催眠ポケモンメガカラマネロとの理想的なカラマれ方   作:あいいろ ののめ

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phase22『怪奇』

―――…それはある種の怪奇だった。

 

 ミアレシティは五年前の大事件により人口流出が問題となっていたが、それは連鎖的な問題を引き起こすこととなる。

 

 その問題とは、治安の悪化。

 

 その五年前の大事件の被害によって家や家族を失った人間がミアレシティに集まり、集団で盗みを働くといった治安の悪化が確認された。

 実際に起きた問題はそれだけでは無かったのだが…話の焦点はそこでは無い。

 

 暫くして、ミアレシティの溢れ者とも呼ぶべき人々に目を付けた人間が現れた。

 ひとつはサビ組。街の溢れ者を纏めあげた彼らは仁義とも呼ぶべき法をもたらした、無法者たちの中にも通すべき義理人情が存在するのだと。

 そしてミルキーウェイ・ファミリア。彼らは街の溢れ者を利用する事にした、組織の足のつくような情報は与えず、影を縫うように街に潜む無法者の中でも特に伝聞の悪い無法者。

 そして最後のひとつがLaFだが…今回重要なのはミルファミリアなので割愛しよう。

 

 

 

 ミルファミリアは先に書いた通り、街に溢れる困窮した人の弱味につけ込んで利用した。それは街の住人からはミアレギャングとも呼ばれたが、彼らを使うミルファミリアにとっては体の良い『雑用』…いわばモトトカゲの尻尾だった。

 

 ミルファミリアのボスの人格を一言で表せば…組織の噂に違わず極悪非道で、欲深く、そして堪え性が無い。

…ひと言では済まなかったが、マフィアらしい人物だと言えるかもしれない。

 

 ただ、彼の欲望は留まる所を知らなかった。

 彼の独裁の魔の手はやがて、ミアレギャングの外側まで伸び始めたのだ。彼がそんな大胆な行動に出たにも関わらずミアレシティにも存在する警察が彼を捕まえるに至らなかったのはひとえに、モトトカゲの尻尾切りと呼んだ彼の臆病で姑息な立ち回りが根本に存在したから。

 

 そうして警察が指を咥えて状況が好転するのをただこまねいている間にも、ミアレシティという広大で肥沃な海はミルファミリアというたった一滴の墨汁が海の水をどす黒く濁らせていく。

 

 

 

 今日よりも悪くなる明日が訪れつつある日々が現実になろうとしている、そう思われた中で異変は生じた。

 

『ミアレギャングの集団が何者かに襲われた』

 

 ミルファミリアのボスは当初、その報告を歯牙にも掛けなかった。

 しかしその日を境にミルファミリアが雑務に用いるミアレギャングへの襲撃は収まる所か増していき、謎の怪奇事件として噂となる。それも襲撃はミルファミリアから仕事を請け負ったギャングだけが的確に狙われており、最初は内通者を通じたサビ組やLaFのような敵対組織による仕業かと思われたが、どうにも犯行規模は組織的犯行には思えない。

 かと言って単独犯がミアレシティでも有数のギャングに手を出すのを手伝うような内通者が存在するとも考えられない。

 そもそも内通者は本当に存在するのか、あるいは別の所から情報が漏れているのか。

 

 目的も分からない謎の襲撃者の噂がミアレギャングの中でも周知され始めた頃、襲われたミアレギャングの懐にこのようなメッセージカードが入っていた。

 

『これ以上ミアレシティで蛮行を働き続けるのであれば、こちらも相応の手段で対抗する』

 

 まるで定規で線が引かれたような、ある種猟奇的にも見える文字。それは筆者の文字の癖の判別が付かないように行われた、まさに立つ鳥跡を濁さずとも言うべき計画的犯行だった。

 実はその前にも同様のメッセージは送り付けられていたが、当初のミルファミリアのボスは報告をくだらないの一言で突っぱねたのだ。

 

 しかし今度のボスは激昂した。元々ミアレギャングを使って様々な悪事を働いていた彼はその手足を封じられているような状況だったのだ。

 もちろんそれは組織規模からすればほんの指先一、二本が不自由となるような些細なレベルではあったが…それでも組織の『威厳』に関わる。

 

 何故なら組織というものはある程度の威厳を持たなければ成立しない物だから。

 下手に下と見られれば、同業他社であるサビ組のような無法者の横行を許すこととなる。実際、驚異となる存在が現れたことで従順な狗のはずのミアレギャングはミルファミリアに対して強い不信感を抱いていた。

 

 そんな謎の襲撃者を問題として見たのは、ミルファミリアのボスやミアレギャングだけでは無かった。

 中でもより一層の反応を見せたのはミルファミリア幹部の一人である、ラクトゥカ。

 現状の不信感や襲撃だけならまだ被害は軽微だが、ミアレギャングの中でミルファミリアの仕事を忌避するようになると一気に支障が出始めるようになる。ラクトゥカはそれこそが襲撃の目的だとアタリをつけた。

