鴨志田転生~ペルソナ5一番の嫌われ役に憑依転生してしまったが、原作知識の力で雨宮蓮に代わって怪盗になり破滅フラグをへし折ってみせる!~ 作:DreamFrog
これは回想だ。
俺が…幸運の青い蝶を見つけるまでの。
…。
◎◎◎
※三人称視点
大衆たち
「…。」
メメントス最深部。
メメントスの背景に存在する多数の電車が、最後に到着する目的地。
大衆たち
「…。」
電車の扉が開き、乗客がゾロゾロと降りていく。
大衆たち
「…。」
大衆たち
「…。」
自分で考える気のない、愚かな大衆達。
死んだ目をした者達が、終点の先へと歩いていく。
大衆たち
「…。」
三島由輝
「…。」
三島由輝という『空気』が紛れ込んでいることに、大衆は誰も気づかない。
三島由輝
「雨宮だって、できたんだ。」
「…やってやる。」
リュックサックに、雨宮と作った潜入道具を山ほど詰め込んで。
その胸の内に、ほんの僅かに
大扉の脇にある、一方通行の入り口より…メメントス最深部に潜入を開始した。
…。
ここは牢獄だ。大衆が自ら進んで収監を求めに来る、檻。
その話を、三島は鴨志田から聞いている。
だからこそ。
監視兵
「ん?」
「拘束具はどうした、なぜここに?」
三島由輝
「あっ、すみません…
「どこから中に入ればいいか分からなくって…」
おどおどと、挙動不審で、努めて『昔』を思い出しながら話す。
看守らしき人物は一切疑念を持たず、納得した様子で警戒を解いた。
監視兵
「なるほど、どおりで。」
「今、鍵を開けてやるからな。オイ、足枷持ってきてくれ。」
無警戒に懐を弄り、もう一人いた監視兵を下がらせる。
監視兵
「ハァ、最近は数が多いからなぁ。」
「過ちに気付く同志が増えるのは素晴らしいことではあるんだが…」
「よし、鍵穴はそこだ。行こう。」
愚痴を漏らして、鍵を取り出し見せる。
背中を見せ檻の出入り口に歩き出した瞬間…
三島由輝
「(…ここだ!)」
三島は、リュックから【催眠ミスト】を取り出して叩きつける。
煙はまたたく間に広がり、崩れ落ちるように看守のシャドウは眠った。
三島由輝
「(人には効かないの高性能過ぎるだろ!ありがとう雨宮っ!)」
落とした鍵をひっつかみ走る。
謎解きがあるとか言ってた道は全ての障害が既に取り除かれていて、ただ先へ走るだけでいい。
シャドウがいれば、殴られない為に、目をつけられない為に息を潜めて
…あまりにも、それは得意分野だった。
大暴れしている侵入者に対処するために多くの看守が走っている。
警戒度が上がり発見時のリスクは増えているものの、空気のように目立たない三島由輝に、大衆達は気づかない。
彼がモナから学んだ、カバーアクション。
クラウンが致命的に下手なせいで学んでも活かすことができなかった技術が、今の自分を守ってくれていた。
…。
三島由輝は単身生身でメメントスを突き進む。
どうしても避けられない場所にいるシャドウにはアイテムを使って切り抜けていく。
鎮静アロマを使ってクラウン達がぶち上げた警戒を下げ、スポットライトを他所に当てて注意を逸らす。
彼の目的は、ただ1つ。
三島由輝
「(メメントスの最奥にはベルベットルームがあるらしい。夢で見たのと同じ場所だと。)」
「(俺がチームに招待してもらったのと、同じ場所。つまり、あの
ライトにつられて敵は他所に向かう。
今なら進める。物陰から、体を出した矢先…
『なんで、俺がそんな所にいるんだ?』
聞き馴染みがあるのに、聞き馴染みのない声。
思わず、振り返る。
シャドウ三島
「全部、ただの夢だったんだよ。」
「全部、無駄だったんだ…」
三島由輝の、
三島由輝
「なっ…」
監視兵
「侵入者が居たぞ!!こっちだ!!」
三島由輝
「っ、やっばい!!!」
シャドウは即座に姿を変え、ドミニオンの姿を取り…三島へと【マハガルダイン】を放つ。
三島は避けずに全力疾走、人体を容易くバラバラにできる風は触れる寸前で跳ね返った。
ドミニオン
「んグッ!?」
追い立てられ、5mほどの段差を一気に飛び降りる。バレーボール式の受け身はこんな高さの衝撃に対応しておらず、両手両足で着地しても生身には強い衝撃が走る。
けれども、ただ強い衝撃が走るだけだ。
キャプテンバッチの齎すHPが肩代わりしてくれ、アドレナリンに満たされた彼の体はまだまだ動く。
…。
あの優しい惣治郎がこんな危険な潜入を許すはずは無い。鴨志田卓のキャプテンバッチは現在、佐倉家にて大切に保管されている。
このキャプテンバッチは雨宮蓮がプライベートでビックバンチャレンジを完食し手に入れていたもの。
三島由輝の覚悟と決意を、雨宮が放っておけるワケがなかった。
…。
口のなかに仕込んでおいた【ナオール錠100mg】を噛み砕く。乱暴に、即効的に効き目が現れ骨の軋みが軽減される。
