鴨志田転生~ペルソナ5一番の嫌われ役に憑依転生してしまったが、原作知識の力で雨宮蓮に代わって怪盗になり破滅フラグをへし折ってみせる!~   作:DreamFrog

281 / 293
第270話 9/13(火) ハワイ土産はベルベット・ルームで

 

 

 

 

〜〜

夕方

〜〜

 

※鴨志田卓視点

 

 

◎◎◎

 

学校での勤務が終わり、夕方になった。

 

ある年のインターハイ会場となった体育館。

その形を模して青くしたようなベルベットルームにて。

 

 

ジュスティーヌ

「マフィンに、クッキーに、キャンディ…」

「我らを肥え太らせる気ですか?1年。」

 

 

ベンチの上に、所狭しとお菓子が並べられている。

パッケージはどれも英語であり、カラフルな着色がされていた。

 

 

カロリーヌ

「むぐ、んぐ、おお…!」

「何もさくさくして無いぞ、ねっちょねちょだ…!」

 

ジュスティーヌ

「カロリーヌ?」

 

鴨志田卓

「砂糖と油がたっぷりの証拠ですね。ここに牛乳でまろやかに…」

 

 

こちらを訝しむジュスティーヌを他所に、カロリーヌはアメリカンなチョコチャンククッキーを頬張っている。

*1

そんなカロリーヌに囁くように、帰国してから買ってきた瓶牛乳を渡す。

カロリーヌはでっかいクッキーを膝に置き、ちっちゃい両手で瓶牛乳を受け取ってくれた。

 

 

カロリーヌ

「おお…!」

 

ジュスティーヌ

「聞きなさい1年。カロリーヌも、はしたないですよ。」

 

カロリーヌ

「ぷはぁ…けぷ。」

「…はっ!?」

 

 

まるで乳児の哺乳瓶の様に。ニコニコ顔で牛乳を飲んだカロリーヌ。恍惚の表情で口を離す。

人間離れした美しさの幼女。ゲップでさえも可愛らしかった。

 

しかし、ジュスティーヌの言葉で正気に戻ってしまったらしく。

 

 

カロリーヌ

「悪魔め、先輩を堕落させる気だな!?」

 

鴨志田卓

「いやいや、お二人に喜んでほしい一心で。」

 

 

 

そんな風に。

双子に餌付け…ゲフンゲフン、ハワイ土産を配っていた。

 

メメントスを狙っているがイゴールの正体には気付いていないというポーズを維持する為にも、

ベンチに座っているイゴールにもレイ(花の輪っか)とマカダミアナッツチョコレート(一番人気って書いてたやつ)をプレゼントしておいてある。

 

当の偽神もイゴールとして振る舞う必要がある為、受け取ったそれをそのまま身に着けてくれていた。

 

(ヤルダバオト=イゴールってトリックは最大の隠し事だ。相手は隠し通したいはず。なら…折角だしハワイアンイゴール見てみたいっすよね。うんうん。)

(ヤルダバオトからの好感度が上がって困ることなんて無いし、実益を兼ねた素晴らしいことですよこれは。決して趣味じゃない。そうそう。)

 

 

ジュスティーヌ

「肥え太る事に特化した菓子を作るとは…人間とは、つくづく罪深い存在です。マネジメントが必要でしょう。」

 

 

ジャージを着たマネージャーファッションのジュスティーヌがため息をつき、「まったく…」と言いながら一口マフィンを齧る。

 

…二口目を齧るまで、5秒も経たなかった。

 

 

鴨志田卓

「糖分って、すぐにエネルギーになりますから。スポーツドリンクにもたっぷり入ってるんですよ?」

「使い切れなかった分を貯蓄しとこうとするから太るだけで、体の原動力として砂糖って大事ですから。」

 

 

カロリーヌ

「ふぅん?言ったな、1年!」

「修練場に来い!お前をシゴいてエネルギーを消費してやる!感謝しろ!」

 

鴨志田卓

「ハハ、是非。」

「ご指導お願いします、カロリーヌ先輩。」

 

 

 

 

…。

 

 

 

※三人称視点

 

 

カロリーヌは、鴨志田卓の背後をとって腰あたりまで飛んで蹴り飛ばす。

それを鴨志田は平然と耐え、ニコニコと笑いながら意に介さず歩いていく。

 

その後ろを、ため息をつきながら追従するジュスティーヌの手には。

バインダーをお盆代わりにして目一杯のお菓子と飲み物が載せられていた。

 

 

ベンチに腰掛け、首にレイをかけ。

膝にマカダミアナッツチョコレートを乗せたイゴール(偽神)だけがその場に残される。

 

チョコレートを四つほど纏めて口に放り込んで、機械的に噛み砕く。

 

 

…。

食事をとるどころか、立ち歩く姿さえもほとんど描写されないイゴール。

それに倣い、原作のヤルダバオトもそういった素振りはほとんど見せてはいなかった。

 

