一之瀬帆波の幼馴染   作:Olion

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第1話

───ピンポン、とチャイムが鳴った。

 

 暗澹(あんたん)としてしずまる私の部屋にまで、その音は聞こえてきて。

こんな平日の、それも昼下がりに来客だろうか。と、私は疑問に思った。

そんなはずがない、とすぐに思い直す。お母さんも妹もいるわけのないこんな時間に、あの二人の知り合いが訪ねてくるはずがない。私への来客なんて、もっとあり得ないだろう。

 宅配だろうか、と少々警戒しながら玄関に向かい、ドアスコープを覗く。

 

(誰だろう…)

 

 そこにいたのは、知らない男の子だった。

恐らく私と同じくらいの歳であろう、どこか大人びた少年。少し遠くにある中学校の制服とパーカーをこなれた様子で着こなして、片手でスマホをいじっている。

 

 無視してしまおうか、とも考えた。だがいくら待てども外の少年はぼうっとした様子でスマホを触りながら待っている。

仕方なく、恐々としながら、私はチェーンを掛けて玄関の扉を開いた。

 

「わり、鍵忘れちゃってさ──え?帆波ちゃん?」

 

 スマホからこちらに目を向けるや否や、彼は目を丸くして驚いているようだった。それから身体をのけぞらせるようにして表札を見て、納得した様子で口を開いた。

 

「あー、部屋間違えてたみたいだ。ごめんな」

 

「…えっと」

 

 どうして私の名前を知っているんだろう。もしかして、忘れているだけで知り合いなのだろうかと考えながら、再び彼の容貌を窺い見てみる。

はっと息を吐くような、綺麗な顔立ち。雪のように青白い髪に、きらきらと輝く金色の瞳。そして何より、その特徴的な泣きぼくろ。随分雰囲気が変わったけれど、もしかすると、彼は。

 

「もしかして、葉月くん?」

 

「え、そうだけど。あぁ…わかんなかった?」

 

「ごめんね。雰囲気が変わってて気が付けなくて」

 

「そう?帆波ちゃんが言うなら、そうなのかもな」

 

 そう言って、彼──葉月くんは曖昧にはにかんだ。その表情が昔とほとんど変わっていなくて、私は少し安心して笑顔を返す。

葉月くんは、小学校の頃の同級生だ。彼とは家が同じマンションだったから、よく一緒に学校から帰ったり遊んだりと、仲良くしていたのを覚えている。

でも小学校を卒業する時に、彼は中学受験をして他の中学校に行ってしまった。

それでも1年生の頃は見かけては話をする程度には関わりがあったけれど、学校への距離の関係からか家を出る時間も次第に被らなくなり、どんどんと疎遠になってしまったのだ。

 

 その彼が、今、目の前にいる。

 

 私は高揚するままに、掛けていたドアチェーンを外して扉を完全に開ける。葉月くんも手にしていたスマホをいつの間にやらポケットに戻していて、格好を崩してこちらに向け口を開く。

 

「久しぶり。元気だった?」

 

「うん。葉月くんこそ久しぶり。身長伸びたね」

 

「はは、まあね。もう帆波ちゃんよりは高いと思うよ」

 

「…わ、本当だ」

 

 「ほら」と手招く彼の導くままに、向かい合わせで立ち背筋を伸ばしてみる。

昔は私の方が少し高いくらいだったのに、もう随分と追い越されてしまっていた。170センチくらいだろうか。もう私が見上げなければ目線が合わなくなっていて。

彼の成長に驚き純粋に嬉しく思う自分と、なんだか置いて行かれたような気がして寂しさを感じる自分。まるで、心がふたつあるみたいだった。

 

「去年一気に伸びてさ、成長痛が痛いわ痛いわ」

 

「そうなんだ。まだ伸びてるの?」

 

「うん、目指せ180メートルって感じ」

 