 

 ボスはラクトゥカのまるで分かった様な陳言を鬱陶しく思いつつも、彼に襲撃者の処分を命令する―――

 

 

 

 

 

 

 

 

―――命を受けたラクトゥカはミアレギャングを撒き餌として引き連れ、まるで深海のランターンが光で獲物を誘き寄せるようにマーイーカが食いつくのを待った。

 そしてある日、遂にそれは現れた。

 

「!!…引きなさい!」

 

「!?」

 

「エレキネットによる遠距離からの狙撃!方角は…」

 

 茶色のフード付きのコートに全身を隠した謎の襲撃者と、ジバコイル。ラクトゥカは引き連れた手下に向かってすぐさまこう声をあげた。

 

「今すぐ道を戻り、応援を!」

 

「ラクトゥカ様、後ろからもポケモンが来ています!」

 

「では強引に突破するしかありませんね…行きなさいゴロンダ!かみくだく!」

 

 襲撃者にゴロンダの牙が触れようとする瞬間、襲撃者の懐からカラマネロが現れ、丸い防壁のようなもので護られる。

 

「メガシンカ…!ミアレギャングを蹴散らすには充分な根拠…!」

 

 ラクトゥカが他人事のように感心する目の前で姿を現したそのポケモンは間違いようが無いメガカラマネロ。

 しかしその姿は既存のメガカラマネロとは全く違っていた。体色は体内にイカスミが充満したように黒く、腕の先は毒々しいピンクに光っており…そして何よりも。

 

「マーイーカ…?」

 

 黒いメガカラマネロの傍には、その進化前のポケモンであるマーイーカのような存在が浮いている。

 二匹ポケモンがいた訳では無い、間違いなくメガシンカによってどこからかマーイーカが現れた(・・・)のだ。

 

「未確認のメガシンカポケモン…!これは簡単には行きそうもありませんね…」

 

「ラクトゥカ様!わたしも手伝います、行ってドクロッグ!!」

 

 ラクトゥカ達のゴロンダとドクロッグに対するのは、ジバコイルと黒いメガカラマネロ。先に状況判断を終えて指示を繰り出したのは、謎の襲撃者のノイズ混じりな声だった。

 

「ゴロンダを狙え、馬鹿力だ!」

 

「ゴロンダ、インファイトで対抗してください!」

 

 初速は殆ど同等。メガカラマネロとゴロンダの黒い腕がお互いを殆ど同時に捉え、乱打戦になるよりも先にお互いの身体が後ろへと吹き飛んだ。

 メガカラマネロの馬鹿力の余力は吹き飛んだ後にも地面のコンクリートを削り、ゴロンダは打ち付けられた壁に亀裂が入る。

 お互いの攻撃力の高さに微かな隙の生まれた瞬間、それを許さない声が響いた。

 

「ドクロッグ!」

 

「…!!」

 

 短い言葉で飛び掛るドクロッグにいち早く気付いたカラマネロの反対の腕が怪しく輝き、その接近を拒むように攻撃を放つ。

 

「…しっとのほのお!」

 

「ッ!?」

 

 しかしカラマネロの一撃をドクロッグは意にも介さず突き抜けて攻撃を放って来た。カラマネロのタイプ一致のエスパー技であるサイコカッターを真正面から受けたにも関わらず。

 その違和感に襲撃者は即座に機械混じりの声を張り上げた。

 

「その化けの皮を剥いでやれジバコイル、エレキネット!」

 

 ドクロッグの攻撃を貰いつつもカラマネロはその触手を器用に使ってエレキネットの飛んでくる方向へとドクロッグを投げ飛ばす。

 

「…!!」

 

 空を飛ぶ複数の電撃の走る網に囚われるゴロンダとドクロッグだったが、そのドクロッグの手足に絡まるエレキネットはドクロッグの体を貫通(・・)していた。

 

「!やはりゾロアークの幻影…!」

 

 ゾロアークはその特性で別の姿に化けるせいで巻き付いたエレキネットは、ドクロッグの身体を貫いているように見えていたのだ。

 襲撃者はまんまとそれに騙され、しっとのほのおを受けたメガカラマネロはやけど状態になっていた。

 

「素晴らしい働きです。想定通り相手をやけど状態にできたことを考えれば、エレキネットは些細な問題…」

 

「ですねラクトゥカ様、現場の被害から予想付けていたカラマネロであれば…!ゾロアーク、そのままやっちゃって!!」

 

「ゴロンダ、カバーに回りなさい!ゾロアークは遠くからでも攻撃出来る分、あなたがカラマネロを抑える役に回るのです!」

 