強いて言えば、ラヴェンツァが復活する際に部屋の端で立って眺め、その後正体を現す際に赤いオーラを纏いながら浮いた事くらいだろうか。

 

私生活を深掘りされないどころか、私生活と呼べるものがあるかすらわからない偽神。

日本の大衆に一番人気のハワイ土産を贈られて、何を想うのだろうか…

 

 

 

 

…。

 

 

 

前方、複数の砲門から放たれるバレーボールを次々とレシーブ。

 

車のような速度で回るベルトコンベアを全力で走る。

 

カロリーヌの打ち込む弾丸(ワンショットキル)をひたすらブロック。

 

 

今日も今日とて鍛錬である。

最後の攻撃など、ペルソナ得てすぐの鴨志田なら風穴が空くほどの威力があったのだが…

錐揉み回転した弾を腕で受け止め、皮膚を破られ抉られたような跡ができるもすぐに塞がる。

 

久々に夢ではなく日中に行う鍛錬に、カロリーヌはふっと一息つく。

 

カロリーヌ

「悪魔の力は燃えてきたか、1年!」

 

鴨志田卓

「ええ、いい鍛錬になるってもんです。」

「…うん。耐も90にゃ乗ってるな…」

 

 

手をグーパーさせながら成長を実感するように…鴨志田はそんな事を呟いていた。

 

 

カロリーヌ

「タイ?」

 

鴨志田卓

「個人的な評価項目です。耐久力は90超え…93点くらいかな、と。」

 

 

この世界に生きる存在が知らないゲーム的な概念の発言なのだが、鴨志田は体育教師。

身体能力に点数を付ける事は何ら違和感がなく、すんなり納得を得ることができた。

 

 

カロリーヌ

「ほう?まだ7点もあるのに満足をしているのか?」

「男なら100点を目指せ!もう1セットやるぞ、1年!」

 

 

カロリーヌは心底楽しそうに器具のレバーを下ろす。

日が暮れちゃいますよ、なんてボヤきに黙れ!と返したりする2人を見て、ジュスティーヌも目を細めるのだった。

その緩んだ頬は、お菓子の甘みだけが原因ではないのだろう。

 

 

…。

 

 

〜〜

深夜

〜〜 

 

 

 

 

夜、P3ならば影時間が始まるくらいの時刻(24:00)。

愛のある『指導』は日が変わるまで続いていた。

 

カロリーヌは、やりきったとでも言いたそうな達成感ある顔をしている。

近頃改心祭りで徹夜を多くしているのもあってベルベットルームに行く時間が取れなかったのも、この長時間鍛錬の原因の1つなのだろう。

 

鴨志田も、ハワイに帰ってすぐに掛かってきた双子らの電話からこの結果は察していた。

その為に、モルガナは放課後から怪盗団メンバーへと預けている。

 

春、真、双葉が参加したモルガナ争奪オンラインじゃんけんでは、双葉が通信ラグに見せかけたイカサマを試みるも見抜かれて真っ先に脱落。

真剣にじゃんけんに臨もうとする姿を生徒会のメンバーに見られてしまい動揺した真が敗北し、モルガナの身柄は奥村春が勝ち取っていた。

 

今頃モルガナは、汚れの拭き取りやブラッシング、猫吸い等のナイトルーティンを終えて春のベットの中だろう。

 

9/13(火)。それは原作にて…モルガナが怪盗団を離脱する日。

跡形がなくなるほどに弄くられた世界は、なんの因果か。

もう少し後に、モルガナ自身で救うはずだった美少女…この世界で、既(・)に(・)救(・)い(・)終(・)え(・)て(・)い(・)る(・)美少女の腕の中で、喉を鳴らして終わっていくのだった。

 

 

 

 

 

カロリーヌ

「…そうだ。」

「鍛錬の最後に、少し聞きたいことがある。」

 

鴨志田卓

「ん、なんでしょう。」

 

 

帰る直前。カロリーヌに引き留められた。

二人して改まったような顔をして、何かを思(・)い(・)出(・)し(・)た(・)ようにしている。

 

 

カロリーヌ

「鍛錬の見返りだ。お前の望むものを言え、1年。」

 

鴨志田卓

「望み?こうやって鍛錬やらにも呼んでもらえて超絶幸せですけど…」

 

ジュスティーヌ

「…はぁ。貴方がどう解釈していようと、鍛錬は貴方が更生する為の『責務』です。」

「例えば貴方は今の教職を楽しんでいるようですね。ただ、職務に伴う給金は得ている。」

「同様に、我らは貴方に『報酬』を用意せねばなりません。理解できましたか、1年?」

 

鴨志田卓

「…。」

「そう、ですねぇ…」

 

(う〜〜ん……こうも言ってくれてるんだし、ラヴェンツァさん呼んだ後は2人とは会えないんだ。総攻撃とか見るに分離することはできるっぽくても、それはラヴェンツァさんの人格って感じになるし…)

