鴨志田転生~ペルソナ5一番の嫌われ役に憑依転生してしまったが、原作知識の力で雨宮蓮に代わって怪盗になり破滅フラグをへし折ってみせる!~ 作:DreamFrog
ーーー
インターハイ前の、作戦会議にて。
鴨志田先生は、皆を集めて…メンバーそれぞれが軸となった戦術を発表した。
皆それぞれが主役になるような戦術。漫画みたいなロマン溢れるものやシンプルな力押しまで多岐にわたる。
作戦名こそダサかったものの胸が躍り、自分の戦術は何なのだろうと期待が膨らんだ。
鴨志田卓
「そして、三島を軸にした作戦なんだが…」
(きたっ!)
ゴクリと喉が鳴る。基本的に俺はセッターだ。それが軸となるとトスフェイントやツーアタックの類だろうか。
その間だけ俺もスパイクを打つのかもしれない。作戦名や活躍はなんども妄想した。
ワクワクしながら、その言葉を待つ。
鴨志田卓
「三島には、全力で影を薄くしてもらう。」
三島由輝
「…えぇっ!?」
色々な言葉が思い浮かんではうまくまとまらず消えていく。共通点は、
鴨志田卓
「ノーマークの所からトスが上がる。相手コートの空白を狙ったスパイクの着弾点にいつの間にか人が居る。」
「思い浮かぶ漫画、無いか?」
三島由輝
「…!」
「黒◯のバスケ!?」
鴨志田卓
「そうだ。アレをやろう。」
斜に構えた3年生
「漫画にしても…別のスポーツっしょ?」
恵体の3年生
「いいな!じゃあオレは緑川だ!」
斜に構えた3年生
「ファンに殺されるだろ。」
ベリーショートの女バレ部
「ねぇ、部活終わったら屋上に来てくれない?」
斜に構えた3年生
「ほら。」
学生らしくざわめく周囲。共通しているのは、誰もそれを否定しないこと。
鴨志田卓
「三島は声もガッツリ出てるし、周囲とよく連携できてる。」
「だからこそ、この作戦中はその声を消して…オポジット*2以外には居ないものとして扱ってもらう。」
「人数が減ったように感じさせて、空いた穴に誘い込んだ球をレシーブからのツーアタック。注目されるセッターへの球を途中で拾って攻撃。」
「反射的に最適を選ぶような、ひたすら基礎を突き詰めたようなチームに強い戦術に仕上げたい。」
斜に構えた3年生
「最適に見える罠を仕掛ける…か。フェイントも普通スパイク側で調整するし、釣られるんじゃない?」
恵体の3年生
「な〜んか三島ってよく舐められてんだよな。」
「舐めてるうちにぶっ刺す…痛快だな!」
好意的な評価を受けているのは…
俺がずっと、捨てたかったパーソナリティ。
鴨志田卓
「目立たないとか、風景に溶け込んでしまうとか…そういった三島のコンプレックスを抉るようなことかもしれない。ただ、もしよかったら…その
____安心して、活躍する為に空気になって欲しい。
過去に、期待によって洗われた…己の汚点。
自由を得た今、自分の意志で世界に溶ける。
…。
※三人称視点
三島由輝
「勝ち方は?」
鴨志田卓
「同時撃破だ。」
三島由輝
「エヴ◯?◯ンスト?」
鴨志田卓
「
三島由輝
「オーケー。」
確かな『力』を手に入れた三島。
新たな己の装いに、手にした武器に満足気に笑った後。
覚醒後の第一声は…勝つための言葉だった。
パピヨンが、ペルソナを使う。
力の群生体。微弱で小さな反逆の意思の集合体。
やっと生まれた、自分のペルソナ。
三島由輝
「俺が
【ヒートライザ】。
弱者はよく群れる、なんて言葉がある。
発想の転換。
群れれば、弱者であろうと強者に並び得る。
カロリーヌ
「ジュスティーヌ!」
ジュスティーヌ
「ええ。」
「守れるのなら守ってみなさい、囚人。」
作戦を暗に開示する、ヤルダバオトの命令への最大限の反逆。
投射物ではなく起点指定。前触れなく突き立てられる氷と炎。
クラウンはかばいに行く素振りを見せずにその場で飛び上がる。
発想の転換。
かばう必要が無いと信用されている。
スキルを使った後、キチョウが散り散りとなって空気に溶けていくと同時に…パピヨンはその場から姿を消して
カロリーヌ
「消えた…!?」
「…いや、我らは何を注視していた…?」
ジュスティーヌ
「っ、これは…認知の操作!」
何処にでも居るような、空気。
発想の転換。
何処に居てもおかしくない、気に留まらない。
怪盗団が只の子供のように恐怖に怯えた、存在の消滅。
その現象は今、パピヨンの手中にあった。
次にパピヨンが
カロリーヌの背後で顕現させたジャックランタンをトスする瞬間だった。
