鴨志田転生~ペルソナ5一番の嫌われ役に憑依転生してしまったが、原作知識の力で雨宮蓮に代わって怪盗になり破滅フラグをへし折ってみせる!~   作:DreamFrog

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お待たせしました、完成の目処が立ちましたので投稿再開していきます!



第291話 10/11(火) その後、夢の国へ。

 

 

〜〜

放課後

〜〜

 

 

 

※奥村邦和視点

 

 

 

奥村春

「すっかり運転上手ですね。」

 

奥村邦和

「…。」

 

奥村春

「?」

「お父様?」

 

 

娘を無視するのは心苦しいが、リスクヘッジの為だと割り切る。

ハンドルを目一杯回し、巻き込み確認をして曲がる。

…道を飛び出す子供に浮かんだ悪感情を努めて消しつつブレーキ。

背後の車にランプで知らせ、サッカーボールを拾った後その場で会話をしだす子供を待ち、15秒程してからゆっくりと運転を再開する。

 

 

奥村邦和

「…よし。」

「すまない、混む道はまだ苦手でな。話しながら乗り切る自信が無かった。あとは暫く直進だ。」

 

 

一息つき、肩の力を抜く。

首都高との合流が生まれる場所を乗り切るためのシュミレーションを反芻しながら、娘との会話にもリソースを割く。

 

 

奥村邦和

「新島さんはもう免許を取っているそうだが…こういった場面も慣れているのか?」

 

奥村春

「ええ、凄く上手です。」

「私も何度か触らせて貰ったのですが、ぶつけないように走る事も難しくて…」

「ドリフトはできるようになったんですよ?」

 

奥村邦和

「…私有地での、話か?」

 

奥村春

「うーん…大衆皆が集まって出来たところ?」

 

奥村邦和

「こ、国道…!?」*1

 

奥村春

「あ!そ、そうじゃなくって前に話したメメントスの…」

「お父様っ!前!」

 

奥村邦和

「はぁっっ!?」

 

 

 

私達は今、車に乗っている。

目的地はデスティニーランドだ。

 

 

 

 

 

※奥村春視点

 

 

 

暫くして、なんとか誤解を解くことが出来た後。

シートベルトを緩めて、後部座席から前に顔を出す。

 

左右に流れていく前の風景を見る。

お父様が見ているものと同じ景色。

 

 

奥村邦和

「…良かったのか?助手席は空いているんだが。」

 

奥村春

「うん。」

「憧れてたのは、こっちだから。」

 

 

助手席と運転席の間に顔を突っ込んで、運転席の肩部分に頭を乗せた。

 

 

奥村春

「遊園地に行く時は、子供はこうして顔を出すんだって。」

 

 

家族2人。努めて敬語を抜く。

…想像の何倍も、甘えた声が出た。

 

 

奥村邦和

「…そうか。満足したら、シートベルトを締めるようにな。」

 

 

何も指摘が無いのは、その言葉でも構わないという事なのだろう。

 

煩いフィアンセも、盛り上がる友人も居ない、親子水入らずの車内。

運転に不慣れなお父様の口数は少なく、会話は弾まない。

 

なのに…とても心地の良い移動時間だった。

 

 

 

 

 

…。

 

 

 

 

 

※奥村邦和視点

 

 

 

デスティニーランドへの入場はスムーズに行えた。

何を隠そう、今日は前々から決まっていた貸切日。

今夜はこのランド全てがオクムラフーズの為に運営される。

 

 

襟足の長い運転手

「運転手の俺等も呼んでくれてありがとうございます!」

 

熟練の運転手

「言葉の甘い愚息が御迷惑をおかけしておりました…」

 

奥村邦和

「君達もオクムラフーズを支える立派な社員だ。どうか、胸を張って楽しんでほしい。」

 

 

 

時間帯だけが決められており、社長の号令等もなく皆が自由に楽しむ日。

家族の招待も自由としている為、ランドの許容量に対してかなりの少人数であるのに賑やかさを感じさせていた。

 

…小さな子供と配偶者連れの社員が居る。

これまで、『社員が辞めずに働き続ける理由』としか見ていなかった情報が、目の前で笑顔になって歩いていた。

 

