「……ほんとう、に。本当に──ノモクを、助けられるの?」
意識を取り戻したらしいノルンの問い。それに頷きを返して、急いで準備に取り掛かる。
チィファンがどれだけルキフを足止めできるかという問題もあるし、何よりノモクの魂が抜け切ってしまってはどうにもならなくなるからだ。
それに、今はノルンから結ばれた運命がどうにか引き留めてこそいるが……世界の内側で魂単体が存在する事はできない。つまり、ノモクから抜けた分の魂は世界の外側に曝されているのだ。その影響なんて考えるまでもない。
手遅れになる前に、急がなければ。
懐からダガーを取り出し、右手の平に傷を付ける。
横一文字に引かれた線から、滲む赤色。地面へと手を付けて、それを顔料代わりに線を描く。
まずは外周の円を、そして内側に必要な記号と文字を。
同時に刻印を励起させ、傷は塞がないようにしながら血液だけを補充。手早く、しかし丁寧に。脳内の完成図を出力する。
魔法陣、というものがある。
剣と魔法なファンタジー世界にありがちなソレだが、この世界においては魔法陣は『現代魔法の派生形』という扱いになっている。
つまりは、現代魔法を構成する三要素──魔力、魔素、詠唱──のうち詠唱が陣に変わった形だ。
で、ここで重要なのが、現代魔法に魂に干渉する力はないという点。まあ古代魔法じゃないから当然なんだが。
とはいえ、今この瞬間に限ってはそれでは困る。
運命の操作、すなわちノルンとノモクの繋がりを手繰って彼の魂を呼び戻す事まではオレができるが、その後の魂の再定着に関してはオレにはできないからだ。
そもそも、魂への干渉は紅眼の領分。金眼を持つオレには運命の操作はできても、魂の操作はどう足掻いても不可能だ。
例えるなら、水面に映る月を整形しようとする事に等しい。
じゃあノルンならどうなのかって話になるが、こっちもこっちで難しいのが現状だ。
ノルンには師匠が……正確にはその協力者が、だが。ともかく、追加で運命を編み込んであるってのは既に言った事だ。その役割は本来存在し得ないはずのノルンを世界に繋ぐための添え木にあるんだが、同時にコレは一種の殻にもなっていたりする。
つまり、ノルンが本来至り得る可能性を追加の運命で封印する事で、世界が異物を排斥しようとする働きを抑制しているのだ。
彼女の生い立ちを思えば間違いなく必要な事ではあったのだが、コレが原因でノルンの紅眼の力は発現していない。
今から師匠の編んだ運命を解くから、その瞬間に覚醒はするだろうが……すぐに使いこなせるようになるってのは楽観的に過ぎるだろう。
──で。ここで、魔法陣の話に戻るんだが。
魔法陣は現代魔法の派生形ではあるものの、一つだけ抜け道が存在する。つまりは、陣を構成する文字だ。
少し話は変わるようだが、実はこのテアートルムにおいて使用されている文字は一度完全に変わっている。1,000年前、“神代の終わり”が訪れた頃だ。
さて、じゃあ。
魔法陣にその旧い文字を、つまりは運命が設計される以前、魂しか世界に存在しなかった頃の文字を使ったとしよう。
その結果は、どうなるだろうか。
これが抜け道。悪く言えばバグ技、グリッチとも呼ぶ。
古代魔法は使えないがその効果が欲しい、そのための方法だ。
まあ、正直に言えば気軽に使っていいようなモノではない。
師匠の魔道具もオレに刻まれた刻印も、それにコレも、見せれば見せるだけ敵に知識を与える事になる。ぶっちゃけ開示し過ぎだ。
大盤振る舞いにも程がある。
あるが──ハン、いいだろうよ。
それもまた、だ。
大盤振る舞い、いいじゃねえか。上等だ。
優先順位を履き違えるつもりなんぞ欠片もないが、救うための労力を惜しむつもりもない。
「──始めるぞ」
少女の首が縦に動いた事を確認し、運命を手繰る。
