鴨志田転生~ペルソナ5一番の嫌われ役に憑依転生してしまったが、原作知識の力で雨宮蓮に代わって怪盗になり破滅フラグをへし折ってみせる!~ 作:DreamFrog
※明智吾郎
(まずいっっっっ!!!)
坂本竜司
「ハァ___むぐ!」
驚いて声を上げようとする竜司の口を塞ぎ、腰掛けていた岩場から降りて身を潜める。
小声の喜多川祐介
「…リーダー、指示を!」
小声の坂本竜司
「むぐ、はぁ、悪りぃ。ど、どうするよ?」
祐介も事の重大さを理解しており、即座に異世界で戦闘行為を行う時レベルで警戒心のスイッチを入れている。
仰々しいと思われるかもしれない。しかし、この場は死地なのだ。
気合と根性の心の力でどうにかできる異世界なんかより、よっぽどリカバリーの効かない選択肢の連続なのである。
小声の明智吾郎
「いいか、ここは水着がルールだ。つまり看板を読めなくとも俺達が水着ではしゃいでる姿を着替え前に発見させることができれば良いんだ。まずは竜司が大声で笑って___」
小声の喜多川祐介
「待て吾郎。」
「…手遅れらしい。」
奥村春
「よし、コレで鳥が来ても取られないよね。」
佐倉双葉
「開放感すっげ〜…今、私は引きこもりと真逆に居る!!」
小声の坂本竜司
「…見たのか?」
小声の喜多川祐介
「衣擦れを聞いただけだ、興味なぞ無い。」
「興味なぞ…無い…っ!」
…。
祐介の立ち位置からであれば見ようと思えば見れてしまいそうな位置まで接近している、女子二人。
今の喜多川祐介が込めている精神力は計り知れないものであり…具体的にエキシビションマッチ時などと比べるのは彼の名誉の為に割愛したい。
(状況を整理する。)
(アハラヌイ・パークは、ざっくりと分けて3つほどのエリアに分けられる。
・周囲をコンクリートで囲ったプールのような広場。
・湧き出た温水と海水が混ざる水路。
・人の手の入っていない、日本の秘湯的な雰囲気がある岩場。
俺達が今遭遇しているのは3番目。ここに居るのは方や自然を味わう芸術家とエロ猿、方やルールを見ない馬鹿。せめて双葉は読めよ、その頭なら読めるだろ。)
(広場は位置が低い。岩場の部分から一方的に見下ろせる位置にある。つまり広場で俺達が今来たように振る舞えば…この状況を理解させられるかもしれない。しかし、俺達が先んじて居た事を気取られると終わりだ。)
(竜司の下心は既に怪盗団には知られている。『幸運』を狙ってなどいなかったという主張が通るわけがない。 交渉のリスクが高すぎる。)
(まず決めるべきは…簡単に交渉のテーブルについた上で難しい交渉をするか、交渉自体をどうにか避けるかの2択。)
(考えろ明智吾郎、この、決死の状況を切り抜ける手を…!!)
この間、4秒足らず。
小声の明智吾郎
「…ここは海に面している。岩場を降りて木々を迂回、どうにか海に出る。」
「浜まで行けば、俺達はただの海水浴客だ。」
小声の喜多川祐介
「承知した。」
小声の坂本竜司
「…降りんのか?この岩場を?」
竜司が見下ろす斜面は、日本の山道ならば必ずガードレールが並べてあるような急斜面。
土ではなくゴツゴツとした火山岩であり、転べばひとたまりもないだろう。
小声の明智吾郎
「覚悟を決めろ。これが一番、
…。
慎重に、かつ大胆に。
岩場を下り、海に降りていく。
現実では足に不調を抱える竜司が滑落しかけてしまう。
汗ばんだ肌を握力で握りしめ、手首部分で固定する。
小声の坂本竜司
「悪りぃっ、助かった!」
小声の明智吾郎
「気にするな。」
「…絶対に、生きて帰るぞ。」
自分でも馬鹿馬鹿しい状況だとは感じる。だが、己の社会的印象を守る為に…ここは全力で挑む必要がある…っ!!
