鴨志田転生~ペルソナ5一番の嫌われ役に憑依転生してしまったが、原作知識の力で雨宮蓮に代わって怪盗になり破滅フラグをへし折ってみせる!~ 作:DreamFrog
目の前に現れた、先程まで高校だった建物。
外壁や地面がややひび割れ蔦が巻かれており…その様相は永い時間が経ったようで。
夜の闇の中薄ぼんやりと光る城は、異様な雰囲気が漂っている。
低い声
「ここは、かつて王の君臨する城であったそうだ。」
「統制を求めぬ脱獄囚が作った、醜い国のな。」
武見妙
「!!」
いつの間にか、隣に誰かが立っている。
低い声
「貴様には、感謝している。貴様が居なければ…私は、あの道化に化かしきられていただろう。」
「奴の、貴様への感情が綻びとなり…こうして、勝負の場に立つことができる。」
武見妙
「感謝…?」
鼻の長い、頭頂部の禿げた男。
きっと…目の前の存在が。
低い声
「案ずるな、奴を悪くは扱わない。貴様の身柄もな。」
城の入り口が開き、着ぐるみのようなおかしな造形の兵士が整列する。
低い声
「ここであれば、融合の
長鼻の男は、こちらを気遣う速度で城の中へと進んでいく。
兵士は私達を囲うように数名が付き、ゆっくりと動いていく。
危害を加えようとする素振りは無い。どのみち…帰り方も分からない場所で下手に逆らう事は悪手だろう。
そう思って、彼らについていく。
武見妙
「貴方は…
そうであって欲しい。そんな願いを込めた質問は…
低い声
「ククク…今はまだ、敵対者だろう。」
「これからの
敢え無く打ち砕かれる。
低い声
「貴様を、ゲームの景品にさせてもらう。悪いがこれは決定事項だ。」
「奴を私が屈伏させた後…奴に貴様を与えるか。」
「奴が私を打倒した後…奴が貴様を救うか。」
「どちらに試合が転ぶかは明日の暮れにはわかる。それまで、ここでゆるりと過ごして貰いたい。」
武見妙には、心当たりがあった。
鴨志田卓…いや、
人の心を変える活動、命の危険もある活動。
大きな武器を持った異形の兵士、目の前にいる、偉そうな鼻が高く声が低いスーツ男。
抵抗は、悪い結果しか産まないだろう。
武見妙
「…景品だというなら、丁重に保管するべきだと思わない?」
低い声
「ふむ、妥当な要求だな。やはり貴様は聡い。」
「良いだろう。」
一行の進路が変わる。地下へと降りていた階段をUターンし、左右を兵士の鎧が並ぶ直線通路を越えた後…拘束具などが散乱する部屋に着いた。
動く生き物の類は無く、光源が謎の明るい部屋は静まりかえっている。
武見妙
「この、器具は…」
低い声
「特に意味はない。ただ、跡地を利用しているだけだ。」
「寝具もある、地下牢より過ごしやすいだろう。食料や、足らずは兵士に言えばいい。」
物々しい鎧を着た、
明らかに如何わしい事に使える設備に、ルームサービス付き。
ラブ◯テルに素泊まりするような感覚か…なんて気の抜けた事は聞けない雰囲気だった。
武見妙
「…わかった。」
「期間は…"明日の暮れ"まで?」
イゴール
「そうとも。明日が終わる頃には…どちらに転ぼうと貴様は解放されている。」
「話は終わりだ。」
武見妙
「…。」
引き留めることはしない。できない。
閉まる扉を、ただ眺める。
武見妙
「…これ、明かりは消して貰えるの?」
鎧兵士
「ええ。消しましょうか?」
武見妙
「いや、まだ大丈夫…」
いかがわしい光の照らすベッドに腰を掛けて、
ため息を1つ。
私はきっと…開けてはいけないパンドラの箱を、何も知らずに開けてしまったのだろう。
ここはどういった空間なのか、明らかに物理法則を無視した出来事は、彼が言う認知訶学との関連はあるのか。
様々な疑問が湧いてくる。
けれど、しばらくは…好奇心を追いたくない。
スマートフォンを触る。…電波はどこにも通じない。
あるのは時間と後悔だけ。
武見妙
「…。」
この待ち時間は、先程までとは比べ物にならない程に辛そうだ。
…。
この廃城は、イゴールとラヴェンツァらの手によって保存し隠されていたもの。
イセカイナビによる侵入を受けつけず、鴨志田卓が
目的は、証拠を減らす為。
憑依転生してすぐのタイミングでは、鴨志田卓はまだ覚醒していないどころか歪み真っ盛り。
つまり…何もしないままだとカモシダパレスとシャドウ本人はヤルダバオトに見つかってしまう。
