鴨志田転生~ペルソナ5一番の嫌われ役に憑依転生してしまったが、原作知識の力で雨宮蓮に代わって怪盗になり破滅フラグをへし折ってみせる!~   作:DreamFrog

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フランス語で、星。
または、オペラ座の最高位のダンサー。
または、宝塚歌劇団のフィナーレで独唱する大役。

または、P5スクランブルにおける成長要素…マスターアーツの、奥村春が最後に習得する能力。





第225話 8/8(月) エトワール

 

 

 

※奥村春(ミラディ)視点

 

 

 

 

 

ノワールは、斧を持たずに急接近。

咄嗟に振られた刀をしゃがみ込んで躱し、喜多川祐介へと抱きつく。

 

 

喜多川祐介

「!?」

 

驚き。

それは、女子への耐性がないからではない。

 

その口に…グレネードランチャーの弾が咥えられていたから。

 

 

焦燥。

万力のような力で締め付ける両腕を引き剥がさんとしながら…【ブフダイン】。凍てつく冷気により、爆弾がお釈迦になった。

 

常軌を逸した状況に、慌てて飛び退く。

 

 

奥村春

「残念、いい作戦だと思ったんだけど…」

 

喜多川祐介

「なんだ、貴様は…っ!!」

 

奥村春

「私?」

「美少女怪盗、ノワールと申します!」

 

 

きゅぴ〜ん。

 

 

 

喜多川祐介

「…。」

 

奥村春

「ふふっ! こ(・)れ(・)ができるの内緒なんだ。皆から、すっごく心配されるから。」

「喜多川君も秘密にしてね?」

 

 

ノワールは緊迫した空気もお構い無しに、可愛くウインクをして唇に人差し指を当てている。

 

…。

クイーンがクラウンから着想を得て会得した、ペルソナとの同時行動。

アクセルを掛けて共に突撃するくらいのものだが、戦術の幅が広がると喜んでいた。

 

それを見た奥村春が、私もミラディと共に砲撃できたら良いなとやってみた所…案外手応えがあったのである。

このまま行けば一緒にグレネードを放てたりしそうだと、まるで原作のP5スクランブルのような成長先を考えながら練習をしていれば。

 

すぽんっ、と。偶然。

ミラディが以前…初めて力を手に入れた時のように分離してしまったのである。*1

途端に、奥村春へ満ちる全能感。恐怖の一切ない心地よさ。

恐怖を持って行った、つまり恐怖の感情を持つミラディ側は大いに焦り、慌てて奥村春の仮面へと飛び掛った一幕がある。

 

強化形態でも何もない不具合でしかない状態なのか、ミラディもノワールもスキルが使えなくなる。

安全性を度外視した発想しか思い付かない。

脳の力のリミッターが外れてしまい、乱暴に動くと反動で身体にダメージが出てしまう。

 

デメリットばかりの、有効な時なんて来ないように立ち回るべき手札。

 

事前に掛けた2種の反射も、今の冷気で魔法面は剥がれてしまった。

 

冷静ではある。冷静な上で何も恐怖を感じないのだ。

まるで、自分がゲ(・)ー(・)ム(・)の(・)操(・)作(・)キ(・)ャ(・)ラ(・)ク(・)タ(・)ー(・)とでも言うように。

 

 

 

喜多川祐介

「それが貴様の伏せ札か…っ!!」

 

 

トントンとステップを踏んで。

私の前にいるノワールは、次の手を考えている。

それは雨に唄う劇団のようで。

 

 

奥村春

「事情、相談してくれる気になった?」

 

響く声。歌うように告げられる、降伏勧告。

…8月8日。今日の天気は、ゲリラ豪雨。

 

 

奥村春

「貴方の思想は否定しない。どうやっても…決別は必要だったと思うから。」

「先生の元に来てくれる?先生は、貴方も助ける準備があるんだって。」

 

 

その欠落した感情とは裏腹に、ノワールの心は充足感に満ちていた。

 

女帝のアルカナ…豊かさや、母性の暗示を持つ者。

全てが満たされ、余裕がある故の寛容さ。

 

隣(・)り(・)合(・)う(・)ア(・)ル(・)カ(・)ナ(・)である皇帝へと、場違いな微笑みを浮かべて手を差し伸べる。

 

まるで宗教画のような、救済の手。

 

 

 

