鴨志田転生~ペルソナ5一番の嫌われ役に憑依転生してしまったが、原作知識の力で雨宮蓮に代わって怪盗になり破滅フラグをへし折ってみせる!~   作:DreamFrog

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お早めに最終決戦をお楽しみいただきたく、事前準備約9500字を1話に圧縮して投稿しております。


第273話 9/16(金) お徳用、事前準備おまとめパック

 

〜〜

〜〜

 

 

※鴨志田卓視点

 

 

 

朝。平日に仕事や学業に励む者たちが集合するにはあまりにも早い時間に…心の怪盗団はルブランへ次々と集まっていた。

あとは三島が来れば全員集合できるといったタイミング。

 

 

なぜか、秀尽は本日休校となっていた。

大多数の生徒や教師が朝から謎の体調不良を訴え…教師含めた緊急の学級閉鎖のようなものが起きたのである。

 

喜多川の通う洸星高校も、明智の進学校も同様の事態で休校に。

更には冴さんの検察庁まで自宅待機命令が出ていた。

だというのに、不自然なほどに世間はそれを話題にしない。

 

 

明智吾郎

「明らかな…『お膳立て』だろうね。大衆をコントロールできる事を俺達に示すアピールにもなる。」

 

新島冴

「同感。選択肢以外の行動をするとどうなるか…声に出さない脅しって所かしら。」

 

佐倉惣治郎

「朝っぱらから閉店にしてるってのに…常連の一人も見に来やしねぇ。お前等全員が見た夢ってのが関係してんのか?」

 

鴨志田卓

「恐らくは。詳しくは、()()()()()()()()が全員集まってから話します。」

 

(これができるのにしなかった、ってのは…ゲームの観察もあるが、コーチを警戒したんだろう。)

 

 

新島真

「…。」

 

 

いつも集合が完了するまでは勉強や準備などでノート類を開いていた新島真は、珍しく無言でスマートフォンを弄っている。

…メッセージの送り先は明らかだろう。

 

 

新島真

「!」

「連絡ついた、渋谷から向かうって!」

 

 

…。

 

 

数分ほど経って。ルブランの扉が弱々しく開かれる。

閉店の掛札を無視して入ってきたのは…青い顔の三島由輝。

 

 

鴨志田卓

「…来たか。」

「作戦会議だ、近くに座ってくれ。」

 

三島由輝

「…おう。遅れて、ゴメン。」

 

鴨志田卓

「気にすんな、渋谷行ってから来たなら早いくらいだ。」

 

佐倉惣治郎

「ほら、こっち来な。」

 

 

惣治郎が三島をカウンターに促す。

座ってすぐに、湯気が立つコーヒーが提供された。

 

三島はそれを、掠れた声でお礼を言って受け取り飲んで、苦さや熱さも感じないような態度で放心している。

 

 

三島由輝

「…ハハ、何も出なかったよ。仮面になってた蝶があいつの手にあったから…お察しだよね。」

「まるっきり、取られてた。」

 

 

真はそれを見て下唇を噛む素振りを見せ、双葉はモルガナをギュッと抱き締めていた。

 

 

鴨志田卓

「よし、()()()が全員揃った。まずは皆に共有したい情報がある。」

 

 

ぼんやりとした顔で、三島の目線がこちらを捉える。

 

明智率いる喜多川と坂本の2人など、全メンバーの注目が集まった。

 

(…全員、か。)

(許してくれ、お前も皆に露見するのは嫌だろう?コーチ。)

 

これで怪盗団は全員揃っていると話すことで、

三島はまだ怪盗団の一員だと強く示す。

だが…この場にいるのは俺の心の中に居た友人を除く全員だ。

 

…。

三島由輝が真っ先にメメントスの入り口へ行ったのと同じように。鴨志田卓もまた…消失を感じていた。

 

三島と違い、鴨志田は力に関しては一切問題がないのだが…この5ヶ月程の間一番近い所にずっと居た者。

憑依転生者(コーチ)が、心中から綺麗さっぱり居なくなっていた。

 

