催眠ポケモンメガカラマネロとの理想的なカラマれ方   作:あいいろ ののめ

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phase23『掌握』

――…ミルファミリアの幹部ラクトゥカが謎の襲撃者との交戦を行った同日深夜。

 ミルファミリアアジト内でボスを前にして、このような声が響き渡った。

 

「っボ、ボスッ!急ぎ耳に入れたい情報が…!」

 

「知るか!後にしろ、見ての通り儂ゃ忙しいんじゃ!」

 

「それがそうもいかず、今すぐにでも通達しなければ内容で…幹部のラクトゥカ様が…」

 

「ラクトゥカぁ? ラクトゥカならついさっきも…」

 

「ラっラクトゥカ様が…!『サビ組に寝返った』との情報が…!!」

 

「なにィ!?」

 

 ミルファミリアのボスの裏返った驚愕の声に場はしずまり返ったかと思われた、そんな中でコツンと靴底が豪勢な石床を叩く音が響く。

 

「悪いが土足で邪魔させて貰うぞ」

 

「誰だテメェ!?」

 

「お前がミルファミリアのボスか? 聴いていた人相とも合致するが…どうにも威厳が感じられないな。アレで本当に合っているのか?」

 

 ミルファミリアのボスの前に現れたのは、長い金髪の女だった。

 黒に紫のラインが入った制服を着込んでおり、顔立ちの幼さに反してすらりと伸びた脚をタイツが包んでいる。

 その黄金色の瞳が一瞬でミルファミリアのボスから興味を失った先には、ラクトゥカと呼ばれた男が立っていた。

 

「合っています、第一この時間は警備が薄いと再三申し上げた筈。隣に居る幹部諸共、さっさと終わらせますよ」

 

「っま待てラクトゥカ!お前、ミルファミリアのボスに反旗を翻すことがどれだけの問題になるか解ってるのか!?」

 

 ラクトゥカは小さく溜め息を吐き、それから敢えて説明するような口調でこう語った。

 

「ボス、今回の件はミルファミリアにとっての分水嶺だったのです。

 今は辛うじてミルファミリアの権威でミアレギャング達に首輪を繋いでいますが、それは決して長続きする代物じゃ無い。

 解りますか?…飴と鞭はうまく使い分けてこそ意味を持つ、そして大抵の人間とはそこまで辛抱強いものでも無いのですよ。

…『辛抱強さ』は個人の資質として見るべき情報であり、組織の性質としては全く好ましいものでは無い。」

 

「何が言いたい、ラクトゥカぁ!?」

 

「ペット達には『新しい首輪』が相応しい、そういう意味だ。そうだろうラクトゥカ?」

 

「まあ…言葉を解釈すればそういう意味にもなります」

 

「隣のオメェのその服…ラクトゥカはやっぱりサビ組に付いたってのかッ!!」

 

 黒い衣服の細部に蛍光色な紫のラインが映える少女の色使い、それはミアレでサビ組と呼ばれる集団が好んで着用する衣装の特徴とよく似ていた。

 少女はそれを知ってか知らずか、ニヤリと笑ってモンスターボールを構える。

 

「さあな?…いくぞカラマネロッ!お前の真の力を見せてやれ…メガシンカだッ!!」

 

 カラマネロが飛び出した空のボールをキャッチすると反対の手でパチリとフィンガースナップを鳴らし、その宇宙人の姿にも見紛うカラマネロが輝きと共にメガシンカ特有のバリアのような球体に包まれる。

 その輝きが収まり現れるのは…色鮮やかな蛍光色の輝きが特徴的なカラマネロ、では無く。

 

 少女のように黒い全身と、紫色に輝く両腕を携えた漆黒のカラマネロ。そして隣にはやはり、進化前のマーイーカのようなものも浮かんでいた。

 

「ええい!行ってこいボスゴドラ!!」

 

「…行きますよバンギラス。」

 

「アブソル、テメェもだ!ボスを守れや!」

 

 少女に続いてその場に残るミルファミリアのそれぞれがポケモンを繰り出し、その懐に忍ばせたキーストーンを使ってポケモンをメガシンカさせる。

 それを見て、一番に声をあげたのは襲撃者の少女だった。

 

「…壮観だなッ!!やはりこういう景色を見てこそダブルバトルのしがいがあると言うもの!」

 

「テンション上がってる場合ですか。バンギラスの砂嵐は敵味方関係なくダメージを与えるのですからさっさと終わらせますよ」

 

「させるかよ!メガアブソル、シザークロスでカラマネロの首掻っ切ったれやあ!」

「バンギラス、岩雪崩で相手の出鼻を挫くのです」

「殴り返してやれカラマネロ!」

「ボスゴドラ、ステルスロックや!」

 