リストバンドに仕込んだ【マジック軟膏】を取り、肌の見えるところに塗り直しながら、ただ只管に走っていく。
先生が書いた地図は頭に叩き込んである。詳細なルートは現地で説明すると言っていたが…基本的には奥へと進む一本道とも言っていた。
とにかく、下へ。奥へ。
…三島由輝の足が止まる。
広大で、莫大な距離の螺旋。
スキーのコースなら死者がどんだけ出ても足りない傾斜とカーブ。
一切の段差は無く、一度転べば中央の穴へと身を乗り出して死ぬしか逃げ道が無い。
原作にてモルガナカーに乗って移動する、あの螺旋階段。
中央の穴を貫くように配線されている、聖杯へと力を供給する管の明滅が…まるで彼を嘲笑うようで。
生身の矮小な大衆が進める限界だと。そう笑っている。
※三島由輝視点
三島由輝
「はぁ、くっそ、どんだけ遠いんだ…」
監視兵
「動くな!」
三島由輝
「足速いんだよ、バケモノ…」
(この坂、駆け下りたら絶対コケる!ソリになるようなものも無い、あるのはこの光ケーブルみたいな線くらい…シャドウをソリにする?いや、
監視兵
「脱獄囚め…どこから出てきた?」
「貴様のような見るからに模範囚がなぜこのような事をしている?」
三島由輝
「…模範囚だって?」
ジリジリと、距離が詰まる。
シャドウのうち一人が、こちらに声をかけてきた。
その声色は外敵へのソレではない。
監視兵
「苦労するだろう?辛いだろう?そう暴れる必要は無い。私達は、同じ大衆同士じゃないか。牢獄の中で…安らかに過ごそう。もうそんな顔をする必要は無いんだ。」
「ずっと、牢獄で過ごして…ずっと毒づいて居たじゃないか。鴨志田卓という者への憎悪を、助かろうとも、助けてもらおうともせず。」
「それで良いんだ、誰かがどうにかしてくれる。実際、どうにかしてくれただろう?私達が何かをする必要は無いんだ。ただ、牢獄で安らかに過ごせばいい…」
…。
三島由輝は原作にて、鴨志田卓の改心の後に怪盗お願いチャンネルを作り…心を歪ませ、牢獄を破ってメメントスの表層にまで進んでいた。
そう。
彼はそれまで、従うしか方法がないと考えていた。この学校は、鴨志田卓の天下なのだと。そう刷り込まれていた。
…彼に、叛逆の意思は無かった。
故に、彼は『模範囚』だったと解釈をしたい。
看守からの覚えもいい、模範的な
監視兵
「こっちだ、三島由輝。君の
…。
三島由輝
ー
(降伏し、檻に入る。)
(抗う。)
(降伏し、檻に入る。)
(抗う。)←
ー
今は違う。
三島由輝
「うるさい!!!」
監視兵
「!?」
三島由輝
「俺は!!『特別』な存在なんだ!!!」
「力が無い?知らねぇよ!気合だ!根性だ!こちとらインターハイ優勝選手なんだぞ!!!」
そう言うと、三島由輝は振り返る。
足場も、柵も無い空中へと…思いっきり飛び出す!!!
三島由輝
「おおおおおおぉぉぉぉっっ!!!!!!!」
バレーボール仕込みの、全力の跳躍。
目一杯伸ばした手で…
(クイーンの好きな映画で見た、ジャッキーチ◯ンのスタントだ!)
(ペルソナの無いただの人間が出来るスタントなら…俺にだって出来るに決まってる!!!!)
ギュォォォォオッッッ!!!!
ケーブルを引き寄せ、全身で掴む。地面にへと着くまでに、落下速度を殺そうとする。重力加速度に、全力で抗う!
凄まじい摩擦音を鳴らしながら、メメントス最奥までの最短経路を突き進んだ。
監視兵
「なっ…」
監視兵
「ど、どうする…?」
凡庸な大衆如きに…後を追いかける度胸などあるわけが無い。
…。
ぐちゃっ。
三島由輝
「は、ハハ…やったぜ、生き、てる…ぞぉ…!」
全身を使ったブレーキ。当然、全身が摩擦熱に晒される。
肌全体が焼け焦げ、一部煙を出しており…焦げた匂いが鼻につく。
皮膚は全てすり下ろされている為、熱さを感じようが無いことが不幸中の幸いだろうか。
お陰で…左手の骨が露出して千切れかける
三島由輝
「薬、薬…くっそ、鞄…落と、した…」
カバンの紐が切れ、アレだけ準備したアイテムが全てお釈迦になった。雨宮には…謝れたなら、後で謝ろう。
服の外側の尻ポケットに仕舞った【タケミエール】が辛うじて生き残っており、どうにか飲む。
傷がほとんど治らない。けど、きっとHPは回復したはず。まだ、動ける。
なんたる幸運か。落ちた目の前には…扉が一つ。
厳重に檻で囲まれた巨大で重厚な扉は…その巨大さによって他の檻より鉄棒の間隔が広い。
今の俺ならすり抜けられる。ちょうど、
周りの檻からこちらを見ている
三島由輝
「…良い、逆境だ、死地だ、窮地だ…」
「やってやる…!」
「今、『怪盗』が…加勢に、行く…からな…!」
手にしていた鍵を差し込み、その扉を開くと…先にあるのは見慣れた造りの扉で。
もう一度ドアをくぐれば。青いロッカールームが広がっている。
俺が『力』を借り受けた…あの部屋だった。