(お前のように上手くやれるかは分からないが…教わったこの知識で絶対に『勝って』みせる。)

(見てろ、あんな偽神なんて吊るし上げてやる。すぐにお前を連れ戻してやるからな。)

 

 

鴨志田卓

「まず、あの夢の人物についてだが。」

「現実やパレスなんかは全部、あの夢に出た奴が監視できる領域内だ。これまで、俺の家とか人目のない場所であろうと隠し事が多かった理由がコレだ。」

 

奥村春

「監視…」

 

佐倉双葉

「お風呂も?」

 

鴨志田卓

「お風呂も。」

 

佐倉双葉

「変態だ!」

 

 

鴨志田卓

「だから、これから話す情報も…知られると奴に有利になりそうな事を差し引いて話す。」

「答えられない質問には、そのまま答えられないと返してしまうことを許してくれ。」

 

佐倉惣治郎

「…お前等にメッセージを送ったっつう奴が、今もこの店に居るようなモンなのか。」

 

新島冴

「もっと(タチ)の悪い…カメラと盗聴器でも仕掛けられてるようなものでしょうね。」

 

雨宮蓮

恐ろしいな…

双葉みたいなものか

 

恐ろしいな…←

双葉みたいなものか

 

佐倉双葉

「ほ、ほほ、ほんまそれな。」

 

鴨志田卓

「それを踏まえて、まず話したい事がある。」

 

 

ふぅ、と小さく息を吐いて、大きく息を吸い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鴨志田卓

「メメントス最奥には大衆のパレスのオタカラがあって、大衆の『全部誰かに任せて自分はなんも考えず過ごしたい』って願いを叶えるために神として振る舞って人々を統制しようとしてる事を、俺はずっと知ってたんだ。」

「そのオタカラをどうにかすれば、大衆全体を改心させられる筈なんだよ。名前はヤルダバオトで、こんな見た目らしい。」

 

三島由輝

「待って待って待って言っちゃダメそうなこと全部言うし書くじゃん」

 

 

()()を話し始めた。

自身の状況を飲み込みかねて苦しんでいた三島が、思わずツッコミに回らざるを得ないほどに。

 

 

…。

指導力や知性知能の類は憑依転生者より遥かに優れている鴨志田卓。

この世界についての知識も、憑依転生者の記憶を維持する為の思い出しに付き合っていた為に万全にある。

 

しかしバキバキ成功者アスリートの人生を送った成人男性は、てんでゲーム的な王道やら風情と言うものを知らないのである…!!!

 

 

鴨志田卓

「そりゃ言っても良くなったからな。コーチの存在がバレちまった。」

 

坂本竜司

「いや、それでも思い切り良過ぎんだろ!」

 

喜多川祐介

「神々しいデザインだ…絵になるな。」

 

坂本竜司

「絵にすんなっ!」

 

 

モルガナ

「コーチ…お前を改心させたって話してた存在か。」

 

鴨志田卓

「その通り。恐らく、あの演説の時に拘束されてたのがコーチだな。もう隠す理由も無い、救出できたら皆に紹介させてくれ。」

 

三島由輝

「…な、何が『バレちまった』だよ!これまでずっと隠してたのか!?」

「こんな…バレたら、とんでもない事になる秘密を、ずっと!」

 

 

三島のその言葉に、咎める意味は感じられない。

自分自身がとんでもない状況に陥っているというのに、咄嗟にこちらが背負っていた物を慮る言葉を吐ける。

 

(それができる時点で…俺の何倍も強いんだ、お前は。)

 

 

鴨志田卓

「仮にも元アスリートだ。主将として、マスコミに情報を漏らさないよう心がけるのは慣れてる。」

「とんでもない事って言うと、力が奪われてるって事だよな。」

 

三島由輝

「あぁ、奪われたと言うか…最初から借り物だったんだ。」

「あの鼻が長い人…人?から…その、なんか声は違うかったけどさ。高い声だった。」

 

