催眠ポケモンメガカラマネロとの理想的なカラマれ方 作:あいいろ ののめ
―――…朝のミアレは時おり霧に包まれる。
普段は至る時間や場所から人やポケモンの賑やかな声の聞こえてくる街だが、霧の早朝だけは心做しか静かと感じる。
「…ふう、徹夜でZAロワイヤルを戦い抜いた後だと…気を抜くとすぐに眠くなっちゃ…ふあぁあ……」
「カラ」
「…大丈夫、ご飯食べたらもう少し目も覚めると思うから。」
私は欠伸をしながらカフェ『スラローム』のテラスでメニューを開く。
最初から決めていたチョコタルトは決定として、お茶はハッサムティー、ダーダリンティー、ロズレイティー…この中ならロズレイティーかな?
「あとは、朝ご飯は何が良いかだよねぇ…」
テリーヌ…って気分じゃ無いし、パスタ…は無難な選択だけれど、せっかくお店に来たならの物を頼みたいよね? リゾット…うーん……。
「何にしますか?」
「あ…えーと。ロズレイティーにマーイーカスミパスタ、それとチョコタルトっ!!」
「すみません、お客様。チョコタルトは現在、品切れ中でして…」
「え…そんなぁ!? 私もカラマネロもこのカフェのチョコタルトを楽しみに来たのに…!」
「申し訳御座いません」
「……まあ、無いものは仕方無いよね。今日は諦めるとするよ…」
「任せて、それくらいお安い御用だし!」
「?」
私が声の聞こえた方を見ると、同年代…くらいに見える女の子が店の人と話していた。
「ありがとうタウニー、助かるよ。お陰でチョコタルトもなんとかなりそうだ」
「ん…!」
私は店員さんに注文を止めることを伝えて『チョコタルト』の文字が聴こえた方へと近付く。
「駅にはチョコタルトに必要なカカオと甘い蜜が届いてるんですね?」
「そうだよ、でも問題があったらしくてね…」
「その話、本当?」
お店の人と女の子の視線が同時にこっちを見る。
「あら、ルミヤちゃんじゃないか」
「知り合い?」
「ほら、そこのポスターにこの店のチョコタルトと一緒に写ってるだろ?」
二人が見た先のお気看板のポスターに映っていたのは、このお店のテラステーブルに乗ったチョコタルトと一緒に私が写った宣材写真。
けれど話が逸れるのは本意では無いので、反応もそこそこに私は話題を引き戻した。
「それよりも材料が駅から届けばチョコタルトの用意ができるって言うのは本当?」
「ああ、でも駅で問題が…」
「待ってて、今すぐ持ってくるから」
「ちょっと!?それはあたしが受けた依頼なんだし!」
背後から声が聞こえたのは気にせず、私はミアレ駅へと走り出す。こっちはZAロワイヤル明けで一刻も早く糖分を欲しているのだから、急がば急げという奴なのだ!!
―――…ミアレシティはカロス地方の中心である為に、駅からは地方の全域へと線路が伸びている。
確か5年ぐらい前にはリニアも開通していて、その交通の利便性は向上の一途を辿っていた。
『お客様にお知らせします。現在、駅のホームに野生のポケモンの群れが侵入したため、列車は全線運行を見合わせています。大変危険ですので、列車にご乗車しているお客様は列車の中から動かないようお願い申し上げます。繰り返します…』
(野生のポケモン…?)
「お嬢ちゃん危ないよ!駅は今野生のポケモンが飛び回っていて…」
「ヘルガー!!」
「ガルァッ!!」
駅員の静止をポケモンバトルで強引に突破し、旅行客の避難誘導に戻させながら走る。けど再び走り出した私の後ろからはまたもや声が響いていた。
「宣材写真の人っ!お願いだから待ってっ!…本当に危険なんだから!!」
(執拗い……!)
