催眠ポケモンメガカラマネロとの理想的なカラマれ方 作:あいいろ ののめ
「…それでヤミカラスを捕まえちゃったの?」
本日もミアレは晴れ、そして少々のハプニング。
朝ご飯中に物事の顛末を聞いたムクちゃんが、私の持って帰ってきたゴージャスボールを眺めながら不思議そうな顔で聞いてきた言葉に頷く。二人の視線の移った先には、モクローの隣で爪とクチバシを使って器用にポフィンを小さく分けて食べるヤミカラスの姿が。
「きっとルミヤさんを認めたのでしょう」
「認めた?」
アボカドグラタンを食べる手を止めて両腕を組んだシローさんに問い返すと、彼はその体格からは思い描きづらい柔和な笑顔を見せてこう言う。
「ポケモンも人間を対等に見ているという事です。話だけでは何を気に入ったかまでは解りませんが、元々そのつもりでこの家に入って来たのではないでしょうか?」
少し意外、意表を突かれたような唖然とした表情を私はしていたんじゃないかと思う。ヤミカラスの方を見ると、彼はポフィンをつついていた顔をこちらに向けて、なんの意味を持つのか小さく鳴いてから再びポフィンに意識を戻した。
「……。」
野生のポケモンがトレーナーを認める。
その意味を知ろうと思考して朝食を食べていた手が止まる。
「このサラダ美味しいですね!」
「兄、食べ過ぎ注意。親しき仲にも礼儀あり、品のある振る舞いを心掛けるべき」
「そう言うムクもさっきデザートに抹茶プリンがあると聞いてからそわそわしっぱなしじゃないですか」
「…それとこれは話が違う。」
いや、今は
「もう…サラダもデザートも食べたかったらまた用意できるんだから、よく噛んで食べるんだよ?
あっ良かったらサラダに使う野菜でお昼ご飯用のサンドイッチボックスでも作る?」
「良いんですか!?」
「ふふっ♪もっちろんだよ!」
なんと言うか、大型犬のウインディとかを眺めている気分。ムクちゃんもだけど、美味しそうに食べてくれる相手が居ると作りがいがあるんだよね。
いつもはカラマネロ達に食べて貰って満足してるけれど、言葉で行うコミュニケーションだからこその満足感があるのも確かだった。
「あ…テレビ付けてもいい?」
そう尋ねたのは私。
自宅でそんな問い掛けをするのもおかしな話に思えるけれど、二人は心良く返事をしてくれたのでホロキャストロトムにテレビを付けてもらう。
「この時間、テレビって何かあった?」
「今はガラル地方でエキシビションマッチが行われていますね」
「シローさん良く知ってるね? 私が見たかったのは正にそのガラル地方のポケモンバトルなんだよね〜」
ガラル地方、ミアレシティのあるカロス地方からはカントーやアローラほど遠く無い土地。ガラル地方ではポケモンバトルが有名で、実力者になると大きなスタジアムで
「今日のエキシビションマッチはカブさんと…ポプラさんですか!楽しみな試合ですね!」
「相性では炎タイプを使うカブさんの方が有利」
「でもポプラさんも一筋縄で行くような相手じゃないと私は思うなあ」
朝ご飯を楽しみながら、エキシビションマッチのカードに三者三様の反応を返す。
「スタジアムの熱気が凄いですね、カロス地方のジム戦とは全く違うものに思えます」
「確かにそうかも?…カロス地方のジム戦ってああいうスポーティな物と言うよりも、静かで『決闘の儀式』って感じがするもんね」
「? ルミヤもジム戦した事があったのか?」
「ミアレシティに来る前にだけどね? 私はパパとママが色んな所に行くお陰で転々としてたから。ほら、あの棚に飾ってあるのもそうだよ?」
「あれはサイキックバッジにフェアリーバッジですか、凄いですね…!」
「何処のジムリーダー?」
「フェアリーバッジはムクも知ってる服飾デザイナーのマーシュさんから貰える物ですよ。それにサイキックバッジと言えば、ダブルバトルで有名なゴジカさんですよね!?」
「シローさん良く知ってるね!?」
「当然ですよ!どちらもカロス地方の実力者ですから!」
「凄い。ルミヤがポケモンバトル強いのは知ってたけど、ジムバッジを持ってたなんて」
「そんな褒める事じゃないよ?…私が勝った時はジムリーダーも手加減してくれてたから」
「見てください!バトルが始まりましたよ!」
シローさんの声で全員の視線がテレビに向けられる。
「カブさんの最初のポケモンはコータス、ポプラさんにとっては更に厳しい戦いとなりそうですね」
「何故?」