「あはは、なにそれ。それじゃ見上げても絶対顔みえないよ」

 

「たしかに。もうタワマンなれちゃうな」

 

 あの頃と同じように、他愛ない会話でさえ弾む。まるで、疎遠だったことが嘘のように。取り巻く環境は変わったけれど、ああ、変わらないものもあるんだって、そう思える。

 

「それにしても…」

 

そんな私の様子に少し微笑んだ彼はそう前置き、ふと湧いた疑問を溢すように言葉を紡いだ。

 

「まさかこんな風に会うとは思わなかったな。時間も時間だし。俺はサボりだけど、帆波ちゃんは?」

 

「…っ」

 

 彼の放った純朴な疑問の言葉。再会に歓んでいた私の心は、冷水を浴びせられたように現実へと帰された。

今の自分の現状、そしてそうなるまでに至った経緯と原因。万引き、なんて、自業自得のそれ。それは明確に、私の犯した罪だった。だけど、自らの罪を吐露するほどの勇気は、持ち合わせて無くて。

 

「えっと…うん、私もそんな感じかな」

 

「……ふーん、そっか」

 

 笑顔を作って、そう返してみる。上手く誤魔化せたのかは、分からない。けれど葉月くんはそれ以上の追求はしてこなかった。ただ彼は少し考えるように目を伏せ、それからこちらを再び見やると、私に手を差し伸べながら、こう言った。

 

「帆波ちゃん今から暇?折角だしさ、これから遊びに行かない?」

 

───なんて事は無い、と言う風に投げかけられた言葉。

 

 けれどその何気なさは、その顔に浮かんだ微笑みは、今の私には。蜘蛛の垂らした一縷の希望に思えてならなかった。

 

 後ろ手に結んだ両腕が、震えるのを感じた。

 

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

 

 くたびれたジャージから着替えて、髪を手入れして。それから、化粧を少しだけ。といっても、顔色をよく見せるためにベースメイクの上からチークとリップに、ハイライトをのせた程度だけれど。

本当に久しぶりの外出だから、どうしても少し怖気付いている自分がいる。だからこそ、それを奮い立たせるために身嗜みから整えたつもりだった。

 

 準備は揃ったので、鞄を手に扉をもう一度開く。さっきよりも、気持ち軽く感じたような気がした。

 

「お、準備できた?」

 

「うん。バッチリだよ」

 

 葉月くんは、壁にもたれ掛かるようにして待っていた。

彼は「家に荷物とか置いてくるから、ゆっくり準備していいよ」と言っていたけれど、その肩にはスクールバッグがかかったままだ。その私の視線に気が付いたのか、口を開いて何でもないように言った。

 

「ああ、家に誰もいなかったから。そのままでいいやって」

 

「待たせちゃったみたいだね。ごめんね」

 

「いいよ別に、気にしないで。それよりほら、行こっか」

 

「うん」

 

 一緒にエレベーターに乗って、マンションを出る。お互い無言だったけれど、不思議と心地よくて。幼い頃から一緒だったから、こんな瞬間もあったな、なんて少し思い出した。

 

 

 繁華街まで出る道のりを並んで歩きながら、ふと彼を見る。ちょっとだけ制服を着崩して、気だるげな雰囲気を醸す葉月くんはなんだか少しだけ不良みたい。

 

 それから、自分の服装に目を通す。久しぶりに着る制服。私服の方が良いのではないかと思ったが、葉月くん曰く「堂々としとけば、逆に怪しまれないから。それに俺だけ制服だと目立つだろ?」ということらしい。

普段なら「ちゃんとしなきゃ」と思うそれも、葉月くんと並んでいると、そこまで肩肘張る必要も無いような気がして、どこか気楽に感じられる。

 

「それで、どこに行くの?」

 

「実は何も考えてなくてさ、そうだな…そういやお腹空いたな。帆波ちゃんは?」

 

「え?あ、うん。私も……ちょっと」

 

