鴨志田転生~ペルソナ5一番の嫌われ役に憑依転生してしまったが、原作知識の力で雨宮蓮に代わって怪盗になり破滅フラグをへし折ってみせる!~ 作:DreamFrog
一番槍を努めたのは、意外にもナビだった。
佐倉双葉
「いい!?時間は私達の味方!皆が気づいても、クラウンが帰ってきても有利!!」
ヤルダバオト
「…愚かな。天才が聞いて呆れる。」
佐倉双葉
「ハイ、クラウン死んでるとか具体的な事何も言わないっ!」
「自分でも倒し切れるか分かんない証拠!」
ヤルダバオト
「…。」
佐倉双葉
「黙った!沈黙はコーテイだぞ!」
ヤルダバオト
「ククク…自ら用意された解へと突き進んでいく貴様には、愚かな大衆の適正があるようだ。」
佐倉双葉
「…皆!!こいつレスバ強い!!気をつけて!!」
現在、怪盗団唯一のネット厨となっているナビが撃沈するのを尻目に…他のメンバーが臨戦態勢を整える。
時間を稼げればこちらに有利という話に異論はなかった為、懸命に引き伸ばしてくれているのだとビショップやクイーンは解釈した。
…。
現在、怪盗団は神殿に侵入してすぐの所。
特大の段差の下に聖杯は鎮座していた。
…決戦を、聖杯は自身に有利な遠距離から始める腹積もりでいる。
本日行った作戦会議にて、聖杯戦の戦略は一切練っていなかった。
聖杯の取れる行動を周知するだけにしておき、その場で作戦を伝える、と。
相手がこちらを監視できるために、こちらの対策に対しての対策を最小限にする為のものだった。
新島真
「まずは補給の阻止?」
明智吾郎
「それが最善だろうね。」
推測から怪盗団が導き出した答えは、奇しくも原作の聖杯戦と同じもの。
明智吾郎
「刃物のあるフォックスとノワールに頼みたい!ナビとモナはそれぞれ
「残りはコレのお相手だ!全員、イレギュラーに警戒!!」
原作より重視した結果、派遣人数は4倍の大所帯。
側面から2組、正面から1組。全員でケーブルに対してアプローチする構え。
スカルとフォックスの2名のみではあるがリーダー役を経験しているクロウが代表して号令をかける。
聖杯から放たれる【光の矢】によって、戦いの火蓋が切って落とされた。
フォックスはモルガナカーの上に、ノワールはナビのネクロノミコンの上にそれぞれ乗り込みケーブルへと爆走。
天地それぞれ、聖杯と接続するケーブルを切断せんと突き進む。
新島冴
「狙いはケーブルよね?」
新島真
「お願いっ!」
残る4人は正面から段差を駆け下りる。
牽制に、ビショップの喚ぶレビアタンの【ガトリング砲】がケーブルの根元に殺到した。
弾丸は…聖杯から飛び出したシャドウによって防がれる。
ヤルダバオト
「メメントスを歩く看守は何処から生まれ出るか。考えた事はあったか?」
それはチェルノボグ。銃撃に耐性を持つもの。
ヤルダバオト
「人の歪んだ欲望の結晶は…その成り立ちこそ異なれど、心の海より彼の者達を惹きつける。」
その数は、10。
ヤルダバオト
「その結晶の成り立ちに応じて…無垢な彼らは歪むようだがな。」
【名探偵の達眼】。
弱点を、全て見抜く。
明智吾郎
「ロビンフッドっ!!」
【マハンマオン】。
WEAK。浄化の輝きによって、彼の者達は全てが刈り取られる。
クイーンの繰り出す【フラッシュボム】による目眩ましの支援を受けつつ、スカルが【メガトンレイド】で単騎突撃。
飛び出したメルキセデクが集団で受け止め、身代わりとなって消えていく。
弾かれたスカルは地面を数十メートル滑り、他三人と合流。
佐倉双葉
「どんだけ湧き出て…チートだろこんなの!」
タワーディフェンスゲームも驚きの速度で湧き出る雑魚シャドウ達。
一般兵と言えるようなシャドウであれど、メメントス最深部に生み出される彼らは恐ろしく強く。
全力の範囲攻撃を繰り返した上でようやく拮抗するような状況にもつれ込んでいた。
過剰に生産されたシャドウはそのままのフォックスらの元を目指し進路を妨害。物理・疾風に対して耐性を持ち氷結に至っては無効化するヤマタノオロチが束になって殺到する。