駅内のアナウンスが正しければこの先は野生のポケモンが襲ってくる。そんな場所を駆け抜けるのは危険と思い、仕方なく立ち止まって私は会話を試みた。
「…何? 見れば分かると思うけど、私急いでるの」
「アナウンスが聞こえてなかったの!?…この先は危険、野生ポケモンの群れが貨物列車を襲ってるんだし!」
「? アナウンスでは『貨物列車』が襲われてるなんて言って無かったけど?」
「……、あたしは頼まれてここに来たんだし。でもあなたは違うでしょ?」
「違うけど、あのお店のチョコタルトは美味しいからアレが食べられないのは困る」
「うーん…そっか、じゃああなたもこっち!着いてきて!」
着いて行く義理は無いけど、目的が同じなら取り敢えずは同行してもいいかな。邪魔だと感じてから別行動でも遅くないし。
「そこの二人、止まってください。駅に野生ポケモンが侵入してるため、現在立ち入りを制限しています」
「あたし達はクエーサー社から頼まれて来たんです!」
「クエーサーから…ああ、お待ちしてました。こっちです!」
クエーサー…今のミアレシティでホロと呼ばれる技術を活用している大手外資企業。その技術の活用はミアレシティだけに留まらない。
そのクエーサー社から頼まれたというのは駅員の言葉からも真実で間違いなさそうだけど…クエーサー社の関係者にしては若すぎるような?
(まあ、チョコタルトが食べられるならこの際何でもいいかな…)
「……!アレが駅に現れたポケモン!?」
私が見つけたのはけたたましい羽音を響かせて飛び回るスピアーの群れ。スピアーはどくばちポケモンであり、正直、見ているだけで背筋が伸びる思いだ。
同じはちポケモンのミツハニーに比べ、スピアーは腕が体長と同じ大きさの針を持っているのが特徴。図鑑によるとおしりの針をトドメに使うらしいけど…。
スピアーは狭い駅のホームの天井をものともせず何匹もの群れで飛び回り、時々警戒音を奏でてるのか牙同士をカチカチと軋ませる。
その中の一匹がこちらに気付くと、一気に肉迫して来た。
「っ行くよ!」
「ネロロロ…?」
「スピアッ!!」
「ロロ!?」
咄嗟に手癖で繰り出したカラマネロが驚いたように素早く触腕を波打たせ、スピアーの矛先が私の前に出たカラマネロに向き変わる。
…が、その次の瞬間。高速で飛び迫るスピアーとすれ違うようにカラマネロの触腕が鈍い光を放ち、スピアーを強打する。
スピアーは駅のホームに転がり、戦闘不能となっていた。
「すごい!指示もないのにあんな的確に技を!?」
「…ネロッ!」
「あれ、あなたのカラマネロ…ボールに戻っちゃったけど」
タウニーと呼ばれていた女の子は私のカラマネロがボールに戻る様子を見て、不思議そうに問い掛ける。私は手に持ったボールを見て、少し申し訳なく思いながら声をかけた。
「ごめんねカラマネロ? 咄嗟だったから繰り出しちゃったけど…むしタイプ苦手だもんね?」
器用で頭の良いカラマネロだけど、むしタイプのポケモンだけは四倍弱点で苦手。
咄嗟とは言え悪い事をしてしまったと思い、反省する。さっきのカラマネロの反応的にも、まさか繰り出されると思ってなかったように見えた。
「出てきて、ジバコイル」
「コイッ!!」
カラマネロの代わりに、スピアーのメイン技であるむしとどくに強いジバコイルを繰り出す。このホームの封鎖具合だとかなり大規模なスピアーの群れがいると思うけど…。
「いくよライボルト!!」
「ライボルッ!!」
「…!ジバコイル、リフレクターで護ってあげてっ!」
タウニーがポケモンを繰り出したのを見てすかさずジバコイルに守りを固めて貰う。
二人で動くならリフレクターは向こうのポケモンも守れるから、野生ポケモンの大群相手でも手数に押されづらくなる。
スピアーは物理攻撃が特徴的なポケモンなのでこのままジバコイルで相手してもいい…けども。
「大勢相手なら手に負えない数になる前に殲滅するべきだよね!…ジバコイル、ボルトチェンジ!!」
ジバコイルは正に重戦車とも呼ぶべき能力をしているのが特徴的だけど、ボルトチェンジなら重戦車のような火力と耐久を立てつつ、次に繋げられる!
…いまは隣に同じタイプのライボルトも居るしね?
ボルトチェンジを発動したジバコイルから飛び出した輪っか状の電気の塊がスピアーを迎撃しつつ、そのままジバコイルがモンスターボールの中に戻ってくる。
「一気に殲滅するよっ!ヘルガー!!わるだくみで火力を補強!!そしてかえんほうしゃで焼き払って!!」
高い機動力とかえんほうしゃの射程はスピアーの群れを薙ぎ払い、何匹ものスピアーを巻き込んで倒す。
隣を見るとライボルトもスピアーを倒していた。ライボルトはでんきタイプだけどほのお技を多く覚えるのが特徴的なポケモンだもんね、間違いなくこの状況では心強い味方だ!