地面を蹴り出した時の
特に暢気にぬるい温泉を楽しんでる女2人を警戒しながら進んだ。
…。
木々の間から、俺達は岩場に出てくる。
あと数メートルほどで波が立っている沿岸部だ。
坂本竜司
「こ、ここまで来れば…大丈夫か?」
明智吾郎
「多分、ね…ただ、まだ知り合いに会えば怪しまれるかもしれない。移動しよう。」
喜多川祐介
「あの2人は大丈夫なのか?その、一糸纏わぬ姿は…」
明智吾郎
「春は『マコちゃんが来るまで』と言った。冴さんの趣味はツーリングだから、新島姉妹で軽く一走りしてから合流するんだろう。」
「同性の友人から、正しく指摘してもらえばいい」
坂本竜司
「すっげ、あの一言でそんだけわかんのかよ…」
明智吾郎
「ハハ。仮にも、冴さんと共に働いた仲だからね。」
一番の窮地は去った安心感と、竜司の称賛。
つい、心が緩んでしまった。
笑って、その差し出された称賛を受け取ってしまう。
新島冴
「私が、何ですって?」
父親ヤバい組
「「!!!」」
ジーパンに白シャツを着た、オフの冴さんが居た。
こちらにそうやって話しかけて、装着していたサングラスをゆっくりと外す。
その、瞳は……
全力で、
明智吾郎
「ああ、冴さん。アロハ。」
新島冴
「アロハ。」
明智吾郎
「海外旅行ってこんなに楽しかったんですね。海も、東京とは大違いだ。」
新島冴
「ここで何をしていたの?」
検事は、一切話題をずらさせない。
明智吾郎
「? 何って、海水浴ですけど…」
新島冴
「この岩場で?泳ぐなら浜の方が良いでしょう?」
「人の居る居ないも、今は朝。ここに来るまでビーチを通ったけど…人は殆ど居なかったわよ。」
言い訳の逃げ道を、これ見よがしに潰してくる。
2秒ほどの、沈黙。
後ろで祐介が何かしている気配を感じ、振り向くと…
喜多川祐介
「おお、こいつはデカいな。」
坂本竜司
「!?」
どこからか黒いカニを捕まえ、持ち上げる祐介の姿が。
(…これだっ!!)
明智吾郎
「おっ、いいね。大物だ。」
祐介の手柄を称賛する素振りを見せてから、冴さんの方へ振り向き。
明智吾郎
「折角、東京に無い自然豊かな海に来たんです。生き物の観察でも楽しもうと思って。浜辺の方には居ないものでしょう?」
新島冴
「…そう。」
「フフッ、ごめんなさい。明智君が…そういう遊びをするのが珍しくって。」
冴さんの、組んでいた腕が解ける。
表情に柔らかさが戻っていた。
明智吾郎
「色々…模索してるんです。」
「法令上食べられないのが残念ですけどね。冴さんも如何です?」
新島冴
「遠慮しとく。大きいのが見つかったら、写真でも撮って教えて?」
ハワイのカニはよく逃げると雑誌に書いていた。あの一瞬で見つけて捕まえるのには、流石の俺も手放しで称賛せざるを得ない。
帰国までに竜司の金で何か奢らせようと考えながら、会話を逸らして締めくくろうとしていると…冴さんの背後から声がかかる。
新島真
「お姉ちゃん、急にどうしたの?皆、もう水着に着替えたよ?」
新島冴
「ごめんね、明智君が見えたから。」
「生き物採集してたんだって。」
新島真
「へぇ…わ、採れるものなんだ。」
声の主は、白い水着姿の真。
姉とのバカンスに気が緩んでいるのか、祐介がもう一度掲げてみせたカニに、素直に感嘆の声を上げてくれる。
新島真
「そうだ!明智くん、他に人を見てない?双葉と春が間違えて何も着ずに入浴してたんだけど…近くにビーチサンダルが残されててね?観光客狙いの覗きが居るんじゃ、って話になってて…」
明智吾郎
「…。」
新島冴
「…。」
…。
※三人称視点
流れる、沈黙。
新島冴
「明智君、
明智吾郎
「…すまない、実は足が挟まってて。心配させたらよくないから取り繕っていたんだけど、かなり痛くて救助待ちのところで…」