喜多川祐介
「こんなものっ…!」
モルガナ
「クソっ、硬い!」
そして、聖杯の中から飛び出すように湧き出ているだけで…聖杯自身はまだ、何も行動を行っていない。
地上を制圧し、残るは空だ。
【乱反射する光の矢】。
奥村春
「きゃあっ!」
ノワール目掛けて飛来する光の矢。
斧でなんとか弾くも、壁等に跳ね返りながら様々な角度で襲いかかる複数本の矢を防ぎきれず被弾。
外傷は無い。しかしその顔は苦痛に歪んでいる。
佐倉双葉
「ノワール!大丈夫!?」
奥村春
「うん、動ける…けど、頭が…」
脳を無遠慮に虫が這い回るような、痛みの伴う強烈な不快感。
楽になる方向へ身を委ねる事への恐怖心がなければ…己の精神はすぐさま支配されてしまうという確信めいた予感がノワールには走っていた。
ナビが異常を解析し…その原因を突き止める。
佐倉双葉
「っ大変!ランダムな状態異常じゃない!最初から洗脳一点狙いだコレ!」
ヤルダバオト
「よく気付く。苦痛から逃げ、
…。
もしも。原作にて存在する【乱反射する光の矢】のランダムな状態異常の発症が…聖杯の手抜きであったら。
やろうと思えば状態異常を選べるのだとしたら…まず彼の者はノワールを狙うだろう。
恐怖や緊張を一切しない殺戮人形が敵味方の区別を失えば、それは即ち愚かな大衆の味方なのだから。
そして聖杯と相対する4人もこの戦況を打開できずにいた。
杯を壊そうとすれば回復され、根元からケーブルを切ろうとすれば回復リソースを割いてシャドウを呼び出して守られる。
シャドウに対処しているうちに聖杯のHPは回復する。
無理やり聖杯を攻撃して削り切れるほど、聖杯の
そうして聖杯の持つ火力は全て、空を飛ぶ派遣者の対処に向けられてしまっていた。
手抜きの一切無い、
坂本竜司
「ノワール!クソっ…埒が明かねぇ!」
明智吾郎
「一度、あのハエ共を一網打尽に…」
新島冴
「っ、それこそ奴の思う壺!」
「
「対策してないワケがない。防いだ後隙を突かれて終わり…!」
スカルと共に聖杯から殺到するシャドウを蹴散らしていたクロウの作戦に異議が唱えられる。
新島真
「私がナビと交代すると、ここに回復役が居なくなる…」
自身の行動で戦況を打開できない事に歯噛みするクイーンを見て、スカルは口を開いた。
坂本竜司
「…クロウ、俺に精神暴走だ。」
明智吾郎
「!」
「…分かって言ってるのか?」
坂本竜司
「おう。」
「今なら…セイテンタイセイとなら、できる気がすんだよっ!!」
一瞬クロウへと振り返ったスカルの顔は、意志の力に満ち溢れていた。
ここで申し出を却下する事は彼を心配する事にはならず、彼を信用しない事になるだろう。
オーディンを仕舞い、ペルソナをロキへと変化させ…
【暴走のいざない】。
明智吾郎
「絶対!
坂本竜司
「当然っ!」
…。
精神暴走。
シャドウに施せば、現実の人間が白目を剥きながら電車を暴走させる程には暴れ出してしまう力。
しかし原作にて明智吾郎は言動に凶暴さこそ増えたものの普通に会話ができた。
ただ暴れるのではなく、戦略的に戦闘行為を行えていた。
想像できる可能性は2つ。
明智吾郎が特別なのか、暴走は暴れ馬のように乗りこなそうと試みることができるのか。
もしも後者であったのなら、必要なのは内なる
それこそ、明智吾郎や坂本竜司が長く苦しみ続けたような…
…。
赤と黒で描かれた雷のエフェクトが周囲に巻き散らかされる。
スカルの体が宙に浮かぶ。
その黒い怪盗服が内側から膨張し、筋肉が異常に発達する。手に持つ棍棒が巨大化し赤い如意棒に。
頭髪が伸び…天を衝く。
足元に現れた黒い筋斗雲に着地した頃には…その姿は、完全にペルソナそのものとなっていた。
ペルソナと自己の座標が、完全に重なる。
坂本竜司
『セイテ〜ン…タイセェェーイ!!!』
戦車の逆位置には、『暴走』の意味が置かれている。
正位置にあるのは…『前進』、『強い意志』、『自己制御』。
斉天大聖という名は…孫悟空が、天界へと殴り込む時に名乗ったもの。