鴨志田卓

「やっぱりな。それは…多分ヤルダバオトと敵対してるお方だろう。名前はイゴール、俺に使命やコーチを遣わせた張本人だ。体を乗っ取られて、権限なんかを好き放題使われてる。」

「三島の力は、何かの経緯で貸し与えられたんだろう?パピヨンとして動いてた服、ヤルダバオトの眷属として働かされてる奴の服装にデザイン似てたんだよ。だから、やろうと思えばヤルダバオトが奪い取れるんじゃないかとは思ってた。」

 

 

過去にコーチが武見妙へとぶっちゃけていた時の反応を鑑みて、なるべく固有名詞が増えないように心がけながら話していく。

 

 

三島由輝

「…。」

 

鴨志田卓

「つまり、三島が狙われたのは俺の責任だ。どうにか『この時』を遅延、できれば回避したかったんだが…」

 

明智吾郎

「…。」

「由輝、この件は」

 

三島由輝

「幸せな夢を見てた。」

 

 

バレてしまった件について、責任の一端があると考えてしまっている明智吾郎。*1

曇った顔をした彼が何かを口に出す前に。三島は遮るようにして呟く。

 

 

三島由輝

「そう、思う事にする。」

「しんみりしないように、ふざけた量の情報で誤魔化そうとしてくれてるみたいだしさ。こんなんじゃ()()()()()()()よ。」

「何、まだ力が無くなっただけだ!事情通としてこのまま作戦会議には参加するけど、いいよね?」

 

鴨志田卓

「…ああ。元より、人手は幾らでも欲しい。手を貸してくれ。」

 

 

沈んだ気持ちを、ツッコミで上に上げた後。

三島は程よく整った表情で会議に参加を表明する。

 

 

雨宮蓮

頑張れよ

頑張ろうな

 

頑張れよ←

頑張ろうな

 

三島由輝

「勿論!雨宮も頼りにしてるからな?」

 

 

力が無くなったどころか最初から覚醒していない雨宮も参加してくれているのが心強かった。

 

 

 

…。

 

 

 

モルガナ

「力が無くなることについてなんだが…ワガハイから聞きたいことがある。」

 

 

空気を切り替えたのは、モルガナの重苦しい声。

 

 

モルガナ

「メメントスのオタカラを盗るってことは…枝分かれしてできるパレス達も、イセカイナビも軒並み消え失せるって事だ。」

「ミシマは他人事じゃない。怪盗業は、これっきりになるかも知れない。そもそも…参加するかどうかも、強制できるものじゃないんだ。」

「覚悟は出来てるか?」

 

新島真

「私は、状況が好転するなら別に。私が異世界を使ってやりたかった事は…もう全部済ませられたから。」

「一番名残惜しがるだろうウチのセッターから、真っ先に力を取り上げたんだもの。」

「今更私が、何を躊躇うって言うの?」

 

 

その話に対して真はカウンターから立ち上がり、今まで自分が座っていた椅子に手を置く。

小さく鈍い音を鳴らした拳は、力が込められ白くなっていた。

 

 

新島真

「私は行きたい。皆は?」

 

三島由輝

「…っ。」

 

 

…。

三島由輝は、感動していた。

そしてそれ以上に、驚いていた。

新島真が…ウチの参謀が、静かに怒ってくれている事に。

 

 

奥村春

「私も。」

「期間は短いし、私は怪盗になってからの三島くんしか知らない。けど…私が気負いしなかったのは、三島くんが楽しそうに笑ってくれていたからだと思う。」

「最後の最後で除け者なんて…あんまりです!」

 

佐倉双葉

「弔い合戦だ!ウチのちょうちょを、ただのネットに詳しいバレーボールインターハイ優勝者にした恨み!」

 

三島由輝

「皆…!」

 

 

三島と相応の関わりを持つ皆が、口々に彼の敵討ちを誓ってくれる様に対して。彼の目が輝いているのが見えた気がした。

 

 

明智吾郎

「正直、今失うには惜しい技術だ。やっと、別の使い道を出来ている矢先の事だからね。」

「けど、奴の口振りからして最初から掌の上だった。共存の道を探るにしても…この衝突は避けて通れないだろう。」

 

モルガナ

「…覚悟は、決まってるんだな。」

「なら、ワガハイも…」

 

奥村春

「…?」

「モナちゃん…?」

 

モルガナ

「いや、何でもない。」

「他に何もなければ、具体的な作戦を詰めてこうぜ。」

 

 

(…黙っとく気だな?)

