ボイスロイドが実在する世界に来たらヤンデレハーレムだった件について 作:美月海月
部屋を出ると、あまりの光景に俺は思わず息を呑んだ。
さっきまでいた部屋の広さからある程度察してはいたが、やはりこの家はでかい。でかすぎる。豪邸である。
俺が元いた世界で住んでいた部屋は8畳の1Kという、ごくありふれた一人暮らし用の間取りだった。だから、居室を出れば短くて狭い廊下に、キッチンやらトイレやら洗面所があるのが見慣れた光景だった。
だが、この家では迷路のような廊下に、何個も部屋があるのだ。もうこの時点で、俺の実家よりもでかいのが分かる。
少し歩くと階段が見えてくる。下と上の両方がある。ここがもし2階だとしたら、この家は3階建てなのだろうか。
階段を下りて、すぐ近くにあった扉を葵ちゃんが開ける。ここがリビングダイニングルームだろうか。
部屋に入ると、俺はまたもや驚愕した。広すぎるだろ!? さっき俺が寝ていた部屋も相当広かったが、この部屋はそれ以上に広い。まあリビングダイニングだからそれは当然なのかもしれないが、だとしても広すぎるな! 上にはシャンデリアなんかもあるし、金持ちの家すぎる。見たことない世界だよこれは。
「ん」
部屋の大きさに驚いていると、いい匂いが鼻腔をくすぐった。葵ちゃんが作った朝ご飯の匂いだろうか。
「ほら、こっちだよマスター!」
葵ちゃんに促されてついていくと、これまたでかいダイニングテーブルがあり、そこに3人分の食事が置かれていた。
その食事内容も朝ご飯にしては相当豪華であり、オムレツにサラダ、スープという献立だった。
社畜時代は朝食を食べる暇なんてなかったので、基本的には食べないか、食べてもバナナ1本とか簡単なもので済ませていたから、朝からこんな立派なメニューが食べられることに感動する。
同様のメニューが3人分用意されていたが、どれが俺の分なのかちょっと見れば分かった。なぜなら、俺の分であろうオムレツにケチャップで「マスター♡」って書かれていたからだ。定番ではあるが、実際にされるとちょっと嬉しいな。思わずニヤけてしまう。
ちなみに、それ以外の茜ちゃんのと葵ちゃんのオムレツにはなにも書かれていなかった。
「お~、気合入っとんなぁ葵」
「そりゃそうでしょ、マスターに食べてもらうんだから半端なものなんて出せないよ」
「マスターが来る前の、ウチらに出しとったんはもっと質素な感じやったのになぁ」
「別にお姉ちゃんたちには気合入れる必要もないからね」
どうやら俺のためにこんな豪華な食事を用意してくれたらしい。
というか今、お姉ちゃん
「さあさあ、マスター! 早く食べよ!」
「そうだね、頂こうかな」
俺たち3人は席につく。俺の隣に茜ちゃん、俺の前に葵ちゃんという配置である。
「「「いただきま~す」」」
手を合わせて食事を始める。
俺は最初にサラダから手を付けることにした。グリーンサラダにビーツドレッシングがかかったもので美味そうだ。別に野菜嫌いというわけではないが、社会人になってからというもの野菜不足であることを否めなかったので、こうして野菜をたっぷり摂取できるのは純粋に嬉しい。
シャキシャキとした食感に、野菜の瑞々しさ、ドレッシングの甘みとコクが、舌の上で踊る。美味い!
「……ふふふ」
「……?」
久しぶりの野菜を愉しんでいると、目の前の葵ちゃんが笑ったような気がした。
なんだ? そんなに俺、美味そうに食ってたのか? まあ、事実だから否定しないし隠すこともないんだけど。
サラダを一通り愉しんだ後、次にオムレツに手を付ける。
ふんわりとした卵に、中には合挽き肉と玉ねぎが入っており、それに加えてとろけたチーズが絡んでおりめちゃくちゃ絶品だった。美味すぎる!!
ここまで美味いオムレツは食ったことがない。あまりの美味しさに俺は思わずがっつく勢いで、オムレツを食べ進めていく。
「……はぁ、はぁ」
「??」
オムレツに夢中になっていると、目の前からいきなり荒い息遣いが聞こえてきて、俺はそちらへふと視線を向けた。
葵ちゃんが息を荒くしながら、モジモジしながら俺の方を見ている。顔も心なしか少し赤らんでいる気がする。な、なんだ、どうしたんだ一体。
「ど、どうしたの葵ちゃん」
「いや……気にしないで。ふふふ……」
いや気になるよ!
あれか? 俺が美味そうに、自分の作った料理を食べているから興奮しているのか!? まあヤンデレならそれくらいおかしくない気もするけどさ。
どこか引っかかりながらも、俺はスープに手を付けることにした。
これはトマトスープか。これも具材がたっぷり入っており、美味しそうだ。
スープをすくって口に含むと、甘酸っぱくて優しさを感じる温かさが口いっぱいに広がっていく。もちろんこれも美味しい!
「ふ、ふふふ……ははっ……ハァハァ……」
「……!?」
トマトスープに舌鼓を打っていると、葵ちゃんが笑い出す。さすがに俺はびっくりして、彼女の方を見る。
紅潮した頬に両手を当て、息を荒くして俺の方をじっくりと舐め回すように見ていた。
「ハァハァ……私のが、マスターの中に……どんどん……♡」
「え」
今、なにか言ったか?
