鴨志田転生~ペルソナ5一番の嫌われ役に憑依転生してしまったが、原作知識の力で雨宮蓮に代わって怪盗になり破滅フラグをへし折ってみせる!~ 作:DreamFrog
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午前
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※新島冴視点
霞が関の官庁街、職場にて。
改心祭りによって大量に出ている自首希望者の量刑を定め、
それにより隠蔽が解けて芋づる式に判明した犯罪などを整理していく仕事。
私は今、そのリーダーを努めている。
以前から進めていた業務*1を惜しみつつも引き継ぎ書付きで手放してからは、この新しく始まった案件に掛かりっきりだった。
本人が協力的に罪を吐き出してより多くの量刑を求める異様な光景を、困惑する周囲を鼓舞し、指揮する。
喉から手が出るほど求めていた地位を急速に手に入れた。
ある種自身の積み上げではないあっけない昇進なので、これから様々な葛藤だったり問題なり出るのだろうが。
一旦はこの地位を幸せに味わっても構わないだろう。
何せ、私の妹が勝ち取ってくれた物なのだから。
…。
多くの人の廃人化を求めた罪人達は、しかしそれでも『廃人化を依頼した』という現代の司法には存在しない罪であるため裁きを与えられない。
ひとまずは、他者を精神疾患に陥らせた際に使う傷害罪や、それで自殺などしてしまった時の傷害致死罪・自殺関与罪などに当て嵌めて処理を行っているが…
制度が整う頃にはもう廃人化に関与したものの改心は終わっていることだろう。
弁護される気のない被疑者達を宥めながら有罪にしていくのは、なんだか雛鳥に餌を与える光景を幻視する。
本人が心から罪を反省している態度を取っているのもあってか…廃人化ビジネスの依頼をしていない者など、何割かは執行猶予をつけることができていた。
執行猶予の彼らや、そもそも自首する必要のないタイプの改心者達が周囲に全力で謝罪するなどして、
『改心した者は良い心を持った人に変わっている』という認識を大衆に刻みつけられれば…
これからの改心者への対応も変えていくことができるだろう。
まだ始まったばかりの試み、一度改心したものがもう一度歪む事は無いのか、それは10年20年経った後も同じか等…確認していくべきことは山ほどある。
獅童正義が抱え込んでいた認知訶学の科学者(訶学者と言うべき?)達とも連携し、対策を推し進めて行くべきだ。
そんな事を考えながらノートパソコンを操作していると…デスクに来客が。
明智吾郎
「こんにちは。少し…いいですか?」
新島冴
「こんにちは。
明智吾郎
「いえ。その…」
明智吾郎である。少しバツの悪そうな顔で、そう話しかけてきた。
怪盗団としての話を伝えに来たのかと思えば、帰ってきたのは否定。
同じ施設で捜査の手伝いをしてくれていると言うのに、私の事を若干避けるような素振りをしていた彼。
当然だろう。
自分の手で殺そうとした者と、チームを組んで怪盗団として活動しているなんて気まずいにも程がある。
(それなのに話しかけて来たとなると…)
(なるほどね。)
手渡しではなく、そっと机の上に置かれたのは…ホットアイマスク。
カイロのような感覚の使い捨ての品で、嵩張らず、すぐ使える個包装が20個。
明智吾郎
「いつも、お疲れ様です。」
「よく、ドリンク飲んでましたよね?サプリなんかは避けようと思って…」
「よかったら、ですけど。」
新島冴
「ありがとう。こういう物…あまり使った事が無かったの。」
「早速、次の休憩にでも使ってみようかしら?それで怒るような上司、今は居ないもの。」
贈り物の選択は、合理的な理屈が詰まった私好みの選択。香りが複数種類用意されているのも、使うのが楽しみになる良い工夫だ。
だから、プレゼントのお礼にノートパソコンを閉じて明智君の方を向き。
新島冴
「…。」
無言で見つめる。賢い彼の事だ、これだけで分かるだろう。
明智吾郎
「その、なんと言えば良いか…」
「…。」
「ご迷惑、お掛けしました。」
絞り出すような、謝罪。
あの明智吾郎がこうも口ごもるのかと、少し優越感のようなものが湧いてくる。
新島冴
「貴方の力は、すべてが嘘ってわけじゃない。嘘をつくにも技術って必要なものでしょう?」
言葉を区切り、明智君の目を見る。返答を待った。
明智吾郎
「…それは、犯人を決め打ちしていたからで…。」
新島冴
「私も、決め打ちくらいするわよ?勘は大切にしろって父はよく話していたから。」
「大層有利でしょうけど…それだけで勝ち切ることは出来ない。」
座った足を組み替えて、立ったままの彼を見上げる。
現実の姿勢と違い…心は、彼の方が下に位置している。
まるで、職員室に来た生徒の謝罪を受ける教師のようだ。
新島冴
「真ね、貴方の事を羨んでるのよ?私に信用されてる、って。」
明智吾郎
「…!」
それを伝えることで、間接的に己が心情を彼に示してやる。
まだ、私は貴方を信用できると。
だからこそ。
少しいじめてやろう。
明智吾郎
「…すみません、でした。僕は…冴さんに…」
新島冴
「明智君の罪悪感は伝わったわ。これからも、ありがたくプレゼントを貰おうかしら。」
明智吾郎
「…え?」
「その、意味が…」
新島冴
「…女狐、でしたっけ?」
「背中にペイントもあったんだから、何か犬の例えでもよかったのに…」
わかりやすく傷ついたような顔をする。冗談とわかるように着眼点をずらす。
伏し目がちにして、撃たれた痕が疼きでもするようにさする。
まぁ、何も不調は無いのだが。
明智吾郎
「…また、近いうちに持ってきます。」
彼から帰ってきたのは、苦笑い。
それに微笑んで返す。
新島冴
「ありがと。」
ノートパソコンを持ち、立ち上がって。
明智君の肩を優しく持つ。
新島冴
「ふふ、茶化せるくらいには気に病んで無いから安心して?」
「今後ともよろしく、明智くん?」
メールに書いてあった部署に電話をかけながら、その場を立ち去った。
早く一段落つけてしまって、プレゼントを開けてみることにしよう。
※明智吾郎
そうして、冴さんは立ち去った。
明智吾郎
「…敵わないな。」
まだ、罪を許してはいないのだろう。
ただ、気を許してはくれている。
何かものをねだるようにもとれる態度。
そして、あの自然な上から目線。
これまでなら、額に青筋でも浮かんだものだろう。
いや、今でも…他の女性からなら、浮かぶ気がする。
何故か、不快ではなかった。最近の行いで、心に負荷をかけすぎて…感受性がおかしくなってしまったのだろうか。
以前に、冴さんと話していた頃と同じような感覚を感じる。
それは、内心見下していたから不快ではなかったと思っていた。なのに、今話しても、同じような感覚が湧いてくるのは…?
…。
明智吾郎
「次の贈り物は、何にしようか…」
答えが出ない、生産性のない問答より。
ソレについて考えたほうが、よっぽど合理的だろう。
そう思う事にして、その場から離れる事にした。