 

原作よりモルガナの解像度(もふもふ数)が高い春が、早期に異常を感知する。

深掘りを避けようとしたモルガナだったが…コーチの置き土産(ちしき)を持った俺は見逃さない。

 

 

鴨志田卓

「ああ、因みにメメントスを消滅させるとモルガナは諸共消える。暫くしたらまた会えるからな。」

 

モルガナ

「…。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最低限の部分だけ隠し、残りを全て暴露してやった。

マイクロビキニもびっくりの情報開示にモルガナは背景に宇宙を背負って数秒フリーズ。

 

 

モルガナ

「バッ…カモシダっ!!!」

 

奥村春

「バカモシダ?」

 

 

 

過去イチかもしれない声量の叫びがルブランに木霊する。

四茶には野良猫が多い。猫の叫び声なら多少煩くても問題はないだろう。

 

 

 

三島由輝

「言っちゃダメそうなこと全部言うじゃん」

 

佐倉双葉

「…せんせー、もしかしてにゃんこの正体知ってる?」

 

鴨志田卓

「ああ、コーチから聞いて全部知ってる。朝起きてここに来るまでに、幾らか相談しておいたんだ。」

 

モルガナ

「だ、わ、ワガハイから言うって話してただろ!!」

 

鴨志田卓

「意味深に隠そうとしてたからな。できるだけ伝えるって話だったのに。」

「風情も何もなく全部言ってやるぞ。嫌なら自分で言え。」

 

モルガナ

「…おう。」

 

 

スパルタ指導にたじろぐモルガナ。悪いが感傷に浸ったりする時間は作戦会議に回したい。

そのわだかまりはここで取っておくべきだ。

 

 

モルガナ

「カモシダから聞いて、大体思い出した。」

「ワガハイは、お前たち怪盗団を助けるためにメメントスで生まれた存在なんだ。」

 

奥村春

「…メメントスで?」

 

三島由輝

「気が付いたらメメントスに居たって話は、そもそもメメントスで生まれたから…」

「怖いSFでよくある、記憶喪失と思ったらクローンだった的な!?」

 

モルガナ

「少し違う。記憶()消されてたんだ。」

「一般常識の類に、ペルソナの使い方…あとは『メメントスの最奥に行きたい』とだけ、覚えてた。」

「お陰で…自分のことをメメントスに記憶と姿を弄られた人だなんて勘違いしちまった。滑稽だぜ。」

 

佐倉双葉

「にゃんこ…」

 

 

自嘲気味にため息をつくその声は、かなり辛そうで。

一度俺と話してくれた上で、まだ情緒が整っていないような様子だった。

 

 

鴨志田卓

「さっき話したイゴールって人物はヤルダバオトと敵対…代理戦争をしてる。互いに代理人を投じて、世間がどう変わるかを見る社会実験みたいなものだ。」

「ヤルダバオトの選んだ人物は明智吾郎。イゴールは俺を選んで、助っ人にモルガナを生み出した。」

 

モルガナ

「そうだ。ワガハイはこのゲームの為にメメントスから生み出された存在…なら、メメントスが消えたら諸共消滅すると思ってた。」

「カモシダに諭されて、言わなくちゃと思って…けど、いざ時間になったら、言い辛くて…」

 

「だからこそ、さっきのはなんだ!? 暫くしたらまた会える!?」

 

 

一拍置いて、聞いてないぞとばかりに先ほどの発言に突っ込む。

 

(俺から、先んじて可能性を話してやってもよかった。けど、当人たちから話せた方がいいよな。)

 

 

