこの部屋に来た時に、茜ちゃんが今日の朝食当番は葵ちゃんだって言っていた気がする。つまり、朝食は用意されているということ。ちょうど腹も減っているし、この状況から抜け出すには最適な方法だろう。
「あ~、そういえば朝食準備したんだった」
「ようやくマスターに逢えたから、ついついテンション上がりすぎちゃったな」
たくし上げていた服を元に戻し、ベッドから下りる2人。どうやら助かったようだ……。
俺も続いてベッドから下りようとする。この家の間取りが分からんし、この2人についていかないとな。
そこでふと……本当になんとなしに思い浮かんだ疑問を、琴葉姉妹に投げかける。
「そういや……
その瞬間だった。
気づけば視界は天井を向いていた。
起き上がっていたのに、なぜ上を向いているのか。そこで、俺はなにかに突き倒されてこのような体勢になっていることに気づく。幸い、ベッドの上だったので身体に痛みはない。
一体なにが起こったのか。それは簡単なことだった。
視線をほんの少し下へずらすと、そこには茜ちゃんと葵ちゃんが押し倒す形で、上から俺を見ていた。
「なぁ、マスター? なんで今ウチらとおるのに――」
「他の
――あぁ、理解した。
なぜ濃厚なキスを何度もしてきたのか。
なぜお金の心配をしなくていいと言ったのか。
なぜ服をたくし上げて誘惑をしてきたのか。
……そして、なぜ今、光を失った瞳で俺を見ているのか。
全てが繋がった。
この世界で隠されていた重要なことが、ようやく
この姉妹、琴葉姉妹は――。
――ヤンデレなのだ。