催眠ポケモンメガカラマネロとの理想的なカラマれ方   作:あいいろ ののめ

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 今回から…という訳でも無いのですが、ルミヤとカラマネロがZAロワイヤルの核心に迫ろうとする以上、作品のネタバレも徐々に現れてくる展開になるかと思います。
 一応、本作を読んでくれるに当たってご留意頂ければ幸いです。


phase6『決闘』

「すぅ…はぁ……」

 

 私は屋外のバトルコートに立っていた、そして目の前で呼吸を整えているのはゴシックな装いの小柄な少女。少し前まで私は優雅な朝食を愛らしいポケモンと親愛なる友人と共に過ごすはずだった筈なのに。

 

(普段はそこまで変なことをするような子でも無いのだが…)

 

「ムクちゃん、決闘って事は勝ったら何かを要求するつもりなの?」

 

 ZAロワイヤルに限らず、揉め事や会社の接待の中でポケモンバトルを行うケースは往々にして存在する。私がこれから行う決闘という物も、その中のひとつに過ぎない。

 

「あたしが勝ったら、あんたの『ZAロワイヤル辞退』を要求する」

 

「………」

 

……私はまずその意義を問おうとした。が、私は途中でその行為が意味をなさないと理解する。

 

「ルミヤ、あたしは絶対にあんたにだけは負けられないから。」

 

「……ごめんね、ムクちゃん。私、悪いけどどうしても叶えたい願いがあるんだ。だからZAロワイヤルで勝たなきゃならないの」

 

「………。代わりにあたしが負けたら、ルミヤがなんでも好きな事を要求すればいい」

 

「何でもってそんな…」

 

(けれどムクの表情は真剣そのもの。彼女もZAロワイヤルに参加するポケモントレーナーである以上、お互いにAランクを目指すのであればいつかは衝突する事になる。

 つまり…ロワイヤルで頂点に立つつもりなのであれば、すなわち私はこのミアレシティに存在する誰にだって負けられはしないのだ。)

 

「…解った、戦おう。…ムクちゃんが本気でそれを望んでいるのなら」

 

 使用するポケモンはお互いに3体、こちらのメンバーはカラマネロ、ジバコイル、そしてヘルガー…。

 

(……ムクちゃんの相棒と言えばその衣装にもデザインが取り込まれている『いざないポケモンのシャンデラ』…私の手持ちではヘルガーが一番相性も良いが…)

 

「絶対勝利…これ以上ルミヤをZAロワイヤルに参加させてたら早死する…!」

 

 バトルコートの反対サイドで何かを言いながら気合いを入れるムクちゃんを眺めつつ、私は最初のモンスターボールを手に取る。ムクちゃんも最初に繰り出すポケモンのボールを手に取ったようなので、私は掛け声をあげようとした…。

 

 

「力こそパワー!!力こそジャスティス!!」

 

 

「っ!!?」

 

 ムクちゃんの普段の儚げな声からは想像さえつかない声量とワードが飛び出した動揺は私の投げようとしたボールの軌道に現れつつも、なんとかポケモンが飛び出す。

 

「行くよ、ジュペッタ…!」

 

…聞き間違いか? いや、確かに数瞬前のムクは『力こそパワー』などというジャスティス会のような訳の分からん事を言っていた筈だ。

 信じ難い、そう言う他ないのが率直な私の感想だが…。

 

「任せたよ、ジバコイルっ!」

 

 最初の一体はジュペッタ、灰色で人型のぬいぐるみのような身体を持つゴーストタイプのポケモン。その口は金色のファスナーのようなデザインでチャーミングだが、バトルで侮ってはいけない。

 

「少し意外、ルミヤならヘルガーを出すと思ってたのに」

 

 確かに相性だけを見るなら、ヘルガーであればムクちゃん相手に有利だが…。

 

「ジバコイル、きんぞくおん!」

 

