鴨志田転生~ペルソナ5一番の嫌われ役に憑依転生してしまったが、原作知識の力で雨宮蓮に代わって怪盗になり破滅フラグをへし折ってみせる!~ 作:DreamFrog
「…すまないな。」
「敵に情などかけるなってセリフは俺が言う事じゃないだろ。」
「止めない時点で、俺は同じ大罪人だ。遠慮なく抗えよ、チャレンジャー。」
「神を、挑戦者呼ばわりか。」
「運命には、お前が負けると書いてる。」
「…怪盗団を跳ね除けられるくらいお前が
「取引しよう。もしもそこまで進化できたんなら、俺と協力して大衆を見守っていこう。」
「…仮定の話はせん。」
「約束だかんな?」
「俺のことをこんなに認めてくれて…嬉しくってさ。」
「もし失敗しても、期待させた責任は取るから。いいだろ?」
「…ああ。」
※鴨志田卓視点
ルブランにメンバーが揃う前、俺は…俺なりに、戦況を考えていた。
結論から言おう。
ヤルダバオトと怪盗団の戦いは、怪盗団が圧倒的に有利だ。
これがただただゲームの光景をなぞるだけなら…刃物を持つフォックスと機動力・積載能力のあるナビかモルガナあたりを派遣して、ケーブルを叩き斬って貰いながら聖杯を袋叩きにすれば片がつくだろう。
あとは万全に育ったステータスと戦闘経験で第二形態…腰が物凄くくびれた神々しい造形のヤルダバオトを妥当に殴り倒せばいい。
メメントスと現実が融合すればきっと三島と雨宮は動いてくれる。
(あのサイズであのくびれ…ヤルダバオト、フィギュアの類を作るのは至難の業だろうな。)
だが、それは
順当に戦えば俺達が勝ち、ヤルダバオトが負けるのだ。
だからああした宣戦布告を行ったんだろう。
俺がこれだけ冷静でいられるのも、あれが苦肉の策やアドリブの類だと分かっているからに他ならない。
ヤルダバオトの真意は不明だが…打てる手として、いつでもメメントスと現実の融合は実行可能かのような素振りを見せていた。
実行しなかったのは…イゴールに待ったをかけられ、トリックスターの影響で大衆に変化が生じるかを見ていただけだろう。
大衆の心は変わらぬと確信しながら見守り…
同じく抗う心を変えなかった雨宮蓮に、共に歩もうと取引を持ち掛けた。
ああいった、『仲間として誘う為に場を整える』事を、ヤルダバオトは今の怪盗団にするだろうか?
これまでの作戦会議にて。
自身にはそんな勧誘価値は無いとコーチは考えており、バレたら何も言わずにメメントスを現実と融合して殺しにかかって来るだろう、なんて考えだ。
だからこそ、交渉のカードを考えるよりも純粋なステータスを優先していた。
しかし俺は、コーチの価値を知っている。
全知全能に見えるその知識は、部分的な隠蔽によって更に大きく見えているだろう。
今の知識はほんの一部分で、これからの未来も全て見通していると解釈されてもおかしくない行いをしている。
憑依はバレた。しかし、知識の出処までは解明できていない。
そうヤマを張った。
だからこそ。
あの場でのぶっちゃけた作戦会議を行った。
ヤルダバオトも聞いている前提で、メメントス最深部の情報やモルガナの正体、ゲームの全容などを惜しげもなく
そして、少しだけ隠し事をした。
メメントスと現実が融合すると、
コープを深めたような人間たち、つまり怠惰の大衆から脱している者たちが周囲を巻き込んで怪盗団の味方になってくれる。
三島との月コープをMAXにしなくても
条件やメンバーは固定されておらず、怪盗の活動に勇気づけられたものや感謝しているものならば全員がその立場になり得るということ。
その点を皆に明言せず、
まるで、切り札を隠しているように見せている。
つまり、逆に…ヤルダバオトは今、額に銃口を突きつけられているに等しいのだ。
(これまで、コーチの存在が確定するまで散々アイツは待ち続けていた。嘘か本当か分からない不確定情報を用意してやれば、それを避けて最深部で大衆のエネルギーを吸いながらの最終決戦を挑んで来る…はずだ。)
(聖杯はただHPが無尽蔵に回復するだけ。ケーブルを切ってやればただの固定砲台でしかない。第二形態のような理不尽な存在じゃあない!)