鴨志田卓

「俺達がやってる干渉手段…"貰い物のナビアプリ"で"メメントス由来の異世界"に入る形式がこれで最後になるだけだ。断言はできないが…多分、ただ方法が一つ消えるだけだろ。」

「コーチもいくつか心当たりはあると言ってた。認知訶学について研究していけば、きっと他の関わり方も見つかるさ。」

 

佐倉双葉

「…!!」

「そうだ、安心しろにゃんこ。もし異世界からにゃんこだけ帰ってこれないなんてことがあっても私が居る!」

「二代目スーパー天才認知訶学者のサクラフタバ様に任せとけぃ!」

 

 

双葉の方を見ながらそう言えば、彼女は張り切った様子で自分の胸を叩いてくれる。

自信に溢れたその表情は、モルガナの不安やネタバレでぐちゃぐちゃになった心を整えてくれたようだった。

 

(モルガナの帰還はベルベットルームの住民の粋な計らいだとコーチは言うが、P5Sという作品でまた異世界を作っているところを見るに…頑張れば色んな手段で干渉できる世界なんだろう。これくらい希望を与えていい。)

 

…。

憑依転生者が出す所を迷っていた情報が、惜しげも躊躇いも無く、情報の裏取りもせずぶちまけられていく。

その分、期待(リスク)は膨れ上がっていく。

鴨志田卓は、それを一切恐れない。

 

 

 

 

モルガナ

「…ありがとうな。」

「そうだ、ウチにはフタバが居るんだ!メメントスが消える事くらい…なんてこと無いぜ!」

 

奥村春

「モナちゃん、人じゃ無かったんだね。」

 

モルガナ

「お、おう。その節は、その…ごめん。」*2

 

奥村春

「良いの。」

「人じゃないなら…」

 

新島冴

「なら?」

 

モルガナ

「待て待て待って絶対大変なこと言う気だろハル!ストップ!ストーップ!!」

 

佐倉双葉

「加勢するっ!」

 

モルガナ

「するなバカっ!あっ、にゃぁぁぁ〜〜!!!」

 

 

 

 

 

閑話休題(ていそうのきき)

 

 

 

 

 

そして、気持ちを持ち直し(およめにいけなくなっ)たモルガナに取って代わるように…坂本竜司が口を開いた。

 

 

坂本竜司

「なぁ、その代理戦争ってヤツに吾郎を選んだ、ってのは?」

 

明智吾郎

「それは、俺から。」

「ペルソナの素養があるもののリストを貰ったことがある。差出人には、イセカイナビを与えた者と書いていたんだ。」

「先生。代理戦争のテーマは、『人の愚かさ』の類では?」

 

鴨志田卓

「その通りだ。ヤルダバオトは大衆に対して失望している。その上で大衆の望みを全部引き受けるつもりらしい。人任せにしたい怠惰をな。」

 

「人間が全員何も考えないで良いようにされる。SF映画によくある管理社会を一際悪くさせた感覚だ。」

 

「イゴールは、明智吾郎と俺に力を与えてみて…大衆が更生するか見て決めようと持ち掛けた。」

 

「まぁ、結果はご覧の有様だ。俺が頑張って状況を良くしても、大衆の大半はこの通りなんにも関心を持っちゃくれない。」

 

「イゴールは音信不通、ヤルダバオトはイゴールに成り代わった上で、やろうと思えば大衆をコントロールできる能力を持ちっぱなし。俺が状況を教わった4月から既にそうだった。」

 

喜多川祐介

「…違和感はあった。」

「獅童正義の検挙後にアレだけ改心をして、テレビでも報道をしているというのに…あまりにも、大衆の改心への関心が薄すぎる。」*3

 

坂本竜司

「電車乗ってる時に結構喋ってるのは聞いたぜ?怪盗団怖えなってよ。」

 

新島冴

「知名度は確実にある。その上で…関係のない者は毛ほども興味を持ってない。オカルトとさえ思ってる。」

「対岸の火事…大衆はここまで腐ってたの?」

 