天にも等しい偉大な聖者を自称する…神話のトリックスターが舞い降りた。
坂本竜司
『ケーブル狙いだ、後は頼むぜ!?』
その猿面に顔が包まれる寸前。
彼の瞳は…一点の曇りもなく、澄んでいた。
クロウが放つ【レーヴァテイン】、そしてビショップの【一刀両断】が交差。
立ち塞がるシャドウを切り裂き、血路を拓く。
クロウ
「行けぇっ!!」
力強く、筋斗雲を踏みしめる。
水を絞るスポンジのように雷が溢れ、周囲に覇気を撒き散らす。
エネルギーを全身に
雷と言う表現では生温い、大陸間巡航ミサイルの様なエネルギーを内包した化身がケーブルの最も根本へと射出される。
坂本竜司
『【ゴッドハンド】ォォォオオオ!!!!!!』
発射。
もう、そのエネルギーは止まらない。
空間を引き裂いて進む、破壊そのもの。
ヤルダバオト
「ククッ。呼べるシャドウに制限があると誰が言ったのか。」
聖杯より現れる、ギリメカラ。
メメントス最深部には居ない、
明智吾郎
「っ!?」
その耐性をいち早く見抜いたクロウが瞠目し焦る。
弱点は祝福。
広範囲に【マハンマオン】をばら撒くも…随伴するメルキセデクがソレを吸収。
打つ手がない。クロウがこの後に起こる惨劇を予感し身震いを起こしているうちに…その者は動いていた。
新島真
「そんな事だろうと思ってたっ!!」
クイーンがヨハンナを使って既に飛んでおり…その身一つでギリメカラに躍りかかる。
明智吾郎
「っ…奴は物理を反射する!無茶だ!」
新島真
「
…。
そう。
クイーンは知っている。
これまでずっと、クラウンから共有された各パレスのシャドウの耐性を暗記していた。
クロウが加入する前の、オクムラパレスのエネミー。まだ、記憶は鮮明に残っている。ギリメカラの耐性も全て識っていた。
わかったうえで、一か八かの賭けを行いに来た。
新島真
「見殺しにしても詰み!助けても詰み!」
クイーンはギリメカラを掴む。ただ触れただけ。優しく握るような力が反射される。
新島真
「合理的な答えが無いなら…」
重心をずらす、ただ肩を押しただけ。
マッサージでもされるような力が反射される。
新島真
「私が、この手で創ってみせる!!」
ガネーシャが聖杯の縁に立って踏ん張る力を受け流し、【ゴッドハンド】の射線上から投げ飛ばす!!!
使われたのは全て、このギリメカラ自身の力。クイーンからは何も力を加えておらず、反射される力など存在しない。
改心祭りの傍らでパピヨンを実験体…協力者にして鍛えた技。
弛まぬ努力が、合気道の真髄へと彼女を至らせていた。
邪魔をするものは、もう何もない。
飛来する神の手は、
まっすぐ聖杯の真上のケーブルに突き刺さり、
___音が消える。
周囲のシャドウを巻き込み殺しながら、その線の束に風穴を空けた。
シャドウが這い出るまでの時間を狙い、ケーブルへ到達したノワールとフォックスが左右に辛うじて繋がっているケーブルを切断。
聖杯は完全に断線を果たす。
警戒を切らさず、UFOと車が遠巻きに旋回する中…
ペルソナを解除し仮面に戻して、スカルは両膝を地面に突く。息が切れ続けている。
とてつもない量の
痛む頭に…聖杯から響く声は不快なノイズとして判断されてしまう。
ヤルダバオト
「精神の暴走は、斯様な身体強化として与えたものでは無いのだがな。」
坂本竜司
「はぁ、ハァ…余裕ぶった口だけどよ、ケーブルが全部切られちゃお前は回復できないよな?」
肩で息をしながら、スカルはチームの成果を誇る。
スカルの心は大いに消耗しものの…貼る大気功による潤沢なSPリソースから使われるクイーンの【メディアラハン】によって、暴走したことによる外傷は完治していた。
坂本竜司
「悪りぃ、助かった…」
隙を突いてくることも無く、ヤルダバオトは追撃をしてこない。
だから、後は消化試合だろうと突きつけるセリフをクロウは吐く。
明智吾郎
「シャドウの生成も打ち止めだ。…遺言、聞きましょうか?」
それに対する、どこか余裕ぶった態度をとるヤルダバオトの返答は。
ヤルダバオト
「下準備をしていたのは、貴様らだけでは無い。」