 

奥村春

「お父様?」

 

奥村邦和

「…ああ、すまない。」

「私達も行こう。春の喜びそうなアトラクションには目星をつけてある。」

 

 

そうして、愛娘との遊園地を楽しむ…いや、父親として娘を楽しませる事を主目的にランドを回り始める。

 

まずは入口近くにあるコースターだ。

比較的緩やかな速度で園内を高所から一望でき、初手にコースターに乗るならこれが適している。

混雑しやすいデメリットは貸し切りによって無視できる完璧な計画だ。

 

 

 

…。

 

 

 

酔った。

一発で、かなり激しく。

 

 

奥村邦和

「くっ…なんと…軟弱な…」

 

 

コースターの出口で膝をつき、肩で息をする。

船酔いに似た不快な浮遊感。地面ではなく海面にでも居るように内臓が揺れている。

目と喉の奥がチリチリと痛み、立ちくらむ頭を抱える。

 

…娘の為なら、これしき。

 

 

奥村邦和

「次、は…あのコースターに行きたいん、だったな…?」

 

奥村春

「お、お父様!無茶しないで!」

 

 

自分の身体の弱さを実感しながらもふらついた足取りで次のアトラクションに向かおうとする所を、春に腕を掴んで止められる。

 

 

奥村邦和

「折角なら…雨宮君から聞いたリストのものを全て満たしてやろうと、思っていた…」

 

奥村春

「そ、それは…」

 

 

懐から取り出したメモは、雨宮蓮が書いた1枚の走り書き。

ルブランで双葉と共に喫猫(モナ)をしていた時に聞き出したという、デスティニーランドでやりたいことリスト。鴨志田君経由で、バーガーくん人形(非売品の試作デザイン)を対価に得たものだ。

 

…特に刺激が強いコースターを上から順に並べたようなリストだった。

 

 

…。

原作のバレンタインデーイベントやP5Sの運転など、所々パワフルな一面が見られる奥村春。

恐怖心を取ったり付けたりした弊害もあり…現在よりも程度を増して、自らスリリングな体験を求める心を持ってしまっている…!

 

ただ乙女の趣味では無いというのは本人も承知の上のようで、親から直接『これが好きだろう』と言われるのは恥ずかしさが生まれるらしい。

 

 

奥村邦和

「まだ、娘の好きなものすら把握できて居ない。遅すぎるが…少しは、喜ばせてやりたいだろう?」

 

奥村春

「気持ちは嬉しいけど、その…」

 

奥村邦和

「何、心配するな。己の体調は、己が良く知っている…。」

 

奥村春

「…それなら」

 

奥村邦和

「明日明後日はスケジュールを空けてあるし、優秀な医者と入院先も手配済みだ…!」

 

奥村春

「お父様っ!やり過ぎ、やり過ぎです!」

 

 

力尽きる事を前提とした万全の準備をしていたのだが、

運動不足で過労気味の中高年では現役女子高生の愛娘に力負けし(ひきづられ)てしまい、パレードの観覧や食事を楽しむ方面に舵が切られたのだった…

 

 

 

…。

 

 

 

 

 

一切の手抜きが無い、遊園地の中だという贔屓目を付けずとも価格相応と思える質の高い食事を取った後。

 

『乗れないアトラクションを見守ってくださるのも、同行した父親らしいと思いませんか?』

 

という、春を望むアトラクションに乗せてやりたい私と心配する春の折衷案を提示されて。

 

今はコースターの全体が一望できる場所で春を待っている。

 

 

デスティニーランド一番の絶叫コースターが…今、下り始めた。

甲高い声が聞こえる。声の太さからして春のものではなく他の社員の叫びだろう。

 

(貸切とはいえ…聞き分けられないか。)

 

眼鏡が必要なぼやけた視力の目では、ここから春の表情を見ることができない。

 

そのままコースターは360°の回転へ向かう。

私が乗っていればそのままコースターから救急車へ乗り換えていただろうGの奔流に春は耐えうるのだろうか。

 

…いくつかのカーブを経て、コースターが帰ってくる。

春は立ち上がり、ぐんと伸びをした。

 

食後にコースター流石に応えたのだろうか。すぐ外に出ず、周囲と2,3会話している。

医者なら私の受け入れ準備をしている者が居る。ここからでは声が聞こえない、向かって確認すべきだろうか。

 

*2

 

…!?