鴨志田卓

「ヤルダバオトはそれを痛いほど分かってたんだろう。最初から勝たすつもりなんてなかったんだ、怖い話だよな。」

 

新島真

「…状況をわかっていたのに、今まで努力を?」

 

 

眉間から力が抜けていない真がそう呟く。

俺が孤独な戦いをしていたと考えてのものなのだろうが…その感情は、コーチが浴びるべきものだろう。

しかし、それを今話すべきではない。

 

 

鴨志田卓

「わかってたからこそだ。」

「覆される事を知らずにじっくり時間をかけて努力してるように見せかけて…みんなに育って貰っていた。盤石な準備と、健全な成長をしてもらって…ヤルダバオト(たいしゅう)に勝つために。」

「ここまで皆が育ったなら十分戦えるはずだ。今日、メメントスを落とす。」

 

 

そう言って、胴体ごと大きく三島の方を向いてやる。

 

 

鴨志田卓

「三島。お前の力を奪われた仇は…すぐに討ってやるからな。これからも…目一杯、バレーボールをしよう。」

 

三島由輝

「…そう言ってくれると心強いよ。」

 

 

三島の声には、確かな力が籠もっていた。

…少しは、()()()()()()()のだと思いたい。

 

 

…。

 

 

 

鴨志田卓

「いょし!」

 

 

ぱん、と手を叩いて。空気を切り替えた。

 

 

鴨志田卓

「皆、気持ちに整理は付いてきたと思う!」

「具体的な情報について共有していくぞ!コーチ情報全開だ!」

 

 

そうして俺は、作戦を皆に伝え始める。

 

(結局、コーチが考えていた()()()の刺し方は分からず仕舞いだ。俺が知ってるのは、原作のヤルダバオトの最期だけ。それを踏まえた解決法を、俺は共有されてない。)

 

(…十分すぎる。ないものねだりをしても仕方ない。手札を集める時間は終わった。あとは、今ある手札でどう勝つか考える時間だ。)

 

 

 

 

…。

 

 

 

鴨志田卓

「…というわけで、強靭な拘束具が要る。ちょうど俺達が見た夢の、コーチに施してたような奴だ。作れるか?」

 

モルガナ

「ワガハイとアマミヤに任せとけ!ただただお泊りしてた訳じゃねーんだ!」

 

雨宮蓮

超魔術を見せてやる

神の御業を見よ

(無言でドライバーを舐める)

 

超魔術を見せてやる←

神の御業を見よ

(無言でドライバーを舐める)*4

 

 

モルガナ

「昼までには間に合わせてやる、他の準備は頼むぜ。」

「ミシマもこっちだ。」

 

三島由輝

「応!」

 

 

 

 

…。

 

 

 

 

明智吾郎

「…って予測なんだけど、どうかな?」

 

新島真

「確かに、ならそこで信用できない手段に頼るんじゃなくて、道中のリスクを減らす為に使えば…」

 

 

ウチの参謀と探偵が作戦をブラッシュアップしてくれている。

三島を連れて自室に籠もり、潜入道具を作ってくれている雨宮はもちろん、全員が最大限の努力をしてくれていた。

 

(ああ、思い出す…)

 

試合に望む前の、この雰囲気が懐かしい。

 

やっぱり、人ってものは…繋がって、結束するべきだとつくづく思う。

玉座にふんぞり返り、上が下を見下す愚王の統治ではいけない。

 

王を含めて、全て対等な仲間。

円卓を囲む様な横の繋がりこそ肝要だ。

 

一度は見失ってしまったものを、次は絶対に離さないように抱えながら…着々と準備を進めていく。

 

 

…。

 

 

そして昼過ぎ。無事に全ての用意が終わる。

ルブランのマスターが作るお弁当を持ち、皆で続々と車に乗り込んでいった。

 

 

佐倉双葉

「それじゃ、行ってくる!…お父さん。」

 

佐倉惣治郎

「ああ。…行ってこい。」

 

 

 

鴨志田卓

「悪いな、連れていけなくて。」

 

