催眠ポケモンメガカラマネロとの理想的なカラマれ方   作:あいいろ ののめ

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phase3『残滓』

 パパとママと喧嘩した次の日、目を覚ますとカラマネロのボールは無くなっていた。

 

「カラマネロ……」

 

 代わりに唯一手元に残ったのは、カラマネロにプレゼントする筈だったネックレス状の金属プレート。

 プレート表面にはカラマネロの触手…ではなく植物の蔓と、アサガオのような小さな花がいっぱい描かれている。

 

「………せっかく、カラマネロとお揃いにしたのに」

 

 思いつく限り、カラマネロの入ったボールの行き先は探した。けれど見つからなかった。

 

「ジババ…」

 

「心配してくれるのかジバコイル?…お前は優しいな」

 

 ジバコイルはZAロワイヤルでも頼りになるが、今だけは生身の温かさを恋しく思う。

 

「………」

 

 いや、それは正確な感情では無いだろう。

 数年もの間一緒に在った存在が急に居なくなるのは、他の何かで代替できるようなものでは無い。仮に温かみや他者の肌の感触を得たとして、手に入るのは慰めでしかない。

 この手元にあるプレートの中心に空いたメガストーン用の穴と同じように、今は私の中にはぽっかりと空洞が存在している状態なのだ。

 

「はぁ……このままでは良くないな」

 

 無気力に襲われる、らしくない。

 私は自身の両頬をぺしりと叩いて喝を入れると、強引に気持ちを切り替えて立ち上がる。

 

「なんにせよ『甘い物』だ。…カラマネロを探すにしろ、家で待つにしろ、或いは他の何かをするにしても…エネルギー無しに人は動けない」

 

 甘い物は良いエネルギー源となる。

 もしかすれば甘い匂いに釣られてカラマネロが帰ってくるかもしれない、少なくともこのミアレであれば美味しい菓子の匂いが漂うと不思議とどこからか野生のペロッパフが現れるのだ。

 落ち込んだ気分だって、美味しいお菓子を食べれば少しは前向きになれるかもしれない。

 

「後でお菓子用の木の実を選定するついでに市場にでも行くとしようか、カラマネロも甘い物を探してそこに居るかもしれない」

 

…立ち上がってひとつ、解った事がある。

 パパやママは私のカラマネロが居なくなった事に対してシラを切っていたが、私は自分でも意外なぐらい諦める事に向いていない(・・・・・・)ことだ。

 

「忍耐力には自信がある、私をなんだと思っている?…生まれてこの方、欲しくもない仮初の仮面を何年着け続けてきたと言うのだ」

 

 私は私自身を鼓舞し、タンスの扉に手を賭ける。その中から長袖のランニングウェア一式を取り出すと、私はヘアドレッサーの前に腰掛けた。

 鏡に映る自身を眺めながら桃色のシンプルなヘアゴムを咥え、長くなって来た後ろ髪をひと纏めにすると、飾り気の無いポニーテールを形作る。

 

「走れば髪が乱れるのだからわざわざ鏡で整えなくとも…とは常々思うのだがな」

 

 それでも一応の確認はしたいのが私という物らしい。

 母親譲りの綺麗な金髪を結んだポニーテールにヘアアイロンでくるくると螺旋状に纏めつつ、グレーの布地にピンクのラインの入ったお気に入りのウェアを見て頷きブラウスのボタンに手を掛ける…―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――…ミアレシティは街の外周が円形となっているため、走るのに向いている。

…と言うのは少し前までの話で、最近は野生のポケモンの生息する『ワイルドゾーン』なるものが街中に存在するのだ。

 

 私としては今までミアレシティでは見ることの無かったポケモンと触れ合える機会でもあるので悪いことばかりでもないのだが、お気に入りのランニングコースがひとつ潰えてしまったのは残念でもある。

 

(外周には美味しいミアレガレットのお店があってな、走り終えた後はいつもそのお店で食べていたのだ。あの頃はまだマーイーカの頃だったか…)

 

…いや、今はそんな想い出に浸っている場合では無い。

 

「ジバコイル、ビルの上まで私を運んでくれるか?」

 

 私の主目的はカラマネロを探すことだ。

 以前からミアレの街並みは大通りをひとつ逸れるとアリの巣のように細い路地が拡がっているため、迷路の様相を呈していた。

 それが最近はワイルドゾーンが増えたことで、トレーナーでは無い人間は何匹もの野生のポケモンの群れに襲われながらわかり易い近道を切り抜けるか、ワイルドゾーンの外でも生活するだけのバイタリティに富んだ野生のポケモンに襲われながらアリの巣のような路地を潜り抜けるかの二択を迫られる。

 

「しかしビルの屋上であれば道のりは最短かつ襲ってくる野生のポケモンも獰猛なひこうポケモンぐらいしか存在はしない。私のジバコイルならば充分に対応出来るだろう?」

 

