ガチ愉悦部を追放した   作:RH−

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仲間はいるよ。事故も起きるよ。

 

 

──< scene : 2 days before>──

 

 

 セィトゥンが抜けてから一夜明けての、翌朝。ルキフの追放はできたしそろそろ勇者の務めも果たすべきかと、オレは街の出入り口である門の前に立っていた。

 

「あの! あのあの!! なんか人少ない気がするんですけど!? 具体的には二人ぐらい!!」

 

 ガクガクと、身体を揺さぶられながら。

 

「朝から元気だなぁ、チィファン。やっぱ若さって凄えや」

「ナチュラルに私の身長を馬鹿にした!?」

 

 チィファン。

 身長150cmほど。もさもさと外はねする茶髪を後ろで二つ結びにした、黒目の少女。……もはや幼女と言ってもよさそうなほど小柄だが、一応成人はしている。らしい。

 

 ルキフとセィトゥンが抜けた事で、今ではオレの唯一のパーティメンバーになってしまった相手だ。ちなみにオレの最初のパーティメンバーでもあったりする。

 かわいそうに。

 

「……はぁ。それで、結局何があったんですか? みなさん好き勝手するので慣れちゃいましたけど、せめて事後報告ぐらいはしてほしいんですけど」

「んー? まー、そうね。まずルキフをパーティから追放した。ら、セィトゥンもパーティから抜けてった。そんな感じかな」

「わぁ端的で分かりやすい説明──じゃなくて! もうちょっと段階をですね! 刻みましょうよ!! コミュニケーション下手くそですか!?」

「…………」

 

 止めてくれチィファン。その(正論)はオレに効く。

 止めてくれ。

 

「いや、急に黙られても困るんですけど……?」

「まあふざけるのもこの辺りで止めるとして。身の安全は保障できなくなるけど詳細な説明と、そうじゃない代わりにそこそこ雑な説明。どっちがいい?」

 

 なんて言いながら、オレは後者の方しか話すつもりはないんだが。

 こう言っとけば雑な説明の方を選ぶだろうし、万が一詳細な説明を希望されても『チィファン、色々気になる年頃かもだけどな。世の中には知らない方がいい事ってのもあるんだぜ』とかいってうやむやにするつもりだし。

 

 覚悟も何もしてない子を巻き込みたいと思うほど、オレはクズになったつもりはないからな。

 

「えと、参考までに聞いておきたいんですけど。身の危険ってどのくらいなんですか?」

「身柄か命が狙われる」

「身柄か命が狙われる」

「最悪は中央政府の人間が動かされるかな」

「最悪は中央政府の人間が動かされる」

「うん」

「あ、後者の方でお願いします」

 

 おおう、やっといたオレが言うのもアレだけど、すげえ『スンッ』って反応するじゃん。テンションの落差だいじょぶそ? こっちは風邪引きそうだけど。

 ていうか、なんだっけアレ。昔見かけたやつ。あー、あれだ、チベットスナギツネ。いや、とんでもなく乾いた目するじゃん。

 

 ところで『私、一般人なんですけど?』とか言ってるけど、君、勇者パーティの一員だよね。一般人は勇者パーティに入れないんだけど、知ってる?

 なんてまあ、戯言なんだが。

 

「んじゃあまあ言うと、ルキフって色々あるからパーティに置いときたくなかったんだわ」

「はぁ」

「オレの個人的な理由も結構あるけど──放置してたら世界が滅びる可能性があった」

「世界が滅びる」

「それか魔物侵攻(スタンピード)も真っ青な大災害が起こされてた」

「魔物侵攻も真っ青な大災害が起こされてた」

 

 ……ハマってるの? オウム返し。

 

「信じるかどうかは任せるけど、そんなわけでルキフは追放しておきたかったわけ」

「まあ、理解はしました。気になるところはありますけど……突っついたら危なそうなので、ひとまずは納得しておきます」

「で、ルキフを追放した事を伝えたら、今度はセィトゥンが『パーティを抜ける』って言い始めたのよ。相当雑だけどコレが顛末だわな」

「へー。セィトゥンさんって、そんなに仲間思いだったんですね。ちょっと意外です」

 

 ……? 何言ってるんだ?