三島由輝

「良いんだ、足手まといどころの騒ぎじゃないし…雨宮に示しがつかないだろ?」

 

新島真

「…必ず、成功させるから。」

 

三島由輝

「さっすが参謀。よろしくな。」

 

…。

 

エンジンを掛け、車を走らせる。

暑い車内が強い冷房によって徐々に涼しくなっていく。

 

 

 

 

 

 

三島由輝

「…。」

 

 

バックミラーに映る三島は、すぐに雨宮を連れてルブランの店内に引っ込んでいく。

先ほどから口数が明らかに少ない真が、それを体ごと振り返って見ていた。

 

 

 

作った拘束具と怪盗団メンバー7人+1匹を乗せた積載上限ギリギリの車内。

左右を秀尽の三年生二人に挟まれる双葉が口を開く。

 

 

佐倉双葉

「ちょうちょ…」

 

鴨志田卓

「大丈夫だ、三島は…この戦いの保険になる。」

 

奥村春

「保険?」

 

鴨志田卓

「ああ。」

「三島がいる限り…奴はメメントスと現実を融合すると負けるのさ。」

 

 

皆を元気づける為の言葉。

そして、見ている筈のヤルダバオトを脅す言葉。

 

 

新島冴

「それが…融合への対策を話さなかった理由なの?」

 

鴨志田卓

「そうなる。三島や協力者の皆なら…ヤルダバオトが行う異変にいち早く気づけるんだ。」

「ヤルダバオトに聞かれたら困る、具体的に言えずすまないな。」

 

 

(融合してみろよ、ヤルダバオト。)

(コーチの言葉を借りるなら、最高の()()()()ってものを味わう事になるぞ…!)

 

 

…。

 

 

坂本竜司

「…それを、なんで由輝に言ってやらねぇんだよ。」

 

 

当然の疑問を、考えをすぐに口に出せる坂本が聞いてくる。

四軒茶屋の狭い道を渡り、大きな道路に出てアクセルを踏む。ここからはしばらく直進だ。

 

会話を止めるような要因が生まれにくい、真っ直ぐな進路で…持論を語ることにする。

 

 

鴨志田卓

「それが、『期待』になるからだ。」

 

坂本竜司

「…期待?」

「してやればいいんじゃねぇの?」

 

鴨志田卓

「期待ってのは、特大の原動力になる。燃料を与えて、道を示してやれるんだ。」

「つまり…そいつの進む道を他人が決めてしまえる力なんだよ。」

 

明智吾郎

「…!」

 

 

バックミラーから見える態度からして、明智は察したらしい。期待を全部受け止めて堕ちた男の話を。

 

(俺の事、よく調べてたんだろうな。)

(それに、獅童やヤルダバオトに踊らされた明智にも重なる話だ。)

 

 

鴨志田卓

「改心して、ただ歪みだけ消えて罪悪感が湧き出してる奴には、存分に期待してやればいい。俺もそれで進むべき道を示してもらったんだからな。」

 

「ただ…期待は、続けすぎると毒になる。特に目標を達成して燃え尽きてる時や、ミスなんかで失意に満ちている時…つまりは期待に飢えている時だ。」

 

 

…。

あくまでこれは、没イベントであるのだが…

鴨志田卓の過去を描いたムービーにて、鴨志田卓が歪んだきっかけが描写されている。

オリンピックで金メダルを獲り、主将として目一杯の栄光を浴び…女子アナにちやほやされ…本当に好きなのだと勘違いして、酔った勢いでその(すえぜん)を食った。

過ちだとわかり誠心誠意謝罪しようとすると、マネージャーに庇われ揉み消してもらった。そしてこれからの活躍を()()された。

何をしても許されるのだと、そこで気づいた。

その気付きは…大きな大きな、歪んだ認知。

 

 

鴨志田卓

「今の三島には…『救いの道』を、他人から渡しちゃダメなんだ。」

 