 四者四様の行動によって一種でミルファミリアの室内は乱戦の場と化す。

 砂嵐が吹き、落石と鋭い岩が空を舞い、それらを掻い潜ってお互いに飛び掛かるメガアブソルとメガカラマネロ。トレーナーの指示を聞き呼吸を合わせるにも一苦労する戦場で、次の一手を繰り出したのはラクトゥカだった。

 

「…今!地ならしです!」

「!?…アブソル、飛び退け!」

「させるなカラマネロ、たこ固め!」

「鉄壁で守りを固めい!!」

 

 バンギラスの建物全体を揺らすような一撃に、それぞれが対応する。

 トレーナーの指示で飛び退こうとするアブソルの細身な体にカラマネロの触腕がグルりと巻き付き、護りを固めたボスゴドラも纏めて三体全員がバンギラスの地ならしを受ける事になる。

 

「所詮裏切りモンは裏切りモン、チームワークはお粗末なもんや」

 

「アブソル!そのまま〆のシザークロスでいてこましたれぃ!!」

「……!」

 

 アブソルはメガシンカによって攻撃、特攻、素早さが上がる攻撃的なメガシンカだ。それに対してメガカラマネロは素早さを低下させることで他の能力を向上させる…所謂重戦車のようなメガシンカ。

 地ならしによる速度の変化があるとは言え、単純な計算であればアブソルに初動の分はある……それはある意味で全く同じ状況だった。

 その状況とは、ラクトゥカのバンギラスと黒いカラマネロが戦った時。

 

「カラマネロ、馬鹿力だ!」

 

 タコ固めで拘束したメガアブソルの角が輝き、カラマネロの弱点であるシザークロスが命中するよりも。

 カラマネロの馬鹿力がメガアブソルに命中し、メガシンカポケモンという大きな切り札をひとつ失わせる方が速かった。

 その全てが、メガバンギラスとの戦いと変わらない結論を出していた。

 

「な…ぁっ!?」

 

「まるで解せんという顔だな。

…私のカラマネロは『相手と自身の能力変化を共有(コピー)する特性』を持っているのだよ。ただし、カラマネロの天邪鬼さは変わりないがなぁッ!!」

 

 今も少女の頭の上に乗っている、メガシンカで現れたマーイーカのような生き物は戦闘中、相手の能力変化をコピーする催眠技『じこあんじ』を双方に掛けているのだ。

 なので天邪鬼なカラマネロの馬鹿力によって攻撃と防御力が上昇するほど相手の戦闘能力は低下することになり、バンギラスの地ならしの追加効果によって低下させる素早さは更にカラマネロの素早さを追加で上昇させる結果になる。

…肝心のマーイーカが一匹しか居ないので、短い時間に複数回のじこあんじはさせられないのが玉に瑕だが。

 

 さしずめ、黒いメガカラマネロの自他問わない催眠を振り撒く特性は『事故(自己)暗示』…と言ったところだろうか?

 

 因みに現在の能力変化は馬鹿力2回、タコ固め1ターン、地ならし1回、そして相手の鉄壁1回なので…

 

 攻 撃△△(2段階 上昇)

 防 御(1段階 上昇)

 特 防(1段階 上昇)

 素早さ△△(2段階 上昇)

 

…となる。アブソルの能力もその分低下していたが…っと、そんな場合では無かったな。

 

「判るか?…メガカラマネロが強くなる度、お前の切り札は弱くなるという単純明快な事実が。」

 

「それは良い事を聞いた!…つまりこういうことやろ?ボスゴドラ、鉄壁でアイツの防御下げてやれい!」

 

「……」

 

 そう。メガカラマネロの特性は裏返せば『相手が強化(・・)されるほどこちらは弱く』なる。

……だが、それだけでメガカラマネロを攻略したとでも?

 

「カラマネロ、安易な考えを咎めてやれ!…『うっぷんばらし』!!」

 

 ボスゴドラはメガシンカによってタイプを失う珍しいものだ。その相性の変化によってはがねタイプ単体の優秀な相性とバンギラスの攻撃すら跳ね返す堅牢な守りを手に入れる。

 

 その白く綺麗な金属の鎧をカラマネロの触手は穿ち、微かな亀裂を生じさせる。同じメガシンカでも僅かながらこちらの攻撃が勝ったという意味だった。

 

「うっぷんばらし…!相手に能力を下げられた直後なら威力が倍加するあくタイプの技ですね…!」

 

