催眠ポケモンメガカラマネロとの理想的なカラマれ方 作:あいいろ ののめ
―――昔、仲の良かった女の子がいた。
その子はいつもポケモンのマーイーカと一緒で、空を瞬く星のような金色の髪を持つ女の子だった。
「あ…そのポーチ…」
「これ? トモシビで売ってるポーチだね、もしかして知ってる?」
その会話が弾んだのは、偶然その子があたし愛用のブティックで扱っている小物入れを持っていたこと。けれどもそれはあくまでも切っ掛けで、一番話が弾んだのは…。
「ルミヤは凄い」
「…何が?」
「お菓子作りが上手いのもだけど、ポケモンの好きな料理が解るのが凄い」
「そりゃあ解るよ、美味しいものを食べるときは人間もポケモンも幸せそうな顔をするからっ!…ムクちゃんはどんなお菓子が好き?」
二人の一番の話題は、彼女が趣味にしてるお菓子の話。
ミアレには色んなパティスリーがあるから話題は尽きない、それにルミヤ本人には言わないけど…。
「……?」
「………」
私だけじゃなく、私のポケモンもルミヤの作る料理を気に入っている。
「今日の〜オヤツはぁ~♪大豆入りの生地を油でサッと揚げるのが美味しさの秘訣の〜♪モっチモチの♪ソイっ♪ド〜〜ナッツ〜〜〜♪」
料理を作るときのルミヤは少しヘン、でもいつも楽しそうだった。彼女の頭の上に乗ったり周囲を忙しなく飛び回るマーイーカも。
ルミヤがどう思ってたかは分からないけど、遊ぶ以外でお菓子を食べる為に家に行ったことも一度や二度じゃないから、仲が良かった…と思う。
「…秘密基地!?」
「そう、友だちのゴーストポケモンに手伝って貰うことで入れる場所があるの」
「そんなのゼッタイ行く!行くしかないよっ!…というか私が行って良いの?」
「ルミヤは特別。いつも美味しいケーキとか作ってくれてるから」
「ええ? そんな褒め方しても、私からは料理しか出てこないんだけどな〜?」
そう言いながら笑うルミヤはエプロンの紐を結んでキッチンに立つと、おもむろに料理を始める。
「何してるの?」
「料理!…せっかくそんなに素晴らしい場所に行くなら、素晴らしい料理もなきゃだからねっ!」
「どんな料理なの?」
「ん〜? ふふっ、秘密っ♪…あ、でもムクちゃんは暇じゃない? 出来上がるまではゲームでも遊ぶ?」
「…せっかくだから、待ってる。ルミヤがそこまで言うような料理も気になるし」
素晴らしい料理。ルミヤがそこまで言うような料理が何なのかあたしには想像が付かないけど、料理中の彼女の表情はとても幸せそうだった。
「んっ……瓶の蓋が中々開かない…」
「マーイーカっ!」
「まあ良くないよ!」
「マイっ!!」
「あっ!…瓶の蓋を開けてくれようとしてたんだね、ありがとうマーイーカ。こう見えても案外力持ちなんだねえ」
「ママイっカっ!」
ルミヤが料理に専念していても、彼女のマーイーカはずっとその傍に居る。きっとあのマーイーカにとってはルミヤの側が居場所なんだと思うような光景だった。
「それじゃあ後は焼きあがれば完成だね!
…お待たせムクちゃん、本当に退屈じゃ無かった?」
「ふふ…ルミヤにはあたしの表情がそう見えるんだ?」
「え……どゆ意味?」
「マイっマイっ!」
「ああもう、マーイーカが構って欲しいのは解ってるから…」
ルミヤの三角頭巾の上に乗って、その小さな触腕でぺしぺしと頭を叩くマーイーカの姿にルミヤの見ていない場所であたしはクスリと笑い声を溢しつつ、その羨ましくさえ思える二人の関係を眺める。
「それじゃあムクちゃん何して…あっマーイーカ!私の頭巾を取らないでっ!!」
「イカイカッ!!」
「ちょっと何処行くつもりなの…!」
料理用の頭巾を持って部屋中を飛び回るマーイーカと、それを追い掛けるルミヤ。
賑やかな時間はすぐに過ぎ去って行くのだった―――
―――夕暮れが石造りの街を照らす中、あたしとルミヤは秘密の場所を目指してミアレの路地を歩いていた。
「着いた」
そこは建物同士が集まった間に出来た小さな隙間の広場。町並み同士が組み合わさって出来た道のりは入り組んでいるので、滅多に人が来ることは無い。
もし人が訪れるときも、悪意のある相手ならポケモン達が追い払っている。
そんな広場の真ん中には、樹齢何十年かも分からない大樹。
「ソファに長机、大きなポケモンのぬいぐるみまで…本当に秘密基地だね?」
そのときに浮かべたルミヤの笑顔はどこかこそばゆい物だった。何故って、建物の隙間から夜空を見上げて、あたしでさえ今まで見たことないような無垢で柔和な笑顔だったのだから。