魔法陣の方はまだだ。ノルンがノモクのアンカーとしての要件を満たせるまで……つまりは師匠が追加で編んだ運命を解くまで、出番は来ない。
「我は異端者。我は破綻者。法則を手繰る者にして、常理に牙剥く叛逆者なり」
光が舞い上がり、薄れて散って行く。
揺らぐ燐光は剥離した運命の欠片。淵源たるは存在し得ないはずの魂を宿す少女。
眼を、凝らす。
「万象は流れ、万物は転じる。則ち万化、流転の法なり」
慎重に、運命を解く。
できる限り速く、しかし焦らないよう。落ち着け。解く事に関しては、オレは間違いなく誰よりも上手くできる。
「世界の幕開けより幾星霜──今、新たなる流転を齎さん。認めよ。満たせよ。新たなる法則を。新たなる生命を。新たなる息吹を」
「……っ!」
ノルンから、小さく声が漏れる。
負荷が掛かり始めたか。ただ、ここからが本番だ。耐えてくれよ。
「【
解く。
追加で編み込まれていた運命を。今この瞬間、世界からの排斥に耐えられるまで成長できるよう、添え木として結ばれていた運命を。
解く。
解いて。
「あぁぁぁああああっ、ぐぅっ! うぅぅうッ──それ、でも!!」
目が眩む。
爆発的な光の奔流。紅に切り替わった燐光が嵐のように荒れ狂い、周囲一帯を覆い尽くす。
溢れ満ちるは鮮血にも見紛う極彩。異物を排斥せんとする世界の圧力に砕けた魂の欠片であり──単一生命でありながら世界に対抗せんとする命の煌きでもある。
げに恐ろしきはその純度と、なによりもその総量だろうか。
魂が単体では存在できないはずの世界の内側でなお、はっきりと目に映るほどの純度。そして砕け散っただけの魂の欠片で視界一面が埋まるほどの量。
流石に、想定外だ。
あるいは……その苦難に満ちた歴程、彼女の人生を構成する運命の強固さが、彼女の魂がここまで育つまで護る殻となっていたのかもしれないが。
真相がどうであったとしても、こうなってはオレにできるのは祈る程度だ。祈る対象がいるのかと問われれば、答えには困るんだが。
触れられず、音もなく、しかし眼には映る。
ただ見る事しかできない燐光。
雪原を行く吹雪のようにも、あるいは海の中を行く魚群のようにも思える、しかしそれとはかけ離れた紅色が視界の全てを眩ませる。
──ああ。美しいな。
地面も壁も、空でさえ関係なしに渦巻く様は、一周回って清々しく思えるほどに綺麗だ。
あるいは、吹雪は吹雪でも花吹雪と形容する方が近しいのかもしれない。妖しくも艶やかに美しく、近いのに遠い様は非現実感をどうしようもなく湧き上がらせる。
まったく。オレの生まれ育ったこのテアートルムがファンタジー世界だってのは間違いないが、それにしたって幻想的に過ぎる光景だ。
こんな場面じゃなけりゃ、見入ってしまっていただろうと断言できるぐらいには。
変化。
方向も速度も無秩序に渦巻いていた奔流が、その動きを有機的なそれへと切り替える。
球体を描きつつ、中心へと収縮するように。少年の手を握って俯く、白髪紅眼の少女の下へと。収縮し、収束し──そして。
最後に大きく、紅色が弾けて。消え去る。
今度こそ完全に、視界が眩んで見えなくなる。視点をズラしても何も映らない。描写されない。音も聞こえず、本当に一切の探知が働かない。
どっちだ。
ノルンは、世界からの排斥に耐えられたのか? それとも……
いや。そうじゃない。
オレはオレの為すべきを。迷ってる暇があるなら、成功した前提で行動を起こすだけだ。
「断つは一つ。プロクルステスの寝台、則ち常理なり」
描いていた魔法陣を励起させる。
後はノルンとノモク次第だ。
どうか、頼むぞ。
「────」
嫌に長く感じる数秒間を、意識的に深く呼吸をする事で凌ぐ。少しずつ、視界が機能を取り戻し始めた。
紅色が消え去り、元のスルヂェレのスラム街が映る。汚れの目立つ街並み。
その、中には。
誰も、いない。
「失敗、した?」
──足音。背後。
マッズ、油断し過ぎ、た……?
