鴨志田転生~ペルソナ5一番の嫌われ役に憑依転生してしまったが、原作知識の力で雨宮蓮に代わって怪盗になり破滅フラグをへし折ってみせる!~   作:DreamFrog

283 / 293
第272話 9/15(木) 猫をも殺す、その感情。

 

 

〜〜

昼

〜〜

 

昼休み、コーヒーメーカーを仕掛けて郵便を確認する。

対して確認もせず引っ掴み、机に放る。

完成したコーヒーを黒いカップに注ぎ、届いたものを確認。

(廃品回収のお知らせ、不動産のチラシ。…町医者が家売ると思うの?)

(他には…ん。)

 

見つけた。

医局からの、美羽ちゃんについての報告。

 

武見妙

「…。」

 

緊張する手で、ゆっくりと開封。

 

…治癒の兆しあり。

 

武見妙

「ふぅ…。」

 

息を吐く。

大きく、安堵する。

 

美羽ちゃんとその家族は、手のひらを返したように信用してくれていると。

感謝と、不信になっていた謝罪をしたがっていることが書かれている。

 

それと併せて、大山田からの誘い…改めて、私をこれからも研究開発のリーダーとして雇いたいというスカウトにて報告書は締めくくられていた。

 

(大学病院…本格的に通うなら、引っ越しかな。)

(あの賃貸、まだ部屋空いてるっけ…)

 

…改心後の大山田は、本当によくやってくれた。

彼が居なければもっと簡単に新薬を完成できたと思うけれど…彼はちゃんと罪の清算を試みている。

この先、大山田が医局長の座を降りるまで私は安泰だと思えば十分お釣りがくるだろう。

 

佐倉さんをはじめとした長期の通院が必要な人が気がかりではあるが、医院(ここ)を閉めて大学病院へ完全に復帰するのも良い選択肢では無いだろうか。

 

 

その報告書を視界から外す。

チラシに混ざって、他にも郵便物があるのを見つける。

切手の無い、差出人も書かれていない…

青(・)い(・)便(・)箋(・)。(・)

 

(…?)

(誰かのイタズラ…いや、お礼の手紙?)

 

町医者として子供も診ている事から、そういった物を直接ポストに放り込まれる可能性は十分にある。

軽さからして、何か危険物(いたずら)を仕込まれている様子もない。ひとまず開いてみることに。

 

中には。

 

 

武見妙

「…ふふ。」

「中々お洒落な事するんだ?」

 

 

緊張の解けた所に、嬉しい手紙。

微笑みながら…その内容を読んでいた。

 

 

武見妙

「今夜の予定は決まりかな。」

 

 

…。

 

 

 

 

 

※回想

 

〜〜〜

あの電話の後、私は…彼(・)の存在について調べていた。

 

最初は、なんてことない好奇心だった。

あれだけ私に好意を抱いてくれているのに、認知訶学やらミステリアスな秘密を沢山隠している彼(・)を…もう少しだけ知りたかった。

 

 

まず、不思議な事として。

彼(・)が私と会うときの態度と他での態度を大きく変えていることが挙げられる。

看病してやり、目を覚ました鴨志田卓を見舞いに来た者たちへの態度が、大きく異なっていた。

*1

 

それだけでは公私混同していない教師という感じなのだが、彼(・)が私に軽い雑談として話した昔話と、金メダルを取るほどのアスリートのイメージが結びつかない。

 

 

だから、時間があるうちに調べることにした。

新しい薬も無事に完成した。今は診察ばかりで探求心を持て余している。

休憩時間のようなものだが…たまにはこの気持ちを動かさないと錆びついてしまうだろうと考えたから。

 

 

 

破傷風で入院したという話について。

カルテは法律の兼ね合いで5年は保管される。

つまり、5年経てば廃棄されていてもおかしくない。

記録が存在しないことは証拠たり得ず、彼の言葉を嘘と断定できない。

 

電子カルテであれば残ることもあるため、大山田に頼んで医者個人で探せる範囲を探ってみたが…成果は無し。

 

本人には悪いが…あんな面白いエピソード、本人が金メダリスト(ゆうめいじん)になっているなら知人の話等で記事なんかの記録に残っていてもおかしくないと思ったのだが。

過去のニュースを検索しても成果は無し。

 

 

…。

 

 

数日後。

神保町にて、あるスポーツ誌を見つけた。

古い、インタビュー記事。近い未来、プロ選手となってオリンピックに挑むであろう有望な学生達をまとめたもの。

 