(鍛えたステータスに、刈り取るもので余裕を持って上げたレベルがあれば…勝てる!いや、勝つ!!!)
…。
メメントス最深部の、また最奥。神殿に入り、階段をゆっくりと降りていく。
強者の余裕を持つように振る舞い、頭に被る王冠を見せびらかすように歩く。
決戦の場をズラリと囲む、大衆達が囚われた赤い檻。
囚人は今も数を増やしている。
全校集会前の体育館に集まる生徒達のように、口々に声を出しているざわめき。
大衆達がオタカラの持ち出しを拒む事を隠す理由は無い。当然のように彼らは、最初から俺達に『余計なことをするな』と非難する。
鴨志田卓
「悪いな過半数。少数意見が反対しに来たぞ。」
皆を率いる主将として、堂々と振る舞う。
俺の背中を、真っ直ぐ前を向いていれば安心できるように。
新島真
「あれが、聖杯…」
明智吾郎
「…最初から
事前情報との明確な違いが1つ。
中央に鎮座する聖杯は既に黄金の輝きを持っていた。
既に大衆の願いをケーブルによって受け取り、万全の状態となっている。
(俺達が刈り取るものを狩ったように…互いに事前準備は済ませているって事か。)
低い声
「初めまして、鴨志田卓。」
鴨志田卓
「初めまして、統制神ヤルダバオト。」
俺の現状を見通しているような問いかけに、
こちらもそうだと返してやる。
ヤルダバオト
「4月までの評判に違わぬ尊大な態度だな、脱獄囚め。」
〜
小声の奥村春
「…これは、煽った方が良いの?」
小声のモルガナ
「ダメだぞ!本当に真剣な話だからな!」
〜
鴨志田卓
「なりふり構わない争いじゃなく、理性的な試合をしにここへ来たつもりなんだがな。」
なりふり構わない争いなら勝つぞ、というのを言外に示しながらヤルダバオトに話す。
まるで、上位者が下の者へと対等に話してやっているようなスタンス。可能な限り、偉そうに。
ヤルダバオト
「ククク…そう真に受けるな。試合前にはトラッシュトークが付き物だ。」
ヤルダバオト
「単刀直入に言おう。我はあのコーチが欲しい。」
「争い、人々との関わり…一切の役立つ才を持たざる者が、これほどまでに我に対抗しうる者となる智慧を、手に入れたい。」
「識るだけでトリックスターとなる禁断の果実を食らいたい。」
神殿の空気が震えていた。
その響く声に乗った、莫大な欲望によって。
明智吾郎
「コレが、クラウンが『コーチの正体』を頑なに隠した理由か…!」
汗が一筋垂れるクロウ。
心には気圧された様子などないが…人としての本能が、警鐘をけたたましく鳴らしていた。
鴨志田卓
「本人に言えよ。コーチの事だ、泣いて喜ぶぞ?」
ヤルダバオト
「そうだな、貴様の言う通り奴は泣いていた。」
「朝まで苦しんだ末に、断られてしまったがね。」
新島真
「なんて事を…っ!」
喜多川祐介
「…外道め。」
(…いや多分コレ好きなシチュエーションに身悶えて揺らいでただけだろ。悪党が仲間になる状況大好き男だぞアイツは)*2
ヤルダバオト
「つくづく、奴は高次元の存在だ。益々欲しくなってしまった。」
「奴…コーチの天秤は、今は貴様らに傾いている。そして貴様らに提示できる対価を我は持ち得ない。統制してやろうと言えど、抗うのだろう?」
坂本竜司
「ったり前だ!」
「お前がオタカラだってんなら、持ち出しちまえば改心すんだろ!?ぶっ壊して撤去してやるよ!」
闘争心を剥き出しにするスカルに目もくれず、統制の神は話し続ける。
ヤルダバオト
「鴨志田卓は、貴様らに2つの事実を隠した。」
「1つは、ゲームの代理人だ。明智吾郎と鴨志田卓が選ばれたのではない。明智吾郎と、かの禁断の果実が選ばれたのだ。」
「貴様は異物でしかないのだよ、鴨志田卓。コーチを注ぐ器でしかなかったお前は…貴様の被害者である"素養無き少年"と同じく、この場に立つのに不釣り合いだ。」
坂本竜司
「…何が言いてぇ?」
ヤルダバオト
「もう1つの秘め事…メメントスを現実と融合させた時の話だ。」
「大衆の認知から消える貴様らを檻に入れてやれば終いだというのは、どうやら甘いらしい。」
「つまりは貴様らの反逆の意思が想定よりも強固だということ。怪盗団によって救われた者達にも…その火が移っているという事。」
「迫る危機に当事者意識を持ち、扇動された大衆達が皆反逆の焔となれば、我を打倒し得る
「我は、大衆の愚かさを
「クク、クククッ…又聞きの、意図的に伏せられた片鱗に触れただけでこれだ。我は今宵、進化を遂げる。禁断の果実にて…完全な統制を成す存在へと昇華する!」
心の底から沸き立つような笑い声。
より高みへと引き上げる…この世界で
『原作知識』を摂取した偽神は…歓喜に打ち震えている。
その声と同時に、ソレは始まった。
(…!?)