「──ノモク。私、謝らさせてほしいの。あなたから家族を奪ってしまった事。あなたから故郷を奪ってしまった事。そして……そんななのに、あなたに甘えてしまっていた事」
「あはは。それなら、僕もだよ。僕も君に甘えていた。ノルンとの曖昧な関係に甘えていた。踏み込もうとせずに、ただ君を生きるための言い訳に使っていた」
声は、二つ分。
幼さの残る、少年と少女の声。
「ノルン。僕、お礼を言わせてほしいんだ。僕を離さないでいてくれたこと。僕を呼び戻してくれたこと。僕と出会ってくれたこと。僕に──綺麗なものを、思い出させてくれたこと」
「お礼を言いたいのは、私の方だよ。私と出会ってくれて。私に温かさを教えてくれて。こんな私の傍に居てくれて。──私の手を、握り返してくれて」
振り向いた、その先には。
割れた雲間から覗く満月に照らされる、二つ分の影が。しっかりと、その手を強く握り合った少年と少女の姿が。
そこに。
「ね、ノルン。僕と君の間には、色んなことがあった。君に抱く感情は複雑で、綺麗なものばかりじゃない。でも──それでも僕は、君の傍に……ううん、君の隣にいたいと思うんだ。だめかな?」
「──っ。いい、の? 私は、さっきも言った通り、ノモクの故郷を滅ぼして」
「うん」
「ノモクの家族を……殺し、たんだよ? それでも」
「いいんだ。僕はそれでも、ノルンのことを好きになったんだから。だから、それでいいんだ」
──おい。嘘、だろ。
見て、分かった。ノモクとノルンの間に編まれていた運命、その結び目が無くなりつつある。
いや、その表現は正確であっても適切ではない。だって、二人の
「あの、ね。私も、ノモクの事が」
「ノモク・ウォロフ」
「え……?」
「
一つになっていく。
別々の魂を持つ二人の間に架かる運命が、繋がったまま結び目を消していく。二人がそれぞれに至る事のできたはずの可能性の全てが、たった一つに統合されて行く。
有り得ない。
ノモクもノルンも、金の瞳は宿していない。運命の操作どころか、視認すらできないはずだ。いや、運命の操作ができたとしてもこんな事が起こせるわけがない。コレは、操作の次元など遥かに飛び越えている。
あるいは、逆に、なのか?
ノルンの魂は誕生し得なかったはずの代物で、ノモクの魂は死を迎えたはずの代物だ。二人とも、本来なら有り得べからざる存在である事は間違いない。
故にこそ、束ねる事で世界からの圧力に対抗しようとしている? いや、だとしても有り得ないだろう。
……奇跡、なのかね。
これこそが。
「ふふ、凄い偶然」
「ノルン?」
「実は、私の名前も
「そう、なんだ」
「ね、ノモク。私もあなたが好き。罪悪感は消えないし、一生背負っていくつもりだけど。それでも、好きなの。……私たち、普通じゃ、ないね」
「いいんだよ。きっと、それで」
そうして、遂に。
運命が一つになる。二つの魂の間にある、それぞれの魂を取り囲んでいたはずの運命が。一つに、なる。
それはつまり、彼と彼女は不可分になったという事。
文字通りの異体同心。魂を取り巻く
比翼連理なんて言葉でも生温い。自己の存在の前提に相手を置くという暴挙だ。もう、ここにいるのは二人であって一つでしかない。
そして、それを為した二人もまたその事実を理解しているのか。
繋がれたその手は、固く結ばれていた。
「なんと……っ、なんと素晴らしいのか!!」
不意に、声。
感極まったような、抑えきれない喜悦が滲み出た声だ。出所は、少し離れた辺りから。
「“死”という絶対の悲劇すら乗り越えたと言うのか!? はは、なんだそれは! 初めての輝きだ! なんと美しいのか! なんと眩しいのか!!」
月明かりに浮かび上がるは、黒一色の装束。
カソックに似た印象を受ける、だというのに不吉さが拭えない風貌。
そこで、気付く。
「──ッ! チィファン!?」
見えない。ルキフの足止めをしていたはずの、小さな姿が。
まさか──
「後ろですけど」
「うわビックリしたぁ!?」
だから背後に回んないでくれるかなぁ!? 今マジで斬りそうになったからな!?