「じゃあ決まり。ファミレス行こ」

 

 葉月くんはスマホをポケットに突っ込んだまま、悪戯っぽく笑っていた。決まり、というより一方的な宣告に近い言い方。でも、強引なのにそこまで嫌には感じなかった。

 

「あ、お金ないなら俺が出すよ」

 

「にゃはは、いいよ。自分で出すから」

 

 気づけば笑っていた。胸の奥にあった重さが、少しだけ薄れている。

 

 

 繁華街に近づくにつれて、午後の光がアスファルトに照り返して眩しかった。買い物帰りの親子連れや、ランドセルを背中にした小学生たちが目につく。まだ放課後には早いから、中学生や高校生の姿はほとんどない。

 

 今の私は人混みを歩くのが少し怖かったけれど、隣に葉月くんがいると、不思議と落ち着けた。

小さい頃は逆だったな、と思い返す。あの頃は私が先を歩いて、引っ込み思案だった葉月くんが少し遅れてついてきてた。気が付けば私の背中を見ながら歩いているような子で。

 

 ふとそんな記憶が蘇ってきて、少し笑ってしまう。

 

「どうした?」

 

「ううん、なんでもないよ」

 

 彼は気にも留めず、ポケットに手を突っ込んだまま歩き続ける。無造作な仕草なのに、どこか大人びて見えた。

 

 

 一緒に入ったファミレスのボックス席。

彼はパスタを頼んで、私はミラノドリア。食後は大盛りのフライドポテトを頼んで、二人でそれをつまみながら取り留めもない話を続けた。小学校の頃の思い出とか、最近ハマってる音楽とか。他愛ない会話なのに、まるで隔たれていた時間など嘘だったかのように弾んで。不思議と楽しくて時間があっという間に過ぎていく。

 

 ポテトをつまみ終えて、グラスの中のドリンクバーも既に空になっていた。壁に架かった時計を見てみると、もう良い時間になっている。そろそろ出ようかと思い、口を開いた。

 

「葉月くん、そろそろ出よっか」

 

 すると彼は、軽く手を振って答えた。

 

「そうだね、出るか。会計ならもう済ませてるから」

 

「えっ、いや……奢ってもらうなんて悪いよ」

 

 慌てて財布を探ろうとしたけれど、彼はそれを制するように右肩を上げ、首を横に振った。それからわざとらしくない程度の間を置いて、ふっと口元を緩める。

 

「いいから。俺が帆波ちゃんを連れ出したんだし」

 

 その言葉はあまりに自然で、何の見返りも求めていないように聞こえた。

私は視線を落とし、小さく「そっか」と呟く。胸の奥に、じわりと温かいものが広がっていく。

 

「ごめんね。ありがとう。……なんだか葉月くん、スマートだね」

 

 思わず本音が口から漏れてしまった。すると彼は慌てたように肩をすくめ、照れ隠しをする。

 

「いや、ファミレスだし。カッコつけても格好つかないでしょ。恥ず」

 

 そう言いながらレシートをくしゃりとポケットに突っ込む仕草まで妙に自然で、胸が少しだけざわついた。

 

 

 店を出ると、午後の柔らかな日差しがビルの切れ間から差し込んでいた。

ピーク時の賑わいが落ち着いたせいか、ファミレスの周辺は少し静かで、その静けさが食後の満腹感と妙に馴染んでいた。

 

 

 歩き出すと、すぐに人通りの多い通りに合流する。ショッピング袋を下げた女性や、手を繋いだ大学生くらいのカップルが、夕時をゆったりと楽しんでいる。

 

 一通り歩いていると不意に、通りの先からゲームセンターの電子音が耳に響く。煌びやかなネオンが入口を彩り、街の喧騒に混じっていた。葉月くんがふと立ち止まり、口を開く。

 

「なあ、プリ撮っていかない?ほら、ああいうの、帆波ちゃん苦手そうだし」

 

