催眠ポケモンメガカラマネロとの理想的なカラマれ方   作:あいいろ ののめ

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第三章『リバーシブル・トリロジー』
phase21『表裏』


 

―――…ミアレって、露店が多いんだよね。

 

 私がよくお菓子の材料を買うきのみ屋さんがそうだし、カフェもテラス席が多め。綺麗に舗装された石材タイルの床は見た目が綺麗だし、ヒールで歩くと音が心地良いんだよね。

 

「ふあぁあ…」

 

「ルミヤ眠いの?」

 

「…少しだけ。昨晩ZAロワイヤルが忙しかったりして…それに今日は太陽がポカポカするし…」

 

 そんな私たちは現在、絶賛買い出し中。

 

「それにしてもタウニーは何をしてるんですかね。ホテルZの買い出しを人に任せておいて」

 

「人助けだってさ」

 

「あはは…相変わらずだねえ」

 

「それで何を買うんですか? カレーに使うスパイスならホテルZにもありますが…」

 

「あ、これは良いね!」

 

 私は丸くて桃色のカイスのみを手に取ると、後ろを歩いていたピュールくんとデウロちゃんに見せた。

 

「見て見てこのカイスのみ!すごく良いと思わない!?」

 

「…普通のカイスのみじゃない?」

 

「…普通のカイスのみに見えますが」

 

 デウロちゃんとピュールくんの二人が顔を合わせてるのを見て、私はいやいやと首を横に振る。

 

「いやいや、カイスのみは平均で25cm、大きいものだと50cmを超える最大サイズのきのみなんだよね。

 でもこのカイスのみのサイズは約22.5…ううん23cmだね!実の色合いから見ても、敢えて小ぶりな状態で育て上げた至高の一品と見た!」

 

「す…すごい!…少し見ただけでサイズまで解るの!?」

 

「…デウロさん、勢いに押されて言ってますけどルミヤが言う事が正しいとは限りませんよ。」

 

「だったらメジャーで測ってみよっか…ほら!ぴったり23…では無いけど約22.9…いや8ぐらい?」

 

「ルミヤには0.2の差がジャストじゃないんだねえ…」

 

「…見事ですね。ボクも目測でアタリをつける事もありますが、道具無しでここまで正確にやれる自信はありません」

 

(普段からきのみを見てるのもあるけど、モデルは色彩感覚とサイズ感を見極めるのもひとつの『審美眼』だからね)

 

「それじゃあカイスのみは三玉買っていこうかな、あとはクラボのみも幾つか」

 

「そんなに大きなきのみを三つも、なにに使うつもり?」

 

 デウロちゃんの質問に私は人差し指を口にあて、人にみせる為のウインクを挟みつつ猫なで声でこう言った。

 

「ヒミツ♪…だってそれをいま教えちゃうのはちょっと勿体ないから、だからお祝いのお料理、楽しみにしててくれる?」

 

「もっちろんだよ!ね、ピュール!」

 

「……まあ、はい。」

 

「ピュールはこう言ってるけど、意外と楽しみにしてるよね」

 

「ふふっ、そうなの? だったら満足して貰えるように腕を振るわないとだね?」

 

 私は力こぶを作って二人にやる気を見せつつ、お祝いに使う材料をカートに放り込んでいく。料理の流れを頭の中に思い浮かべつつ材料の確認をしていると、ひとつ足りない物があった。

 

「二人ともアレ見てない?アレって言うのは…ホイップクリーム!」

 

「ホイップクリーム?」

 

「不思議ではありません、カイスのみとホイップクリームの組み合わせは王道ですから」

 

「そう!ミアレだとカフェでパフェにして出てくるようなきのみなんだよね〜」

 

「パフェかあ…なんだかおなか空いてきちゃった」

 

「デウロさん、さっき朝ごはん食べたばかりですよね?」

 

「だってえ…」

 

 ピュールくんとデウロちゃんの仲の良さそうな会話にクスリとしつつ、シナモンをカゴに入れる。スパイスの在庫はあるって言ってたけど、普通にカレーを作ると中々シナモンは使わないからね。

 もし余ったら…お菓子作りに使えば良いよね、シナモンなんて甘くて紅茶に入れても美味しいんだからっ。

 

「よし、こんなところかな」

 

「何してるんです?」

 

 私がペンを片手にレシートを眺めていると、ピュールくんが不思議そうに問い掛けてくる。

 

「ああ、もう少し待っててくれる?…いま買ったものに関するメモを書き加えてるところ。例えばコレは特売品だから賞味期限が近いとか、後でって思っているとついつい忘れちゃうから」