「あのコータスの特性は『日照り』だからね、日差しが強くなってカブさんの得意とするほのお技の威力が上がるんだよ」
私はそう解説したが、テレビには肝心の場面が映らない、けどそれはテレビ映像そのものが乱れたりしている訳では無かった。
「…日差し、強くならないが。」
「いえムク、アレを見てください!」
シローさんがそう言って差したのは、カブさんに相対するポプラさんの繰り出していたポケモン。
「あれは…マタドガス!」
「ルミヤ、シロー。マタドガスと言われても訳が解らない」
「ガラル地方のマタドガスは『かがくへんかガス』を発していて、ポケモンの特性を無効化してしまうのです」
「つまりコータスの日照りをマタドガスで無効化したんだよ、最初のポケモンの読み合いはポプラさんが勝ったってコト」
「…理解した、それで二人共興奮してるの」
日照りを無効化されたコータスを戻すと出てきたポケモンに手痛い一撃が入り、相手に有効なポケモンを繰り出し合おうとすればコータスが撒いたステルスロックによってポプラさんのポケモンの体力が削られる。
マタドガスがコート上から居なくなればコータスの日照りが発動できるようになるが、ステルスロックと同時に展開されたどくどくによってコータスはその体力を着実に蝕まれる。
ムクちゃんがやや素っ気ない態度を向けてくるのを感じながらも、エキシビションマッチの試合模様は刻々と変化していった。
「あ!」
「ルミヤ、今度は何?」
「驚かせた? ごめんね、ポプラさんの切り札のポケモンが出るな〜と思って!」
テレビ映像に映るポプラさんの軽く投げたハイパーボールから出てきたのは、苺の乗ったホイップクリームのような可愛らしいポケモン。
「あの小さいポケモンが切り札?」
「そう!あれがポプラさんのマホイップ!」
「…? すぐボールに戻したけど?」
ムクちゃんの指摘には答えず、テレビを見守る。
映像の中でマホイップの入ったボールは瞬く間に両手で抱える大きさになり、ポプラさんはそのボールを豪快にも高く放り投げる。
「そしてアレが切り札のキョダイマックスマホイップだよ!!」
テレビ映像でも分かる、スタジアムと同じぐらいの高さをしたカラフルな四段ホールケーキ。その土台の上に鎮座するマホイップは、大迫力という言葉でも表しきれないものだった。
「あのマホイップ、いいなぁ…」
「…ルミヤ?」
「え?…あ、もちろんマホイップが可愛いなって意味だよ?カロス地方には進化前のマホミルも居ないから…ほんとだよ?」
「………。」
ムクちゃんの冷ややかな視線から逸らすようにテレビへ視線を戻すと、ポプラさんの対戦相手であるカブさんの方も切り札のポケモンを繰り出したようだった。
「ダイマックスポケモン同士がぶつかるガラル地方のポケモンバトルはやっぱり一味違いますね…!」
「ポプラさんのショートケーキみたいな見た目のマホイップも可愛いけど、淡いパステルカラーのチョコミントとかレモンも美味し…ううん、可愛くて捨て難いんだよね…!」
そんなポケモンバトルを観戦しながらの賑やかな朝食の時間は過ぎ、今日はせっかくだから家の周辺に居るポケモンでも探してみようかと考えていた所、ひとつの妙案が頭を過ぎった。
「そうだ、ムクちゃん?」
「…?」
「私の『お願い』…聞いてくれる? 後で部屋に来て欲しいのだけど…」
「っ…解った。約束だから、受け入れる…」
「ムク? 何を約束したのですか?」
「うるさい、兄は黙ってて。いま心の準備を整えてる」
面と向かってわざわざ言わないけどムクちゃん、そんな大袈裟なこと言ったらお兄さんに心配されそうだから程々にして欲しいかな?
―――…ドレッサーの鏡にはカロス地方で一番の美少女が映っていた。
ママ譲りの長くも手入れの行き届いた金髪、パパそっくりで柔和な目元の顔立ち。雪の結晶が本来は無色であるように、不純物の無さが透明感を醸し出す肌。
鏡で今日の調子を確かめる私の後ろで、ムクちゃんは少し困ったような表情を浮かべていた。
「ルミヤがやってって言ったからやるけど…あたしがやるよりもルミヤが自分で髪を整えた方が綺麗になると思う」
私がムクちゃんにバトルで勝った事で頼んだのは、ヘアコーデのお手伝いだった。
「綺麗とかじゃなくて、感想を聞かせて欲しいんだ。ほら、最近は髪を伸ばしてたからサイドテールに結ぶと結構ボリュームが出るでしょ? そこにリボンの着いた髪留めで結んで…サイドテールの上の部分を遊ばせるのがコツかな……はい完成っ!