喜多川祐介

「…今更、救いなど必要ない!」

「俺は吾郎に…もう、居場所も希望も照らされている!」

「吾郎の旅路を穢すなら…斬らせてもらう!」

 

「蹴散らせ!カムスサノヲッ!!!」

 

 

ペルソナによって、地下通路の空気が凍てついていく。

SP回復手段を持たない喜多川祐介が使用を控えていた氷結魔法の【ブフダイン】…いや、威力が低い。

これは【マハブフ】だろう。

 

ろくにダメージは無い。しかし消耗しては合流時に危険があるかと思い、私は大きく距離を取っておく。

 

ノワールは、涼しそうにそれを受けていた。

大治癒促進パッチにて、速やかに治る範囲なのだろう。

 

 

喜多川祐介

「(やはり…反射は打ち止めか!ペルソナ自体の分離…それにより、何らかの精神異常が起きている。ペルソナからの攻撃は無い!今はそれだけ分かれば十分だ!)」

 

 

喜多川祐介の狙いは…恐らく、凍結の状態異常。

大雑把なグレネードランチャーを回避しながら、彼は【マハブフ】を乱射する。このメメントス内の渋谷地下通路を冷気で満たす程に。

 

 

7発目。目減りする気力に不安の色が顔に浮かび、喜多川祐介のただでさえ色白の肌が青みがかる頃。

ノワールの動きがピタリと止まる。

 

 

喜多川祐介

「貰ったぁ!」

 

 

【死亡遊戯】。

カムスサノヲによる…現時点最大威力の物理スキル。

正しく、神の一刀。

物理属性の特大ダメージは…取り憑かれたような少女を両断するだろう。

 

 

 

…本当に、凍結していればの話だが。

 

 

 

ノワールは動き出し、拳を構えて迎え撃つ。

 

喜多川祐介

「!?」

 

凍ったのではない、ただ、動きを止めただけ。

…見え透いた罠に、引っ掛かったのだ。

 

しかし振り上げたカムスサノヲの刃に対し、ノワールは素手。更に自ら振り抜かれる刃へと殴りかかるのであれば…悍ましい結果が見えている。

 

何故?…当然浮かぶ疑問だろう。

何もメリットが無いように見えるだろうから。

 

 

彼は、刃にノワールが触れる、ほんの直前に目を見開いた。

思い至ったのだろう。分離前から…

 

 

物理面の反射(テトラカーン)はまだ消費されていないことに。

 

 

 

奥村春

「あはっ♪」

 

祐介が驚きに目を見開く、それ以上に目が開いているノワール。

作戦が成功した、喜び。

対人戦のゲームでもやっているかのように、無邪気な。

まるで戦場にふさわしくない笑顔。

 

 

 

ノワールは、思いっきり刃を殴りつけた。

 

 

 

こちらへ向かう刃へ、全力の拳。

破壊を、自ら最大限の被害となるように迎え入れる。

当然起こる、悍ましい損害。

それが…テトラカーンによって全て反射される。

 

 

 

まるで、宇宙の始まり(ビックバン)。

 

 

 

弾丸のように吹き飛ぶカムスサノヲの先には…本体である喜多川祐介が居る。

 

カムスサノヲよりフィードバックされる激痛。

仮面ごと大きくヒビ割れた顔面、溢れる鮮血が視界を塞ぐ。

当然、回避できる筈もなく…

 

 

建物の壁を面白い程にぶち抜き…ドリンクスタンド側から、正面の壁に風穴を空けて。

そこにある、ビックバン・バーガーの広告看板に叩きつけられ。

 

カムスサノヲと壁に、挟まった(バーガー)。

 

 

 

 

 

ノワールは、喜多川祐介へゆっくり歩み寄る。

視線による呼びかけ。

私(・)は、帰路に着く。

 

奥村春

「…ふう。」

「おかえり、ミラディ。」

 

 

 

 

 

 

※奥村春視点

 

 

青い光(ミラディ)が、私の仮面に戻った。

倦怠感はあるものの、痛みはそれほど無い。相手が接近戦に応じず…様子見と確実な選択肢を狙ってくれたのが助かった。

正面から全力のインファイトを挑まれていたら…耐久力が足りずに負けていたかもしれない。

 

もっとも、彼が突然の異変にも怖気づかずに冷静に動くことができたならの話だが。

 

(…冴さんの事、何も言えないな。すっごいギャンブルしちゃった。)