憑依転生者がカバーストーリーとして話す『コーチに改心してもらった』という嘘を見破る証拠となる。だから隠す必要があった。
ヤルダバオトが秘匿を見破る条件は1つだけ。
存在を確信して《あるとおもって》探す事ができれば、容易く発見できる。
カモシダパレスの存在を確信しているならもう手遅れであり、隠すメリットも無くなった後となる。
…情報的な価値を失った後に見つかった秀尽高校の城を、現実がメメントスと融合しても影響の少ない点を活かし。
ヤルダバオトは『景品』の保管庫に利用したのだった。
…。
9月15日(木)、夜。
修学旅行の時差ボケもどうにか持ち直し、日常生活へ皆が戻り始めた頃。
心の怪盗団は全員、同じ夢を見た。
〜〜〜
中継等で時たま見かけるような、バレーボールコート。
違和感があるとすれば…記憶にあるものより、全体的に青色を使う割合が高い事くらい。
観客席に、この夢を観るものは座っている。
左右の席にも、何人か人がいるような黒いシルエットと気配があった。
観客席の下にある、選手やコーチの座るベンチから声が聞こえる。
底冷えするような、とびきり低い声。
低い声
「ごきげんよう、心の怪盗団。これまでの『ゲーム』について、この場を借りて通告がある。」
距離があり詳細まで見えないものの、ベンチには2人の人影があった。
一人は、鼻が長いスーツ姿の男。
右隣の席に鳥籠のような檻を置き、手を乗せて人差し指でトントンと叩いている。
中に入っているのは、一匹の青白い蝶々。
捕まえた虫を周囲に見せびらかすかのような素振りをしながら、その男は話を続けた。
低い声
「まずは互いに、不正塗れのゲームだった事に謝罪したい。まさか、このような手を取るとは…驚かされた。」
「しかし…これからは正々堂々と行こうではないか。貴様らに与えたイセカイナビを奪う事はしない。代わりに、これらは回収させてもらう。」
鼻の長い男は鳥籠を突くのを止め、次に反対側に座る人影の肩に手を置いた。
人型の物に青い布が幾重にも巻かれており、黒い鎖で乱雑に縛り付けられた、
低い声
「なに、元よりある筈が無かったものだ。さして困りはしないだろう?」
「我は大衆に失望している。大衆が、その失望を、支配を自ら求めている。」
「過半数の大衆が望む、思考放棄の怠惰を私は叶えてみせよう。」
「反対意見のある少数は掛かって来るといい。止められるものならな。」
「これは嘘でも夢でもなく、貴様らへの宣戦布告に相違ない。私は逃げも隠れもせず、貴様らが好き放題暴れていたメメントスの最深部にて待っている。」
「これは統制を望む大衆と、自我を望む大衆との
「刻限は明日。越えれば不戦敗とみなし、メメントスと現実の融合を開始する。」
…。
その宣戦布告は、明らかに説明不足で。
既に詳細を知っているものにしかうまく伝わらない話だった。
低い声…ヤルダバオトは、複数の人間をこの夢に呼んでおきながらも、その目ではたった一人しか見ていなかった。
低い声
「…ククッ。精々
…。
偽神の期待は、鴨志田卓
〜〜〜
…。
〜〜
早朝
〜〜
※三島由輝視点
朝。俺は自宅にて目を覚ます。
意識の覚醒と同時にベッドから跳ね起きた。
(なんだあの夢!え、他のメンバーも見てんの!?)
驚き。そして直後に来る…
(…ってか、あの籠の蝶って!)
1つの疑問。
あの蝶は、忘れた事など一度もない…俺の仮面となってくれている蝶。*1
明確なトラブル。
寝間着から学生服に一瞬で着替え、家を飛び出す。
改心する前の鴨志田に無理やり朝練に呼ばれていた頃よくあった光景だからか、親には何も反応されなかった。
一心不乱に、
入り口まで入り、確認する。
『ゲーム』へのスカウトの証である、ユニフォームも。
仮面として側にあり続けてくれた、あの仮面の蝶も。
鴨志田転生をいつもお読みいただきありがとうございます。
こちらで七章、『準決勝 国会議事堂の船』とが終了となります!
最終章は『決勝戦』と銘打ちまして、直前の執筆ペースを鑑みて投稿予定となります!
舞台がP5RではなくP5なのもあり、遂に次回が本編最終章となります!
これまでご覧いただきありがとうございます!是非、最後まで着いてきて下さい!!!
(2026/7/16地点のDreamFrog)
↓
ご安心ください!!既に完成しております!!
登場人物紹介を挟んでノンストップで投稿開始していきますのでお楽しみに!!
(投稿日のDreamFrog)