「コイッ!!」

 

「ふふふ、頼もしい限りだ」

 

 私を載せるジバコイルの頭を撫でて時間を潰しつつ、ミアレの無数に存在するビルの屋上へと降り立つ。

 

「…悪くない景色だ。ZAロワイヤルでは夜景を見ることはできるが、空気がヒリついているからな」

 

 街中にワイルドゾーンを建設する施策の一部なのか最近のミアレの屋上には植物も多く、実際に歩いてみるとひこうタイプのポケモン以外にも多様なポケモンが屋上を走り回っている。

 

「このまま建物の上を走って菓子作り用の木の実の屋台を巡るからな。もしかすれば屋台の木の実を盗み齧るデデンネのように私のカラマネロも見つかるやもしれない」

 

 そんなことを考えている内に目的地の上空へと辿り着き、私はジバコイルに腰掛けながら下降する。

 

「こんにちわ、店主さん」

 

「ん…?ああ!こんにちはルミヤちゃん、今日は…オボンの実が重くて実がぎっしりだよ!」

 

「え、そうなんですかぁ!?」

 

 顔馴染みの店主さんの言葉を聞いてオボンのみをひとつ手に取ってみる、確かに良い代物だ。実の大きさも育ち過ぎず適切で、しかしポケモンの体力回復に向いた栄養豊富さが詰まった重みを感じられる。

 このオボンのみであればやはり果汁まで活かせるパイにするのが美味しいだろうか、或いはシンプルに砂糖漬けを作ることで果実そのものの良さを引き出すという手も…。

 

「ガルルッ!!」

 

「…野生のポケモンの声?」

 

 私が顔を持ち上げると店主が引き攣った顔で私の後ろを見ており、振り返った先にはデルビルが6匹と…随分と大きな体格をしたヘルガーの姿。

 ジバコイルは既に戦闘状態へと入っており、ヘルガーの群れと睨み合いの状況下にあった。

 

「あら店主さん、こちらはお店の番犬ですか?」

 

「そんな訳ないでしょルミヤちゃん!…アレはワイルドゾーンに居る野生のヘルガーだよ!」

 

「そうでしたか」

 

 いつの間にかここもワイルドゾーンとなっていたらしい。人とポケモンの共存を謳うのは結構だが、こうして実害を被る住人が居るのも事実だ。ワイルドゾーンを管理するクエーサー社はどうなっている?

 

 思案中も、ジバコイルが帯電状態となってもデルビル達は逃げる素振りを見せない。狙いはこの店の木の実と言ったところだろうか。

 普段からお菓子作りが趣味の『ルミア』と言う虚像であれば、逃げたとてそこまで非難を受けたりはしないだろうが…。

 

(あらゆる意味で不利だが、それでもやるしかないな。

…何よりこの主人には良くしてもらっているし、世話にもなってるのだから)

 

「ジバコイル、頼りにしてるからな?」

 

「ジバンバッ!」

 

(よしっ、ジバコイルのやる気は充分だ)

 

 まずは…ヘルガーを怒らせて店からコイツらを引き離す!

 

「……!ジバコイル、きんぞくおんを奏でろッ!!」

 

 遠吠えをしようとしたヘルガーを見て咄嗟に指示する。

 その音を聞いたデルビル達は悲鳴のような鳴き声を上げ、リーダー格のヘルガーがもう一度顎を持ち上げかけたのを見てジバコイルに金属音を発せさせる。

 するとヘルガーの歪んだ口の端からはデルビル系統特有の毒素を含んだ火の粉が溢れ出し、対照的に私は口角の端を持ち上げた。

 

「ヘルガーはその『遠吠えで群れの仲間に指示を出す』そうだな…その瞬間に響き渡る金属音はさぞ堪えただろう?」

 

 怒りに滲んだヘルガーの炎は毒素で黒色が混じるため判りやすくて助かる。

 

「戻れジバコイルっ!

…おら!こっちだ犬っころ共ッ!!」

 

「ヘルガルルルルッ!!!」

「デルっ!」

「ビルっ!」

「ヒビルっ!」

 

 走りながら背後を振り向き、ヘルガーが炎を吐きながら迫ってくるのを確認しつつ最初の作戦が上手くいった事を把握する。

 

(行き先は…走りながら考えるか!)

 

「…ルミア…ちゃん……?」

 

 




少し長くなり過ぎてしまったのでここで区切り、また後日に投稿しますね?

『ポケモン小説って何目的で読むのですか?』という作者さんが気になるだけで設置したアンケート

  • ポケモンが可愛い(等魅力)を求めて。
  • コレもZA作品なんだから熱いバトル!
  • ポケモンゲットのストーリー性
  • シンオウ神話のような設定が読みたくて
  • 推し(人間)のあれそれ
  • なんとなく開いた作品がコレ
  • その他   ...
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