 

「へえ、ルミヤってマメだねえ…ね、ピュール?」

 

「デウロさん…何か含みのある言い方ですね。構いませんけど」

 

「はい!これで終わりっ!…おまたせ、二人とも、それじゃあ帰ろっか?」

 

 買い物の荷物を三人で分けて持つ帰り道、私は二人に感謝の言葉を伝えながら大通りを歩いていた。…本当はもし買いすぎても、カラマネロやジバコイルに手伝って貰うんだけどね。

 

「二人とも手伝ってくれてありがとうね、結構荷物が増えちゃったから一緒に来てくれて助かったよ」

 

「買い物リストにないものもいくつか買っちゃったもんねえ」

 

「…途中でタウニーから追加の注文もありましたからね。忘れていたとは言え、ルミヤが一人で買い出しに出てたらどうするつもりだったんでしょうか」

 

「結果的には良かったよね」

 

「何がです?」

 

 ピュールくんが不思議そうに聞いて来た言葉に、頭のなかで思い浮かべていた言葉を口にする。

 

「私はMZ団にどんな人が居るかも知らなかったから。仲良くなれそうで良かったなって」

 

「新メンバーが突然現れたのはボクたちも同じですけどね」

 

 そんなことを話している内に、私たちはホテルZに近付く。そんなときにふと、ピュールくんが私を呼び止めた。

 

「ルミヤ、ホテルはそっちじゃ無いですよ」

 

「え…こっちの方が近道だよね?」

 

「…そうじゃなくて。」

 

 ピュールくんは荷物を抱えたままこちらに一歩近付き、まるで内緒話をするように小声で喋る。

 

「アンタが行こうとする路地の先、同じようなスーツ姿の男が何人か居るでしょう」

 

「うん、そうだね?」

 

「アレはミアレでは有名なマフィアです。この街だとサビ組やLaF(ラフ)に並ぶ規模の組織ミルファミリア…関わらないに越したことはないので近道は諦めましょう」

 

「あー…それもそうだね?」

 

 私はピュールくんの助言を聞き入れて仕方なく近道を諦めると、ピュールくんの言葉に従ってミアレの大通り沿いにホテルZに辿り着く。

 ホテルのカウンターに抱えていた荷物を置いたピュールくんは、小さく溜め息を吐きながらこういった。

 

「…今度からは気をつけてくださいね。彼らも何か理由が無い限りわざわざ一般人に危害を加える事はしないでしょうが、それでも安易に近付くのはオススメできません」

 

「ピュールくん、私ってそんなに何回も注意しないと危ないことしそうに見える?」

 

「…ピュールはルミヤが心配なんだよねえ、でもあたしも気持ちはわかるかも。ルミヤは背が高くて大人びてて一見しっかり者に見えるけど、見てないと不安なんだよねえ」

 

「そうかな…?」

 

「うんうん、ルミヤって良い子過ぎるからかなあ。あなたもタウニーに巻き込まれてMZ団に入った上に、今日はホテルZに泊まってる訳でもないのに買い出しまでしてくれたんでしょ?

…なんだか不安になるくらい素直すぎて、騙されちゃいそうだよねえ。もしかしてMZ団に入るような『訳』があったり?」

 

「……」

 

「はあ…少し言い過ぎですよデウロさん。例えどんな理由だったとしても彼女はMZ団の仲間ですし、ボクたちは少なからずワケありで、その理由を無理矢理に突き止めようとするべきじゃありません」

 

「い、良いんだよピュールくん? そんなに強く言わなくたって」

 

 ピュールくんの言葉にデウロちゃんは小さく舌を出して『ごめんね』と言い、それから二人はカレーを楽しみにしてると言って去っていった。

 

「それじゃあ、みんながお腹を空かせて帰ってくるまでにお昼ご飯と最っ高のカレーを用意しなきゃだねっ!