ルミヤちゃんオリジナルヘアコーデの『メガカラマネロサイドテール』っ!」
鏡に映る桃色と若草色のリボンで彩られた、金髪のサイドテール。それは私がメガ進化したカラマネロを知った時からずっとこうしてお揃いにしようと決めていた髪型の雛形だった。
「でも、これで完成はまだちょっと華がないよね?」
「……そう?」
「だってここからサイドテールにアイロン掛けてクルクルってしたりとか、サイドテールのボリュームを減らして編み込めばお洒落な感じにもできるし。
リボンをサイドテールに巻くのも良いけど、サイドテール自体をほかの物で飾るのも可愛いと思わない?」
「…なんであたしに聞くの」
「え? それは勿論…」
私は席からクルリと立ち上がるとそのままムクちゃんの肩を捕まえてドレッサーの前に座らせる。
「自分で試すより楽だから?」
「なんで疑問形…!」
言葉にどこか怒りを滲ませるムクちゃんを笑顔で誤魔化しつつ、私はヘアアイロンを手に取る。ムクちゃんの髪は肩くらいの長さに見えるけど、髪をアイロンで真っ直ぐにすると案外長さがあるんだよね。
前々からムクちゃんはあの髪型でも可愛いと思ってたけれども、もっと色んな髪型を実際に試して見ないとね?
「………」
「………」
無言の時間が流れる。
でもそれは気まずさを覚えるようなものでは無かった。むしろ心地の良い、日常の延長線上の景色がそこには広がっているのだから。
「…ルミヤは、髪をいじるのが好きだよね」
「ママが仕事で色んな髪型をするからね。お洒落な髪型は真似してみたいって思うし…はいっ、お花の形に編み込んだちょっと大人なショートヘアの完成っ♪」
ムクちゃんの右耳の辺りに黒い花が咲いていて、彼女はそれを興味深そうに眺めていた。
「こうして見ると結構大掛かりだから、ポニーテールと合わせるにはゴテゴテしちゃいそうだよね…」
「結局ルミヤは何がしたいの?…普通に楽しんでるだけに見える」
「楽しんでる、かぁ…半分は本当にそうかもね?」
「…もう半分は?」
「その前に交代、今度はムクちゃんが私の髪をさっきのポニーテールで結んで?」
席を入れ替わり、ムクちゃんの手が私の髪に触れる。
自分で髪を結うよりも少しだけ不器用な手つきに身を委ねながら、私はムクちゃんに話を始めた。
「実はね、ムクちゃんにこのお願いをしたのは勇気が欲しかったからなんだ」
「勇気?」
「そう。私ね、ムクちゃんには前にも言ったけど…どうしてもZAロワイヤルで勝たなきゃいけないんだ」
「何故…?」
「ふふっ…だからね、私はZAロワイヤルで勝つために考え抜くし、カラマネロ達が最大限の力を発揮できるように努力する。
…でも、それでもどうにもならない時ってあるでしょ? そんな時にも諦めない為の勇気が欲しいの」
「…それでどうして、あたしに?」
私は鏡越しにムクちゃんを見つめ、その不思議がっている顔を見てにこりと笑ってこう言った。
「秘密っ♪」
「………よく分かんないけど、なんかズルい。」
「アハハっ、それはそうかも!…じゃあヒントだけあげる!
それはね、私の勇気の源を考えたときに思い浮かんだのが、ムクちゃんの顔だったから!」
「…えっ?」
ムクちゃんの頭に乗った、シャンデラのような帽子がボンと一瞬浮かび上がる。ムクちゃんは動揺が分かりやすいと言うか、意外と意地悪しがいのある反応するよね?
「待ってルミヤ、どういう意味?」
「これ以上のヒントは優し過ぎるから教えてあーげないっ♪
うん、丁寧な結び方でキレイに出来てるね。…それじゃあ今度は交代、だよね?」
「…!? それはさっき終わった筈…!」
「終わりなんて言ったつもりはないよ?」
心做しか表情の引き攣るムクちゃんをすかさず逃がさず顧みず。勇気を貰った後は私自身がZAロワイヤルでしっかり実力を出せるように英気を養っておかなきゃだからね?
ムクちゃんが普段しなさそうな髪型…お揃いのサイドテールも魅力的だけど、シニョンとかも似合いそうだよね。あ、いっそツインテールをメガシャンデラとお揃いにするなんてどうかな?
「…もう、ルミヤの好きにすればいい。」
鏡の中で諦めた表情をするムクちゃんを傍目に、私は甘美な勝利の美酒の味わいを愉しむのであった…―――
次回、ついに始動…―――
あ、それはそうと作者さんは来週ぐらいまで異次元ミアレ観光に行く予定なのでネタバレ対策も含めて一切感想返信しません。来週のお話も予約投稿してあるので特に問題ない筈です。
『ポケモン小説って何目的で読むのですか?』という作者さんが気になるだけで設置したアンケート
-
ポケモンが可愛い(等魅力)を求めて。
-
コレもZA作品なんだから熱いバトル!
-
ポケモンゲットのストーリー性
-
シンオウ神話のような設定が読みたくて
-
推し(人間)のあれそれ
-
なんとなく開いた作品がコレ
-
その他 ...