(やっちまうか。)

 

目線に合わせてしゃがむと、2人の視線がそのままついてくる。

 

 

鴨志田卓

「ジュスティーヌ先輩。」

 

ジュスティーヌ

「?」

「はい。」

 

鴨志田卓

「カロリーヌ先輩。」

 

カロリーヌ

「なんだ。」

 

鴨志田卓

「つっ〜〜……。」

 

 

胸の内が幸福に満ちる。

ああ、素晴らしい。

 

呼ぶと…反応が返ってくる。こちらに、視線が向いている。

ゲーム上の、鑑賞しかできない存在じゃない。

現実のように、無視されていない。嫌がられていない。

会話が、できる。

 

俺は、今。

この世界に、存在を許されてる。

この方法が…一番、実感できる。

 

 

…。

憑依転生者の自己肯定感は地の底に落ちている。それを…ペルソナというゲーム上では世界の真実含めて知り尽くしている者だとして。少しだけ、許すことができている。

 

自分が声をかけても、嬉しい反応が返ってくるわけがないのだ。現実は。

 

良い反応が返ってきてほしいと願い続けた。動き続けた。

そして全てを尽く失敗し続けてきた。

 

正解が何かを教えてくれるような友人を作るためのコミュニケーション能力さえ無かったから。

悔しさ、後悔、そしてちょっぴり他責の感情で、何度も気が狂いそうになっていた。

人と関わりたいのに、関わることができない。

水を求める遭難者のように、対人ゲームを山ほど遊んだ。

ペルソナというゲームに出会い、救われた。

しかしプレイステーションの電源を落とすと、現実では渇いて飢えたまま。

 

 

 

 

…この現実(せかい)では、返事が返ってくる。こちらの言葉を待ってくれる人がいる。話を聞いてくれる人がいる。

 

鴨志田卓のコミュニケーション能力を、借りることができているから。

そしてその鴨志田本人から認めてもらった、俺の原作知識によるアドバンテージがあるから。

 

その事実が、涙が出そうなほど嬉しい。

そして!さらに!

夢にまで見た原作の人物が、俺に合わせた原作に無い格好になった上でこちらの話を聞いてくれるのだ。

VRでも着ぐるみでもコスプレでもない、本物達が、だ。

 

 

名前を呼び、返事を得る事は…そんな事を、心の底から歓喜できる最高の行為だった。

 

これまであまりやっていなかった理由は、制御出来ない程の多幸感に包まれてしまうから。

 

 

鴨志田卓

「ああ…。」

「ありがとう、ございます…。」

 

 

思わず、拝むように手を合わせる。

心に、膨大な喜び(けいけんち)が注がれている感覚がある。原作で例えるならジャズクラブでレベルの上がるカクテルを飲んだ時のようなものだろうか。

また一つ、心が豊かになっ(レベルアップし)た気がする…

 

 

ジュスティーヌ

「カロリーヌ、1年の気が狂ってしまいました。」

 

カロリーヌ

「元からだろう?」

 

ジュスティーヌ

「この前、渋谷で本を買っていたでしょう?デキる上司の叱責術。あれを試す機会ではないですか?」

 

カロリーヌ

「ちょ、言うな!」

 

鴨志田卓

「…。」※ワクワクした視線

 

カロリーヌ

「…ちがうしっ!買ってないしっ!」

 

 

くすくす笑うジュスティーヌ。ぷんぷん怒るカロリーヌ。

最高の光景を、憑依転生による影響か記憶力の上がった脳みそに保管するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

…。

 

 

 

 

 

 

 

 

イゴール

「ご苦労。」

「お陰で、集(・)ま(・)っ(・)て(・)き(・)た(・)。」

 

カロリーヌ

「?」

 

ジュスティーヌ

「主…如何されましたか?」

 

 

ポンポン、と。偽神は…双子の頭に手を乗せていた。

 

 

 

 

*2

 

 

 

*1:
第262話でも出てきたチョコチャンククッキー。サクサクホロホロ系の日本によくあるクッキーとは対局とも言うべきねっっっちょりした食感のクッキー。カロリー爆弾。

ちなみにP5世界の2016年あたりではねっちょり食感をチューイーとか呼ぶ文化はまだ浸透していない。

*2:
第220話






(作者自我注意)
長かった修学旅行もこちらで終了となります!
あまり需要は無かったかもしれませんが、秀尽生ライフを楽しい思い出とするには絶対に充実させたい一幕でした
これからどんどん面白くしていきますので是非お楽しみください!

そして遂に本編とリアル時間が重なる日がやって参りました!ついでに作者の誕生日でもあります ダブルめでたき日

鴨志田転生ももう最終決戦が近づいております!
あと約2ヶ月、是非お楽しみくださいませ。

この二次創作が、皆様のペルソナの思い出を振り返る機会となることを祈っています。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。