 カラマネロ、今日は量も多い力仕事になるから手伝って……―――

 

 

 

 

 

 

―――…なんですか、コレは?」

 

 それは夕食時のホテルZに響いた、努めて冷静を取り持とうとする声だった。

 

「どうして質問したのかな、ピュールくん?…見ての通りカレーだよ?」

 

「そういう問題じゃありません」

 

「うわあ、まるで南国アローラ気分だねえ!すごいねえ!」

 

「凄いっていうか…『壮観』…かなぁ…料理を表す言葉としてはどうなのかと思うけど」

 

「これがルミヤのカレー……!!?」

 

 それぞれが味わい、感想を口にした所で、心持ちは星付きシェフになって口を開いた。

 

「そう、これがルミヤ特製!とびっきりの『甘辛フルーツホイップカレー』!!!!」

 

 私は自身の手元にある自分のカレーを誇らしげに見せる。

 

―――自画自賛…という訳じゃないけども。それはまさにカレーとは一線を画した料理だった。

 

「この器…カイスのみの外側ですよね」

 

「そうだよ!甘辛いカレールゥの出来も当然だけど、この料理の見所はそれだけじゃない。カレーの器そのものが巨大なきのみなんだっ!」

 

 桃色と黄緑の混じった半分に割ったカイスのみがそのまま半球状の器になっているのだ。

 その中に注がれたカレーのルゥは甘いカイスのみと、ちょっと辛いクラボのみによってきのみ同士の調和を取っていて、あまいミツがルゥときのみをまろやかな風味で繋いでいる。

 

「どうピュールくん?…お祝いにはこれ以上ないメニューでしょ?」

 

「…―――せん」

 

「へ?」

 

「認められませんよこんなのっ!」

 

 私がその呟くような言葉に耳を澄ませた次の瞬間、鼓膜を揺らして有り余るピュールの怒声が狭い室内に響く。私はおずおずとその意図を問い掛けると、返ってきたのはまさにマシンガントークとも呼ぶべき言葉の洪水だった。

 

「美味しくなかった…?」

 

「いいえ!美味しかったですが『とびっきりのカレー』と言われてこれが出てきたら『痴れ者』と怒鳴られても文句は言えませんよ!!」

 

「なぁッ!?」

 

「いいですか、まずボクが言いたいのはフォーマルなカレーにはカレーの良さが詰まっていることです。確かにこのカレールーはきのみとよく合う味付けで感心しますが、カレーとして評価するにはあまりにも元のカレーとは味わいが違……」

 

「これがルミヤのカレー…悔しいけど評価するしか無いし。見た目のインパクト、味、たしかにとびっきりのカレーと言うだけはあるし……」

 

「あはは、今日もMZ団は賑やかだね…」

 

「キョウヤはホイップクリームをカレーに混ぜてみた?…このクリーム、意外と甘さが控えめでルゥに混ぜるとこれがまた美味しいんだよねえ」

 

「へぇ、それじゃあデウロの助言に従ってオレも試してみようかな」

 

 こうして、また賑やかな一日が瞬く内に過ぎて行ったのでした…―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――…と、本来そう綴るべき物語にはもう一つの側面があった。

 

「っお疲れ様です!」

 

「…おいてめぇら頭垂れろ!姐御(・・)の御通りだぁ!!」

 

 路地を占拠する若者達、それはいまから数刻ほど前に『ミルファミリア』と呼ばれた集団だった。

 それはこのミアレに巣食う半端者が集まる烏合の衆であり、同じミアレのアウトローの中でもサビ組とは違ってごく一部の中枢を除けば、浮浪者と大した差もない蜘蛛の子のような存在……少し前までは、そのはずだった。

 

「はいこれ」

 

「これはなんですか姐御…レシート?」

 

「裏面だ。明日、予告無しでミアレの警察が調査を行うと書いてある。ミアレシティの西門は警備が多くなるから輸送路を用紙の通りにズラすよう指示を行え。

…本来は昼間の内にレシートだけ渡すつもりだったのだけど、少々想定外に見舞われた」

 

「そうでしたか。流石は最年少でミルファミリアの玉座に着いたルミ…」

 

「世辞は要らん。そもそもそのような動向をこちらが認識できているのも、元を正せばミアレの治安悪化が原因なのだから」

 

「お世辞ではありません。元々このミルファミリアは宇宙の天の川(ミルキーウェイ)のように無数の星々を雑然とかき集めた、サビ組とは同じ無法者ながら全く形式の異なる集団…そこに秩序をもたらしたのは、他ならぬ貴方様なのですから―――

 

 





2/9

作品タグ:『オリジナルメガシンカ』を追加しました。

 理由は…と言うより元々メガカラマネロの特性が明言されていない点、メガカラマネロを使用するトレーナーが存在する点、などを考慮した解決策として別の姿のメガカラマネロを出そうかという事は考えていました。
 ですが、それはメガカラマネロに限った話ではないのであまり深く考えるべきでは無かったのかもしれませんね?

…とはいえ、以前から仄めかしていながらタグを増やした理由は…何はともあれ次回をお楽しみにっ!

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