(正義の味方みたいで素敵だけど…何かあったら怖いから、使わないようにしないと…。)

 

 

幻肢痛に似たような、腕が切り離されていた事による恐れから右腕を触る素振りを見せながら、ペルソナが掻き消えた喜多川君を見る。

 

 

奥村春

「生きてて良かった…頑丈なんだね?」

「私の勝ちだよ。」

 

 

 

喜多川祐介

「まだ、まだ…終わッテ無イッッッ!!!」

 

咆哮。

暴走した力が…制御を離れる。

明智吾郎に仕込まれた力が、抑え込んでいた精神を次々と呼び起こさせる。

 

 

 

 

喜多川祐介

「嗚呼ソウダよ、未練は無イ!斑目ハ外道ダッタ!」

「ダガ…斑目は俺の父親ダ!どウ、上から色を塗ラレヨウト!」

「自分ノ親が、自分ノ親の仇だった絶望ガお前ニ分カルカ!?自分ノ親ノ罪ヲ知ッタ絶望ガオ前に分カルカ!?」

 

 

 

奥村春

「分かるって言っても、信じないクセに。」

 

 

喜多川君の、狂った叫び声。

声だけで、周辺の照明が粉々に砕ける。

溢れる、黒く淀んだオーラに…周辺が塗りつぶされていく。

 

 

…。

それは奇しくも…喜多川祐介自身が描いた絵画。

メメントスに見た人の欲望にそっくりだった。

 

皇帝のアルカナの、逆位置。

目標を掲げ、しかし実力が足りず…中身が伴わない不安から、他者の持つ力をカサに着て威嚇する。

 

青春の絆やら、若さ故の過ちと言えば聞こえはいいかもしれない。

 

しかしその『虎の威を借る狐』は、こうも表現できる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…。

『虚飾』だ。

斑目一流斎が持つ罪、そのものである。

 

己の中に飼っている…どうしようもない穢れが。

仮面と、希望の光ににより押し留められていた泥が溢れ出す。

 

捏ねるように形を変え、醜い怪物の姿へと変貌した。

まるで。

パレスを持つシャドウの、出来の悪い贋作のように。

 

 

 

 

喜多川祐介

「マダ間ニ合ウ!!アイツヲ!!!」

 

フォックス

「吾郎ヲ、取ラレテナルモノカ!!!」

 

 

理性(たてまえ)を手放した…狐(フォックス)が私に飛びかかる。

 

先(・)程(・)ま(・)で(・)の(・)技(・)術(・)、(・)小(・)細(・)工(・)、(・)知(・)能(・)は(・)一(・)切(・)無(・)い(・)。(・)

代わりに伸びたステータスは、耐久オバケのクラウンさえも削りきってしまえそうなほど…暴力に満ちている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

奥村春

「もう。」

「だから、私の勝ちだって。」

 

 

 

 

 

…。

ペルソナというゲームをソロで攻略するにおいて、最も優秀なスキルとは何だろうか?

敵を問わない万能属性や、すべての能力を変化させるヒートライザ・ランダマイザは素晴らしいスキルだが、それらはただ『強い』だけだ。

 

ある2つのスキルの名を挙げたい。

 

勿論ただの保険でも有効だ。しかし、真価は敵の行動パターンに対策が存在しない時にある。

他のどのスキルにも無い…『詰み』を作り出せるスキル。

 

 

 

 

 

【テトラカーン】。

傷がつくのは狐。

 

狐が、巨大な氷塊を叩きつけてくる。

 

【マカラカーン】。

傷がつくのは狐。

 

狐が、クレーターができる程の衝撃波を放つ。

 

【テトラカーン】。

傷がつくのは狐。

 

 

 

【テトラカーン】。

【マカラカーン】。

 

優雅にルブランのコーヒーを一口。

 

【テトラカーン】【マカラカーン】【テトラカーン】【マカラカーン】【テトラカーン】【マカラカーン】【テトラカーン】【マカラカーン】【テトラカーン】【マカラカーン】…

 

 

 

…。

 

 

 

全身の力が弛緩し、倒れ伏す狐の瞳には…暴れる力も無くなり、ただ、地下通路の天井を見上げていた。

ドロドロと、身に纏う獣肉が溶けていく。

 

 

完封。

 

 

勝者は、ノワール。

 

 

 

 

 

 

*1:
第164話

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