鴨志田卓

()()()、一番間違っていたのは俺だ。責任を転嫁するつもりはない。今後の人生は…一生掛けてその罪と向き合うと誓ってる。」

「けれど、三島が()()()()しまったら…俺は、それを俺のせいだと考えちまう。」

 

 

坂本竜司

「鴨志田…」

 

 

…。

坂本竜司が息を呑む。

それ以降、運転に集中して口を閉ざした背中に。

彼は、貼り付けたレッテルの角が捲れるような感覚を覚えた。

鴨志田卓の、罪と今を切り分ける認知が進んでいく…

 

 

 

 

*1
第254話

*2
第165話

*3
第244話

*4
実行すると明日体調が崩れる 度胸が上昇

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読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

私は怪盗団のストーカー(作者:棚木 千波)(原作:ペルソナ5)

気が付くと、私はペルソナ5の世界に転生していた。▼しかし私は心の怪盗団とは関係のないただのクラスメイト。そんな部外者が彼らのゲームに介入するだなんて解釈違いだ。けど怪盗団の活躍は出来れば見たい。是非見たい。▼ならば答えは一つだけ。誰にもバレない様にしながら、こっそり見守る事にしよう!▼「なあモナ。どこからか視線を感じないか?」▼「奇遇だなジョーカー。ワガハイ…


総合評価:4450/評価:8.37/連載:52話/更新日時:2026年07月23日(木) 23:00 小説情報

周回プレイヤージョーカー君(作者:文明監視官1966)(原作:ペルソナ5)

嘗て世界を盗み、救った青年がいた。固い絆で結ばれた仲間、数多くの協力者と共に駆け抜けた激動の人生を送ったハズだったのだが運命の鎖は彼を逃さなかった。▼何度も何度もループする中で凄まじい経験値を得た青年は知識度胸器用さ優しさ魅力フルMAXとなりなんなら本人のスキルもバカ高くなった。そんな強くてニューゲームで異世界を駆け巡る。▼IT'S SHOWTIME…


総合評価:11885/評価:8.71/連載:45話/更新日時:2026年08月21日(金) 17:01 小説情報

Persona5 ーRevealedー(作者:TATAL)(原作:ペルソナ5)

突如人が変わったようになり、恐ろしい事件を引き起こす精神暴走事件が日夜ニュースを賑わわせている東京。▼そんな東京の私立高校、秀尽学園にある日一人の転入生が訪れる。▼それは精神暴走事件と並んで世間を賑わわせることになる『怪盗団』が人知れず産声をあげた瞬間だった。▼怪盗団が進める世直し、『更正』の先に見た偽りの神、優しい嘘で満たされた人<かみ>の世界…


総合評価:26914/評価:9.27/完結:125話/更新日時:2025年07月30日(水) 00:21 小説情報

幸せなバッドエンドを目指して(作者:ぽんしゅー)(原作:ペルソナ5)

──だってそっちの結末が素晴らしいと感じたから。▼※ペルソナ5Rの三学期のネタバレが含まれます。▼※芳澤早期加入。▼柴猫侍さんから挿絵を頂きました。ありがとうございます。▼↓▼【挿絵表示】▼ウルト兎さんから挿絵を頂きました。ありがとうございます。▼【挿絵表示】▼


総合評価:11486/評価:8.85/連載:87話/更新日時:2026年07月08日(水) 00:00 小説情報

聖杯さんが囁いてくる(作者:エヴォルヴ)(原作:ペルソナ)

この聖杯、間違いなく厄ネタのはずなのに、どこか違うようだ。▼「聖杯さん、海牛の牛丼って再現できないかな」▼『狂気の道だぞ』▼ある時は少年の狂気を止めてみたり。▼「聖杯さん、チョコレート貰っちゃった! でも義理だって……」▼『……案外鈍いな貴様』▼ある時は少年の鈍さに呆れていたり。▼「聖杯さん、食べ放題だって」▼『元を取るなら果物や煮魚だな。だが、気にせず貪る…


総合評価:7021/評価:8.69/連載:40話/更新日時:2026年09月08日(火) 20:52 小説情報


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