全てのケーブルが切られた上で行われる、聖杯の修復だった。
ヤルダバオト
「聖杯を崇める大衆は無尽蔵にいる。」
「その願いと力が、我を永遠にする。」
聖杯と大衆の繋がりは…まだ絶たれていない。
ヤルダバオト
「どうせ真なる姿へと変貌を遂げるのなら、賊の策に乗せられてやるのも一興…我は、そのように考えていた。」
「それが敗因足りうると認知すれば、幾らでも対策は用意できる。」
佐倉双葉
「…なんで!?回復止まらない!」
新島冴
「っ、見て!檻の中に!」
一歩引いて、後衛となり戦場を見ていたビショップがいち早く原因に気付く。
檻の中にある、ティッシュ箱程の黒い四角形。
メメントス最深部の床となる石と似た造形のソレは明滅を繰り返している。
モルガナ
「黒い…箱?」
佐倉双葉
「解析できた!やっばい!!あれ
ナビのペルソナ、ネクロノミコンはその構造を突き止める。
こちらにソレを気づかせたいとでも言うような単純な機構。
量や速度こそ
喜多川祐介
「無線通信…この檻の中、全てにか!?」
明智吾郎
「刈り取るものへの襲撃を放置したのは…!」
ヤルダバオト
「左様。あの一時は互いに良い準備期間となった。」
かくして、舞台のギミックは判明する。
無線接続によって減衰したとて人のみでは到底削りきれない速度で送信される、愚かな大衆の願い。
阻止するには、檻を一つ一つ回って破壊するしかない。
小型のルーターは、大衆のシャドウが抱え込める程のもの。
フォックスがアサルトライフルを向けたのに対して。
シャドウはルーターを抱きしめて守る。
繋がれた大衆
「やめろアホ!壊すなボケ!!」
喜多川祐介
「ならば、貴様ら諸共…っ!」
モルガナ
「待てフォックス!奴等は認知存在じゃない、シャドウだ!」
「殺せば廃人化が起きちまう!」
喜多川祐介
「!!」
「姑息な手を…!」
隠しもしない単純な機構なのは、これまた単純な理由だ。
隠す必要が無い。ただ、それだけ。
佐倉双葉
「ルーターをハッキング…うっわダメ工程多すぎ!楽勝だけど時間かかる系、皆殺しの3倍は時間かかるぞこれ!」
奥村春
「彼ら全員が支援者で…人質、ってこと?」
「回復を止められないんじゃ、どうやって…」
『勝てないかもしれない。』
そんな感情が怪盗団に少しでも湧いた隙を突き、ヤルダバオトは聖杯の矢面に立つ者たちへと全力の範囲攻撃を行う。
【収束する無尽の光】。
聖杯が輝きを深めていく。
万能、全てを満たす光が
聖杯を構成する歯車が回り、回り、回る。
…それは、機械仕掛けの神などと言えるほど崇高なものでは無く。
意志を
明智吾郎
「…クソっ、全員防御だ!!」
メメントスと現実の融合が既になされた今、統制神へと成る準備は整っている。
あの姿なら、通常のダメージによって敗れることは無い。
だがしかし…大衆
大多数の愚かな大衆に自己を誇示し、少数派の意思を折って統制を成す。
その当初の計画では破れるのなら…と。
ヤルダバオトはこの神殿の内部のみで勝ち切ろうとしていた。
大衆の願いを叶える願望器として生まれた存在。
大衆が怠惰に過ごす中、唯一全てを選び、唯一全てを導き、唯一全てを管理する為の…
大衆の、
【聖杯無尽光】。
時間は怪盗団の味方であり、ヤルダバオトの敵であることを再周知され気を持ち直される前に。
一言話せる隙を注意喚起に消費させて。
【防御】、【防御】、【防御】。
…一人だけ。
明智吾郎
「っ、何を!」
新島真
「ごめんね。」
「バトンは繋ぐから。」
新島冴
「真っ!!!」
【マハラクカジャ】。
派遣され離れていたモナ、フォックス、ナビ、ノワールを除く4人…クイーン、ビショップ、クロウ、スカルがその大技に巻き込まれた。
それ自体に追加効果は欠片もない単純な殺人光線を、避けられない範囲に照射する。
最大限に溜めたシドウ・サマエル・マサヨシの【覇王の審判】を越える威力であり…
自己犠牲を成したクイーンの【マハラクカジャ】に、成長したステータスで防御姿勢も取っている上からでも。