「っルミヤ、樹に登ったら危ない…」
「大丈夫だよこの樹はよく育ってるから!ムクちゃんも手を貸してあげるからこっち来て!」
軽々と木を登るルミヤは相変わらず向う見ず。
手を伸ばすルミヤの後ろに、大樹の草の葉の中から夜空に光る星が見える。その声色はいつもとは違う景色に少し高揚していて、星よりも笑顔は煌めいていた。
「あ、野生のヒヤップ。君もこっちおいで?」
ルミヤの手を取って木の幹の隙間でひと息着いていると、ルミヤのそんな声が。どうやら膝の上に乗せたかったらしい。
「ルミヤは何でもかんでも興味を持つよね」
「…そうでも無いと思うよ? でも、ミアレシティにたまに居るこの子達はちょっと私好きなんだよね」
「? どうして?」
「それは…私の先生だからだねえ!」
「先…生…?」
「私の木登りの練習のために何日か観察した事があるんだ。
木の僅かな凹凸を伝って木やミアレのビルを登るのも凄いけど、一番参考になったのは体の重心の取り方かな。
強引に腕力で登るだけだと疲れるけれど、本来木の上で生活する事の多いこの子達はそれを一日中繰り返す為の工夫の策を知っているんだよね〜?」
「…すごい」
凄い、それはルミヤの観察眼に対する言葉でもあった。彼女がポケモンの好むお菓子作りが出来るのも、その観察眼あってこそだろうから。
「あっヒヤップちゃん…またね……」
ルミヤは腕の中から抜け出して去っていくヒヤップを名残惜しそうに見送ると、空を見上げる。それを追って見上げた視線の先には青い木々の葉の中から覗く、夕暮れと宵闇の混ざった夜空と星々。
彼女はどこか遠くを眺めながら、静かに話し始めた。
「ムクちゃん、私夢があるんだ」
ルミヤの口調は普段と打って変わって真面目、それだけで彼女の言う夢が大切なものだとわかった。
「私ね、ママみたいなモデルさんになりたいんだ。
…今もジュニアモデルとしてたまに宣伝のお手伝いはしてるんだけど、大人になったらママみたいにもっと格好良いモデルさんになりたいのっ!」
ルミヤの夢、それは彼女の母親のようなモデルになる事だった。その姿はトモシビのお店で服を買うあたしも写真で見たことがある。
「ママはね〜撮影のときはすっごいキラキラしてるんだよ!
…お家で休むときは絶対に人に会わないくらいにはアレだけど……そういえば私がお菓子作りを始めたのも、最初はママがお家にあるフルーツやきのみばっかり食べてたからだっけ」
そう言った後に最近は凝ったお菓子ばかりだから却ってママも食べるのを気にしてるんだけどねと、ルミヤはまたころころ笑う。
それから思い出したようにこう言ったんだ。
「…あ!これは秘密だからね、ママのことも、私の夢も。
秘密にするつもりだから、この秘密基地の思い出の中に隠しておくんだ〜。
そうだ、作ってきた料理があるんだったね。ムクちゃんも一緒に食べよ?…ツィーヴェルクーヘン!!」
「つぃー…何の料理?」
ルミヤと一緒に樹上から降りながら問い掛けると、彼女はそのパイのような見た目の料理を取り出しながら振り返って笑顔を見せる。
「別名幸福のケーキ!キッシュ生地にベーコンや玉ねぎを乗せて焼いた、玉ねぎの甘さをさらに引き立てた一品だよっ!」
「幸福のケーキ…」
「そう、だからこれは私から秘密基地を共有してくれたムクちゃんへの幸福の『お裾分け』っ!」
弾けるような笑顔だった。
私はルミヤがそのホールケーキを切り分けてくれた皿を受け取ろうとして……。
―――ガサガサガサガサ!…どさり。
「………?」
あたしだけじゃなくルミヤも異音の聞こえた方に振り返る。そこには野生のピジョットが降り立っていた。
翼には木の葉が何枚も付着していて、あたし達が近くにいたにも関わらず警戒や逃げ出す雰囲気を見せない。
「ピジョット…苦しそう……」
「怪我はしてないみたいだけど…」
あたしが言った言葉に返事をしたルミヤの言った通り、ピジョットに外傷は無い。だからこそ逃げも怒りもしないピジョットの様子が気になった。
「……っ?」
けれどそんな時、不意に秘密の広場の全体を渦巻くような風が舞い込んだ。
一体何が…そんな疑問を解く暇も無く、あたしの隣に居たヒトモシに向かって鋭い刃のような風が吹き荒ぶ―――
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ポケモンゲットのストーリー性
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