激しい頭痛。学生なら立てなくなるだろう強さの、立ちくらみ。
心配をかけさせない為に耐えていたのだが、それは無駄だったらしい。
佐倉双葉
「…クラウン!?」
以前に何度も聞いていたような…他人に囲まれ怨嗟を吐かれる行為。
ナビはその声への苦手意識から…俺の背中に手を当てていた。
だから、真っ先に俺の
佐倉双葉
「か、体透けてる!!何で!?」
鴨志田卓
「…チィッ!そう来たか!!」
ヤルダバオト
「メメントスが現実と融合すれば…大多数の認知から消えた者は存在を消され、幽閉される。」
「それでも尚勝利すると言うのなら…怪盗団の心はそれを破るのだろう。反逆の意思を燃やし…
「貴様らに救われた少数派なら、現実の異変を察知できる。周囲が忘れているものに気づき…扇動するのだろう。」
コーチがいつの日か描いていたデジタルイラストと同じだ。
透過率が徐々に上がり、世界の空気と同調していく。
そんな人間は居ないものと、認知されていく。
70%、60%、50%…
ヤルダバオト
「ならば…大衆の認知から消える存在を、」
___鴨志田卓ただ一人に絞ればどうだろうか?
…。
この世界において、鴨志田卓は怪盗団として認知されていない。
ただ、過去に偉業を成した高校教師でしかない。
自身のチームがインターハイに優勝した
これまで経過した一ヶ月半もあれば…大衆の大半の記憶から失われている。
記事による鴨志田卓の売名行為も、明智吾郎を広告塔として獲得してからは不要となった。
彼はただ、インターハイ優勝校の体育教師だ。
つまり。
新島冴
「…さてはもう、現実とメメントスをっ!」
ヤルダバオト
「ああ。
「さぁ怪盗団。決勝戦の舞台はこの神殿だ。」
「試合時間は…貴様らの協力者がこの異変と解決策に辿り着くまで。カメラが入らぬこの会場では時間が掛かってしまうだろうがな。」
「少々
その声は、勝ちを宣言するものではない。
自身の運命を知り…それに抗うスタートラインに立ったとでも言いたいような油断のない声。
まるで、挑戦者は自分だとでも思っているかのような声。
40%、30%、20%…
佐倉双葉
「クラウン!!ヤバい!そんな!」
モルガナ
「どうにか止める方法を_」
鴨志田卓
「お前らァ!!」
腹から声を出す。
消えかかっている?それなら、普段の10倍声を出せ。
鴨志田卓
「俺はリーダーだ!一番前に立って、一番頑張って…」
「メンバーが居ないと何もできねぇのがリーダーだ!!」
「俺一人抜けた所で、なんて事無い!!」
「絶対に、すぐに戻ってくる!!それまで…」
「
神殿の空気が震えていた。
その響く声に乗った、莫大な『期待』によって。
心の怪盗団
「「「応っ!!!」」」
背後に確かに存在する、俺の仲間。
皆に、最後まで心を支える為に。
強がったポーズを決めながら…
10%…
0。
鴨志田卓は一度、この世界から