 

 

春はもう一度コースターに乗り込み、他の社員と共にもう一度レーンを登って行った…

 

また、春の声は他の社員にかき消され聞こえない。

 

(いや、そもそも叫んでいないのか…?)

 

男子は三日会わざれば刮目して見よと言うが、女子であっても大きくは変わらないのだろう。

 

長い年月、目を逸らしていた娘は…荒波に揉まれ、いつの間にか大きく成長していた。

 

私を、こんなにも驚かせる程に。

 

 

 

これまで。

ずっと、春へ目線を向けられなかった。

春に顔を向けていても、目は別の…データか何かを見ていたように思う。

 

これからは。

春へ、幾らでも目線を向けることができる。

向けないのは、ただの怠慢に他ならない。

気恥ずかしさやらプライドやら、そんな些事はこの目標達成の妨げでしか無いだろう。

 

 

 

一回で満足した社員達が降りてくる。

小高く見晴らしの良い場所から娘を見ている私に、何人かが気づいて声を掛けてくれた。

 

ジェットコースターの風で髪がセンターから左右に分かれて額が大きく露出している。

毛が暴れて絡まり、パーマを掛けたように流れていた。

 

…どこか、春の髪型に近しいものを感じる。

 

 

ヒラ社員*3

「社長〜!!最高で〜っす!!」

 

ヒラ社員

「明日からも頑張りま〜す!!」

 

主任

「娘さんも楽しんでまっせ〜!!」

 

 

声を張る体力は残っていない。手を振ってその大声に応える。

…どれも、あの出来事以前では考えられない言葉だった。

 

 

 

効率を追求する事は止めない。

全力で、己が信じる最高効率を目指す。

 

ただ、己の価値観から…重視する項目を変えるだけ。

それだけでいい。

 

鴨志田卓という男に、改心を施されて得た結論だ。

 

 

…。

 

 

なんともう一度乗り、連続3回の絶叫マシンに乗った春はすっきりとした表情でこちらに歩いてくる。

乗り物酔いに強い訳では無いと運転手から話を聞いていたが…*4いつの間にか、耐性のようなものでも獲得したのだろうか。

 

例えば、何度も乱暴な運転の乗り物に乗り続けるとか…*5

 

娘を心配しすぎると、ありもしない妄想をしてしまっていけない。怪盗団の活動というのは怪我をする事もあるとは聞いたが、流石に過剰に考えすぎだろう。

 

 

奥村春

「ふぅ…もう、悔いはありません。」

 

奥村邦和

「それは…よかったな。何よりだ。」

 

 

人情を取り、会社を成長させようとしていなかったら。娘のこの顔はもっと早く見れていたのかもしれない。

 

しかし、我が社の成長を取って金を稼いでいなければ…絶対に、この体験は用意できていなかった。

 

 

今目指す目標を達成する為には、これまではとんだ回り道をしていたように感じる。

 

しかし、この回り道はまた別の目標に対する最高効率の行動だった。

そして、その蓄積した物に何も無駄はない。

 

『損は裏切ってでも取り返せ』。

過去を裏切って、損をしていた『愛情』を取り返す。

それで良いんだ。

 

 

 

…感謝しかない。

 

私の『今』を…受け取ってくれて。

待っていてくれて。行動してくれて。

 

 

 

 

*1:
※奥村春はP5無印段階では無免許

*2:

 

「いや、流石にそれは…」

 

「良いんです良いんです!折角の社員貸切なんだから楽しんでくださいよ!」

「こんな時しかできない特権ですよ!お父上も娘に特別な体験させれたって喜びますって!多分!」

 

「そ、そうかな…?」

 

「大丈夫大丈夫!皆さんも良いですよね?」

 

「勿論!」

 

「よっ、社長令嬢!」

 

「ほらほら!別に10分くらいしか変わらないし!」

 

「なら、お言葉に甘えて…」

 

*3:
第203話

*4:
第183話にて描写

*5:
第243話

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