 

「いやいや、そんなわけないじゃん。ほら、アイツ政府勤めだろ? それ関連だよ。セィトゥンがルキフに仲間意識とかないって」

「……あの。ほらって常識みたいに言われても初耳なんですけど。え、セィトゥンさん中央政府の人だったんですか!?」

 

 あれ。

 

「…………」

「…………」

「やべ」

「ねぇーーー!!!! 小声で言っても聞こえてるんですけど!?」

 

 再びオレの身体に掴みかかり、さっきよりも強く揺らしてくるチィファン。

 必死だなぁ。

 

「ねえ今『必死だなぁ……』とか他人事で考えてますよね!? ヴァンさんのせいなんですよ!?」

「気のせい気のせい。そんなこと思ってないアルよー」

「どこの方言ですか!?」

 

 “なんのために雑な説明の方にしてもらったと思ってるんですかぁ……”と、いよいよもってえぐえぐと涙を流し始める幼女少女。

 さすがにこうなると哀れさが勝ってきたため、その肩にポンと手を当てて言ってやる。

 

 

「仲間が……いる゛よ!!!!」

「いなくなったんですよ!!!!!」

 

 

 “てかあなたがいなくならせたんでしょうが!!!!”と続けられるツッコミ。

 いいね。ナイスツッコミだ。キレてるよ。

 

「……はぁ。ヴァンさんが割合最低なのは慣れましたけど、なんか今日は酷くないですか?」

「あー、すまん。そりゃ無意識だ。ちょっと達成感とか開放感とかがすごくてな」

「はぁ」

 

 いやー、ルキフとセィトゥンがいないだけで気が楽で仕方がない。チィファンはちゃんと信頼できる相手だからな。

 

 ……ま、ここまでやらかしてる以上はそろそろ愛想を尽かされそうな気もしてるんだが。

 余談だろうねぇ、それは。

 

「え、なんですか。ヴァンさん、もしかしてあの二人に脅されてたりしたんですか?」

「ん? いや、そんな事はないけど。あー、いや、さっきのはオレの言い方が悪かったか」

「ですよね。ヴァンさんみたいな人を相手に下手に口出したら拳が出てきますもんね」

「おう誰が野蛮人だ。ナチュラルに馬鹿にすんなや」

「えへへ」

 

 いや“えへへ”って。

 可愛いだけで許されようとしてる? というか撤回はしないのね、なるほど。

 

「まあ、とりあえず出発しましょっか。ここで日が暮れちゃったら困りますし」

「……ん。そうだな」

「……? 私、何か変なこと言いました?」

 

 …………何も言わずについてきてくれるんだな、なんて。

 余計な考えかね。

 

 

──*──

 

 

 そんなこんなで、オレとチィファンは比較的長めだった休みを切り上げて街を発って──魔物に襲われた。

 唐突だと思ったか? 残念、あるあるなんだなぁコレが。

 

 この世界、『草むらからとびだしてきた!』みたいなノリで魔物が出てくるから。町の外は街道沿い以外は安全圏じゃないし、稀に街道でも魔物に出会すんだもん。マジであるある。

 襲ってきたのはアルブス・ウルススって名前の魔物。えーと、伝わりやすい名前で言うのなら……シロクマ? ちなみに現在地は草原のド真ん中。緑が眩しい場所。そこにシロクマが5匹も6匹も立ちはだかってるわけだ。

 

 ねえねえ君たち、ムードとか情感って知ってる?

 

 いや、なんでこんなとこにアルブス・ウルススが大量発生してんの? 割と真面目に。

 お前らの生息地って大陸北端の寒冷地じゃん。ここ南端付近の王国の草原だよ?

 

 魔物に襲われるのはあるあるだけど草原でお前らに出会すのはないないなんだよね。おいちゃんびっくりしちゃったよ。

 

「──フゥ。さて、チィファン。どうする?」

「狩らないって選択肢は……さすがにないですよねぇ……」

「さすがにな。この位置は街に近すぎるし、王国にアルブス・ウルススが湧いてる理由も調べときたい」

「じゃあ、4任せてもいいですか? 2は私一人でどうにかできないか頑張るので」

「……大丈夫か?」

「無理はしませんよ。それに、護られてるだけなんてのは性に合いませんから」

 

 “そか”とだけ返し、2本分のダガーを取り出したチィファンと別れる。

 連携して一緒に──みたいなのは考えない。ジョブが戦士であるチィファンは、オレと同様前衛を務めている。正直戦士よりもアサシンとかシーフとかの方が向いてそう、ってのが個人的な所感だが……ともかく。

 以前から割と好き勝手にやるってのが基本スタイルだった上、今では後衛の二人(ルキフとセィトゥン)が抜けているんだ。無理に連携なんぞ考えないでいいだろうよ。

 

「さて、さて」

 