「ええ!?苦手って…そんなことないもん」

 

「いいからいいから。思い出だろ」

 

 そうして半ば引っ張られるようにして寄ったゲームセンター。

この時間帯にしては、まだ人も少なかった。けれど奥のプリクラコーナーには、大学生くらいのカップルが数組いて、賑やかに笑い合っている。

手を繋いだり、肩を寄せたり。ひとつ上の世界を覗いてしまったようで、私には少しだけ居心地の悪さを覚えさせた。

でも、葉月くんは気にする様子もなく、クレーンゲームの前に立つ。

 

「ほら、これ。絶対取れるから」

 

 そう言いながら何度もアームを操作して、結局取れないのを繰り返して。それにつられて笑ってしまった。

逆に私がなんとなく挑戦したら、一回でぬいぐるみを落としてしまい、葉月くんはなんだか釈然としないといった感じの顔。

その悔しそうな顔に吹き出してしまい、さっきまで感じていた場違いさは、気付けば消えていた。

 

 一緒に撮ったプリクラを眺めながら、ゲームセンターを出る。葉月くんも隣で、同じものを眺めながら「いいね、再会記念って感じ」なんて、独り言ちている。

シールにプリントされた小さな笑顔と、二つのピースサイン。それがなんだか他人のもののように思えて、不思議と胸が擽ったくなった。

 

「な?やっぱり撮って正解だったでしょ?」

 

 プリクラを見て口角を上げていた私に気付いて、葉月くんがニッ、と勝気な笑顔をくれた。それを認めるのが悔しくて恥ずかしくて、けれどその通りだったので、私も笑顔を返した。

 

「にゃはは、うん。そうかも」

 

 

 結局、ファミレスで長居して、ゲームセンターでクレーンゲームに散々挑戦して、プリクラを撮って。

笑いすぎて喉がひりついて、頬もずっと緩んでいたせいで少し疲れている。あんなふうに声を上げて笑ったのなんて、いつ以来だろう。それを思うと、少しだけ胸にちくちくと針が刺さった。

 

 気が付けば、外はすっかり暗くなっていて。繁華街の表情が、昼間とは別のものに変わっていくのを肌で感じた。

 

「…楽しかったな」

 

 思わず零れた言葉に、葉月くんが振り向いて笑う。街灯の下で、その笑顔だけがやけに鮮やかに見えた。

 

「だろ?帆波ちゃん、前より笑うの下手になってんのかと思ったけど、まだいけるじゃん」

 

「え?」

 

「別に深い意味はないけど。ほら、寄り道しようぜ」

 

 そう言って歩き出した彼に続いて、着いたのはマンションの近くにある公園だった。

ブランコに、鉄棒に、ジャングルジムに、滑り台。小学校の頃は、ここでよく一緒に遊んだっけ。ジャングルジムのてっぺんに上ってみたり、鬼ごっこをしたり。半日一緒にいたからか、当時のことを鮮明に思い返す。こんなに暗い時間に一緒に来るのは初めてだけど。

 

 夜の公園は、昼間とはまるで違う顔をしていた。街灯がまばらに灯り、遊具がぼんやりと夜の闇に沈んでいる。虫の声が響いて、遠くで車の走る音がかすかに混じる。繁華街の喧騒がまだ耳に残っているからか、この静けさが際立って感じられた。

 

「ほら、こっち」

 

 葉月くんはいつの間にか前を歩き、ブランコの前で手をひらひらさせていた。

どっちがより高く漕げるか、なんて競ったブランコに、二人して腰掛ける。ブランコに腰を下ろすと、鎖が小さく鳴った。冷たい感触が制服のスカート越しに伝わってくる。

 