感知できるワケがない。ついその間まで、この世界に居なかったのだから。
カロリーヌ
「!!」
カロリーヌの、振り向きざまの警棒による攻撃は当たらない。
狙いは正確だった。ただ…届く頃には、
カロリーヌはその怪盗の存在を忘れてしまっていた。
トスは寸分違わず、クラウンの
【陽光のトス】。
【金メダル級スパイク】。
狙いは、ジュスティーヌの浮かべるジャックフロスト。
射出時の打撃、2つのペルソナの衝突、生じた大爆発。
それら全てがペルソナからのダメージフィードバックと合わせて双子を蹂躙する。
火炎属性の大爆発をジャックフロストに受けた上に自分自身まで焼き尽くされたジュスティーヌのHPが…致命的に失われる。
爆炎が晴れ、膝を突くジュスティーヌの背後には…
三島由輝
「ごめんよ。」
ジュスティーヌの背中から胸に、短刀が貫通している。
支配された哀れな人形の糸が切れ、声もなく全身が弛緩する。
カロリーヌ
「ジュスティーヌっ!!」
リカームをすぐさま構えるも…瞬きの間に、ジュスティーヌと共にその存在は
『これで相互蘇生は出来ないよね?』
クラウンの傍らにジュスティーヌを抱えて現れ、パピヨンはそう話しかける。
鴨志田卓
「ああ、100点だパピヨン!」
カロリーヌがすかさず飛ばしたリカームも、途中で狙うべき対象が存在しなくなり地面に落ちてしまう。
迅速な撃破に、完璧な分断。
一瞬で、状況を好転してみせた。
『うわこれ人形じゃないの!?こんな可愛い幼女ファンタジーにしか居ないって…』
空間から微かに声が聞こえる。
…セリフ以外は100点満点の働きだ。
鴨志田卓
「詰み、だな。降参できないか?」
カロリーヌ
「くっ…」
疲れた目でクラウンを見るカロリーヌ。
平常であればこちらの力を認め、手を引いてくれるだろう。ベルベットルームの住民にとって来訪者と戦うのはあくまで力を試す行為でしかないのだから。
カロリーヌ
「…ぅギッ!!!」
…カロリーヌの体が跳ね上がる。頭部、正確に言えば人の脳髄がある場所に惨たらしいエフェクトが走る。
瞳が隠れ、眼窩には黒い靄が注ぎ込まれていた。
絶えず注がれた過剰が重力に従い流れ落ちる様は、
泣いているかのようで。
カロリーヌ
「統制神ヤルダバオト様の命によって、貴様の死刑を執行する。」
鴨志田卓
「…何が看守だ。お前らの方がよっぽど囚われてるじゃないか。」
カロリーヌは、人ならざる速度でクラウンへと迫る。
理性があれば避けていた接近戦。
監督の無茶振りで、万に1つの勝ち目もない戦いに挑みかかるのはあまりにも哀れだった。
警棒による
スネを思いっきり
骨を揺らし、衝撃波でカロリーヌの髪が舞う。
飛び上がっての
…【仁王立ち】で1/4に軽減され、数値に表すと175ダメージ程度。三種の治癒促進が発動し、攻撃は全て無意味と化す。
三島由輝
「鴨志田って、あんなハラスメント塗れの指導してた時も…メンバー決めに私欲を混ぜてても…」
「指導を受けてた
「その時点で、あの神サマ気取りの奴は鴨志田卓に負けてんだ!」
「やっちまえ、クラウン!!俺が、見届けてやる!!」
心強い応援の声がクラウンに届く。
カロリーヌは、パピヨンが姿を現しているのにジュスティーヌを回復しようともできない。
両手で警棒を持ち、飛び上がってクラウンの頭を狙うのを彼は棒立ちで見届ける。
頭蓋骨で、それを正面から受けた後。
横合いからアスモデウスがカロリーヌを掴んだ。
デコから流れた血がすぐに止まる中、アスモデウスの巨大な手で胴体を全て包み込み、人差し指と親指でカロリーヌの首をギリギリと締め付ける。
脳が弱点とされるのは、鍛えようがない部位だから。
ペルソナによる摩訶不思議な耐久力は、ソレを解決してくれる。
鴨志田卓
「意識を落とす。お前の体力の類がどう作用するかはわからないが…許して欲しい。」
カロリーヌ
「あっ…ぎ…がっ…ぐっ……」
藻掻く。
力が込められる。
目から靄が溢れる。
奥の瞳が、一瞬だけ映る。
そこに浮かぶ、心は。
カロリーヌ
「ゃ……レ………っ!!」
やれ。
鴨志田卓
「…お前は本当に強いよ、カロリーヌ。」
「もう戦わないで済むことを祈る。」
…。
HPの全損。再度、カロリーヌの意識が落ちた。
※鴨志田卓視点
三島由輝
「さっすが先生。ナイス暴力。」
観客席から、音もなくスマートに着地するパピヨン。
(…本当に三島か?)