そこで、俺は
――葵ちゃんの左手の指に絆創膏が貼られていることに。
料理中にでも切ってしまったのだろうか。いや、料理中ではなく、それ以外の時にやったのかもしれない。
だけど、先程から俺が葵ちゃんの作った料理を食べる度に、興奮していく彼女の様子を見るに、ある1つの答えしか脳裏に浮かんでこない。
まさか――。
「あー、葵、やっぱりやったかぁ」
「茜ちゃん、それってどういう」
「ん、まあ要するに、とびっきりの
「…………」
はい、確定ー!
とびっきりの隠し味って、要は
……まあ、ヤンデレならそれくらいするか。それに葵ちゃんみたいな美少女のモノなら、隠し味程度に入ってるくらいなら別にそんな気にならんしな……。ていうか、ぶっちゃけ分からんし。ただのクソ美味い料理の味しかしないし。
「しっかし、葵ばっかずるいなぁ。ここらでちょっとウチも好きにさせてもらおか」
「え?」
「マスター……♡」
「えっ、ちょっ」
葵ちゃんの隠し味になんとか理解を示そうとしていた時だった。
隣に座っていた茜ちゃんが、いつの間にか俺のすぐそばにまで接近していた。
なにをされるかと思いきや、いきなりキスをされる。
「むぐっ、んー!?」
「んっ……ちゅっ……むちゅっ……」
「んんー!?」
唇同士が重なったかと思えば、そのまま茜ちゃんの舌でこじ開けられ、そのまま彼女の舌と一緒に
ふにゃふにゃになったそれは、茜ちゃんの舌と共に口の中で踊り――これはオムレツ!?
口の中に段々と広がっていくその風味が、茜ちゃんの咀嚼したオムレツだと気づいた時には、俺はそれを嚥下していた。
「ちゅっ……れろっ……んんっ……ちゅるっ、ん、はぁっ……」
茜ちゃんから口移しされたオムレツを飲み込んだ後も、彼女は離れる様子はなく、そのまま俺とのディープキスを愉しんでいた。
しばらくして、ようやく茜ちゃんが俺から離れていく。
「はぁ、はぁ……ふふ、葵の隠し味とは比にならん程の、ウチの唾液たっぷりのオムレツ美味しかった?」
「あ、あぁ……」
正直なところ、味はあまり分からなかった。
それでも、茜ちゃんのような美少女に濃厚なキスと共に口移しをされたという事実が、味の良し悪し以上に興奮したというのは事実だろう。
ていうかちょっと待てよ。こんなことしてたら、きっと妹の方も……。
「お姉ちゃん……よくも私の前で、そんなことできたね……?」
「なんや嫉妬しとるんか? でも葵だって、マスターの料理にたくさん入れとるやろ? 血とか」
「それはそれ、これはこれ! だよ! 私だってマスターに口移しできるんだったら、したいに決まってるじゃん!」
「もー、ワガママな妹やで、ほんま」
「うるさいよお姉ちゃん。……ていうことで、マスター?♡」
「うっ……は、はい……」
朝から何度か見た姉妹の言い合いの後に、葵ちゃんのターゲットは俺へと向けられる。
やっぱりこうなりますか……。
「んー……♡」
「んむっ」
気づけば俺のすぐ目の前にまで来ていた葵ちゃんに、唇を重ねられそのまま優しく舌で俺の口を開けられる。
「くちゅっ……ん、ちゅる……ちゅっ……」
葵ちゃんの舌、唾液と共に、ドロドロになったモノが送り込まれてきた。しばらくして、オムレツの風味が口内に広がっていく。だが、それ以上に葵ちゃんの匂いも相まって、彼女に支配されているかのような錯覚に陥ってしまう。
依然として舌で入口を塞がれているので、口移しされた正真正銘の
「んくっ」
「……んっ♡ れろっ……ちゅぱっ……ちゅるるっ……」
俺がそれを飲み込むと葵ちゃんはあからさまに嬉しそうな反応を示し、そしてそのまま茜ちゃんの時と同じように激しいディープキスをして愉しみ、やがて離れた。
「はぁ……はぁ……これ、やばいね……お姉ちゃん」
「せやろ? 葵もこのヤバさ知ってもうたか」
「お姉ちゃん、1つ提案があるんだけど」
「なんや? まあ大方、言いたいことは分かるけどな」
姉妹からの2連続口移しに興奮しつつも、疲労感に包まれた俺を尻目になにやら怪しげな話をする2人。
「私たちの残り、全部マスターに口移ししてあげない?」
「考えることは一緒やな。もちろんええで」
「こういうところはやっぱり私たち双子なんだよねぇ~。……てことで、マスター♡」
「楽しい楽しい朝ご飯さんの時間やで♡」
……その後、俺は琴葉姉妹からの口移しで朝食を済ませることとなった。
料理そのものの味はよく分からなかったが、姉妹の甘美な唾液の味だけは確かに伝わった。
そして朝食が終わる頃には、再びアソコは元気になっていた。せっかく飯のことを考えて鎮めたというのに……。それと同時に、この状況下で興奮してしまうのだから、俺ってやっぱり男なんだなぁと思い知らされるのであった。