鴨志田転生~ペルソナ5一番の嫌われ役に憑依転生してしまったが、原作知識の力で雨宮蓮に代わって怪盗になり破滅フラグをへし折ってみせる!~ 作:DreamFrog
※三人称視点
…。
双子の看守の、全霊の【メギドラオン】。
共に喰らったカロリーヌがHPを全損させる程の一撃を、クラウンは耐えきっていた。
膝に手をつき、ゆっくりと道化は起き上がる。
飛び出し潰れた目が徐々に原型を取り戻していき、皮膚の消え失せた肌が泡立つ。
カロリーヌ
「これで、まだ立ち上がるか…化け物め!」
ジュスティーヌ
「…詰みです。貴方一人がどれだけ硬かろうと、周囲がすり潰されていくだけ。」
「ワンマンチームの哀れな末路です。」
まだらに、皮膚が形作られ始める。
頭皮が復活し、髪が伸びてきた。
指の骨が元通りになる。
ジュスティーヌ
「既に
「あのスパイクのような殲滅兵器を持たない今の貴方では…私達を同時に撃破することも不可能です。」
「貴方が私たちを只管に
「ですが…私達を憂う心を持つ貴方に、ソレが出来るのですか?」
床にとめどなく流れていた出血が止まった。
砕けた骨が、あらかた原型を取り戻す。
床に落としていた王冠を…改めて被る。
ジュスティーヌ
「我らは…盤上から省かれたのです。」
「このまま、ずっと…
「貴方は確かに、かの智慧の手引きによって力を得た。しかしもう…幕切れなのです。」
「どうか、最期は、安らかに…」
…。
2人が何かに抗うような素振りを見せ、辛そうにこちらへと降伏勧告をする間に…クラウンの肉体はかなり修復が進んでいた。
以前より格段に上昇したその耐久力。
それもそのはず。コーチがその身を去ってから、アスモデウスは新たにスキルを獲得している。
ーーー
アスモデウス
耐性なし
弱点なし
スキル
・大治癒促進
・中治癒促進
・小治癒促進
・仁王立ち NEW!!
・デビルタッチ
・プリンパ
・マリンカリン
・挑発
人形召喚
ーーー
【仁王立ち】。
完全神柱と同じ効果を持つスキル、【仁王立ち】をアスモデウスは習得している。
これは全ての攻撃を避けずに受ける誓いを立てるかわりに、受けるダメージが全て半分になるというもの。
そしてこの力はP5無印の場合…同効果のアクセサリーとも重複する。
ロイヤルと違い、無印のアクセサリーはスキルを習得するのではなく独自効果を得る形式だからだ。
つまり…刈り取るものからドロップした完全神柱を装備していれば、全ての被ダメージは1/4となる。
つまり、以前と比べて単純に4倍硬い。
そして、現実での筋トレと度重なるベルベットルーム内での過剰とも言えるトレーニングによって…鴨志田卓の肉体は
ただでさえ、現役を退いているとは思えない体格を維持していた。
高校生が主題となるゲームの主人公とは隔絶された基礎があった上に…その基礎があるからこそ行える負荷を日々積み重ね続ける。
積み重ねる回数も、積み重なる厚さも。
それはまさしく、肥大化した過去の栄光…
初めてのパレスボスとして主人公たちに立ちふさがった、カモシダ・アスモデウス・スグルそのもののタフネス。
ペルソナ5、無印に登場する彼のHPは…
2500。
治癒促進スキル3種が重複し、約12%のHPが回復。
回復量はおよそ300HPとなり1/4を加味すると…
『耐』の値が99の相手に毎R1200ダメージ以上もの威力で攻撃し続けることで初めて、アスモデウスの生命は危ぶまれるということ。
ペルソナ5の防御によるダメージ軽減は0.4倍となるため、0.25×0.4=0.1。
防御姿勢を取れば、受けるダメージは10分の1。
3000ダメージを受けて、やっとHPが300減少する。
たとえ
【神の審判】によって
毎ターン300の回復。つまり、3ターン程の時間が有れば。
鴨志田卓
「…ふぅ!喉も戻ったか。」
こうしてすっかり回復できる。
カロリーヌ
「囚人、貴様と…我らは、用済みの存在だ。」
「我らは、ただ…お前を殺す事しかできないっ!」
「これ以上…苦しむなっ!おとなしく死ねっ!死んでくれっ!」
鴨志田卓
「苦しむ?俺は…お前らの方がよっぽど苦しそうに見えるよ。」
双子の看守…幼児が、地団駄を踏んでいる。
背後にペルソナが浮かび、数多のスキルが乱れ飛んだ。
クラウンは反撃を行わず、全ての攻撃を防御する。
身を焼く炎、凍てつく氷。
凍りついた細胞が熱波により溶かされ、凍結時の水分膨張作用によりぐちゃぐちゃに全身が壊れかねない。
鴨志田卓