 前に踏み出したからだろう、こちらに迫りつつあったアルブス・ウルススの注目がオレに集まる。

 それはつまり、オレの影になるよう続くチィファンから警戒が逸れるという事であり──

 

「私が言われる側でしょうけど。ご武運を」

「あいよ」

 

 チィファンが投げたダガーが命中し、激昂した2匹が彼女の方へと逸れて進んで行く。

 まあ、なんだかんだ国内でも指折りの実力者だし大丈夫だろうけど……ちょいと巻きで狩りますかね。

 

 目の前にまで辿り着いた真っ白な巨体を見上げながら、剣を抜き放つ。

 陽光を反射した刃が、輪郭を際立たせるように煌いた。

 

 

 

ゴアァァアアッ!!」

 

 振り下ろされるは五爪。下手な鈍らよりもよっぽど鋭いソレが、空気を切り裂く音と共に迫りくる。

 まさしく絶死、触れてしまえばその部分からあっさり断ち切られるだろうと直感できる攻撃は、しかしオレの目の前を通り過ぎるに終わった。

 

 バックステップ。

 開けた草原、なんていう自由に動ける場所なんだ。スペースは贅沢に使っていかないとな。

 

 かくして、オレの目の前には右腕を振り下ろした状態の無防備なアルブス・ウルススの姿が。言うまでもなく、反撃のチャンスだ。

 が、まだ待つ。魔物の外皮は硬くしなやかだ。刃が一切通らない、までではないが、刃を入れるにはそれなりの集中がいる。あるいは魔法でその辺りを無視して、というのもできるが……やはり、それらを行うには隙が足りない。

 

 なにせ、既にオレの右側面にまで回り込んだ別個体が、その左腕を突き出してきているのだから。

 

「……ハン」

 

 なるほど、先の振り下ろしがバックステップで回避された、というのを踏まえての攻撃ならばよく考えられている。これならば後ろに跳んだところで意味は無い。

 加えて、オレの左側は最初に攻撃してきた個体がいるせいで塞がれている。右へ躱そうにも合わせられるであろう事は目に見えている。

 

 一度目の回避を偶然の結果、あるいは奇跡の産物にまで落としこめる、見事な攻撃だ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、だが。

 

「フゥ──」

 

 剣を構える腕から力を抜き、迫りくる突き出しの右側面に添わせる。

 抗うのではなく、自然な流れでその軌道を逸らすように。同時、身体を大きく沈み込ます。

 

 結果、オレの頭上を素通りしたアルブス・ウルススの左腕は、逸らされた軌道をそのままに進み──

 

グオォォオオッ!?」

 

 最初に振り下ろしの攻撃を行った個体の右脇腹へと、深々と突き刺さった。

 ゾブリ、と不愉快な音が鳴り、赤々とした血液が吹き出る。

 

 その、最中。

 

「悪ぃな。憐れみはしてやるよ。偽式──《一水四見》」

 

 敵に。人を殺す事しか考えていない存在に。

 そう、呟いて。

 

 四閃。魔力を乗せて。

 ほど近い高さに並んでいた二つ分の頸を、一瞬に四度重ねた刃で断ち切る。

 

 今日の調子はイマイチかね。そこそこの量、刃に血が付いている。絶好調なら一滴も付かないってのに。

 ま、今はいいさ。

 

グルルルル

 

 僅かな間に二匹が狩られたからだろう。警戒した素振りで、追加の二匹が寄ってくる。わんこそばってのはこんな感じなのかね。コイツらシロクマだけど。

 

「来ないなら……こっちから行くぜ」

 

 踏み込み。地面を掴む感触。

 右足を弾くようにして、流れる景色の中を目的たる片方目がけて突き進む。

 

 ──ここ。

 

 再度踏み込み。剣を振り抜く力に移動の加速力を乗せ、今回は鳩尾の辺りに狙いを変えて斬撃を放つ。

 横薙ぎの一撃は。

 

「へぇ」

 

 ガギン、と硬質な音と火花を散らして、振り抜いた刃が爪に弾かれた。

 さすがに爪は外皮よりも硬い。比べるべくもない当然な話だが。さっきみたいな骨まで含めて断ち切る一撃じゃなかった以上、間に爪を挟まれたらこうなるのも仕方ないってわけだ。

 

 剣を弾かれた事で、重心が崩れる。

 後ろに仰け反るような体勢。がら空きになった胴体が、無防備に晒された──が。

 

「《Air()》 - chain - 《Water()》 - chain - 《Earth()》」

 