「ええいそんなもん関係あるかい!鉄壁を積み切ったボスゴドラの防御を抜ける奴なんておらん!!ボディプレスで押し潰したれい!!」

「カラマネロ!!」

 

 少女が指示をするよりも速く、カラマネロがミサイルのように飛び出す。

 対するメガボスゴドラの金属の塊のような重厚な見た目からは想像も付かない跳躍から放たれるのは、隕石の衝突すら生ぬるいと感じられる威圧感の一撃。

 

「………!!」

 

「な…っ!?」

 

 その重量400kgはあるメガボスゴドラをメガカラマネロは細い腕で支え、あまつさえそれを軽々しく投げ飛ばしてしまう。

 誰もが言葉を失う中、ただ一人少女だけが冷静に盤面を眺めて小さく笑った。

 

「フフ。忙しない戦いでカラマネロの固有技、ひっくり返すまで頭が回らんかったか?

 悪いが都合の悪い盤面は返させて貰った。そうでもしなければメガボスゴドラの硬い護りは崩せそうに無かったのでな?

…さあ、ブラフのお喋りもここ迄としよう!カラマネロッ!!」

 

「待、待てや…」

 

 ひっくり返すによって防御の低下したメガボスゴドラの鎧に、馬乗りとなったメガカラマネロの一切の加減を許さない馬鹿力がめり込む。

 堅牢な鎧は砕け、大理石の床に亀裂が入り、メガボスゴドラのメガシンカが途切れた事で勝負は決した。

 

「ラクトゥカ、そっちは終わったか」

 

「はい、こっちも少し前に決着は着きました。あとは貴方が新たなミルファミリアのボスである事を周知させれば終わりです…―――

 

 

 

 

 

 

 

 

―――…随分前から、疑問だった事があります。」

 

「…なんだ?」

 

 ミルファミリアのボスの座席で爪の手入れをしている新たなリーダーに、ラクトゥカは素朴な疑問を投げ掛けた。

 

「貴方は何故、ミルファミリアの襲撃などと言う無意味で無謀な行動に出たのか。」

 

「無意味?」

 

「…無意味、としか言いようがありません。幾らポケモンの扱いに自信があったとしても、ミアレの一角を担うミルファミリアに何度襲撃を繰り返したところでこのような事がまかり通るとは思えません」

 

 ラクトゥカがそう言いながら少女に見せたのは

『これ以上ミアレシティで蛮行を働き続けるのであれば、こちらも相応の手段で対抗する』と書かれた、少女が襲撃の際に忍ばせた用紙。

 

「貴方は本当にこんな事が叶うと思って襲撃を行ったのですか?」

 

「細かい事を気にする奴は私みたいにモテないぞ、ラクトゥカ」

 

「……、誤魔化されませんよ。何が目的で無謀な真似をしてまでミルファミリアにまで手を出したのか…答えなさい。」

 

「…はあ…、大した理由じゃ無い。私の学友が一人、休みを前に不登校になった。学校は理由を伏せたけど、原因はミアレギャングを通じて同年代の人に妙な物が流通したからだと解った。

 だからそれを止めてくれるよう、お願いしただけだ。」

 

「…だとすれば本当に、大した理由じゃありませんね。たった一人で組織を相手するには全く理由が吊り合っていない」

 

「…。」

 

「答える気が無いならそれで構いません。ミルファミリアのボスの席に座ってくれるのなら、文句はありませんので」

 

「そうか、ところでラクトゥカ」

 

「なんでしょう」

 

「この新たなミルファミリアには大きな問題がひとつ存在する、何か分かるか?」

 

 ラクトゥカが無言で表情を顰めたのが少女に伝わると、少女はその無言の間を置いて口を開いた。

 

「私のお気に入りのマニキュアが切れた、急ぎ買ってくるように。」

 

「………」

 

 





〇黒いメガカラマネロ
 メガシンカによって体色は黒く変化、自他問わない催眠を手当り次第に振り撒く危険なメガシンカ。
 ただし突然現れたマーイーカのような謎の生き物はカラマネロの頭の上でパイロット気分。

 タイプ:かくとう・エスパー
 体長 :2.3m
 体重 :86.9kg
 特性 :じこさいみん
 自分と相手の能力変化をお互いにコピーする、ただしカラマネロはあまのじゃくでもある。

『ポケモン小説って何目的で読むのですか?』という作者さんが気になるだけで設置したアンケート

  • ポケモンが可愛い(等魅力)を求めて。
  • コレもZA作品なんだから熱いバトル!
  • ポケモンゲットのストーリー性
  • シンオウ神話のような設定が読みたくて
  • 推し(人間)のあれそれ
  • なんとなく開いた作品がコレ
  • その他   ...
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