 きんぞくおんに限った話では無いが、音を利用した技はその性質から回避は難しい。私はトレーナーの指示妨害としても優秀な技として選んでいる…のは少数派だろうか。

 トライアタックはゴーストポケモンに効果が無い以上、他の技をアテにするしか無いが…。

 

 ZAロワイヤルでは相手を逃がさない手段として有用なのだがな、仕方あるまい。

 

「ジュペッタ、はたきおとす!」

 

「来るよジバコイル、ほうでんで迎え撃って!」

 

 指示は最適、バトルコートに電気の檻が形成されるがジュペッタは強引にそれを潜り抜けて一撃を喰らわせてきた。その衝撃でジバコイルの持つオボンのみが床に落下する。

 

「ジバコイル!もう一度ほうでん!」

 

 ジバコイルは指示通りにU字磁石型の腕を構え、電撃のリチャージを行う。

 

「ジュペッタ、ゴーストダイブ」

 

…が、足りない。

 ジバコイルの充電速度を以てしても放電が始まる前に、ジュペッタは自身の影の中に溶け込むように消えて居なくなる。こちらの攻撃は虚空へと撃ち出され、私は思わず苦々しく口元を歪める自覚があった。

 

「ッリフレクター!!」

 

 影の揺らめきを察知した僅かな一瞬の判断、私はジバコイルになんとか次へと繋ぐ技を指示したが、直後ジバコイルの微かな鳴き声がコートに響く。

 

「ジ…バ……」

 

「…ありがとうジバコイル、行くよっヘルガー!」

 

「ガルルガァッ!!」

 

 モンスターボールから出てくると勇猛果敢に吠えたヘルガーを半透明の障壁が護る。

 

(私がもっと上手く試合運びを制御していれば…技構成、オボンのみ、はたきおとす…どれかひとつでも上手くやれていれば後続の負担を減らせたが…。

 だが、お陰で次の手を打つには充分……!!)

 

「ジュペッタ、ゴーストダイ…」

 

「わるだくみ!」

 

 本来ヘルガーはジバコイルほど耐久を過信していいポケモンでは無いが、いまはそのジバコイルが残してくれたリフレクターの障壁が存在している。

 ゴーストダイブによって安全圏から一気に距離を詰めようとするムクちゃんに対してこちらは一気に勝負を付ける為の一手を打ち込む。

 

 そして一瞬の静寂。

 ヘルガーの足元の影が形を変えるように拡がるのを見て大声をあげた。

 

「ヘルガー、狙い撃って!あくのはどう!」

 

 ヘルガーがジュペッタの攻撃を喰らいながらも、そのぬいぐるみのような身体を撃ち抜く。ジバコイルとの戦いによって消耗していたジュペッタに威力の上がった効果的な技は致命的で、倒れたジュペッタをボールに戻したムクちゃんは静かに頷いてから次のボールを取り出す。

 

「行って、パンプジン…!」

 

 そのボールから出てきたのはカボチャ胴体の幽霊、私のエプロンに描かれているバケッチャの進化系。しかしその姿はヘルガーとは比べ物にならないくらい小さい。

 

「………」

 

 パンプジンには複数のサイズ差が存在すると本で読んだことがある…ただ、それにしてもかなり小型に見えるのは、ヘルガーの大きさ故なのか。

 唸るヘルガー、お互い二体目同士の副将戦。やるべき事は明確、私は自信を持って指示を伝える。

 

「ヘルガー、あくのはどうで一気に畳み掛けるよ!」

 

「パンプジン!」

 

 ムクちゃんはそれ以上を声にはしなかった。

 ヘルガーの口から繰り出される紫色の鎖のような波動は跳ねるように飛び上がったパンプジンには当たらず、ヘルガーと私の見あげた先でムクちゃんの指示が飛び出す。

 

「パンプジン、やって(・・・)

 

「…っ?」

 

 思考に時間を取られた瞬間、ヘルガーの周囲をかぼちゃのような幽霊が取り囲む。攻撃では無い、コレは…!?