「トリックスターを助ける筈が引き裂かれて、更に当の本人はワイルドの素養もなくペルソナの合体や特訓もできない。」
12%、回復。
念動の力と、核熱のエネルギー照射。
防御姿勢を解かした無防備の体、それら全てを致命的に蝕もうとするエネルギー。
鴨志田卓
「あの蝶があればラヴェンツァに戻る事もできただろうに…ヤルダバオトに隠されてしまった。何かの精神支配の類まで掛けられて…」
12%、回復。
双子の背後に、先ほどのアルダーがまた顕現した。
節制アルカナの頂点たる彼女が指を下ろすと、世界が壊れるような万能の衝撃がクラウンの全身を包み込む。
鴨志田卓
「見てられない。」
12%、回復。
鴨志田卓
「…このまま、SP切れを待てそうにはないな。」
「物理技で消耗した素振りもないし、今更か。」
カロリーヌ
「…なぜだ!なぜ、貴様が笑っている!!」
自嘲気味の、苦笑い。
まるで危機感を感じていない発言に、不可解を全身で示すカロリーヌ。
そのまま焦燥感を隠し…飄々とした道化師のセリフを演じようとするクラウン。
己の耐久への焦りではない。
この千日手によって…メンバーを助けに行けない焦り。
完全神柱は、刈り取るものを複数体倒しても1つしか手に入らなかった。
防御時に持つだけでも十分強いだろう、可能なら全員に持たせたかったアクセサリー。
クラウンは唯一のそれを貰い受けている。皆の盾となる為なのだが…だからこそヤルダバオトは彼を分断した。
だからこそクラウンは焦っている。
鴨志田卓
「チームを率いる主将ってのはな、絶対に崩れたらいけないんだよ。」
「全員からの期待を全部受け止めて、誰よりも、偉く振る舞わないといけない。それこそ、自分が王様とでも思ってるようにな。」
…。
273話でも話した、正史とは言えないような没イベントの回想シーン。
バレーボール金メダル獲得後、『今、会いたい人』の番組に呼ばれた鴨志田卓は…テレビ慣れしておらず小心者の様な素振りを見せていた。
こうやって人前に出るのも苦手で、なんて発言が描写されている。
そして同時に。
主将として、常に相応しく振る舞わなくちゃいけないのが大変だと。
そう鴨志田卓は話している。
つまり。
鴨志田卓は歪んでから自身を王と認知したのではなく…
バレーボール選手として活躍している時から。
小心者な己を律して、努めて自身を王と
鴨志田卓
「裁きを求めて首を差し出すだけじゃ、餌を乞う雛鳥と同じだ。」
「自ら進んで地獄に落ちて、針に刺さり、煮え湯に全身浸かるのが…お詫びってモンだろうが!!」
【仁王立ち】は…憑依転生者と同居していた
真に鴨志田卓自身のペルソナとなったアスモデウスの…全ての
それがコスチュームとなり、はち切れんばかりの筋肉のシルエットを惜しげもなく晒して引き立てている。
そしてその背中を包むマントに頭上の王冠は、鴨志田卓がこれまで歩んだ道を現している。
王冠は、紛れもなくオレ自身の持つ栄光の認知だった。
パレスにいる俺の姿を、コーチの記憶の中で見せてもらったことがある。
…今は違う。
コーチからの期待が、胸の中で燃えている。
裸の王様はもう居ない。
大衆の期待に踊らされた道化は、もう倒れない。
居るのは
※鴨志田卓視点
頭に被る王冠の位置を整える。
攻撃しているのはあちらの筈なのに…俺より何倍も、2人は痛そうにしていた。
心に、傷を受けていた。
(さて、どうしたものか…ジュスティーヌの指摘通り、2人を延々と痛め付けるのはなぁ。切り札の専務も傷病休暇中。校長の人形をうまく使えば有効打足り得るかもしれないが、2人同時じゃ耐久力の低下は致命的だ。)
(…心を鬼にするなら、片方をこん棒みたいにしてもう片方を殴るのが良いんだろうか。だが拘束もあの自爆じみたメギドラオンで破られるとなると…)
バレーボールの攻め手は分かっても、こうした戦闘についてはまだまだ勉強が浅い。
ただ、バレーボールの実戦経験によって冷静さは持ち合わせている。
思考を巡らせながら、目の前で練り上げられている呪怨と祝福の最高位スキルを眺めていると…
音を立てて、扉が開く。
扉から、外の
カロリーヌ
「!!」
双子の片割れが、舌打ちと共にその魔法を
自身を狙わない球を自ら受けに行くのはバレーボールの基本。即座に動いてブロックしてやる。
双子の看守は、その
カロリーヌ
「な…生身だと!?」
ジュスティーヌ
「貴方に…素養は存在しないはず。」
「資格無き者が、どうやってここまで…」
その
鴨志田卓
「よく、来てくれたな。」
三島由輝
「ああ。もう一度夢を見に来たんだ、鴨志田先生。」