三島由輝
「こんなちっちゃい子があんなに強いなんて…意識が無いとただの幼児だよ。刺し傷残らないでただ気絶しただけなあたり、何かあるんだろうけどさ。」
「軽いし…や、やわらかいし…どぅふっ。」
手にはジュスティーヌを抱えており、役得への喜びを隠そうともしない。
(本当に三島か…。)
鴨志田卓
「覚醒、負担が掛かるだろ。動けるか?」
三島由輝
「余裕。腕千切れかけた上でここまで歩いて来たんだぜ?」
「こんくらい屁でも無いって。」
鴨志田卓
「…そうだな。流石はウチのセッターだ。」
子鹿の様に震える膝を無視して、彼の根性を称賛する。
三島…いや、パピヨンは改めてこちらに向き直った。
三島由輝
「ラヴェンツァさんから聞いたよ。4月からの先生はコーチが動かしてて、今は混じりっけ無しの本人だって。」
鴨志田卓
「…。」
「ああ。俺本人は制御権を明け渡して…ぬくぬくと、コーチが贖罪していく様をただ見ていた。」
「本当に…すまなかった。これまでずっと嘘をついて、勝手に、許されようとしていた…」
頭を、深く深く下げた。どれだけ許されないものでも、謝罪は絶やしては「いいよ。」ならない…え?
三島由輝
「竜司が言ってたんだ。俺と違ってバレー部は得もしてたよなって。」
「頭に血は登ったけど、よく考えりゃ事実だ。今こうしてインターハイに勝ってペルソナも得たのは、先生の指導に耐えて成長したからだし。」
「怒ってないって言えば嘘だ。キツかったし。」
「けど、少なくとも俺は…恨んでない。」
鴨志田卓
「三島…?」
三島由輝
「パピヨン、だろ?」
へへんと笑う様は、仮面を被っているというのにむしろ憑き物が落ちたようで。
三島由輝
「頭のおかしいコーチが動かしてる
「…思えば可笑しかったんだ、あの鴨志田がサブカルわかってFPS上手なワケないって。」
アハハと笑う様は、もう一点の曇りもなく…彼らしい、優しく照らす月のような笑みを浮かべていた。
三島由輝
「コーチってなんであんなFPS上手いの?プロゲーマーってやつ?」
鴨志田卓
「大学生くらいの頃やりまくってたらしい。」
「上手いのは俺の筋力やら視力が凄いお陰だって話してたな。ハードウェアチート?だなんとか。」
三島由輝
「あ〜、やっぱゲームも筋肉か…」
「他ゲー、何履修してたか聞いた?」
鴨志田卓
「履修…確か、大学になぞらえてゲームや漫画なんかもそう言うんだったか。」
「大人になってからは…まぁ、RPG中心だったらしい。…本人に聞くのが一番いいさ。」
三島由輝
「それもそっか。次会った時の楽しみにしとく。」
「人の覚醒に喜んでテンションぶち上がる奴なんだ、ペルソナ見せた時が楽しみだ!」
「…コーチは、やっぱ混ざってた事を隠したい方針?」
笑顔を収めて、真剣にそう問いかけてくる。
思いやるような声色。
鴨志田卓
「恐らく。」
三島由輝
「だよな。…俺は思ってたからあんま言えないけど、振って湧いた力を自分のものと思わなかったタチじゃない?」
鴨志田卓
「…その通りだ。対話で、自己肯定感を持ってくれるように話はしてるんだが…コーチが俺として立てた功績を自分のものにように感じていない。」
そりゃそうだよね、なんてパピヨンは返してくる。
三島は奮起してバレーボールを始めて俺に捕まった。
コーチも…なんども人と関わろうと奮起して、ずっと失敗し続けていた。
なにか、根っこの部分で互いに感じ合うものがあるのかもしれない。
三島由輝
「じゃ、今の変化は俺達だけの秘密で。」
「この一件が終わったら監視も無くなるだろ?3人でラーメンでも食おうよ。」
鴨志田卓
「そうだな。」
「また…じっくり、詫びさせて欲しいが。まずはこれだけ言わせてくれ。」
「ありがとう、パピヨン。」
三島由輝
「…どういたしまして。」
優越感、高揚感、安堵。
吐息を多く含んだその一声には、過去の積み重ねによる様々な意味が乗せられていた。
鴨志田卓
「ラーメンなら、ウチにアイツが買った寸胴鍋もある、本格的なのを作ってくれるさ。」
三島由輝
「自家製…?」
そうして治癒促進によって俺の傷が全快し、パピヨンの疲労もマシになった後。
気を失っている双子を合体しラヴェンツァに戻すべく、ベルベットルーム内を漁り始めたのだった。
「固っっっ!?いける!?」
「んぎぎぎぎ……っ!!」
『そ、その!このままギロチンに掛けて構いませんので…!』