 ラクトゥカは現場の被害状況から、推測される通りに相手がカラマネロを繰り出すと予想を立てていた。

 目論見通りの動きによってゾロアークはやけど状態にする嫉妬の炎か、四倍弱点のとんぼ返りをその高い素早さから選択するつもりだった。

 

 そしてトレーナーの詳細な指示が入るよりも早く、ゾロアークの口から再び火の粉が上がる。

 

「…!」

 

 そんな一瞬の中で謎の襲撃者がその指をピシリとローブの袖から立てたと思ったその時、酷く鈍い音が路地に響く。

 それはゾロアークと呼ばれたばけぎつねポケモンがビルの屋上近くまで打ち上げられた際に響き渡った打撃音であり、つまりはゴロンダの対応出来ないような速度で真横をすり抜けて一気に肉薄したという紛れもない事実だった。

 

「速い…!? おかしい、幾らエレキネットを喰らって居たとはいえ、それでもこんな…!」

 

「…!!」

 

「不味いゴロンダ、躱しなさ…」

 

 ラクトゥカの指示が終わるよりも先に、ジバコイルから放たれる10万ボルトが馬鹿力とインファイトで弱るゴロンダへと命中する。

 

「ッ!?」

 

 その瞬間にラクトゥカは、妙な光を見た。

 光明という意味では無い。ジバコイルがひとりでに技を繰り出したと思われた瞬間、襲撃者の頭上が不意に光を放ったように見えたのだ。

 

(まさか…あのマーイーカのような生き物がトレーナーの思考を先読んで指示しているのか!?)

 

「…しかしこちらには秘策がある!行きなさい…バンギラス!!そしてメガシンカ…!!」

 

 ラクトゥカの言う秘策とは、小さな怪獣とも形容すべきポケモンだった。

 その体長はたった2m程だがメガシンカをしなくとも現れるだけで周囲に砂嵐を巻き起こし、住処の為に山ひとつ崩すと言われる、ポケモンの中でも一、二を争う凶悪さを兼ね備えたポケモン。

 それがメガシンカを行えば、どれだけの力を発揮するかは最早未知数だと言って過言では無い。

 

 メガシンカの前から凶悪さに溢れていた背中はメガシンカによって剣山のような幾つもの棘が現れており、よろいポケモンと呼ばれる甲殻は生半可な攻撃ではそうそう貫けない事が見た目だけでも伝わる。

 

「カラマネロ、馬鹿力だ…!」

 

「バンギラス、守りなさい!」

 

 そんなメガシンカ同士の戦いにおいて、最初に選ばれた選択肢は両者のパワフルさに反して護りの一手だった。しかしそれは決して膠着を意味するものでは無い。何故なら…

 

「…カラマネロ!」

 

「火傷を負った身に砂嵐はよく滲みるでしょう。それにこれだけ引きつければ次の攻撃は躱せまい!バンギラス、ストーンエッジでトドメを刺すのです!」

 

 いわタイプの高威力の技ストーンエッジはメガカラマネロが再び馬鹿力を発動するよりも早く弾力性に優れた胴を強打する。

 

「…っ?…!?」

 

 しかし黒いメガカラマネロは未だそこに立っていた。

 ストーンエッジは間違いなく馬鹿力を繰り出した直後のカラマネロを撃ち抜き、インファイトに嫉妬の炎まで受けている。火傷に砂嵐のスリップダメージだって少なくない。

 

 

―――有り得ない、何かがおかしい。

 

 

 ラクトゥカの違和感はそれだけでは無かった。

 ゴロンダを繰り出した時、その瞬間は間違いなくカラマネロもそう変わらない速度で動いていた。なのにゴロンダに素早さで勝る筈のメガバンギラスが遅れを取っている。

 その上に物理と特殊攻撃のどちらにも強い異常な耐久性…そこまでラクトゥカの思考が巡った時、ひとつの推測が頭に浮かんだ瞬間…

 

(まさか…!?あのメガシンカの強さの核はカラマネロでは無い…!!間違いな…)

 

 ラクトゥカの類い稀な早さの思考が現実に追い付こうとした瞬間、既にバンギラスの腹部にカラマネロのしなるような遠心力を加えた一撃が沈み込んでいた。

 よろいポケモンとまで呼ばれる厚い岩のような装甲を持った巨体が、砂城のように崩れる。

 

 

 ラクトゥカにとって、これは怪奇以外の何物でもなかった―――

 

 

 




 長くなったのでまた次回、黒いメガカラマネロの秘密については次回とき明かされる解決編のご予定なので、良かったらどんなメガカラマネロなのか予想、想像してみてください。
…あでも感想とかにこうだと思う!って言うのはナシですよ? これから読みに来る楽しみにしてる読者さんだっていらっしゃると思うので。

 では今一度、また次回っ!

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