 最小単位、一節で構築した風魔法を足の裏で解き放つ。元々後ろに傾いていた重心は、必然、その推進力によってさらに後ろへと寄る。

 同時に背面飛びの要領で上半身を逸らし、振るわれた横薙ぎの一撃を回避。続けて加速力を殺さずにハンドスプリングへと移行する事で、大きく距離を取る。

 

 右手に剣を握ったままやるには少々アクティブすぎる動きだが、この辺りは慣れも大きい。自分で自分を斬るようなバカは晒さんよ。

 さて、仕切り直しだ。間合いはオレが仕掛ける前にまで戻り、ただしオレの側だけが手札を一つ晒した事になる。若干の不利か?

 

「──なんちゃって」

ルォオオ!?」

 

 好機と見たのだろう、アルブス・ウルススの片方が駆け出し、しかし数歩だけ進んで動きを止める。否、よく目を凝らせば少しずつその身体が沈みつつあるのが分かるだろう。

 

「直線で来たらダメだろ。オレが通った場所なんだからよ」

 

 風魔法に続けて発動させた、水魔法と土魔法。

 本来なら水を近くに生成する、大地を触れた場所から小範囲操作する、というだけのソレだが、合わせて使ってやればこの通り。即席の沼地を作る程度なら実現できる。

 

 オレは単節詠唱の魔法しか使えないが、それでも使い方を工夫するだけで戦況を動かせるんだ。ほんとに凄い技術だよ、魔法は。

 

 ともかく。

 突然足を取られて動きを止めた個体と、それを見てどう動くべきか迷った個体。隙だらけの、狙い通りに組み上げられた盤面だ。

 

 と、いうわけで。

 

「一気に終わらせる。──開帳・肆式《紅燐白曲》」

 

 逆袈裟から繋げて袈裟懸けに。刃を計四度振るい、二つの命を断つ。

 規定属性である火と光はそれぞれ一太刀目と三太刀目に配置し、二太刀目と四太刀目へ今回は水と闇を選択。反属性同士による衝突も起こるとなれば、さすがの魔物であっても生きてはいられないだろう。

 

 必殺技ってのは、確実に決められるタイミングに打つべきだよな。

 ……さて。

 

 投げ捨てていた鞘に剣を納め、残心を終えて振り向く。

 

「お~いチィファ、ン。おおう……」

 

 大丈夫か、と続けようとして、しかしその続きを失った言葉が力なく垂れさがる。

 そんなオレの、視線の先では。

 

「──ふぅ」

 

 刀身を黒く塗り潰された刃。それを左胸から引き抜かれたアルブス・ウルススが、どさりと音を立てて倒れる。

 巨体に隠されていた背後には、返り血一つなく立つチィファンの姿が。

 

 ……うん。やっぱり君、戦士じゃなくない? というか戦士の戦い方って知ってる?

 バック取って首元ばっさりからトドメで心臓を一突きって、それ明らかにアサシンの動きなんだよね。いや、いつも見事なお手前だとは思うけどさ。なんか違くない?

 おいちゃんちょっと君に背中見せるの怖くなる時あるよ?

 

 ちなみにここで一番怖いのは、チィファンのあの動きは独学で組み上げられた産物だって事だったりする。

 どこぞの暗殺組織で育てられたとか、そんな過去は一切ない。自分なりに色々最適化してたらこうなってたらしい。

 

 いや、怖。

 

「あの、ヴァンさん。やっぱりコレ、キツい気がするんですけど。このままで行くんですか?」

「うゎびっくりしたぁ!?」

「ひゃあ!?」

 

 何回も言ってるけど、無意識にまばたきの瞬間を狙って急接近してくるのはやめてほしい。本当にやめてほしい。心臓に悪いから。

 ネタじゃなくガチの方で。

 

 というか不意を突いといてそっちが驚かないでくれや。

 

「……あの。なんで私が悪いみたいな目が向けられてるんですかね」

 

 まあ、日頃の行いのせいじゃない?