 鎖の軋る音だけが、からからと、やけに大きく耳に残った。

夜風が吹いている。日中の喧騒の余韻が、まだ胸の奥でほんのりと残っている。けれど、それを包み込むように夜の冷たい空気が肌を撫ぜる。ゆっくりと、確実に、しんとした静けさのほうが強くなっていくのを感じる。

 

「…なんか、懐かしいな」

 

 葉月くんが小さく呟いた。

 

「よくここで遊んだよな。俺、ジャングルジムから落ちて泣いたっけ」

 

「うん、覚えてる…葉月くん、すぐ泣くんだもん」

 

「うっさいな。もう泣かないから」

 

「……ねえ、あそこでかくれんぼしたの、覚えてる?」

 

 公園の中心にある、大きな滑り台。そのあたりを指さすと、葉月くんは「覚えてる」と笑った。

 

「帆波ちゃん、隠れるの上手すぎてさ。全然見つけられなかった」

 

「でも、結局私、拗ねて出てきちゃったんだよね」

 

「うん。すごい顔してた。あのあと、俺がお菓子あげるまでずっと涙目でさ」

 

「あはは、そんなこともあったっけ」

 

 懐かしい記憶に笑いながらも、胸の奥がちくりと痛む。隠れすぎて、見つけてもらえなかった。なんだか今の自分も、同じような気がして。

笑い合う声が夜空に溶けて、また少しの沈黙が訪れる。軋るチェーンの音だけが、二人の間にゆっくりと響いていた。

 

「…今日、楽しかった?」

 

 隣に座った葉月くんが、夜空を見上げたままぽつりと呟いた。

 

「……うん。そうだね。楽しかった」

 

 本当に、楽しかった。けれど、改めてその言葉を口にした瞬間、胸の奥にずしりとした重さが戻ってきて。

 

 胸の奥がきゅうっと痛んだ。

今日一日、本当に楽しくて。ファミレスでくだらない話をしたこと。ゲームセンターで何度も笑ったこと。プリクラで肩を寄せられて、少しドキッとしたこと。全部が他愛なくて、けれどまぶしいくらいに楽しかった。久しぶりに、ずっと笑っていられた。

 

───けれど。

 

 心のどこかで、ずっと刺さっているものがある。笑っていても、心の奥底に巣食った罪悪感は消えない。あんな事をした私が、笑っていてもいいのか、って。

今日一日で少し忘れられた気がしたけれど、夜の冷たさがその自責の念をまた呼び戻す。

 

「──それで、何があったの?」

 

 不意を打つように、投げかけられた言葉。

 

 すっと、軽い調子で問われたことに、息を呑む。きっと私は表情を取り繕うこともできず、ただ驚いたように、不安げに瞳を揺らしているのだろう。ああ、今の私はかくれんぼで見つけてもらえなくて、拗ねていたあの頃と同じ。

だけど、今。葉月くんは私を見つけてくれた。

だから──

 

「……あのね、葉月くん」

 

 思わず、声に音が乗っていて。

彼が「ん?」と視線をこちらに向ける。どこかあどけなさすら感じる視線だった。

 

 言うか、言うまいか。喉元まで出かかって、そのまま飲み込んでしまおうかと逡巡する。

だけど──このまま隠したままじゃ、折角の楽しさも、全てが嘘になってしまう気がした。

 

「わたし…」

 

 ブランコの鎖を強く握りしめた。

俯いていた顔を上げて、彼の顔を見る。目を、合わせる。葉月くんは、静かに私の言葉の続きを待っている。街灯の光が横顔を照らす。その表情は、気負いもなくて。

 

「私ね…」

 

 心臓が、うるさいくらいにばくばくと鳴っている。

 

 ほんとうは、私が犯した罪を吐露するほどの勇気は、持ち合わせて無くて。

けれど、それでも、勇気を出さなきゃ。今日笑ってくれた君に、私に、嘘をつかないために。

 

 ぎゅっと、心に力を篭めた。

 

「……万引き、したんだ」

 

 

 

 

 

 

 

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