「あー……無事で、よかったよ」
「足止め程度なら別に、そんな心配されるほどじゃ。それで、何が起きたんですか?」
「えーっと、そうねぇ……色々と込み入ってるんだけど」
最低限の情報共有をしようとして、しかしそこで言葉が止まる。
ルキフが動き出したのだ。
「となれば──フィナーレは、盛大に!」
指揮者のように、その手が広げられる。
大きく、大きく。そして。
「《
おそらく奴のオリジナルであろう魔法に似たナニカ二つに、五節の火属性魔法が構築される。
感覚からして、オリジナルの片方は魂に干渉している。方向性としては奪い取るタイプか。オレやノルン達はともかく、チィファンにも影響が出ていないのを見るに……対象は魔物に限定していたか。
急に魂そのものから傷付けられたからか、周囲の魔物が狂ったように暴れ始める。
だが、それ以上に問題なのがその後の魔法。
五節で詳細に条件を指定されたソレによって、現れたのは──
「おいおい、勘弁してくれよ……戦闘中に模倣するのかよ」
ノルンが、あるいはveneficaが打ち放っていた、巨大な火球。幾分かは劣化しているだろうが、とはいえ、だ。元の威力を思えば、誤差程度でしかない。
月の光を優に超えた輝度のソレに、またもやスルヂェレの街並みが照らされる。
遠目から見れば、太陽が落ちてきているようにすら見えるかもしれない。
「さあ──勇者という英雄足らぬ君たちは! この苦難を、どう乗り越える!! 見せてくれ、その輝きを!」
これは……流石にマズいな。
火球の方はオレが対処するとしても、錯乱した魔物が厄介に過ぎる。理性がトんで捨て身の暴れ方をしてるせいで、チィファンでも囲まれると危ういだろう。
となれば、被害を逸らしながら削っていくのが最適解──
「──ッ!」
咄嗟に、剣を構える。
チィファンもいつでも駆け出せるよう身構えている。表情を見るに、オレと似たような感じだろう。
気配。圧力。あるいは、プレッシャー。
周囲一帯の重力が数倍にでもなったのではと錯覚するようなソレが、放たれていた。
源は、少年と少女。
「遠いものは、どれも綺麗なものだった。綺麗なものは、いつも遠くにあると思っていた。でも──ようやく分かったんだ。僕の近くにだって、綺麗なものはあるんだって」
少年が。ノモク・ウォロフが、そう言って。
空いた方の手を、掲げて。
「だから……邪魔だよ」
開かれた指先が、握り締められる。
狂乱に陥っていた魔物が、一斉に息絶えた。
魂が刈り取られた……?
紅眼の力だ。
金の瞳は運命を手繰る力を持ち、紅の瞳は魂を手繰る力を持つ。ソレに関しては、神代の終わりから続く一つの法則だ。だが、どうしてそれをノモクが……って、わーお。
ノモクの右眼が、紅く変わっている。ノルンの右眼は黒になっているのを見るに、入れ替わった形か。オッドアイってだけでも相当稀だってのに、それが紅眼でって。しかも後天的にって。
いや、わーお。
なんて、もはや現実逃避になりつつあるオレの驚愕をよそに、今度はノルンが口を開く。
「綺麗なものは、嫌いだった。醜い私を照らし上げるから。いつも遠くに映るばかりだから。でも──それでも。やっぱり、綺麗なものは綺麗だと私は思う。そう思いたい」
渦巻くは魔力。
物理的な圧力さえ伴う膨大な魔力が、そこに。
「ね、ノモク。私、こういう場面でどうしたらいいのか教えてもらったんだ」
「奇遇だね。僕もなんだ」
くすくすと、言葉が交わされる。
日常の一コマみたいな気安さだ。今の状況にさえ目を瞑れば、ある意味年相応とも言えるかもしれない。
コクリと、頷きが交わされる。
浮かび上がっているのは柔らかな笑み。そうして、二人して繋いでいない方の手を上げて──中指が立てられた。
中指が、立てられた?