 

「ッヘルガー、かえんほうしゃで払って!」

 

 咄嗟の判断、パンプジンの瞳が怪しく光る様を見て私はヘルガーに近付かせないように指示を飛ばす。が、当たらない。

 

(想像以上に小さくて、それでいて機敏…!)

 

 目論見通り相手を近付かせないことには成功するが、それだけでは意味が無い。この膠着状態に先に待っているのは…。

 

「機を伺って、パンプジン…あのヘルガーが疲れを見せた所で一気に…ゴーストダイブ!」

 

 再び、黒い影に紛れてムクちゃんのポケモンがバトルコート上から消える。

…けどその距離、手段、ムクちゃんはその技を『選ばされた』んだよ?

 

「……来るよヘルガー、飛び上がってっ!!」

 

「っ!? 待ってパンプジン、何か…」

 

「真下目掛けて、ヘドロばくだん!!!」

 

 ヘルガーの毒素を活かした一撃、かえんほうしゃやあくのはどうと違ってソレならある程度の時間残り続ける。

 地面からぬるりと飛び出してくるパンプジンを見据えたヘルガーの紫のヘドロ爆弾が命中し、姿勢を僅かに崩す。

 

「っ!それでも喰らっちゃうか…!」

 

 パンプジンはヘドロばくだんが直撃しながらもヘルガーに一撃を与え、ヘルガーは空中で一回転しながら着地する。うん、まだヘルガーはやれるって言ってる!

 

「ヘドロばくだんでパンプジンを狙って!」

 

「避けて…!」

 

 かえんほうしゃで焼き払うより、ヘドロばくだんの爆発で少しでもダメージを稼ぐ戦術に切り替える。けれどやっぱりパンプジンは素早く、尚且つその小柄さを活かして逃げ回り続けていた。

 だけど…、このまま行けば…!

 

「ッガァッ!!」

 

「ヘルガー!?」

 

 ヘドロばくだんを連発していたヘルガーの攻撃が途切れる。

 そうか、さっきの一撃。ヘルガーはパンプジンのハロウィンという技によってゴースト技に弱くなっていたのか、だから想像よりも早く限界が…!

 

「パンプジンそっちは駄目…!」

 

 けれどその限界が近付いていたのは、私たちだけでは無かった。

 パンプジンはフィールドに撒き散らされたヘドロを避けようとするあまり、その素早さを失ったのだ。

 

「ヘルガー、不意打って!!」

 

「っパンプジン、かげうち!」

 

 ヘルガーの鋭い牙とパンプジンの鉤爪のように鋭く折れ曲がった腕が衝突して、お互いが吹き飛ばされる。

 

「ガル…!ルルァア…!!」

 

「…!よし、頑張ったね、ヘルガー!!」

 

「パンプジン…!?」

 

 副将戦は、ヘルガーの連勝で勝敗を決する。

 なんとか最後の一体まで追い込んだ、けれど最後に出てくるのは…。

 

「行って、シャンデラ…!」

 

 まるで古風なお城にでもありそうなシャンデリアのような青白い炎を灯すゴーストポケモン、シャンデラ。ムクちゃんがシャンデラを切り札にするのは、それだけの理由があるからだ、それは…。

 

「っ!!」

 

 ムクちゃんの頭に乗ったシャンデラを模した帽子に着いた虹色の小さな球が眩しい光を放つ。

 

―――メガシンカ。

 

 私の脳裏に過ぎるのは未だ未知数のポケモンが持つ新たな進化の可能性、かつてこのミアレシティにいたポケモンの博士はソレを『進化を超えた進化』と呼んだそうだ。

 

 コート上をそよいでいた風シャンデラを中心に渦巻き、何か大きな変化を予感させた…―――

 

 




長くなったのでまた次回を、お楽しみにーっ

『ポケモン小説って何目的で読むのですか?』という作者さんが気になるだけで設置したアンケート

  • ポケモンが可愛い(等魅力)を求めて。
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