「ヘルガー!このまま駅で迷惑を掛けてるスピアーを全滅させるよ!」
スピアーは列車の止まるホームに近付くほど増えている、数は多いけど二人居れば充分対応できる!
(それにこのペースなら思ったより早く終わるかな?)
私の視界には既に列車が映っていた、そこに集まるスピアーの群れも。けれど流石にちょぉ〜っと数が多いかな?
「だったらこっち!ジバコイル、エレキネットを撒いて牽制!」
エレキネットなら多数にも打点があるし、何よりスピアーの速さを殺すことが出来る。ボルトチェンジも入れてるから火力枠としてはちょっと隙が出来るけど…ジバコイルの火力なら充分相手に負担を与えられる。
「ヘルガーはかえんほうしゃでそのまま戦線を上げてくよ、ジバコイルは三時方向の撃ち漏らしたスピアーにボルトチェンジ!
…出てきてヤミカラス、追い風で一気に畳み掛けるよ!」
程なくして、駅のホームが静かになる。ヘルガーと一緒に周囲を見渡すけどスピアーの姿は無いし、羽音も聞こえなかった。
「ふうっ!これで終わりかなっ?」
スピアーの集まっていた貨物列車も静かになったのを見てそう呟く、余裕からタウニーや案内してくれた駅員さんの方を見やるけど向こうも落ち着いた様子だった。
タウニーはこちらの視線に気付くと、歩いてこっちに近付いてきた。
「はい!」
「?」
タウニーはその拳を突き出し、こちらに向ける。そして困惑する私が何かを言うより先に、駅のホームに響く声量でこう言った。
「グータッチだし!あたし達、即興コンビネーションにしてはいい動きだったよね!」
(そうかな…? いや、お互いに動きを制限されずに戦えたなら上出来…?)
私がさっきの戦闘の改良や反省点を考える内にもタウニーはグッと突き出した拳をこっちに押し出してきて、私は半ば押し切られる形でグータッチを交わす。
「それにしてもなんでスピアーは貨物列車を襲ったんだろう?」
「さあ? でも積荷は確認しないと。駅員さん、貨物列車のドアを開けて」
貨物列車は堅牢な鉄の扉をしているけど、スピアーに襲われたせいで大きな穴が空いている。駅員さんが貨物列車の扉を開き、私は二人の後に続いて列車を覗き込むと…列車内には甘い匂いが漂っていた。
「…なんか、甘い香りがするし」
(この香り、チョコタルトに使ってる蜂蜜かも…この香りがスピアー達を集めちゃったのかな…)
「ああ、貨物の拘束が不完全で列車の振動で蓋が空いてしまったようです…」
駅員さんの困ったような声色を話半分に聞きつつ、スピアーに襲撃された甘いミツに外傷がないか確かめる……大丈夫かな、流石にスピアーが味見しちゃったかもしれない蜂蜜はチョコタルトに使えない? 元々ミツハニーとかアブリボンの集めた甘いミツだし大丈夫…? でもお店で出すなら気にするよねぇ…?
「ルミヤ、上!」
「へ?」
上、貨物列車の天井。私が見上げた目の前が何かを捉えかけて…真っ暗になる。
「ひぃぇゃぁあぁぁあああっ!!?」
「ルミヤ!?」
「きゅぅう〜〜〜………――――――
―――……目が覚めたか。」
おじいさんのような声が聞こえた。
老人特有のしゃがれた、しかし優しい声色。
「…寝てた?…違う、チョコタルトが食べたくて駅でスピアーを…あれ? じゃあなんでベッドで寝て…」
「タウニーが気を失ったキミを背負って来たのだ」
「…じゃあ、貴方は誰…ん?」
…目を開いた先に映ったのはホテルのような一室と、部屋の椅子に座る蜘蛛のように長い脚を持った老人。
いや、長いのは脚だけではない。長い手足は服の合うサイズが無かったのか別々の物をツギハギにしているのが一目瞭然で、白髪もその高い背丈の腰辺りまで伸びている。
背丈こそ高いが表情は柔和で、朗らかな御老人という表現が似合う人物を認識すると、私は声をあげた。
「足長おじさん……?」
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