どうにか言葉を重ねる明智吾郎に、ツカツカと近寄る新島冴。
手を握り、ぐっと引く。
何も引っかかっておらず、よろめきと共に…
新島冴
「…。」
新島真
「…。」
明智吾郎
「待てっ!!誤解だ!俺達が先にッ…」
新島冴
「貴方には、黙秘権がある。」
その目は、氷点下にまで下がっていた。
有罪率…99.9%。
…。
〜〜
昼間
〜〜
ホノルル空港。
日本に帰る飛行機の、搭乗直前。
三島由輝
「いんや〜、外国に来た感?堪能した!ハワイ最高!」
新島冴
「楽しめたなら良かったじゃない。…真の件、ごめんなさいね。」
三島由輝
「ああ〜、ハハ、気にしないでください。元より自分一人で潜入服についてカモフラージュしてくれてたのが原因なんだし。」
「まさかお姉さんにすら話してなかったなんて。」
新島真
「い、言える訳ないでしょ?あんな破廉恥な…」
新島姉妹と仲良く話す三島は、自分が既に『美女2人と仲良く会話しやがって』と妬まれる側に居ることに気付いていない。
実質ラッキースケベ的なイベントもあり、着々とラブコメ主人公の山道を登っていた。
そして、その後ろのベンチに、並んでいる男達が居る…
…。
温泉卵や自然観賞が主な目的であったこと。
証拠となる、温泉に残されていた卵。
ルールを読んでいなかったのは、相手だったこと。
彼女らの名誉を守る為に、見てしまう前に逃走を選んだこと。
それらを主軸に全力の自己弁護を行い…どうにか、他言無用の約束を勝ち取ったのは、彼女らが温泉を楽しみ終わった後で。
なんとか、『見ていない』という証明ができない絶体絶命の審判を切り抜ける事ができたものの…
明智吾郎が払った代償は大きかった。
三島由輝
「そう言えば、冴さんってそんなジャケット着てました?」
新島冴
「ハワイに売ってたの。…素敵でしょ?」
財布の中が…大炎上だ。
坂本竜司
「マジ、悪りぃ…」
明智吾郎
「次やったら、その時どんな関係であろうとお前を八つ裂きにするからな?」
坂本竜司
「はい…甘ったるく受け入れます…」
明智吾郎
「甘んじて受け入れろ、馬鹿が…」
3人揃って光の消えた瞳をした、父親ヤバい組。
喜多川祐介
「…良かったのか?恐ろしい厚みの金が、レジに置かれていたが…」
明智吾郎
「良いんだよ、5000くらいだ…」*2
祐介が息を呑む。理解しない竜司を他所に、目を見開いていた。
明智吾郎
「何かしら、元より埋め合わせはしたかったんだ。」
「…最悪の渡し方になったけどね。」
暗い瞳のまま…明智吾郎は、機嫌よく振る舞う新島冴を薄く笑いながら眺めている。
(ああ、そうだな…)
…。
明智吾郎は、自分で犯罪をでっち上げて事件を解決していた。
当然、必ず勝つことができる。
原作にて、捜査の際は新島冴と協力して動くことがあると話されている。
その間には幾らかの関わりがあったのは容易に想像できる。
時々明智吾郎が話していたシーンのように、日常的に会話できる距離に居たのだろう。
なぜ、時折邪険に扱いながらも新島冴は関わりを受け入れていたか。
これは、あくまで一つの解釈に過ぎない。ただただ出世の為だと渋々会話をしていた可能性もあるのだが…
もしかすると、彼の『必勝』を、彼女は眩しい目で見ていたのではないだろうか。
歳上、より長いキャリアを持つものからの…嫉妬にも似た感情を、彼は心地よく受けていたのではないだろうか。
(ポーカーフェイスも良いんだろうけど、やっぱりあれくらい笑顔の方が似合うな…。)
…。
今この瞬間、明智吾郎が新島冴にへと向けている湿気た視線には。
もしかすると…自分が買った高い服を女が着ている征服感以外も含まれているのではないだろうか。
嘘はもう、彼女にバレている。
自作自演の探偵はもう終わりを迎えた。
薄れていくだろう接点に、彼は何を感じるのだろうか…