いや、子どもになんて事教えてるんだよ。
「苦難だとかなんだとか、心底どうでもいいね。僕はノルンと一緒にいるだけだし、そこにアンタは関わって来ない」
「そういう事──《
ルキフの放った火球よりも上。
降り注ぐ月の光が、その光度を引き上げる。
一筋の光条が束なり、光芒となり。
天より続く梯子と成りて降り注ぐ。
そこに音はない。静かに、静かに、どこまでも静かに。
降り注いで、満たして、そして不必要なものだけを消し飛ばす。火球を、魔物を、触れる端から光に溶かして行く。
慈悲深いのか、無情であるのか。
起こされた事象と不釣り合いな静けさは、一枚絵のような美しさを齎した。
……いや、あの。怪獣大決戦か何かで?
そこまで大規模に暴れられたらオレ何にもできないんだけど?
唖然とするしかできない。
オレがノルンから添え木を取っ払ったのは間違いないし、ノモクを呼び戻す助けになったのも間違いないんだけどさ。知らんて。何よこれ。
だからチィファン、そんな『お前今度は何やらかしたんだよ怒ってないからキリキリ吐けよおい』みたいな目を向けないでくれ。
マジでオレも知らないんだよ。何なんだよコレ。こわ。
おぉっとやだなあ握り拳なんて物騒なもの作っちゃって。かわいいおててに血管が浮かんじゃってるよ。ほら、開いて開いて。ね? あ、ビンタの方が好みとかじゃないから。
振り被らないで振り被らないで。
「──ぅ、は、はは! なんという、輝きか! 素晴らしい!!」
…………。
いや、あのさぁ。お前なんで耐えれてんの? 左腕は消し飛んでるしそれ以外の場所もボロボロじゃん。いや、死なれたら困るんだけどさ。
でも言わせて? そこまでの傷を受けたなら死んどけよ、人間として。
んで二人も二人でノータイムで追撃構えてるし殺意高すぎない? おいちゃんちょっとビックリというか状況に追いつけてないよ?
「だが、今回はここまでのようだ。その輝きを再び見られる日を、楽しみにしておこう──《
あ、転移魔法。発動はっや。えぐい勢いで逃げるじゃん。
分かるけどさ。
不意に、光が差す。
月明かりとは違う温かさは、朝陽のそれ。どこかから小鳥のさえずりまで聞こえてきた。……え? さっきまで月出てなかった? え?
いや、えぇ……? マジで知らないんだけど。なになになんなの!? 何が起きてんの!?
「次は、絶対に仕留めるよ」
「うん。首を洗って待ってろ」
ノルンとノモクはなんか綺麗な〆の言葉言ってるし。
朝陽まで出てきてるし。
……どうしよ。オレ、途中からなんもしてねえまま終わっちゃったんだけど。状況の理解が追い付いていないんだけど。
ナニコレ?
スルヂェレの街並みが陽光に照らされはじめた頃。
「わ、私は騎士団長だぞ! こんなことをして──」
「生憎、貴方が“どう”なったのか分かる者はいませんから」
未だ暗きままに照らされぬ領域にて。
「それでは……ごきげんよう」
「が、ガアアァァアアアアア!!!」
「ふふ、実験は成功、と。素晴らしい」
悪意は、蠢いていた。
Tips.存在しないはずの存在がある事は、世界全体にとって大きな意味を持つ