 じとじととした半眼に、表情は変えないようにしながら脳内で返しておく。こんなもん口にしちゃったら『どの口が言ってるんですか!?』って叫ばれちゃうからね。

 

「……まさかとは思うんですけど、自分のこと棚に上げたような変なこと、考えてないですよね」

「…………」

 

 …………。

 やーっばい。これはやーっばいです。

 

「ヴァンさん?」

「き、気のせい気のせい。気のせいアルよー」

「だからどこの方言ですか! ごまかすにももう少しやり方があると思うんですけど!?」

「いや、すまんて。この通りだ」

「どの通りですか!? せめて頭を下げる素振りぐらいは見せましょうよ!」

 

 いやあ、ついにモノローグを察してツッコんでくるようになったか。

 チィファン、よく育ったな……もうお前は一人前だ。オレから教える事は残ってない。

 

「それで、結局このまま行くつもりなのか教えてほしいんですけど」

 

 教える事あったわ。

 

「いやまあ、オレは普通にそのつもりだけど。どの道中心の湖(concursus punctum)には向かわないとダメなんだし。逆にチィファンはついてくるの?」

「え、ついていっちゃダメなんですか……?」

 

 中心の湖。

 そのまんまこの大陸、というかこの世界の中心に位置する湖の名前だ。魔王を封印してる『封印の神殿』ってのがあって、オレみたいな勇者は緩んだ封印を締め直すのが役割だったりする。

 

 まあ、テンプレ通りというか、あるあるというか。

 聞き覚えのあるような話だ。仕方のない事ではあるんだがね。

 

 で、最終的には魔王の再封印さえできればなんでもいいから、別に勇者()()()()ってのは必須じゃなかったりするんだよ。

 実際、ソロでやりきった勇者も過去にはいたし、オレも半分ぐらいはそのつもりだし。

 

「いや、自分で言うのもアレだけどさ。オレ、さすがに色々やらかしてるって自覚はあるからさ」

「その自覚あったんですか……? てっきり、ヴァンさんは人間のことを学んでいる最中の心が分からない怪物なのかと思ってたんですけど」

「チィファン……?」

「んん゛っ。ともかく、その自覚があるなら普段からもう少し色々改めてほしいとか、言いたいことはありますけど……いいですよ、私は。ヴァンさんをひとりぼっちにするのも、アレですし」

「チィファン……!」

「それに、勇者パーティって国からも別枠でお金入って来るからかなりおいしいですし」

「チィファン……」

 

 ふざけてるだけだけど、チィファンの名前を連呼してる今の方がよっぽど怪物っぽいな? さては。

 ま、いいべいいべ。その辺りは特に気にしてないし。

 

「しょ、しょうがないじゃないですか! お母さんとお父さんに仕送りもしなきゃだし、なのに初見の人にはこの見た目のせいで足元見られたりするし──ってそれどんな顔なんですか……?」

(´・ω・`)(しょぼん)

「えぇっ……なん、今なんて言いました?」

「ま、ありがとな、チィファン。アイツらの抜けた穴もどうにか埋められないか考えとくよ」

 

 どうせ一時的な対策になるような気もするが……オレ一人ならともかく、チィファンもついてくるのなら何かしらは考えておくべきだろう。

 ここまで巻き込んでおいて知らぬ存ぜぬ、ってのはオレもさすがにちょっとなって思うし。

 

「んー、ちょいと予定変更してスルヂェレに寄り道するか」

「私はありがたいですけど……日程とか、大丈夫なんですか?」

 

 スルヂェレ。

 物流の要衝としてこの辺りで最も栄えた街、というか都市で、もっと言えば国内でも有数の大都市でもある。当然ながら人口も多いし、スカウトできる人材も見つかるかもしれない。

 日程に関しても元々余裕を持たせて計画を立ててたからな。まだ大丈夫だ。

 

 

 と、まるでそれを狙い澄ましていたかのようなタイミングで、脳内に特徴的な“リリリリ”という音が響いた。

 伝令魔法の音だ。

 

『あー、今大丈夫ですかね』

『セィトゥン? どうした……っていうか普通に連絡してくるんだな』

『昨日は熱くなってましたけど、別に貴方と敵対関係になったわけではないですからね。それでなんですけど……スルヂェレって向かったりしますか?』

『……』

 

 あー、どうしよう。なんか急に嫌な予感してきたんだけど。

 切っちゃダメかな。

 

 てかあの、オレの反応から何かを察したみたいに笑わないでほしいんすけど。あの。やめ。

 おま、お前ら笑うなァ!!!

 

『あはははは。いや、すいません。それとおめでとうございます! ルキフ、スルヂェレに潜伏してるみたいですよ!』

『スゥ──』

 

 え、何これ。酷くても辺境で愉しくスローライフ送られるぐらいで済ませてほしいなーって思ってたんだけど。

 責任取らないとダメなやつだよね? コレ。

 

 ……止めてほしいんだけど???

 

 

 

 

 




Tips.名前には強い意味が宿る
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