早速購入して…駅前のカフェにて確認する。

そこには、一番の有望株だとして鴨志田卓の学生時代が事細かく書かれていた。

 

シロップとミルクを投入した甘いコーヒーを飲みながら読み進める。

…曰く、女子には凄くモテていたらしい。

昔の記事だからかエッチなことはしたのかとか下世話なことが問われており…『ええ、まぁ、人並みには(笑)』なんて書かれている。

 

舌打ちが出た。

値段の高いコーヒーで脳裏の靄を払いながら次のページをめくれば、小学校時代についての記述がある。

鴨志田卓は他より多く記事の枠が取られているらしい。

 

…その増量されているページに、私に話したエピソードは1つたりとも存在しない。それどころか、真逆のことばかり書かれている。

全力で、周囲の期待に応えるために努めてきたアスリートの話。調子に乗るような素振りもなく、誠実な。

 

同級生の声でも、周囲の父兄もそうだ。

周囲に馴染めない社会不適合者の存在は影も形も無かった。

むしろこの頃から、自分を律して人とコミュニケーションを取り、それに成功しているように見える。

 

他の情報を探しても…見つかるのは、いけ好かない自信に満ち溢れたアスリートの誕生秘話ばかり。

正直、この鴨志田卓とはイマイチ反りが合いそうにない。

 

教師になって丸くなったのでは説明がつかないような、彼の変化。

巷で噂の映像、その中に声のみ出演していた彼本人は改心だと言っている。

 

改心の結果、あの性格になった?

しかし、それではあの乖離したエピソードの説明がつかない。

 

あの話は、作り話とは思えない。

そうであるとすれば。

 

 

 

『貴方は、誰なの?』

 

 

 

神保町のカフェにて。

誰にも聞かれないような声量で、私はそう呟(・)い(・)た(・)。

 

そんな経緯で…私は、彼(・)の存在を認知した。

鴨志田卓の心中に居る、他者の存在を。

 

人の心を変える、認知訶学の施術というのは…人の心に、もう一つの人格を入れることも可能なのだろうか?

 

全くもって意味不明な事態ではあるが…分かっていることは1つ。

私に好意を抱いているのは…彼(・)だと言うこと。

 

認知訶学について物知りな、鴨志田卓の奇妙な形の同居人。

今度会った時の話題は決まりだった。

 

 

〜〜〜

 

 

 

〜〜

夜

〜〜

 

 

 

夜、学生達も完全に下校しきっている…夜21時。

私立秀尽学園高校の校門前に、私はやって来ていた。

 

 

武見妙

「…職場に来るのは初めてだっけ。」

 

 

学校らしい、校門の向かいに普通の民家が並ぶ立地。

視線などないか少し不安で、自然と背筋が少し伸びる。

 

 

武見妙

「急に、改まった手紙なんか出しちゃって…」

 

 

頬を緩め、懐から取り出したのは…

青(・)い(・)便(・)箋(・)。

中身を改めながら、これからの事を考える。

 

私が予約したランチは、経験のなさそうな彼(・)には少しハードルが高かっただろうか?

 

上回る為のものとして…私が病弱であまり行けなかった『学校』を指定するのは中々良い考えと思う。

もしかすると、鴨志田卓本(・)人(・)にでも聞いたのかもしれない。

 

(小学校だったら満点だったけど…高校教師だから仕方ないか。…ふふ。)

 

夜の、学校探検でもやるのかもしれない。

縁のなかった、肝試し。夜の学校に恐怖を覚えるのは小さい頃までで、高校生にもなると危険な廃墟くらいにしか肝試しには向かわない。

 

何を見せてくれるのだろう?

もう事は済んでいて…何か明かしてくれるのかもしれない。

 

興味が湧いてくる。

少し早く着いてしまった。彼(・)が来るまでに、手紙の内容を読み返しでもしていよう。

この心地よい待ち時間は、スマートフォンを触って浪費するには惜しい。

 

 

武見妙

「『秀尽高校』、我が『城』にご招待します、か…」

 

イセカイナビ

『候補が見つかりました。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

武見妙

「?」

 

ス(・)マ(・)ホ(・)か(・)ら(・)、勝(・)手(・)に(・)音(・)声(・)が(・)流(・)れ(・)た(・)。

 

 

…。

とぷん、と。

一人の医者が、現(・)実(・)から姿を消した。

 

 

 

 

*1:
217話









次回、準決勝エピローグです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。